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マイクロメガ CDf1 Premium

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 フランス・マイクロメガ社製CDプレーヤー/CDF1プレミアムが本邦でも発売されることになった。
 同社はヨーロッパ圏で唯一のCDプレーヤー専業メーカーであり、CDF1プレミアムはその代表的な位置を占める製品である。
 写真からもわかるようにトップローディングタイプであるため、分厚く丁寧な作りのアクリル製ダストカバー(という表現がしたくなるような)をまず開けるところから〝儀式〟は始まる。
 ディスクを乗せ、さらに専用スタビライザーを装着し、ゆっくりとカバーを閉めるという一連の動作が必要なのだ。
 コンパクトですっきりとしたデザインから、軽くて可愛らしい音を想像していたのだが、実際に音が鳴り始めるや、そうしたあらぬ先入観は直ちに吹き飛んだ。
 さすがフランス製というだけあって、響きには、絵画的な色彩感や艶がのり、つぼを押えた音の隈取りの明快さにまず驚かされた。弾力のある暖かい響きには、味わいの豊かな個性的な面もあり、聴きごたえ十分だ。さらに適度な重量感もあり、ほどよく広がる音場にはどこか大人っぽい雰囲気があった。
 決して個性だけで聴かせる製品ではなく、現代的な情報処理能力も十分にもっていて、すっきりしたデザインに精度感が音の面からも感じることができた。したがって、現代的な録音の透明感や繊細感も十分に表現可能だ。
 注目のドライブメカは、すでに高い信頼性を獲得しているフィリップス製アルミダイキャストベースのCDM1IIにCDM4ピックアップを搭載している。
 フローティングには、同社のオリジナル機構が採用され、徹底した防振対策がとられているという。
 ディスクスタビライザーは、内部損失の大きいケブラー繊維とカーボンファイバー、そして直径がおよそ30mm、重さ約120gの真鍮製ウェイトから構成されている。
 D/Aコンバーターには、フィリップス製クラウンマーク付ヴァージョンS1仕様を採用し、アナログ回路はディスクリート構成クラスAオペレーションアンプとし、左右独立の大型トロイダルトランスを定電圧回路に採用している。
 またアナログアンプ部は、電源プラグをコンセントに差し込むと常に通電され、フロントパネルの電源スイッチのオン/オフによらず、ヒートアップが準備された状態で聴くことができるようになっており、短時間のウォームアップで所期の性能が得られるよさばかりでなく、動作の安定性も高めているという。

オンキョー Integra A-701XG

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ビクター SX-700との相性
SX700のSP端子は全域用にケーブルを接続する。柔らかく少し粘った印象のある低域と滑らかで線が細く、しなやかな独特の高域がバランスした、コントラストと色彩感を抑え気味とした個性の強い音だ。T&Pはライヴハウス的なプレゼンで充分に楽しめるが、クラシック系は少し軟調なまとまりで突っ込み不足だ。

クレル KMA160

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 クレルは最近製品の種類が多いためか、一時(特に創業時から数年)のように、クレルのアンプの音という明確なイメージが感じられなくなった。つまり、いろいろな音がするようになった。全くアイデンティティがないとはいわないが、このアンプの音などは初期のクレルの音とは大きく異なり、かなり力強く華麗である。鋭いアタックが鮮やかで、ピアノの音が硬質になるし、中域にやや独特の響きがのって、効果的な場合と逆効果の場合とがある。繊細緻密で、べたつかず、端正で深々とした音が味わえた昔日のクレルはどこへ行ったのだろうか? ベートーヴェンの「エロイカ」のトゥッティも十分透明とはいえない。しかし、有機的で力のある充実した音で、強い表現力を聴かせる。サン=サーンスの「オラトリオ」では、歌手の発音の小音が強調され気味であり、声の出方に圧迫感がある。もっと軽く出てほしいところ。ヘレン・メリルは力強く濃厚でベースも明解。

ルボックス B150

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ビクター SX-700との相性
音楽をマクロ的に外側から掴み、聴かせどころを巧みに聴かせる楽しいアンプだ。「レクイエム」での聴感上Dレンジたっぷりに、音のくまどりをほどよくクッキリと聴かせる巧みなまとめ方。Pトリオでの実体感があり、ほどよく弾む躍動感のある音は充分に楽しく魅力的である。音楽を自分の音として聴かせるアンプの典型的な例だ。

ゴールドムンド Mimesis 9

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

「ドゥムキー」のヴァイオリンもチェロも引き締まった音で毅然とした端正な演奏に聴こえる。ピアノも自然で、どちらかというと控えめな鳴り方。緻密な分解能をもち、きちんとした音像の再現だが、決して物理的な裸の音ではなく、美しさを感じさせるアンプだ。「エロイカ」も、オーケストラの複雑な音色の綾を明解に、そしてよくまとまったバランスで聴かせる。よく調和して響くがウェットに濁ったりはしない。あくまで明晰な解像力を失わない。音質はやや硬質だし、線画調の細かさのある音だが、決して冷たくはない。緻密な音、精緻な音といった魅力が特徴で、ウィーン・フィルのしなやかな甘美さにはもうひとつ柔軟性が足りないようだ。ジャズには品位の高い音で、シンバルのこまやかな音色の変化をよく再現するし、ベースも締まっていて明るい。馬力のある音ではないが、決して弱々しい感じはなく、ジャズの強烈な直接音も極端な低能率SPでなければ大丈夫。

パナソニック SU-MA10

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

セレッション SL6Siとの相性
適度に滑らかさのある線の細い音を聴かせるアンプだ。帯域バランスはナチュラルで、一種の鮮明さが聴かれるが、中域のエネルギー感が不足気味で、コントラストが薄くなり、聴きやすいが音の表情が硬くなる。音場感はスピーカーの奥に広がり、音像は小さいがやや引っ込み気味である。全体にもう少し力強さがほしい音だ。

ルボックス B150

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

セレッション SL6Siとの相性
プログラムソースとの適応性の幅が広く、それなりに納得のできるバランスで聴かせる音だ。いわば、良い意味でのカセットデッキの音のように、巧みに、そして不満感を抱かせずに音楽を聴かせる特徴は、表現は悪いが、巧みにウソをつく音である。音の細部を聴く気にさせない特徴は、良くも悪くも国内製品にはない味である。

パイオニア PD-5000

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 響きの豊かさがあり、基本的なクォリティが高く、各プログラムソースの特徴を引き出しながら、安定感のある立派な音が聴ける製品だ。ロッシーニでは、自然な拡がりのあるホールトーンと安定した音を聴かせ、音像の立ち方もやや立体的なイメージがある。中域の一部には少し硬質な面があり、楽器の分離がよくリアリティのある音で描く効果があり、柔らかく質感のよい低域と巧みなバランスを保つ。Pトリオは響きが豊かで、ディティールをサラッと聴かせる素直な再現能力と実体感のある音像定位が好ましいが、再生システムのキャラクターか、やや硬調な描写となりやすく、アタック音が少しなまり気味だ。ブルックナーも共通で金管が硬く聴かれ、トゥッティの分離がいま一歩であるが、安定した質感のよい音と自然なプレゼンスは相当によい。低域の伸び、ゆとりに少し不満が残るが、価格からは無理な注文だろう。ジャズは、低域腰高で軟調傾向だが、よくまとまる。

チェロ Amati MKII

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 マーク・レヴィンソン氏の主宰する米国チェロ社より、スピーカーシステム/アマティが改良され、タイプIIとなり再登場した。
 写真のごとく、スピーカー本体は、かつてのAR社LSTをベースにしているとはいえ、ユニットや内部配線、ネットワークにはまったく独自の設計が施され、また、エンクロージュア自体の材質も異なるようだ。
 氏はホーンタイプスピーカーが必然的にもつホーンの固有音をナーヴァスまでに嫌ってる様子で、あくまでも柔らかく、かつしなやかな響きを追求しているようだ。それが、このアマティIIからも実によくうかがえる。
 30cmのウーファーをベースに、ソフトドーム型スコーカー4個、特殊なペーパーを成形した2cmという比較的小口径のドーム型トゥイーター4個を搭載している。
 このシステムは専用スタンドの使用で片チャンネルあたり2本のスピーカーをスタックして使用することがオリジナルだが、ユーザの希望により片チャンネル1本ずつの使用も可能だということである。
 メーカー純正の黒ミカゲ石をベースにした超重量級のスタンドは、標準的なリスニングルームではやや背が高く、また強固な床を要求するため、輸入元では、特注の木製スタンドを使用状況に合せ供給する用意があるとのことだ。
 なお、試聴はオリジナルの状態のみで行っている。
 アマティIIはオーソドックスな構成をとり、伝統的なスピーカー造りのセオリーを踏襲してゆったりとした落ち着いた響きを基調にしている。
 ダイナミックな音楽にも想像以上に追従する現代的な側面も備えているが、やはり最先端指向の製品の持つ情報処理能力、克明なディテールの再現性という点では一歩を譲るようだ。というより、初めから狙っている線が明らかに違うものだということが、先端指向のスピーカーとの比較でより明らかになる。
 おおらかで、刺激的な音が出にくく、弦楽器のトロッとした自然なホールトーンは、長時間音楽を穏やかな気持ちで聴く気分にさせてくれる。ゆったりとしたソファーに身を沈め、グラス片手に音楽に接する、そんな聴き方がよりふさわしい製品という印象である。
 ジャズ系のソースでも、サックスの咆哮や打楽器のパルシヴな音の立上りはマイルドで、全体的な響きの溶け合う雰囲気的な表現が主体になろう。ただ、オーディオパレットの併用では、かなりダイレクトでスッキリした表現に追い込むことも可能であった。
 条件が許されるなら、オールチェロシステムのメインスピーカーとして楽しむべき製品といえよう。

メリオワ ControlCenter, Poweramp.

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 カナダのモントリオールに本拠をかまえるミュージアテックス・オーディオ社より、〝マイトナー〟シリーズの姉妹機に相当する〝メリオア〟シリーズが登場した。
 コンパクトで美しい仕上げのウッドケースに納められ、シンプルなブラックフェイスのデザイン、その垢抜けして飄々としたところが好みの分かれるところでもあったマイトナーだが、部屋の空気に自然に溶け込む存在感の軽妙さは、またカナダ版クォードともいえそうな雰囲気があった。
 今回発表されたメリオワ/コントロールセンターは、リモートコントロールユニットですべての機能が操作でき、しかも8系統ある入力をユーザのニーズに応じてメモリー可能な機能を有している点が目新しい。しかも、各入力端子ごとに、ボリュウム、バランスのレベルを個別に設定しメモリーできるという画期的なものだ。
 フォノイコライザーはなく、アナログディスクの再生にさいしては、なんらかのイコライザーアンプが必要であるが、近日中には同シリーズのフォノアンプが発売される模様だ。
 全体の仕上げはマイトナー・シリーズに一歩譲るとはいえ、このシンプルなデザインの良さには変りはない。
 試聴は、同時発売のパワーアンプとの組合せで行なったが、一聴して、相当にすっきりとした響きであり、生真面目さを感じさせるやや寒色的な響きで、音楽に真面目に向かい合うといった気分にさせてくれる響きだ。
 こうしたコンセプトの製品にはリラックスした、テンションのやや緩めの響きが多い中にあって、スケールこそやや小ぶりだがこれは辛口で本格派の音といえる。
 そういった点でも、これはかなりクォードを意識した作りではないかという気がしてくる。
 小編成の室内楽曲などでそのよさが発揮され、指揮者の意図や緑音の意図などをぼかさないのである。たとえば、新しい解釈による最近の古楽器オーケストラがもつ響きの端整さや潔癖さ、清潔感といったものに、しっかりとした音の骨格やオーケストラの構成要素をはっきりと描き出すのだ。プリアンプ、パワーアンプとも回路の詳細は不明だが、オーソドックスに真面目に作られた機械という印象が強い。
 ただ、おしむらくは、リモコンユニットのデザインと作りだ。システム全体の作りにそぐわない玩具っぽさがあって残念だ。
 リモコンで操作することが前提である以上、クォードやB&Oのように、その機能、あるいは手に持った時の質感、重さ、操作性に、えもいわれぬ馴染みのよさをもっている製品が既にあり、ぜひともみならってもらいたいものだと感じた。

FMアコースティックス FM610

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 美しい音だし明るい音だが、それが単純な味わいではないところにこのアンプ独特の特徴があると思う。魅力的な雰囲気なのだ。このアンプを聴くと、アンプの音への美意識が、こちらの心に目覚めてくるような……何かをもっている「ドゥムキー」の演奏が他のアンプでは味わえない表情を聴かせるのである。艶っぽい弦、ピアノの音の弾力性のある独特の質感、音楽の流れや歌い方が実に滑らかで、やさしさを感じさせる。ベートーヴェンの「エロイカ」でもウィーン・フィルらしい、しなやかな艶っぽい弦楽器群の音色の魅力が、かなり本物と同質の色合いや質感で再生される。まろやかで瑞々しい木管、まばゆいばかりに輝かしく、かつ柔軟繊細な美しさを感じさせる金管の響きなど、多彩な音色の変化も敏感に鳴らし分ける能力を持つ。「オラトリオ」の歌手のなんと自然でリアルな声であることか……。暖かい肉声感がよく出るのだ。ヘレン・メリルはしっとりと美化。

スレッショルド SA/4e

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 透明でキメの細かいサウンドは、いかにもスレッショルドのアンプらしいが、これには暖かさも加わっている。音の質感が大変魅力で、妙な表現で恐縮だが、コリコリとした独特とした歯ざわり、肌ざわりのようなものが感じられる音だ。「ドゥムキー」のピアノは快感のあるタッチで、美しく、本来優れた美音の持ち主であるピアニスト、メナヘム・プレスラーの特質がよく生かされる。ヴァイオリンの音も艶っぽくはないが、芯のしっかりした輝かしい美音だし、チェロも豊潤。ベートーヴェンの「エロイカ」ではヴァイオリン群のffにやや鋭い響きがのるが、度を超してはいない。ウィーン・フィルの艶のある音色は、やや硬質な輝きとして再生される傾向だ。しかし明るく鮮度の高い音は安定していて、トゥッティにも明晰な透明感を失わない。サン=サーンス「オラトリオ」も極上とまではいわないが、第一級のアンプであることが確認できる鳴りっぷり。ヘレン・メリルもよかった。

サンスイ AU-X111MOS Vintage

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
間接音成分が豊かで、柔らかく雰囲気の良い聴きやすさが特徴のアンプである。低域は軟調で一種独特のf特的なウネリ感があり、薄く滑らかな中域とスムーズな高域がバランスを保つが、音の緻密さや密度感は不足した音で、音楽の激しさ、力強さの表現は苦手なタイプの音だ。バスレフ方よりも密閉型にマッチしそうな音である。

テクニクス SU-C5000, SE-A5000

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 テクニクスから新時代のセパレートアンプが登場した。敢えて、新時代と書いたのは、そのプリアンプ/SU-C5000のファンクションが完全に現在のマルチプルソースインプットに対応するものであり、かつその表示のAV/TV、デジタルプロセッサー、VCR、DATなどから受ける印象によるものだ。フォノイコライザーもきちっと備えている万能コントロールアンプであるし、最近特に厳しくなったテクニクス・ブランド使用の製品であるだけに、これには松下電器の意気込みが感じられる。とはいうものの、さすがに大メーカーで、価格設定は比較的低く、プリアンプが20万円パワーアンプが30万円という標準価格になっている。
 ちなみに、松下電器のオーディオ製品のブランドである〝テクニクス〟は、このところ使用基準を非常に厳しくした。もともと、松下がオーディオコンポーネントに本格的に乗り出した時、ナショナル・ブランドでは電球や電気釜、洗濯機などのイメージが強く、オーディオ機器のような趣味の強い商品のイメージに適さないと言う理由から〝テクニクス〟というブランドが創られたのだが、これがポピュラーになりすぎて、ラジカセからカーオーディオ、小型ラジオに至るまで〝テクニクス〟が使われるようになっていた。これを濫用と認めたのであろう。昨年から、ある基準を設け(具体的には不明だが)テクニクス・ブランドを大切に、真に趣味性と高い技術の盛り込まれた製品にだけ使用するということになったのだそうである。広くは、従来から主に海外で使われているブランド〝パナソニック〟を使うことにしたようである。
 とにかく、私の知る限り、去年の新製品では、最高級CDプレーヤーに〝テクニクス〟が使われただけ。今年になって、このプリアンプとパワーアンプに〝テクニクス〟ブランドを発見したわけだが、他のニューフェイスはすべて〝パナソニック〟である。このことからしても、このセパレートアンプのメーカーとしての格付けが明確である。従来のプリアンプ/SU-A200とパワーアンプ/SE-A100の後継機として開発された製品だから、ハイクォリティ・オーディオコンポーネントであることに違いはないが、いかにもAVカラーが強いプリアンプのコンセプトに、ある種の〝こだわり〟で拒否反応のようなものも感じなくはない。つまり〝テクニクス〟がオーディオに限らず、あるレベル以上のものならばAVでもVでも使われるブランドなのだということを告げられたような感じがしたのである。認識不足であったのは私で、勝手に〝テクニクス〟は純粋にオーディオコンポーネントのためのブランドだと思い込んでいたのである。メーカーにとっては、迷惑な誤解ということになるだろうが……。
 SU-C5000は、すでに述べたように豊富な入出力にクラスAA方式を採用し、負荷インピーダンスの変動に安定したAクラス動作の電圧増幅回路が特徴である。電源には、レギュレーションのよいアクティヴサーボ電源の採用により、プリアンプとしての基本性能を確保している。
 SE-A5000は、クラスAAの電圧コントロールと、電流ドライブアンプを左右チャンネル独立とする計4台構成により純度高めている。電源には、電圧用は1個、電流用に2個の独立した3電源方式を備え、トランスには無酸素銅線による完全整列巻線法を採用し、各パーツにも最新の高品位パーツを使い、内部配線も全面的にOCC線材を使っている。パワーアンプの音に大きな影響を与える機械構造についても、電磁的にも振動的にも十分な配慮が見られるものである。現代アンプとしての最先端のテクノロジーと、テクニクスらしい緻密な技術の洗練が随所に見られるアンプで、仕上がりも美しい。
 両者の組合せで試聴した音は、実に精緻なもので、モーツァルトの「ポストホルン・セレナーデ」の第3楽章の弦合奏では、あたかも弦の数が明瞭に見えるような解像力に驚いた。やや響きが明るすぎるのと、軽い雰囲気があるが、透明感や繊細感は抜群である。
 パワーアンプを他のものに替えて試聴してみた結果、この音の性格にはプリアンプの方が支配的であることが感じられた。アーメリングの歌は少々若くなりすぎるし、胸からの力のある発声が物足りないが、きれいなことでは無類といってよい。ボザールの「ドゥムキー・トリオ」も同じように透明で限りなく美しい。あまりにきれいすぎて、現実感に欠けるほどである。中高域に独特の響きがのるためのように思えるが、この音には外国製アンプからは絶対に聴くことのない美と質感を感じる。油彩に対する水彩、動物性蛋白質に対する植物性蛋白質のような対比といったらよいだろうか……。淡くしかし華やいだ風情、あくまでこまやかなマチエール。現代技術の粋にも、こんな個性が宿る。興味深いことだ。

ラックスマン L-570

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
L540の雰囲気よく聴かせる音とは対照的に、小さく凝縮した音を特徴とするアンプだ。低域の質感は軟調傾向であり、予想よりもドライブ感が不足した、きれいでオーディオ的にまとまった音である。音場感は標準より少し狭くまとまり、間接音は抑え気味となる。それぞれの個性が活かされない、相性の悪さが音に出た例だ。

サンスイ AU-X111MOS Vintage

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
柔らかく雰囲気のよい音と、タンノイとしては広帯域型で、中域が少し薄い帯域バランスを聴かせるが、全体の印象としては少し古典的なタイプに聴きとれるところが面白い。音場感は平均的であり、やや遠くに音源のある音像の立ち方だ。プログラムソースは、個性を抑えスムーズに聴かせる傾向があり、中域の独自の硬さが原因だろう。

アキュフェーズ E-405

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
適度にコントラストが付き、プログラムソースの音を正確に再現しようとする真面目なタイプの音である。音のクォリティは高く、音場感は標準的なレベルで間接音成分を抑え気味とした、明快なわかりやすいプレゼンスである。プログラムソースの特徴を整理して自分の音として聴かせるタイプであり、ややリファレンス的な性格の音だ。

ラックスマン L-570

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
スケールは小さく、小柄な音にまとまるが、楽器の編成のあらましはわかる程度の情報量はあり、比較的自然な音場感と奥に引っ込んで定位する小さな音像が特徴。プログラムソースは、小編成の曲で、小さく凝縮してまとまる音の特徴が活かされるが、響きは抑え気味で、音楽に必要な要素を残して整理したイメージの音になる。

マランツ PM-95

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
安定感があり、平均的な要求では、立ち上がりの良い明快で適度にドライブ感のある音と、すっきりとしたプレゼンスが楽しめるスタンダードな音である。A級動作ではローレベルのナチュラルさ、生き生きとした表情の豊かさ、ベール感のないナチュラルなプレゼンスが加わり、これこそ異次元の世界の音というにふさわしい。

アキュフェーズ E-405

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
低域は柔らかく、高域が細身で、ほどよいシャープに特徴がある音だ。表情はしなやかさもあり、ローレベルのこまやかさと、中高域のキャラクターが、このアンプのメリットだろう。表情はおとなしく反応も穏やかであるが、低域はもう少し積極さがほしい。細部はよく出るが、全体のまとまりでは、いまひとつ説得力が必要だろう。

サンスイ AU-α907L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
演奏会場の豊かなホールトーンを充分に聴かせる音場感情報がたっぷりとある音が特徴。スピーカーとアンプの低域のエネルギーバランスが少し崩れ気味で、本来の安定感のある低音にならない面があり、プログラムソースにより、トータルバランスはかなり変る。「レクイエム」は適度にまとまるが「コリオラン」は雰囲気型で密度不足。

アキュフェーズ E-305

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
比較的スムーズで滑らかな音が楽しめそうな組合せであるが、相性は悪いタイプである。軟調で質感が甘い低域と、高域に向かって下降気味の高域は、穏やかなバランスを聴かせるが、反応が鈍く、プログラムソースの特徴を抑え気味にし、単調な音楽として聴かせる傾向が強い。それぞれの低域の個性の違いがポイントだろう。

ソニー CDP-R1a + DAS-R1a

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 温和で、しなやかな充分に磨き込まれた音を持った、雰囲気のよい音を聴かせるプレーヤーである。
 ロッシーニは、しなやかではあるが、スッキリとした音を指向した音を聴かせる。各楽器はひととおり分離するが、各パートの声は少し伸び切らない印象となる。音場感情報量、柔らかく定位する小さな音像など、平均を超すレベルだ。ピアノトリオは、ホールの響きをたっぷりと聴かせるサロン風なまとまりである。中高域には硬質な面があり、音の輪郭を聴かせる効果はあるが、ヴァイオリン、チェロの高域成分は少し硬い。ブルックナーは、一応のレベルの音だが全体にちぐはぐな面があり、再生系との相性の悪さが出た音だ。平衡出力では、コントラストが下がり、フレキシビリティは出るが、三万二してまとまらない。ジャズは集中力が不足し、力がいま一歩の印象でまとまらない。もう少し低域のリズム感が支えれば、一応の水準になる印象が強い。

サンスイ B-2302 Vintage

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

サンスイが久々にパワーアンプの新製品を出した。従来のB2301Lに代る登場である。
 このB2302は外観こそ今までのアンプに似ているのだが、中味は完全に新製品といってよい新しいアンプであって、大筋での基本を踏襲しながら、細部をつめたというだけでは説明しきれないものだ。大筋での基本というのは、サンスイがアンプ技術の基本に据えているバランス伝送、バランス増幅の回路コンセプトであり、機械構造へのこだわりである。回路と機構という二つの条件は、パワーアンプの本質的な能力を左右する基本であって、人間の体でいえば体質と骨格のようなものだ。今度のアンプは、この体質を改善し骨格をより強固なものにしたこともさることながら、いわば頭脳を鍛え、感性を洗練させるに似た改良を行なっているのである。
 まず、その第一は、パワー素子に新しくサンスイのカスタムメイドによるLAPT23/200WPcトランジスターを採用したことだ。これはすでに同社のプリメインアンプに先行採用されて、その成果が認められるもので、従来のトランジスターより格段と高い遮断周波数特性をもち、非磁性化が施された高リニアな素子である。パワー素子が変ったことだけでも、パワーアンプとしては別物といってよいと思うが、さらに回路構成の各デバイスである抵抗やコンデンサー、線材に至るまで全面的なパーツ変更が行なわれているのである。こうしたことが即、音質改善に連なるならば、アンプの新製品造りは楽なものである。よりよい物理特性をもったパーツが現われたら、その都度差換えていけばよいからだ。
 しかし、現実はそれほど容易ではない。部分変更は危険は少ないが、成果も小さい。新製品としてドラスティックな改善と、その新しい存在の必然性を生むには、より大きな全面変更を誰もが期待するだろう。アンプの性能と音質が、現在の水準のようにいいものになると、開発担当者は大変である。全面的に0から造れば、それなりに違った製品になるのは必至だが、そこにメーカーの一環したアイデンティティをもたせるのはさらに難しい。体質と骨格も維持して、知性と感性をブラッシュアップしてリファインするという、このサンスイの姿勢こそ一番効率もよく、ユーザーのためにもなり、メーカーの姿勢も好感と信頼感をもって迎えられるというわけだ。
 しかし、私としてはあの箱型の筐体とメーター廻りのデザインには若干飽きがきていて、もう少し見た目にも新鮮な魅力を盛り込んで欲しかった。オレンジの出力メーターはスイッチオフできるし、よく見て触ってみると、仕上げ、質感にも大きなクォリティアップが感じられる。各所に手の込んだ防振構造と高剛性化が施されているし、プラグやターミナル類には品位の高い製品が使われている。このアンプのための特製品だけではなく、海外製のパーツも使われているようだ。
 こうして登場してきたB2302の音は、明らかに従来のB2301Lを凌駕していることはもちろん、多くのパワーアンプの中でも存在価値の高い製品に仕上っている。サンスイのアンプで、私がもう一つ気になっていたのは、音がウェットに過ぎることだった。よさでもあったといえるのだが、どちらかというと、繊細さや、明るく、さらっとした清々しさに欠けていた。そういう音楽にも、脂肪ののった艶やかさと重厚な雰囲気で包んで鳴らす傾向をもっていたのである。冷たかったり、乾いた響きになったりするよりはずっとよいのだが、音楽には、ありとあらゆる色合いや質感の音があるわけだから、それぞれ鳴らし分けることが望ましい。すべての音響機器はなんらかの個性をもつので、程度問題なのだが、スピーカーほどではないにしても、アンプにも、支配的な音色や質感がつきまとう。この点、このB2302は一次元上がって音色・質感の鳴らし分けに鋭敏になった。一言にしていえば、より素直になったということだろう。細かな音色もよく鳴らし分けるので、音楽の繊細さが生きて、一段と緻密な再生音になった。
 8アームで480Wのダイナミックパワーを持っている大出力アンプとして、この緻密な音の質感の再現能力は見事である。そして、その力感と音の安定感は旧製品譲りのもので、優れた低域の能力に支えられたバランスのよさは、オーケストラのトゥッティの厚く堂々とした響きに十分発揮される。例えば試聴に使ったラヴェルの「紡ぎ車の踊り」などの多彩な音色の変化と充実した響きには、従来のサンスイのアンプが、ドイツ系の音楽の重厚さに聴かせたウェットさを超えた繊細感がある。また、ボザールの「ドゥムキー・トリオ」の透明でソリッドなピアノと粘っこくならないヴァイオリン。かといって決してドライではなく、演奏姿勢が毅然とした雰囲気を感じさせるような端正ささえ聴取可能になったことは大きな改善だ。優れたパワーアンプである。

マイクロ CD-M2DC + DC-M2

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 穏やかで、一種独特の重さ、暗さがある渋い音を持つ個性的な音である。CDとしては再生する情報量は多く、演奏会場の空気の動きや椅子などのキシミ、楽器のノイズなどを聴かせる。試聴位置は中央の標準位置。ロッシーニは、基本的にはウォームトーン系のまとまりだが、角がとれたクッキリとした音はアナログディスク的なイメージがある。各パートの声は少し伸びが抑えられ、音像はフワッと大きく定位する。ピアノトリオは、低域が重く粘りがあり反応は遅いが、中低域以上はほどよく立上りの良い素直な音であるため、低域のコントロールをすれば個性的な良い音になるだろう。ブルックナーは、音楽的な意味でのブルックナーらしさがあるが、オーディオ的には見通しが悪く、晴々としない音である。平衡接続ではプレゼンスは良くなるが、ダイナミックレンジは抑えられ、表情も鈍くなる。ジャズは、狭帯域型バランスと閉鎖空間的プレゼンスが特徴だが、安定度、力感が欲しい。