ラックス 5M21

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティの鳴り方から、音の密度のきわめて高く、混濁感のない品位の高さが聴きとれる。概して不満の多いホルンの響きも自然なバランスでとてもいい。弦楽四重奏、ヴォーカル、ピアノ、すべてに格調の高い安定感があって、やや細身ながら品の良いバランスの良さが一貫していて、たいへん良く練り上げられたアンプであることを思わせる。キングズ・シンガーズの六声のよくハモること、そして声の向うに広がって消えてゆく余韻の響きのデリケートな美しさなどは、リファレンスの510M以上だ。ただやはりこれはいかにもラックスの、あるいは日本の音で、いわゆる脂っこさ、あるいはハメを外す寸前までの自在な躍動感という面はここにはない。

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