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ラックス M-12

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

やや小造りだが透明感のある音質、眺めて楽しいコンストラクション。

ラックス M-12

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 小粒な印象であるが、音の反応がかなり早く、いきいきとした音のパワーアンプだ。
 聴感上での周波数レンジは、スッキリと充分に伸びきった印象があり、低域はバランス的にというよりはエネルギー的に不足をするが、音の粒立ちがクリアーで、滑らかさも充分にあるため、軽快で、かなり小気味のよい音を聴かせる。4343は、小出力のパワーアンプではかなりドライブし難いスピーカーシステムだが、定格出力から予想したよりもパワー感があり、家庭用としてならあまり不足はないであろう。新しいタイプのアンプらしい、フレッシュで素直に音を出すところが、このM12の特長であり、よりマッチしたスピーカーで使いたくなる。

ラックス M-12

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 すっきりと上品な透明感のある、よく磨かれた音質のパワーアンプだ。音の品位を大切にしている反面、ローエンドの延びあるいは量感のやや抑えられた感じの、どちらかといえば細身の音質で、たとえば「オテロ」の冒頭のオルガンの持続音が十全に聴きとれたとはいいにくい。しかし中低音域以上高域にかけては、音の芯もしっかりして密度もあり、弦合奏やクラシックのヴォーカル(テストソースではエリー・アメリンク)の美しさはなかなかけっこうなものだった。シェフィールドのパーカッシヴな音も意外にしっかりと鳴る。ただ、菅野録音のベーゼンドルファーの脂っこい丸味のある艶を要求するのは少し無理のようで、そこはいかにも日本の音、という感じだった。

ラックス C-12 + M-12

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たいそう品位の高い美しさに支えられた、しかしどこか小造りの感じのする、すっきりと整った音だ。ラックスのアンプには一貫してこの上品さがあるのだが、ときとしてそれが少々控え目にすぎると感じられることもある。ものごとをあらわにしない含みのある言いまわしは関西独特の奥ゆかしさでもある反面、少々品の悪いことを承知で腹にあることを言い切らないと気が済まない関東の人間には少々もどかしい感じがあるが、それに似ているのかもしれない。かといって押しつけがましい露骨な音は困るが、音楽を鳴らすための適度のバランスというものを頭に浮かべてみると、この12シリーズの音はやはり少々控え目すぎるように思える。この傾向はおもにC12の方がしはいしているらしい。とにかく磨き込まれた透明感のあるこの美しさは極上の水準だ。その美しさを長所とするには、しかし低音域全体の豊かな支えと、高音にかけての切れ込みが、それぞれもう少し感じとれる方がいいのではなかろうか。

ラックス C-12, M-12

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新世代のラックスを意味する技術志向が前面に出たラボラトリー・リファレンスシリーズのセパレートアンプをベースとして、より入手しやすいコストのモデルとして開発されたのが、この一連のセパレートアンプである。趣味としてのオーディオを熟知したラックスの製品であるだけに、最近の動向である薄型アンプの形態を採用し、キュートで、洗練されたデザインにまとめられている魅力は、むしろ兄貴分のラボラトリー・リファレンスシリーズに勝るとも劣らないものがある。
 C12は、単純機能のクォリティ優先型のモデルであるが、独得のリニアイコライザー、ツインT型サブソニックフィルターを備え、2系統のテープ入出力端子をもつ。回路は、すべてDC構成である。
 M12は、ブラックボックス風のユニークなデザインである。とくに、メッシュを通して、管球アンプ的な灯りが仄かに見えるのが楽しい。構成は、完全左右独立型のDCパワーアンプである。
 C12、M12の組合せは、クォリティの高い、外観とマッチしたキュートなスッキリとした音だ。リニアイコライザーで低域を補正するとスケール感が豊かな予想以上の余裕ある音を響かせる。