BOSE 301

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・ブックシェルフ型スピーカー特選9機種」より

 ボーズ301というスピーカーは、アメリカのマサチューセッツ・ボストン郊外にあるボーズ・コーポレーションのつくっている普及型スピーカーてある。ボーズ・コーポレーションというのはMIT、つまり、マサチューセッツ・インスティテュートの教授であるドクター・ボーズの創立したメーカーで、独特な録音再生の理論からつくり出されたユニークなスピーカーを専門に作っている。その理論の要点は、「音というものは絶対にマルチ・フェイズの間接音成分が重要である」ということである901システムでは、名前が示すように9個のユニットがついているが、そのうち前を向いて直接聴く人間に音を放射するスピーカーは1個だけだ。あとのユニットは全部後向きについて部屋の中で間接音をつくり出すというシステムである。この301は、ボーズ社がその理論を完璧に再現するということではなくて、多少そうした要素を取り入れて普及的なスピーカーをつくったというものだ。
 これは普通の直接放射型のスピーカーで、前面にユニットがつけられた2ウェイのスピーカーで、ユニークなポイントは、トゥイーターの前にリフラククーがつき、それが外から角度を変えることができるということだ。これによって室内での高域のラジエ−ションをコントロールすることができるというのが、このスピーカーの特徴でもある。比較的コンパクトなサイズの2ウェイ・スピーカーであり、値段的にも気楽に使える外国製の小型ブックシェルフ・スピーカー、あるいはコンパクト・スピーカーの部類に入ると思う。
 音は非常に魅力のあるきれいでさわやかなシステムで、この辺の音のよさはつくったメーカーの意識外のところでわれわれに何かサムシングを感じさせると言わざるを得ない。とにかく、トゥイーターの質がとてもよく、何の変哲もないコーン型のトゥイーターであるが、極めて歪感の少ない、繊細なさわやかないい高音を再生してくれる。いろいろなプログラム・ソースに対して、よくバランスした再生音と、質の高い美しさを感じさせる、これは一種の美音と表現してもいいかもしれない。特に、弦楽器の高音、あるいは、シンバルの高音など非常に繊細にしなやかに鳴ってくれる。低音も小型ながら非常に豊かで、押しつけがましくない魅力のあるものだ。
 このスピーカーを鳴らすアンプリファイヤーとしては、やはり中級クラスのプリメインアンプということになるだろう。その辺のアンプは国産にたくきんいい製品がひしめいている。その中から、デンオンの新しいDC化した中級アンプPMA830などはかなりいい表情で音楽を再現するアンプだと思う。プレイヤーは、こういうさりげなく使うスピーカーを鳴らすということから、フルオート・プレイヤーをおすすめしたいと思う。その中でも何枚かのレコードをマルチ・プレイ操作可能のオート・スタート、オート・ストップ、リピート・プレイ、マルチ・プレイ操作可能なテクニクスSL1950。これは値段的にも5万円を切っているプレイヤーで、トータル価格もそう高くならないと思う。このあたりのシステムで気軽に、生活の中に常に音楽が鳴っているという使い方で構成したら、この301が生きてくるのてはないかと思う。

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