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BOSE 301AVM

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 ボーズの301シリーズは、同社の製品群中でも中核をなす、優れた音質、優れた音楽性をもつシステムである。現行の301MMII/301VMに加えて、新しく301AVMがラインナップに加わった。
 まず、外観上の変化である。直線を基調としたシャープな印象が特徴の301MMIIに比べ、ラウンディッシュカーブと呼ばれる、全体に滑らかに円弧を描く柔らかなラインは、一種の新鮮な驚きでもある。
 またカラーバリエーションが豊かなことも、301AVMの特徴である。エンクロージュアの仕上げが、ブラック(301AVM)、シルバー(301AVMS)、ホワイ
ト(301AVMW)の3種。ホワイト仕上げには、レッド、グリーン、ブルー、それにホワイトの4種のグリルがある。なお、ブラックとシルバー仕上げには、同系統のカラーネットが組み合わされる。
 基本構造は、この方式は2個のトゥイーターを角度を変えてセットしたもので、ボーズ独自のプレゼンスを聴かせる。301MMII以来、すでに定評の高いバイ・ディレクショナル・ラディエーティング方式だ。
 低域は、20cm口径ウーファーによるバスレフ型であるが、ポート形状が、細長いスリット型のポートに変わり、エンクロージュア内部の雑音が放射されることを低減し、低域の音色もコントロールしている。なお、新モデルの各ユニットは、キャンセリングマグネットを使う低磁束漏洩型だ。
 外形寸法は、301MMIIシリーズより22mm広く、12mm高く、9mm奥深くなり、重量は、301MMII/301VMが6・5kg/7kgに対して、9・8kgと大幅に重くなり、許容人力も、70W(rms)から120W(rms)に向上し、事実上の301の上級機種とも考えられる、シリーズのトップモデルである。
 301シリーズの魅力のひとつでもある豊富なアクセサリー類は、重量増加による安全対策面から共用できず、201AVM専用アクセサリーが、ホワイトバージョン
用を含めて数多く用意されている。
 試聴室にある2、3種類のスピーカースタンドを使い、音の傾向を聴いてみる。
 基本的には、301シリーズの延長線上にある音ではあるが、デザインの変更に見られる視覚的な印象と同様に、301AVMの音も角がとれ、聴き上げられたようだ。やや線は太いが、開放感があり、屈託なくのびやかに鳴る301MMIIと比べ、かなり大人っぽい雰囲気が加わった音だ。
 低域の適度な粘りは、力感に裏づけされた新しい魅力であり、やや光沢を抑えた中高域の華やかさは、現代スピーカーならではの味わいとも受け取れるものだ。プログラムソースとの対応性もしなやかで、幅広い要求に応えられる注目のモデルだ。

BOSE 301MM-II(組合せ)

菅野沖彦

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
特集・「CDで聴く海外小型スピーカー中心の組合せに挑戦」より

 BOSEのスピーカーというのは、一般的なスピーカーの考え方とは違って、間接音を豊かに再生することによって、より自然な音が聴けるという主張のもとにつくり出されたもので、この思想をはっきりと具現化したのが、901です。901ほどまでには同社独自の思想が徹底して生かされていませんが、よりコンベンショナルな形で実用的なブックシェルフ型にまとめたのが301MMIIといえます。トゥイーターを二個、角度を変えてエンクロージュアにマウントし、高域を拡散するところにBOSE独特の考え方が生きていますが、全帯域はほとんど正面へ出ていますから、まったく普通のスピーカーと同じように使えます。
 BOSEの音の特徴、個性を一言にして言うと、アメリカ文化の音だと思うんです。それも301MMIIは、アメリカ大衆文化の音ですね。このスピーカーを聴くたびに思い出すのはマクドナルドとか、ケンタッキーフライドチキン、デニーズ、これらを思い出します。非常に大衆的ではあるけれども、ある文化の薫りを、それも異文化の薫りを持つことで成功している。そして、大衆的な値段ではあるけれども、ある種の格好のよさも保っている文化性が、BOSEの301MMIIとか、あるいは101MMの持っている音の特徴というものに、非常に合っていると思うんです。アメリカで生まれた大衆文化の中から誕生したものですから、よく売れるスピーカーだと思うんです。つまり、個性が非常にはっきりしていて、思い切りが非常にいい。特に、BOSEは小型のスピーカーで大型スピーカー並の十分な馬力を出す、パワーハンドリングも優れているというところに特徴があるわけです。この301MMIIも、相当パワーをぶち込んでもびくともしないというところが、大きな特徴と言えます。しかも出てくる音は、音量を絞ったときでもパワー感のある、非常にエッジのはっきりとした、あいまいさが全然ない、明快そのものな音と言えます。そして、その色合いが非常に濃厚であるため、他と比較するまでもなく印象づけられてしまうスピーカーです。
 デリカシーという点に関しては、文句を言いたいところもあります。しかし、きちんとしたオリジナリティを持っていますから、ある意味では、現代の大衆の心をばっちりつかむ音だと思う。そういう点で、このスピーカーを高く評価します。
 とにかく比較的安い値段で、異文化の薫りがあって、しかも何か強烈な個性の主張を聴きたいということだったら、迷うことなく、この301MMIIを勧めます。日本のスピーカーにものたりなさを感じ、もうちょっとコクのある音で、思い切り鳴らしたいというような要求を持っている人には、まさにぴったりのスピーカーです。それだけ、他のスピーカーと違ったよさを持っているということです。
 このスピーカーはペアで10万円を切る値段です。普通だったら、異文化の薫りを味わえる値段ではないともいえるわけですから、非常に安い買物と言える。だから、組合せのトータル額もできるだけ安く抑えて、異文化の薫りを充分に味わってみようということで聴いてみました。
 このスピーカーは、ボストン・アクースティックスのA40Vのようにいろんな方向にもっていくということは望めない。とにかく301MMIIが目指している方向を、ぎりぎりまで生かすべきだと考えて、最初の組合せは、アンプにオンキョーのA815RXと、CDプレーヤーはパイオニアのPD5010にしてみました。
 A815RXは、同社のプリメインアンプの中で一番安いアンプですが、オンキョーが追求してきた、電源の問題の解決によるスピーカーのドライブ能力の向上が、このA815RXからも充分感じられます。この値段のアンプとしては非常に力のあるアンプですね。その分、高域にややキャラクターがついていて、繊細な品位のある音を望むと、ちょっと艶っぽかったり癖があったりという感じがしますが、301MMIIを鳴らす限りにおいては、むしろ、それがいい方向に作用して、生き生きはつらつと鳴ってくれる。A815RXと301MMIIのコンビというのは、値段的な点からいっても非常によくマッチした組合せだと思います。
 PD5010は五万九千八百円という、現在のCDプレーヤーの最低価格のところへぶつけてきたパイオニアの意欲作ですが、ソニーのD50とか、あるいはマランツのCD34とは一味違っていますね。CD34やD50は独特のコンセプトの方向に踏み切っていますが、PD5010というのは、より価格の高いCDプレーヤーのコンセプトを、ぐっと値段を下げて実現したという感じがします。音も、非常に明快でふっきれてますね。CD34のように、何か雰囲気をつくろうというのでもなければ、D50のように徹底的に、小型軽便で、音も非常に明るい方向に徹しているわけでもない。つまり、その中庸をいくというのか、非常にまともな音です。つくりも非常にまともです。実際にさわってみてびっくりしたのは、メカノイズ、サーチノイズが少ないし、アクセスが早い。上級機種に堂々と伍していけるようなフィーリングを持っていることです。
 こうしてA815RXとPD5010と並べて置くと、デザイン的にもまったく違和感がない。同じブラックで、色合いの調子も合ってるから、デザイン的にも統一されるし、当然、音的にも非常にうまくいった組合せだと思います。できるだけ値段を安くして、301MMIIの能力をフルに発揮させる、という意図が見事に成功した例です。
 二番目の組合せは、NECのプリメインアンプA10IIとCDプレーヤーCD609を使いました。NECの製品には、常に高性能ということが印象づけられる。音の情緒性、感性という点で、やや現代的過ぎて、ぼくにはついていけない面があるのもたしかです。しかし、保証された物理特性のレベルは、非常に高いものです。その保証された高いレベルの物理特性で鳴らせば、301MMIIの個性と能力が相当なレベルで発揮できるんではないかという気持ちで鳴らしてみたわけですが、非常によく合うんですね。最初の組合せ以上に、性能のいいことを感じさせる音になります。音に精巧さが加わって、ソリッドです。アキュラシーというよりも、プリサイスな感じです。最初の組合せと同じ方向の音ですけども、明らかに、こちらの方がクォリティアップしたという感じがします。
 この301MMIIのようなスピーカーになりますと、鳴らすソースがはっきりと決ってくる。例えば、マーラーのシンフォニーでいえば、今回ハイティンクの第四番と、ショルティの第二番を使ったんですが、301MMIIはショルティ盤が相応しいですね。この両者は演黄も違えば録音も全然違う。ショルティの第二番の、ロンドンのレコーディングは、徹底的に拡大鏡でオーケストラを部分的にのぞいていったような録音なんです。マルチマイクロフォンの一つの極だと言える。こういう録音は、絶対的に、あるレベル以上の性能がないと、全然生きてこない録音になる。雰囲気でフワッと聴けない音です。ところがハイティンクの方は、雰囲気がよくない装置でないと聴けないというくらいに、両者にははっきりとした録音のコンセプトの違いがあるし、演奏にもはっきりとした違いがあります。ショルティはアメリカの指揮者ではないけれど、彼の演奏というのは、極めて戦闘的で、真っすぐ猪突猛進するところがある。それと、アメリカのオーケストラとが組み合わさって、そして、ロンドンの録音でマーラーをやられると、独自の世界と言わざるを得ないくらいになる。こういうマーラーもあってもいいんだろうけれども、一方に、ハイティンク、コンセルトヘボウの、繊細緻密でロマンティックなマーラーもある。BOSEのスピーカー音は、ハイティンクのマーラーとはまったく異質だという感じがするんです。ところが、ショルティをかけると、小型スピーカーとは思えないくらいのダイナミズムを発揮して、快適な爽快感が味わえる。
 三番めの組合せも、前の二例と同じ方向を狙いますが、もう少しパワーハンドリングを上げたいと思って選んだのが、マランツのPM84です。CDプレーヤーのソニーのCDP302ESと組み合わせて鳴らした音は、前の二例と比べて少し雰囲気が出てきます。A10IIが、いわば冷徹とも言えるハイパフォーマンスな感じに対して、マランツとソニーの音は、そこに少しぬくもりとある種のしなやかさが加わってきたように思います。
 クォリティ的には互角の第二例と第三例のどちらを選ぶかとなると、徹底的な現代性というものを求めるんだったら、NEC同士の組合せの方を、そこにニュアンスを求めたいのならば、マランツとソニーの組合せ、といったところです。

BOSE 901SS-W, 301MM-II

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ボーズからの新製品は、同社のトップランクモデルとして開発された、901SS−Wシステムである。その基本型は、前面と背面の2通りの使い方ができるバイフェイシャル方式のユニークなモデルとして発売された901SSで、これに数々の改良が加えられた新モデルであり、901シリーズIVとは、異なったラインの製品である。
 このモデルの最大の特徴は、エンクロージュアの仕上げが、落着いたローズウッド調のダークブラウン系にまとめられていることで、エンクロージュア底面には、入力端子と天井取付金具CB1、スピーカースタンドSS5が使えるように、ナットが埋込まれており、別売のスタンドには色調を揃えた茶系のPS4SSが用意される。
 発表資料によれば、901SS−Wの音質面での特徴は、高域における繊細さをさらに洗錬させるための改良を随所に施し、SN比の向上、ダイナミックレンジの拡大と併せて、音楽性をより一層高めた、とある。
 インピーダンス0・9Ωのフルレンジユニットを9個直列接続にして、8・1Ωとしていることをはじめ、エンクロージュアの基本構造はシリーズIVと変わらないが、細部においては、合成樹脂系の成形品で作られている内部構造材と木製のジャケット的な外皮でエンクロージュアとしシリーズIVと比べ、内部構造材そのものだけでエンクロージュアを形成してこの部分の気密性を高めてあること、ユニット関係では、振動系の外観上の変化は少ないが、高域の歪の低減をはじめ、耐入力、耐破損性を高めるとともに、コーン裏側に施したダンプ材料のコーティングなど、細部を含めればシステムとして100箇所あまりの改良が加えてあるというのが、ドクター・ボーズのコメントであるとのことだ。
 なお、専用イコライザーは、初期の901SSでは、ブラックパネルに2個のレベルメーターが付いたタイプであったが、これが新タイプに発展したブラック仕上げが901SS用であるが、この901SS−W用には、シルバー仕上げのイコライザーが専用として用意されている。
 301MM−IIは、発売以来すでに4年が経過し、仕様を変更して、今春シリーズ IIに発展している。これにともない301MMのカラーバージョン301MM−WもシリーズIIに変わった。
 主な変更点は、まず、ユニット構成が従来と同様に2ウェイ方式であるが、トゥイーターが2個になり、エンクロージュア内部で一定の角度で前後に向けて固定され、旧型のフォーカシングコントロールがなくなったことが最大の特徴である。その他、前面と側面のウレタン製グリルが布製になり、BOSEのエンブレムが固定式となった。また、左右グリル間の木製の板が成形品となったことも印象が異なる。
 エンクロージュアの外形寸法は旧型と同様だが、板厚が数mmほど厚くなったためPR3以外の従来の取付金具は使用できず、新タイプの金具が用意されている。
 ユニット関係は、振動系コーンの色調がグレイ系から新製品共通のブルー系のコーン材料に変更され、裏側にダンピング材料がコーティングされている手法は901SS−Wと共通なところだ。
 901シリーズの音は、小口径フルレンジユニットを前面に1個、背面に8個分散させ、実際のコンサートホールでの直接音と間接音の比率をリスニングルームに再現するというユニークな構想に基づいた特徴に加えて、小口径フルレンジユニットの音に不連続な面がなく、緻密で、いきいきとしたサウンドの特徴を活かした点にある。低域と高域の不足を電気的なイコライザーで補い、その技術的内容がダイレクトに音として感じられる、プレゼンスとサウンドの魅力がメリットである。
 901シリーズIVが、穏やかなまとまりを示しながらも、緻密で内容の濃い音を聴かせるのに比べ、901SSは、同じようにダイレクト/インダイレクトの使いわけをしても、適度に広帯域型で、分解能が向上したクリアーで現代的なクールな音と雰囲気が、コントラストを作っていた。今回の901SS−Wは、901SS系をベースに分解能が一段と向上した印象である。細やかさ、しなやかさが、穏やかで暖かな雰囲気のなかにまとまって、熟成されているのが魅力であろう。
 この性質は、直接音を大きくして使う、サルーンスぺクトラムの場合でも、901SSとの性質の違いとなってあらわれるが、エンクロージュア左右に一対として付属しているフィンが、901SS−Wでは、木製ということもあって、バイフェイシャルな使いかたで、音とプレゼンスが大きく変化する。一例として、壁面から数十cm離して設置し、901シリーズIVと同様にフィンを閉じた状態と、外側のフィンを壁と平行とし、内側のフィンを各種の角度で使ってみると、音のバランスをはじめ、音像定位、音場感が相当に変化をするのが聴き取れるだろう。つまり旧301MMのフォーカシングコントロール的に考えればこの2枚のフィンは、サウンドキャラクターとプレゼンスのコントローラーとして使いたいユニークな機能である。この901SS−Wの小型高密度タイプでありながらクォリティが高く、音場感的プレゼンスに富むところは、他に類例のない魅力である。
 なお、301MM−IIは、旧型よりキメ細かく、しなやかとなり聴感上でのSN比が良いのが特徴だ。2個の固定した高域を活かすためには、使用にあたり内側と外側に置換えて調整するのがポイントだ。

BOSE 901SS, 901IV, 802, 802W, 601II, 402, 402W, 301MM, 101MM

BOSEのスピーカーシステム901SS、901IV、802、802W、601II、402、402W、301MM、101MMの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

BOSE

BOSE 301 Music Monitor

黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 このスピーカーはいい。価格を考えたら大変にお買得である。
 むろん、スケール感がほしいとか、腰のすわった低音をききたいとか、あれこれむずかしい注文をだしても、このランクのスピーカーに対応できるはずもないが、きかせるべき音を一応それらしく、あかるい音で、すっきりきかせる。小冠者、なかなかどうしてようやるわい──といった感じである。きいていて、いかにもさわやかで、気分がいい。
 このボーズ301MUSIC MONITORのきかせる音は、ひとことでいえば軽量級サウンドである。それにしても、吹けばとぶような音ではない。しんにしっかりしたところがあるので、音楽の骨組みをあいまいにしない。そこがこのスピーカーのいいところである。なかなかどうしてようやるい──と思えるのは、そういういいところがあるからである。
 ハーブ・アルバートのレコードのB面冒頭には、しゃれたアレンジによる「ベサメ・ムーチョ」がおさめられているが、それなどをきいても、いくぶん小ぶりな表現ながら、細部を鮮明に示して、あざやかである。このアルバートによる「ベサメ・ムーチョ」は、深いひびきのきざむリズムにのってはこばれるが、あたりまえのことながら、本当に深いひびきは、このスピーカーではきけない。それをきこうとしたら、やはりどうしても大型のフロアースピーカーのお世話にならなければならない。しかし、このボースの301MUSIC MONITORは、その深いひびきの感じを、一応、それらしく示す。
 音場的なひろがりの面でも、このスピーカーは、あなどりがたい。ハーブ・アルバートのレコードが、せまくるしくあつくるしくきこえたら、きいていてやりきれなくなるが、その点で、このスピーカーの示す音場とひびきの質は、このましい。あくまでもさわやかであり、すっきりしている。このスピーカーもまた、ウェストコースト・サウンドの特徴をそなえているといっていいように思う。
 マーティ・バリンのレコードもよかった。うたわれた言葉はシャープにたちあがる。ただ、難をいえばリズムをきざむソリッドな音に力が不足している。そういうこのスピーカーのいくぶんよりよわいところが、ランディ・マイズナーのレコードではより強く感じられるとしても、決して湿っぽくなったり、ぐずついたりしないひびきのこのましさがあるので、致命的な弱点とはいいきれない。
 アルバートのレコードにしても、バリンのレコードにしても、マイズナーのレコードにしても、大滝詠一のレコードにしても、音がべとついたり、ぼてっとしたりしたら、それぞれのレコードできける音楽の本質的な部分がそこなわれ、その音楽の最大のチャーミング・ポイントをたのしめないことになる。すくなくともそういうことは、このボーズの301MUSIC MONITORではない。
 もし環境の面で許されるなら、パワーを少し入れてやると、ひびきの力感に対しての反応もよりこのましくなるであろうし、このフレッシュな音をきかせるスピーカーは、魅力充分といえそうである。

BOSE 301 Music Monitor

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 小口径フルレンジ型ユニットを複数個使ってシステムアップするボーズの特殊技術の成果は、小型ポータブルPA用スピーカー802の凄くパワフルなサウンドに代表されるが、301はミュージックモニターと名付けられたように小型モニターを目標として開発された製品。聴取位置正確な音像定位をコントロールするフォーカシング機構はユニークで効果は抜群だ。ガッツがあり、パワーハンドリングの優れた音は、さすがにモニター。

BOSE 301MM

BOSEのスピーカーシステム301MMの広告
(オーディオアクセサリー 21号掲載)

BOSE301

BOSE 301

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・ブックシェルフ型スピーカー特選9機種」より

 ボーズ301というスピーカーは、アメリカのマサチューセッツ・ボストン郊外にあるボーズ・コーポレーションのつくっている普及型スピーカーてある。ボーズ・コーポレーションというのはMIT、つまり、マサチューセッツ・インスティテュートの教授であるドクター・ボーズの創立したメーカーで、独特な録音再生の理論からつくり出されたユニークなスピーカーを専門に作っている。その理論の要点は、「音というものは絶対にマルチ・フェイズの間接音成分が重要である」ということである901システムでは、名前が示すように9個のユニットがついているが、そのうち前を向いて直接聴く人間に音を放射するスピーカーは1個だけだ。あとのユニットは全部後向きについて部屋の中で間接音をつくり出すというシステムである。この301は、ボーズ社がその理論を完璧に再現するということではなくて、多少そうした要素を取り入れて普及的なスピーカーをつくったというものだ。
 これは普通の直接放射型のスピーカーで、前面にユニットがつけられた2ウェイのスピーカーで、ユニークなポイントは、トゥイーターの前にリフラククーがつき、それが外から角度を変えることができるということだ。これによって室内での高域のラジエ−ションをコントロールすることができるというのが、このスピーカーの特徴でもある。比較的コンパクトなサイズの2ウェイ・スピーカーであり、値段的にも気楽に使える外国製の小型ブックシェルフ・スピーカー、あるいはコンパクト・スピーカーの部類に入ると思う。
 音は非常に魅力のあるきれいでさわやかなシステムで、この辺の音のよさはつくったメーカーの意識外のところでわれわれに何かサムシングを感じさせると言わざるを得ない。とにかく、トゥイーターの質がとてもよく、何の変哲もないコーン型のトゥイーターであるが、極めて歪感の少ない、繊細なさわやかないい高音を再生してくれる。いろいろなプログラム・ソースに対して、よくバランスした再生音と、質の高い美しさを感じさせる、これは一種の美音と表現してもいいかもしれない。特に、弦楽器の高音、あるいは、シンバルの高音など非常に繊細にしなやかに鳴ってくれる。低音も小型ながら非常に豊かで、押しつけがましくない魅力のあるものだ。
 このスピーカーを鳴らすアンプリファイヤーとしては、やはり中級クラスのプリメインアンプということになるだろう。その辺のアンプは国産にたくきんいい製品がひしめいている。その中から、デンオンの新しいDC化した中級アンプPMA830などはかなりいい表情で音楽を再現するアンプだと思う。プレイヤーは、こういうさりげなく使うスピーカーを鳴らすということから、フルオート・プレイヤーをおすすめしたいと思う。その中でも何枚かのレコードをマルチ・プレイ操作可能のオート・スタート、オート・ストップ、リピート・プレイ、マルチ・プレイ操作可能なテクニクスSL1950。これは値段的にも5万円を切っているプレイヤーで、トータル価格もそう高くならないと思う。このあたりのシステムで気軽に、生活の中に常に音楽が鳴っているという使い方で構成したら、この301が生きてくるのてはないかと思う。

BOSE 301

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

美しい質感がキメの細かい音楽の心のヒダをよく伝える。