チェロ Amati MKII

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 マーク・レヴィンソン氏の主宰する米国チェロ社より、スピーカーシステム/アマティが改良され、タイプIIとなり再登場した。
 写真のごとく、スピーカー本体は、かつてのAR社LSTをベースにしているとはいえ、ユニットや内部配線、ネットワークにはまったく独自の設計が施され、また、エンクロージュア自体の材質も異なるようだ。
 氏はホーンタイプスピーカーが必然的にもつホーンの固有音をナーヴァスまでに嫌ってる様子で、あくまでも柔らかく、かつしなやかな響きを追求しているようだ。それが、このアマティIIからも実によくうかがえる。
 30cmのウーファーをベースに、ソフトドーム型スコーカー4個、特殊なペーパーを成形した2cmという比較的小口径のドーム型トゥイーター4個を搭載している。
 このシステムは専用スタンドの使用で片チャンネルあたり2本のスピーカーをスタックして使用することがオリジナルだが、ユーザの希望により片チャンネル1本ずつの使用も可能だということである。
 メーカー純正の黒ミカゲ石をベースにした超重量級のスタンドは、標準的なリスニングルームではやや背が高く、また強固な床を要求するため、輸入元では、特注の木製スタンドを使用状況に合せ供給する用意があるとのことだ。
 なお、試聴はオリジナルの状態のみで行っている。
 アマティIIはオーソドックスな構成をとり、伝統的なスピーカー造りのセオリーを踏襲してゆったりとした落ち着いた響きを基調にしている。
 ダイナミックな音楽にも想像以上に追従する現代的な側面も備えているが、やはり最先端指向の製品の持つ情報処理能力、克明なディテールの再現性という点では一歩を譲るようだ。というより、初めから狙っている線が明らかに違うものだということが、先端指向のスピーカーとの比較でより明らかになる。
 おおらかで、刺激的な音が出にくく、弦楽器のトロッとした自然なホールトーンは、長時間音楽を穏やかな気持ちで聴く気分にさせてくれる。ゆったりとしたソファーに身を沈め、グラス片手に音楽に接する、そんな聴き方がよりふさわしい製品という印象である。
 ジャズ系のソースでも、サックスの咆哮や打楽器のパルシヴな音の立上りはマイルドで、全体的な響きの溶け合う雰囲気的な表現が主体になろう。ただ、オーディオパレットの併用では、かなりダイレクトでスッキリした表現に追い込むことも可能であった。
 条件が許されるなら、オールチェロシステムのメインスピーカーとして楽しむべき製品といえよう。

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