瀬川冬樹
世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より
すっきりと上品な透明感のある、よく磨かれた音質のパワーアンプだ。音の品位を大切にしている反面、ローエンドの延びあるいは量感のやや抑えられた感じの、どちらかといえば細身の音質で、たとえば「オテロ」の冒頭のオルガンの持続音が十全に聴きとれたとはいいにくい。しかし中低音域以上高域にかけては、音の芯もしっかりして密度もあり、弦合奏やクラシックのヴォーカル(テストソースではエリー・アメリンク)の美しさはなかなかけっこうなものだった。シェフィールドのパーカッシヴな音も意外にしっかりと鳴る。ただ、菅野録音のベーゼンドルファーの脂っこい丸味のある艶を要求するのは少し無理のようで、そこはいかにも日本の音、という感じだった。
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