菅野沖彦
最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・コンパクトスピーカー特選4機種」より
オンキョーのM55というスピーカーはブックシェルフ型の完全密閉型2ウェイ・スピーカーで、エンクロージュアのサイズからすると、これは俗称コンパクト・スピーカーといわれるところに位置するものだ。現在のスピーカーの一つのストリームの中で、コンパクト・スピーカーとミニ・スピーカーというのはかなりの流行のきぎしを見せている、あるいは、実際流行しているのかどうかは知らないが、このM55はそうしたストリームの中で開発されたコンパクト・スピーカーだと私は思う。このぐらいのサイズのスピーカーは昔からいくらでもあるわけだが、ことさらいまこのスピーカーにわれわれが注目するというのは、そうしたコンパクトなサイズの流行の背景を意識してオンキョーが開発したというところだろう。この手のスピーカーで評判のいいスピーカーは他社から幾つか出ているわけだから、そういうスピーカーの中でのコンペデイターとして非常に新しく開発されたスピーカーだけあって、なかなかいいところをもったスピーカーである。
スピーカーそのものをもうちょっと詳しく説明すると、20センチ口径のウーファーにソフト・ドーム・トゥイーターを組み合わせたものだ。現代のスピーカーは、きわめて明快なハイ・フィデリティ的な再生をするが、音がとにかくシャープであってあくまても克明に再現をする一方、音楽のもっている雰囲気とか、やわらかさとかあたたかさというものをついつい犠牲にしてくるようなスピーカーが多い。その中にあってこのスピーカーはたいへんにウォームな音をもっている。
これはひっくり返せば、実は、このスピーカーのもの足りなさにもつながるだろう。小さいスピーカーはともすれば、小さいけれども大型に負けないぞというような気張りが、普通はあるが、そうした気張りのあるスピーカーに限って、高域に相当くせがあったり、低域がやたらに強調されたりするものだが、このスピーカーの音の出方は非常に素直におおらかにフワッと出てくる。つまり、そういうう音の気張りのないところが、このスピーカーの何よりもいいところであろう。
それでいて、実はこのスピーカーはたいへんな耐入力特性をもっていて、実際にピークで150ワット・200ワットは平気で音くずれなく再生する。そういう意味では、非常にタフなスピーカーであることは事実だ。タフネスという点ではミニ・ジャンボだが、しかし音そのものが、あくまでも大型スピーカーに対抗しようというふうなつっぱりがないところが、このスピーカーのよさではないかと思う。
組合せだが、こういう小さいスピーカーは、小さいから小さいワット数のアンプでと考えると、危険性がある。かといって、いくら何でも、2万円台の、しかも小型スピーカーに何10万円の大型アンプというのも、アンバランスだ。そういう点からなんとかこのスピーカーを鳴らすのに適当なアンプリファイヤーということになれば、プリメインアンプの中級品ということになってくるだろう。サンスイのAU607、707、あるいは、オンキョーのインテグラA705DC、これらのアンプで鳴らせば、このスピーカーがかなりの実力を発揮してくれるのではないかと思う。
プレイヤーはあまり大げさなものを使う必要はないだろう。ビクターの一番新しいQL−A7なら申し分ない。
カートリッジの方は、少し締めて鳴らしてもいいと思うので、エラツクのようなカートリッジよりも、むしろオルトフォンのF15とかFF15の方が、このスピーカーのちょっとした甘さをカバーして、明快な感じに音をバランスさせてくれるであろう。
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