Monthly Archives: 12月 1978 - Page 4

テクニクス SP-10MK2

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 一九六九年六月に世界に先駆けてダイレクトドライブ・ターンテーブルの開発を発表したテクニクスは、翌一九七〇年六月にSP10という型名で製品発売に踏みきった。このSP10の発売以来、同社のプレーヤーシステムをはじめ、各社のターンテーブル、プレーヤーシステムは徐々にローコストの製品に至るまでダイレクトドライブ化されてきたのである。その間、SP10は同社のトップモデルとしてばかりではなく、世界的にもその名を知られるほどの高い信婿性とクォリティをもつターンテーブルとして存在していたのである。このように、SP10は今日のターンテーブル、プレーヤーシステム界をほとんどダイレクトドライブ化の方向に導くための原動力となった製品であり、その功績は非常に大きいといわざるを得ない。ここでは、ダイレクトドライブ方式がよいのか、あるいはリムドライブ、ベルトドライブ方式がよいのかという論議はさておくとして、少なくともそれまでになかった駆動方式を採用し、そしてここまでダイレクトドライブ方式一色に塗り変わった背景には、やはりダイレクトドライブ方式ならではの大きなメリットが認められたからだと思う。
 そのパイオニア的製品であるSP10に、最新のクォーツロック制御方式を採り入れ、各部に改良を加えてリファインしたモデルがこのSP10MK2である。ここで採用されたクォーツロックDD方式もまた、現在ではかなりのローコスト・プレーヤーに採用されるまでになっている。この速度制御方式は、必ずしもSP10MK2が最初とはいえないかもしれないが、いずれにしても今日隆盛を極めるクォーツロックDDプレーヤーの先駆となった製品の一つにはちがいない。ともかく、オリジナルモデル、改良モデルともに発売されるごとにこれほど大きな影響力をそのジャンルの製品に与えた製品はかつてなく、そうした創始者としての血統のよさが、他の優れたこのクラスのダイレクトドライブ・ターンテーブルを押えて〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれた大きな理由である。
 もちろん、いくらそうした血統のよさは備わっていても、実際の製品にいろいろな問題点があったり、その名にふさわしい風格を備えていないのならば、〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選定されないわけである。その意味からいえば、私個人としては完璧な〝ステート・オブ・ジ・アート〟とはいいがたい部分があることも認めなければいけない。つまり、私はプレーヤーシステムやターンテーブルにはやはりレコードをかけるという心情にふさわしい雰囲気が必要であると思うからで、その意味でこのSP10MK2のデザインは、それを完全に満たしてくれるほど優雅ではなく、また暖かい雰囲気をもっているとはいえないのである。しかし、実際に製品としてみた場合、ここに投入されている素材や仕上げの精密さは、やはり第一級のものであると思う。このシンプルな形は、ある意味ではデザインレスともいえるほどだが、やはり内部機構と素材、仕上げというトータルな製品づくりの姿勢から必然的に生まれたものであろう。これはやはり、加工精度の高さと選ばれた材質のもっている質感の高さが、第一級の雰囲気を醸し出しているのである。
 内容の面でも、現在レコードを再生するという点においては十分に信頼に足るグレードをもっている。クォーツロック・DCブラシレスモーターという、このSP10MK2の心臓部であるモーターの回転精度は、プロフェッショナルのカッティングマシン用モーターが問題視されるほどの性能の高さを誇っているのである。今日のターンテーブルは、常にこうしたサーボコントロールによる回転精度と、ターンテーブルそのものの重量によるイナーシャによる回転のスムーズさという、二つの柱として論じられる。イナーシャを大きくしようとすれば必然的にターンテーブル径が大きくなりすぎ、逆にサーボコントロールしやすくするにはできる限りイナーシャが少ない方がいい。この両者のバランスをどうとるかが大きな問題となるのだが、SP10MK2はバランスよくまとめられ、このように高性能を得ているのである。

パイオニア F-8800X

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 A8800Xのペアチューナーとして開発されたモデルである。低価格で高性能を目標としたためSN比で利点のあるバリコン使用のフロントエンドを採用し、選局は一般的な同調ツマミによるタイプとなっている。機能は標準型で、PLLシンセサイザー方式ほどの華やかさはないが、安定度、信頼性の高さが特長である。

ソニー SS-G9

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 一昨年末に発売されたソニーSS−G7は、本格的なフロアー型スピーカーシステムとして、性能、音質の優れた点が高く評価され、ソニーのスピーカーシステムのイメージを一新させることに成功した。今回、商品化されたSS−G9は、SS−G7の設計ポリシーを一段と発展させた、4ウェイ構成の大型システムである。
 ユニット構・成は、SS−G7に中低域用ユニットを加えたようなオーソドックスな4ウェイで、各便用ユニットは、現在のソニーのトップモデルらしく、SS−G7に使用されているユニットとは明らかに1ランク以上異なった、単体ユニットとしても発売できるような高性能型が採用してある。従来からも高度な性能を要求するスピーカーシステムでは、各ユニットごとの受持帯域のバランス上で4ウェイ構成に必然性があるといわれており、かつてのエレクトロボイス・パトリシアン800や現在のJBL♯4343、4350などの名作といわれる製品の数は多い。
 SS−G9の低音ユニットは、SS−G7のウーファーと同系統の強力なアルニコ系磁石を使う38cm型で特徴的な独特な形状のフレームが目立つ。音楽再生上で重要な帯域を受け持つ中低域には、ウーファーを小型化したような20cm型が使われ、中高域には口径8cmのソニー独自のバランスドライブ型、高域にはチタン箔一体深絞りの振動板を使った3・5cm口径のバランスドライブユニットが組み合わせてある。
 エンクロージュアは厚さ25mm高密度パーチクルボード製の160立の容積をもつバスレフ型で、フロントパネルには、表面に凹凸溝をつけたAGボードを使用し、バッフル面での音の拡散性が優れ、各ユニットは音源位置を前後左右で一致させるプラムインライン方式の配置。クロスオーバー用ネットワークは、L、Cともに共振を抑えるためSBMCで成形されており、内部の配線材は無酸素銅リッツ線使用である。
 SS−G9は、各ユニットが直接放射型で統一されているため、音色的なつながりが大変にスムーズで、結果として色付けのない極めて自然な音を聴かせる。音のクォリティは高く、ワイドレンジで、しかもダイナミックな音をもち、フロアー型らしいリアリティと実体感がある。

デンマークB&O社を訪ねて

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「デンマークB&O社を訪ねて」より

 デンマークという国は、実に密度の高い小国である。小国というと、デンマークに失礼かもしれないが、総人口が500万人余りという事実は、そう呼ばざるを得ないであろう。しかし、この国の実体を知れば知るほど、まるで、現代文明国の縮図とでもいうべき緻密な内答をそこに発見する。
 酪農を中心とした農業国としてのデンマークであるが、たしかに、大小無数の島々のほとんどは、フラットな畠であり、牧場であるし、農家は、この国の社会的階層の中で、高い地位を占めている。ファームとファーマーという言葉は、我国における、農業、農民という言葉の持つ意味やニュアンスとは大いに異り、より誇り高い意味と響きをもっている。背のびをすれば、ずっと遙か彼方まで見通せるほどの起伏しかもたない平らな広野と、視界全体の3/4以上を占める、大きな大きな空、これがデンマークで最も多く見られる風景だ。この国一の大都会、コペンハーゲンでさえ、その中心部から、車で10分も走れば、こうした景色の中に吸い込まれてしまうだろう。そしてどっちへ走ってもすぐ海に出る。こうした環境の中から、ここでは、現代機械文明の頭脳が生れ、最も先鋭なデザイン感覚が育ち、社会福祉制度は極度に発達した。私が関心をもっているものだけを拾って見ても、磁気録音の発明、トーキー映画のメカニズムなどの歴史的な実績の他に、この国の小規模ながら、注目すべき、エレクトロニクス関連産業は決して無視出来ないものなのである。オーディオ・ファンにとっても、オルトフォンのレコード関連機器、ピアレスやスキャン・ダイナのスピーカー、ブルュエル・アンド・ケアーの測定器など、馴染みの深い名前がすぐ、思い浮ぶことだろう。ジョージ・イエンセンの銀製品、ロイヤル・コペンハーゲンやビング・クロンディルの陶器、そして、イヴァルソン父子、ミッケ、アンネ・ユリエなどの手造りパイプなどは、コペンハーゲン中心にあるナポリ公園と同じぐらい有名だ。
 そして、ここにご紹介するB&O社こそデンマークを代表する電気機器メーカーである。バング・アンド・オルフセンの名前が示す通り、この会社は、二人の創設者によって一九二五年に創立された伝統ある企業である。オルトフォン杜の創立が一九一八年であるから、この二社共に、まさに、この道でのパイオニアといえるであろう。技術の誕生と共に企業が誕生したという、オリジナリティに、その社歴の重みが感じられる。
 B&O社は、家庭電気製品の総合メーカーとしての体質をもっているように思われているし、事実、デンマークの家庭を訪問すると必ずといってよいほど、同社のテレビが置かれるいる。しかし、このメーカーのオーディオへの力の入れ方は大変なもので、同社独自の強い主張を持った優れたオーディオ製品の開発に長年努力を続けて来ているのだ。このことは、今年、初めて同社を訪れてみて、一層強く感じられた実感であった。
 コペンハーゲン・カストラップ空港から、SASの国内便で30分ほど飛び、カラップ空港という田舎の小さな飛行場に下りる。ここはヨーロッパ大陸と地続きの、その最果ともいえるユランド半島である。ここから車で、30分ほどのストルーアという町に、B&Oの本社がある。ストルーアの町全体は、何らかの形でB&O関係の人々であるといってよいほどだ。例によって、空の大きな、なだらかな起伏をもった美しい田園風景が、空港からストルーアの町までの車窓に展開する。コペンハーゲンのある島、シュランドのファームと比較すると、この辺は、牛が多く見られる。私がよく滞在するシエランドのファームは豚が多いのに……。ストルーアのホテルのレストランで初めて会った人は、ヤコブ・イエンセン氏であった。この人が、B&Oの、あの美しいオーディオ機器のデザインの一切を自分一人でやっているという話しを聞いた。イエンセン氏は世界的に有名なインダストリアル・デザイナーだ。その斬新な感覚に溢れたモダン・ビューティともいえる美しい製品の数々が、この緑に囲まれたデンマークの田舎から生れるというのは一種の驚きであった。イエンセン氏も、他のデンマークの多くの芸術家達のように自然を愛し、自らファームに住んでいるという。共に昼食をとりながら、インダストリアル・デザインはいかにあるべきかといった興味深い話を聞くことができた。ここで、その詳細をご報告する余裕はないが、論より証拠、彼のデザインによる、あの美しいベオグラムの4000番シリーズのプレイヤー・システムやステレオ・レシーバーを一見することを、おすすめしたい。そして、それを実際に使ってみると、イエンセン氏のいう「モダン・テクノロジーは、人間の幸せのために奉仕すべきものだ」ということと、「オーディオ機器は、トータル・ライフの中で、音楽を楽しむという目的で存在しているはずだ」という主張が明解に理解できるであろう。これらの製品は、最新のエレクトロニクス・テクノロジーを駆使していながら、それを表面に押し出すことなく、全てを、音楽を楽しむための人間の便宜に謙虚に役立てた完壁な道具であるからだ。ベオグラム4004と、ベオマスター2400の組合せによって、レコードをかけ、FMラジオやカセット・テープを聴いてみるがいい。ここには、完全にラボラトリー・イメージを脱した洗練されきったオーディオの世界を発見する。リモート・コントロールによって全て自動的におこなえる操作の便利さと愉しさを。レコードからFMへのプログラムの変更も、音量の調節も自由自在である。しかも、そのプレーヤー・システムは、リニアー・トラッキング・アームに、高度なMMCカートリッジという、高級なコンポーネント・マニアの欲求を満たすに足るハイ・グレイドなものだし、アンプも、ステレオ・レシーバーはこうあるべきだという納得をせざるを得ないバランスのよさをもち、豊富なファンクションをもっているのである。見ているだけでも美しく魅力的な──本来、レコード音楽を楽しむ時に、重要な要素──この機器のデザインと仕上げの高さは、他に類例を見ない見事なものというほかはない。四角く重い箱を積み上げて、汗を流して緊張し、耳掃除をするような神経を使いながら、巨大なスピーカーと対峙して音楽を聴く……コンポーネントの世界とは、また、なんと違った次元の楽しみと喜びであることか。こういうシステムでレコードを楽しみたい人は多勢いるにちがいない。また、明けても暮れてもオーディオで、オーディオと心中することを無上の喜びとしているかの如く、アンバランスで極端な情熱をオーディオにもっている人にさえ、このシステムは、ふっと我に帰らざるを得ないような示唆を与える魔力さえ持っているようだ。そして、私のように欲張りな人間にとっては、機械の山の中に埋れるようなラボラトリーまがいのリスニング・ルームの他に、オーディオ機器は、このシステム以外に置かないで、すっきりと、気に入ったアクセサリーや絵を飾り、ゆったりパイプでもくゆらせながら憩える部屋がほしい……憩える部屋がほしい……ということになる。
 B&Oのオーディオ機器は、イエンセン氏のデザイン・ポリシーに代表されるように、真の意味でのコンシュマー・プロダクツなのである。
 スキーヴにあるアンプの組立工場、ストルーアの研究開発部門などを二日にわたって見学し、この会社が、理想的な環境の下に、仕事をしていることが理解できた。最近発表された、サファイア・カンティレバー採用のカートリッジMMC20CLを見てもわかるように、こうした細かい基本的なパーツ開発にかける情熱も、一般に考えられるような、コンシュマー・プロダクツの量産企業とは全く異なる体質をもっている。このカートリッジなどは、専門メーカー以上のキメの細かさをと、長年の蓄積が、高度な解析システムで裏付けをしながら生み出されたもので、プレーヤー・システム付属のカートリッジとしての常識を、はるかに超えたものといえるだろう。事実、このMMC20CLをEIAタイプのシェルにクランパーを介して取付け、単体カートリッジとして使っても、最高水準のプレイバック・パーフォマンスを示すものだ。もっともカートリッジに関しては、従来から、B&O製品はオルトフォンやエラックそしてフィリップスなどと並んでヨーロッパの代表的な製品として知られていたが、こうしたオーディオ専門メーカーの体質に、ますます磨きがかけられているのを見て大変嬉しかった。
 製品のアッセンブリーは、機械的にラインで流れていくのではなく、一人の人間が全部を仕上げるというシステムが導入されていた。その意味でも、ここの製品は、いわゆる量産製品とは質を異にしているというべきであろう。
 社長のオラフ・グルー氏をはじめ、技術担当役員のベント・メラー・ベデルセン氏、国際部の役員、K・E・ハーダー氏など、経営陣も、真剣にB&O製品と、その主張が、日本で理解されるべく努力したいと語っていたが、私もオーディオが、生活の豊かな精神的糧として存在する意味において、こうした道具が正しく認められるべきだと思う。現在のオーディオ事情は、あまりにも片寄っていることを改めて痛感したのである。
 エンジニアのプラマニック氏が今年のオーディオ・フェアに来日し、その折、MMC20CLを持参され試聴したが、その明晰な音質は、純粋技術的に追求された特性のよさを実感するだけではなく、夏のデンマークの空気のように透明で、すがすがしく、さわやかな雰囲気を感じたのであった。B&Oは、世界中の数あるオーディオ・メーカーの中で、そのオリジナリティと高度なテクノロジーで一際、輝やきを放った存在なのである。それは、あたかも、デンマークという国のもつ特質に似て、緻密なテクノロジーと、斬新な感覚が、豊かな自然とバランスして存在しているからであり、エキセントリックに走らないからである。社会保障の完備は、この国の人達を悩ませてもいる。優秀な人材はよく働き、高い税金を納め、怠け者はそれによりかかって生きるからだ。しかし、この国の人達は、知恵と心のバランスをもって豊かな生活を作り上げていく努力をし続けることだろう。

ソニー TA-P7F, ST-P7J

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソニーの超小型コンポーネントは、PRECISEコンポと名付けられ、プレーヤーシステムPS−P7Xを含めてシリーズを形成することになる。
 プリメインアンプTA−P7Fは、50W+50Wの出力をもつ。ヒートパイプを使ったパワー段、パルス型電源、入力及びテープスイッチをソリッドステートスイッチ使用でリモートコントロール化、MCカートリッジ使用可能な高利得イコライザー、ピーク出力表示灯、小型スピーカーの低域補正用の2段切替アコースティックコンペンセーター、ラウドネススイッチ付などの多くの特長をもつ。FMステレオ/AMチューナーST−P7Jは、クリスタルロック・デジタル周波数シンセサイザー方式で、アップとダウンの自動選局、AM/FM局ランダムプリセットメモリー8局、プリセットした局をその局順に約3・5秒間隔で自動的に呼び出すメモリースキャンなどが可能である。MOS型FETを使うRF増幅、4段相当バリキャップ使用のFM純電子同調フロントエンド、ユニフェイズフィルターとIC使用のIF増幅、リードリレー使用のミューティング5ステップ信号強度表示などの特長がある。

ステート・オブ・ジ・アート選定にあたって

瀬川冬樹

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「Hi-Fiコンポーネントにおける《第1回STATE OF THE ART賞》選定」より

 ステート・オブ・ジ・アートという英語は、その道の専門家でも日本語にうまく訳せないということだから、私のように語学に弱い人間には、その意味するニュアンスが本当に正しく掴めているかどうか……。
 ただ、わりあいにはっきりしていることは、それぞれの分野での頂点に立つ最高クラスの製品であるということ。その意味では、すでに本誌41号(77年冬号)で特集した《世界の一流品》という意味あいに、かなり共通の部分がありそうだ。少なくとも、43号や47号での《ベストバイ》とは内容を異にする筈だ。
 そしてまた、それ以前の同種の製品にはみられなかった何らかの革新的あるいは漸新的な面のあること。とくにそれがまったく新しい革新であれば、「それ以前の同種製品」などというものはありえない理くつにさえなる。またもしも、革新あるいは漸新でなくとも、そこまでに発展してきた各種の技術を見事に融合させてひとつの有機的な統一体に仕上げることに成功した製品……。
 とすると、いわゆる一流品と少し異なるのは、一流品と呼ばれるには、ある程度以上の時間の経過──その中でおおぜいの批評に耐えて生き残る──が必要になるが、ステート・オブ・ジ・アートの場合には、製品が世に出た直後であっても、それが何らかの点で新しいテクノロジーをよく活かして完成していると認められればよいのではないか。
     *
 ざっとそんな考えで、与えられたルールにしたがってリストアップを試みた。
 今回とても興味深かったのは選ばれたパーツを誰が何点入れたかが、最後まで誰にも判らないルールになっていたことだ。選定会議の当日、リストアップされたパーツの一覧表が渡される。まずその数の多いこと、言いかえれば九人の選定委員のそれぞれの、ステート・オブ・ジ・アートに対する考え方や解釈そしてその結果良しとするパーツが、いかに多様であるかを知って驚く。まるで思いがけないパーツがノミネートされている。またそれほど思いがけなくはないが自分としてはこれはベストバイというテーマでなくては入れないだろうパーツも入ってくる。なるほど、本誌のレギュラーに限っても九人もの人間が集まると、同じ課題に対してこれほど多彩な答えが出るのか、という驚きが何よりもおもしろかった。
 ほんとうはおもしろがってばかりもいられない部分もある。自分としてはぜひとも推したかったのに惜しくも最終審査までのあいだに落ちてしまった製品がいくつもある。同じ思いは九人の委員がそれぞれに抱いているにちがいないが。
     *
 そうは言うものの、最終的に示された結果は、細部では個人個人の意見がそれぞれにあるに違いなくても、大すじではやはり納得のゆく結論が出ているのだろう。多数決投票というもののこれが性格だろうか。
 部門別にこまかくみると、例えばスピーカーではJBLパラゴンやヴァイタヴォックスCN191のような極めて寿命の長い製品も入っているが、アンプでは原則的に旧式の製品は上っていないのは、変遷の著しいエレクトロニクスの分野と、基本的には大すじの変らないトランスデューサーの分野とのちがいがしぜんに現われていて、これは当然の結果であるにせよ、一見無機的なリストアップの一覧表からも、そうした読みとりかたができることを申し添えておきたい。

ビクター A-M1H, T-M1H

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 今年の話題のひとつに、超小型サイズのコンポーネントが各社から競って発売されたことがあげられるが、ビクターでは既に昭和41年に超小型のマイクロ・アンプ、チューナー♯103シリーズを商品化し、その後も♯200シリーズの一段と高級なセパレート型アンプを発売して数多くの愛用者を獲得した実績がある。
 今回発売されたマイクロコンポーネントは、従来の経験を活かし現代的にアレンジした高次元の高密度設計によるものである。アンプはセパレート型ではなくプリメイン構成としサブ操作系をヒンジ付サブパネル内部に収納し、メイン操作系は全てフェザータッチのプッシュボタンとしたユニークなパネルフェイスをもち、なお、シルバー仕上げの横型デザインとブラック仕上げの縦型デザインの2種類を用意し、あらゆる使用条件にも適合できるように企画されている点が特長である。
 プリメインアンプA−M1Hは横型タイプで、フロントパネルには5段切替の音量調整、入力切替、テープスイッチとパワースイッチがあり、サブパネル内部に一般型の音量調整、トーンコントロール、バランス調整、ラウドネス、SP切替とヘッドフォンジャックがある。回路構成は、ICLイコライザー段とトーンコントロール付ICL・DCパワーアンプの2ブロックで出力は50W+50W、電源部はDクラスのスイッチング型である。
 FMチューナーT−M1Hは、マニュアル同調と5局のプリセット選局、さらにデジタル時計付である。角型の表示窓内部には、信号強度を5段表示、ステレオ表示受信周波数と時間を表示するディスプレイがある。構成は水晶発振器を基準入力とするPLLシンセサイザー方式のフロントエンドと入力追尾方式PTL検波方式を採用し、MPX部以降はDCアンプ構成。本機の特長は、停電時にも内蔵の電池がプリセット受信周波数、時間をメモリーバックアップし、さらにメモリーバックアップ用電源アダプター端子をもつことだ。

ステート・オブ・ジ・アート選定にあたって

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「Hi-Fiコンポーネントにおける《第1回STATE OF THE ART賞》選定」より

 ステート・オブ・ジ・アートという言葉が工業製品に対して使われる場合、工業製品がその本質であるメカニズムを追求していった結果、最高の性能を持つに至り、さらに芸術的な雰囲気さえ漂わせるものを指すのではないか、と私は解釈している。「アート」という言葉は、技術であると同時に美でもあり、芸術でもあるという、実に深い意味を持っている。しかし、日本語にはこの単語の持つ意味やニュアンスを的確に訳出する言葉がないこともあって、実にむずかしい言葉ということができる。
 いずれにしても工業製品であるオーディオ機器は、音楽芸術を再現することが目的なのである。そして、機械として最高の性能と仕上げを持ち、一つの香り高い雰囲気を感じさせてくれ、人をして魅力を感じさせるとまでいう域に達したものこそ、ステート・オブ・ジ・アートと呼ぶにふさわしい製品といえるであろう。ただ、そのような観点からのみ製品を見ていくと、そう多く存在するわけではない。大量生産、大量販売のこの世の中で、厳密な意味でのステート・オブ・ジ・アートを選ぶとすれば、残念ながらごくごく数が限られてしまうことになる。しかし、現実にはそういう意味合いを中心に置きながらも、ある程度拡大解釈をして製品を選出するということにならざるを得なかった。そして、私はステート・オブ・ジ・アートを、コストパフォーマンスやベストバイという言葉に惑わされることなく、非常によくできた製品に与える言葉と解釈した。そうするとかなりの数の製品が選ばれてくる。しかし、芸術的な香りにまで高められた製品ということになると、今回選出されたものでも、ほとんどに不満が出てくるというのが現実なのである。
 加えて、ステート・オブ・ジ・アートというにふさわしい存在であるためには、その製品がある由緒を持っているということも重要なファクターであろう。というより、その製作に携わった人間なりメーカーが、しっかりとした存在でなければならないということなのである。つまり、ある主張に加えて高度な技術、高いセンスとしっかりした姿勢によって生み出された製品こそ、ステート・オブ・ジ・アートに選びたいという気持ちが非常に強かったわけだ。
 オーディオは趣味である。ステート・オブ・ジ・アートという言葉の持つ意味の主観性、あるいは曖昧さが示しているように、オーディオというものは、自分のイメージの中にある、内なる音を追求していくという、大変に、主観性の強いものであるし、個性とか個人の嗜好という意味で、曖昧といえば曖昧なものである。しかし、コストパフォーマンスやベストバイといった見方だけでオーディオ機器を評価、選択するペきでないと思う。そういう意味でステート・オブ・ジ・アートとして選び出された製品には、オーディオの本質をチラリと感じさせてくれる何かがあると確信する。ただステート・オブ・ジ・アートという言葉は、もともとアメリカで使われていたのだが、最近アメリカでの使われ方には、ベストセラー、ベストパフォーマンスといった色合いが濃いのではないかという気がする。それが本場でのことであるから、よけいに寂しく感ずるのである。せめてわれわれとしては、本来の観念でこの言葉を捉え、そういう目でオーディオ機器を眺め、そして選択するという姿勢を持ちたいと思うのである。

ステート・オブ・ジ・アート選定にあたって

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「Hi-Fiコンポーネントにおける《第1回STATE OF THE ART賞》選定」より

 今回は、本誌はじめての企画であるTHE STATE OF THE ARTである。この選択にあたっては、文字が意味する、本来は芸術ではないものが芸術の領域に到達したもの、として、これをオーディオ製品にあてはめて考えなければならないことになる。
 何をもって芸術の領域に到達したと解釈するかは、少しでも基準点を移動させ拡大解釈をすれば、対象となるべきオーディオ製品の範囲はたちまち膨大なものとなり、収拾のつかないことにもなりかねない。それに、私自身は、かねてからオーディオ製品はマスプロダクト、マスセールのプロセスを前提とした工業製品だと思っているだけに、THE STATE OF THE ARTという文字自体の持っている意味と、現実のオーディオ製品とのギャップの大きさに、選択する以前から面はゆい気持にかられた次第である。
 しかし、実際に選択をすることになった以上は、独断と偏見に満ちた勝手な解釈として、現代の技術と素材を基盤として、従来だれしも到達できなかったグレイドにまで向上した基本性能を備え、オーディオの高級品にふさわしいオリジナリティのある、限定したコンセプトをもって開発され、かつ、いたずらにデザイン的でなく、機能美のある完成度の高いデザインと仕上げをもったものとすれば、現実のオーディオ製品に選択すべき対象は、ある程度は存在することになる。
 現在のオーディオ製品は、マスプロダクトという量産効果を極度に利用して、はじめて商品としてリーゾナブルな価格で販売されているために、生産をする製品の数量の大小が最終の価格決定に大きく影響を与え、同程度の仕様、デザインを備えた製品でも、予定生産量が少なければ、1ランク上の価格帯に置かざるをえなくなることになる。
 また、同程度の生産予定量をもつ製品間でも、技術的な基本性能重視型と機能重視型、さらにデザインや仕上重視型では、趣味のオーディオ製品として眺めれば、どのポイントに魅力を感じるかによって、商品性や価値感は大幅に変わることになる。したがって、選択の対象となる製品では、当然特定のコンセプトで開発されているだけに、生産量は少なく、量産効果も期待できないために、その価格も飛躍的に高くならざるをえなくなり、とても容易に誰でも入手できるような価格の製品では存在しえないことになる。
 具体的にジャンル別でいえば、スピーカーシステムなら大型フロアーシステム、アンプなら高級セパレート型アンプ、カートリッジならオリジナルな発電系をもち、精密加工を施したものとなり、必然的にMC型が対象となることになる。
 今回は、THE STATE OF THE ARTの第1回でもあるために、個人的には可能なかぎり多くの製品をノミネートする方針で選択をはじめると、国内製品では最新モデルか、もしくは少なくとも昭和48年のオイルショック以前に企画された予想外に古いモデルに分かれるようであり、海外製品では最新モデルが少なく、2〜3年以前、または歴史的にもいえる古いモデルが多いようである。
 結果として、THE STATE OF THE ARTとして選択されたリスト、及びノミネートされたリストを眺めると、選択基準はかなり個人差が激しく、予期せざる製品がリストにのぼってきた事実は、次回以後で選択のルールをある程度修正をする必要があることを物語っているようで読者諸氏の批判をあおぎたいところである。

フォステクス FT50D

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 フォステクスのドーム型トゥイーターのなかでトップランクに位置づけされる製品である。振動板には口径20mmの深絞り成型をしたグラスファイバーと熱硬化性樹脂5層構造のドームに、軽合金タンジェンシャルエッジを組み合わせ、1・5kHz以上で使える広帯域型としている。磁気回路はアルニコ系の鋳造マグネットを採用し、出力音圧レベル93dBを得ているため、組み合わせるユニットは、16〜20cmのフルレンジユニットや、30cmクラスのウーファーまで選択可能だ。

フォステクス FT30D

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 布をベースとし、これに特殊な制動材を塗布した振動板を採用したソフトドーム型のトゥイーターである。振動板口径は25mmと、ほぼ標準的な寸法をもっているために、再生周波数帯域、出力音圧レベル、許容入力などの特性面で優れた結果を得やすい特長がある。振動板の裏面にはミクロングラスファイバーなどを使った制動材が採用され、振動板の共振をダンプしている。また、磁気回路にもFT10Dとの価格差から考えられる以上の大型磁石を使い出力音圧レベル90dBを得ている。

テクニクス EAS-10TH1000

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 リボン型トゥイーターの変形と考えてよいユニットである。振動板は高耐熱性のポリイミドフィルム面にアルミを蒸着し、エッチングをしたボイスコイルを採用し、音響的には振動板中央に突出したヒレ状のイコライザーで左右二分割されている。磁気回路は1・3kgの鋳造磁石を使った独特なプッシュプル型でイコライザー部分をN極とすれば、振動板両側がS極となっている。ボイスコイルが蒸着型で8Ωのインピーダンスとしているためマッチングトランスは不用である。

フォステクス FT10D

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 ローコストのトゥイーターユニットとしては珍しい、10kHz以上の周波数特性や指向周波数特性の向上を目的として開発されたドーム型の製品である。一般に振動板は直径が小さいほど、高い周波数帯で諸特性の向上をはかれる利点があるが、逆に、クロスオーバー周波数の制約や許容入力が大きくとれない問題がある。FT10Dは直径1・6cmの振動板を使ったドーム型で、3kHz以上で使用できるため、10cm口径程度の小口径ウーファーと2ウェイ構成で使用するのが相応しい。

試聴テストを終えて

瀬川冬樹

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 55機種のトゥイーターのそれぞれに、最適のクロスオーバーポイントを選び最適のレベルセットのポジションを、それも短時間のうちに探し出す、そのオペレーターの役割を私が担当したが、これはまったく気骨の折れる仕事だった……。
 どのトゥイーターの説明書にも、一応は周波数レンジと推奨クロスオーバー周波数が書いてある。また、出力音圧レベルも海外製品の一部を除いてほとんどが新JISの表示に統一されているから、それを参考にしてレベルセットなど容易にできる……と思えそうだが、実際に鳴らしてみるとこれが意外に計算どおりにいかない。
 たとえば、クロスオーバー周波数が2ないし3kHzあたりに指定されているのは、トゥイーターとしては割合に低い周波数までカバーできる製品のはずだ。しかし実際にそのクロスオーバー周波数にセッティングして、うまくいく例は少ない。
 うまくいかないというのは二通りのケースがある。第一は、指定のクロスオーバーでは低域の許容入力に無理が生じて、やかましい、または圧迫感のある音になりがちのトゥイーター。第二は、たとえば2kHzといえばまだ一部の楽器の基音(ファンダメンタル)領域をカバーしているのだから、かなり力強い音も再生しなくてはならないはずなのに、そのあたりの出力エネルギーが十分でないせいかクロスオーバーをもっと高くとったときと比べて、そんなにエネルギーの増えた感じの得られない製品。
 もう一つのレベルセットに関していえば、概して良いトゥイーターは、音のクセ(カラーレイション=色づけ)が少ないために最適範囲が割合広く、レベルセットにそれほど神経質にならないで済む。ところが、質のよくない製品、またはタフさに欠ける製品ほど最適レベルの範囲が狭く、ちょっとレベルを上げれば音が出しゃばるし、少し絞れば引っ込んでしまう。良いトゥイーターにはそういう現象が少なく、やや上げすぎてもやかましくはならないし、絞りかげんでも音の芯を失うことがない。
 ……というように、オペレーターをやってみると、クロスオーバーやレベルを調整してゆく過程ですでにそのトゥイーターの性格が大まかに掴めてしまうという点はありがたかった。素直でクセが少なく高域が十分に伸びて透明な音。トランジェント(過渡特性)がよくその結果スクラッチノイズやヒス成分が耳ざわりでなく軽い感じで、楽音とはっきり分離して聴こえる。大きな入力や低域の少々無理な入力にもよく耐える。しかも受持帯域のすべてにわたって十分に緻密でエネルギーもある。というのが、結局のところ良いトゥイーターということになり、そういうトゥイーターは、また結局のところ使いやすい組合せもしやすいという理屈になる。
全体を通じて感じたこと
 いま2から3kHzと書いたのは一つの例だが、試聴した全機種を通じてみると、これは厳密な計算の結果ではなくごくおおまかな見当だが、5ないし6kHzあたりから上を受け持つというのが平均的な製品だと思う。ピアノの高音のキイの基音が約4・2kHzだから、5kHz以上というのはほとんど楽器の倍音の領域だ。そういう高音域だけを次々とつけかえて聴くわけだから、完成したスピーカーシステムのように全音域を交換するのにくらべたら、音の差はよほど少ないと思われるかもしれないが、事実は全くそうではない。倍音の領域の音色が変われば、当然のことにそれは基音を含めた全体の音色を大きく変える。昔からスピーカーユニットを組み合わせて苦労してきたユーザーならとうに経験したことだろうが、トゥイーターを交換することによってウーファーの音色まで変る。そして、これは驚くべきことなのか当然の結果というべきなのか、とにかく55機種のトゥイーターを次々と交換して音を聴き比べて、二つとして同じ音色では鳴らない。だが、同じメーカーのトゥイーターは、価格や構造が違っても大づかみには似た傾向の音色で鳴ることが多いし、もっと大づかみには、生まれた国の違いによってそれぞれに鳴り方の傾向が違う。
 そのことから、たとえトゥイーターといえども、常々他のオーディオ機器やさらには音楽について言われていると同様に、メーカーにより国により、音のとらえ方や音の作り方への姿勢の違いが、明確に反映されることがわかる。
 簡単にいってしまえば、トゥイーターの音色は「高音」という概念をどうとらえるか、によって決まるといえそうだ。たとえば繊細、たとえばキメの細かさ、音の切れ込み、たとえば音の輝き──。
「高音」というイメージをどうとらえるかという姿勢は、ひいてはトゥイーターの受持帯域や耐入力パワーやエネルギーバランスや指向性や……などの構造にも大きく影響を及ぼす。比較的低い高音域のエネルギーしっかりと支える作り方。反対に、いわゆる超高音域をどこまで細やかに伸ばすかという作り方──。
 そこで、メーカーの求めている方向を感じとり、自分の望む音に合致する製品を選び出すことが、トゥイーター選びの成否の鍵になる。
印象に残った、または使ってみたいトゥイーター
 かつて、テクニクス5HH17(いまの17Gではない)というローコスト・トゥイーターの名作があった。あれから十年余を経た今日なら、ローコストのグループの中にもう少し優秀なトゥイーターが出現してもよさそうなものだと思っていたが、結果的には五千円以下のグループの中には印象を深く残した製品は一つもなかった。もう少し拡大していえば、一万円以下の国内製品の中には、これならと思える製品が残念ながら見あたらなかった。このあたりの価格帯では、イソフォンのKK/10、KEFののT27、それに、フィリップスのAD0161/T8という、それぞれに構造も価格もよく似た(6千円〜6千五百円)三つのヨーロッパ製のトゥイーターが、それぞれの性格を持ちながらとてもよくできていると思った。
 一万円以上、二万円までの間では、これも新製品ではないのがやや意外だったが、ヤマハのリング・ホーン型JA0506が素直で音でびっくりした。国産のホーン型トゥイーターの中には非常によい製品が少ないながら見つかったが、ヤマハを除くとほかには、たとえばコーラルのH100、フォステクスのT725、あるいはマクソニックやYLのなどのようにもっと高価なグループに入ってしまう。そのことから逆にヤマハが価格対性能で抜きに出ていることが印象的だった。
 高価なグループの中でホーンタイプ以外では、パイオニアのPT−R7、テクニクスのリーフ型EAS10TH1000がそれぞれに惚れ込んだ製品で、どちらも一度じっくり使いこなしてみたいと思った。
 海外製品では、先ほどのヨーロッパ三社のドーム型を除けば、これはと思ったのはJBLの♯2405(077を含めて)と、もう一つおそろしく高価な点がやや納得がいかないがピラミッドのT1の二つだった。♯2405は、スーパートゥイーター的な作り方にもかかわらず、クロスオーバーポイント以下のエネルギーのしっかり出てくる点が見事だったし、ピラミッドはおよそいままで聴いたことのない滑らかな音で、これに関しては機会があればもっといろいろな条件で組合せを試してみたいと思った。
 ただ、今回のようにLE8Tの上にだけトゥイーターをのせてのテストでは不十分ではないかとの最初の不安は、テストを進める間に解消してしまった。最近のLE8Tの高域は非常に素直なので、それぞれのトゥイーターの性格を掴むにはこの方法で十分だったと思う。

テクニクス EAS-10KH501

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 ダイアフラムは、チタンの両面にボロンを生成させた新材料を使用したユニークなドーム型ユニットで、10KH50の高級モデルである。ダイアフラムと一体成形したエッジは、新形状ローンビック型で、ボイスコイルはアルミボビンと耐熱処理をした銅クラッドアルミ線で、最大許容入力は1・5kHz、18dB/octのネットワーク使用時に100Wと発表されている。磁気回路の総磁束は10KH50と同じ値だが、磁束密度では18、000ガウスと一段と強力になっている。

エレクトロボイス T350

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 T35のデラックスモデルである。ホーンはT35よりひとまわり大型化されたエレクトロボイス独自のディフラクション型である。また、イコライザーにユニークな構造のソノフェイズ型を採用しスムーズな高域特性を得ているのも同社のトゥイーターの特長である。ダイアフラムはフェノリックダイアフラムで、ボイスコイルはボビンを使わず直接ダイアフラムにエポキシ系接着剤で固定してある。磁気回路の磁石は重量453gのアルニコV型で、T35より3dB高能率である。

テクニクス EAS-10KH50

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 ダイアフラムにチタン箔を採用したドーム型トゥイーターで再生周波数帯域の下限が700Hzと発表されているように、かなりワイドレンジ型であるのが特長である。ダイアフラムのエッジはロールエッジで、ボイスコイルボビンはアルミ、コイルは耐熱処理のアルミ線を使用している。磁気回路は大形鋳造マグネット使用の内磁型で磁束密度は16、700ガウスと強く、出力音圧レベルも95dBと高い。30cm口径までの専用ウーファーと2ウェイ構成にできるのがユニットの魅力。

フォステクス FT500

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 フォステクス製品中でただ一機種のコーン型トゥイーターである。口径4・5cmのコーンには、超高弾性無機質繊維シリコンカーバイトを配合したコーン紙とドーム型センターキャップを組み合わせた構造を採用し、低いクロスオーバー周波数で使える広帯域のトゥイーターだ。磁気回路はフェライトマグネット使用で、マグネット重量は70g、出力音圧レベル90dBを得ているため、小口径ウーファーとの2ウェイ構成やフルレンジ型ユニットの高域用に手軽に使える製品である。

エレクトロボイス T35

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 トゥイーターユニットとしてはロングセラーを誇り、JBLの製品とともに米国を代表する専用トゥイーターユニットである。エレクトロボイスのドライバーユニットの特長は、ダイアフラム材料に軽合金を採用せず、ベークライト状の薄いフェノリックダイアフラムを使っていることで、これは、音色面でもかなりの違いとして感じられる。クロスオーバー周波数は3・5kHz以上で使えるのも特長で、フルレンジユニットとの2ウェイ、マルチシステムの高音用と幅広く使える。

フォステクス FT40H

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 フォステクスのホーン型トゥイーターのなかでFT20Hとシリーズ製品となるユニットである。開口部の直径60mmの軽合金ダイキャストホーンはいわゆるボストウィック型の構造をもつ砲弾型のイコライザー付で、カットオフ周波数1・8kHz、苦降ろすオーバー周波数4kHz以上で使用する。ダイアフラムは金属蒸着フィルム型で、アルニコ系鋳造マグネット使用の磁気回路で98dBの高出力音圧レベルを得ている。20cmクラスのフルレンジユニットやウーファーと2ウェイで使いたい。

試聴テストを終えて

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 これまでにもステレオサウンド誌では、各種のオーディオコンポーネントの試聴をおこなってきたが、今回のようにトゥイーターユニット単体を対象として、数多くの機種を同一条件で試聴するということは創刊号以来、はじめての試みである。かつて、本誌6号でもマルチウェイ構成用のウーファー、スコーカー、トゥイーターなどを使って、実際に2ウェイ構成、3ウェイ構成といったスピーカーシステムを作って試聴したことはあったが、基本として同一メーカーのユニットを使うこととしたために、簡単に取替えられるトゥイーターも他社間の比較はしていない。
 本誌6号以来すでに十年をこす年月が経過しているが、当時の製品のうちでいくらかのものは、今日もなお現役製品として残っている。あらためていうまでもないが、スピーカーユニット前半にわたり、トランスデューサーというメカニズムをもつものであるだけに、その基本型となるものは1924年に米国のライスとケロッグが発明したダイナミック型である。材料面を中心とした改革はあっても、その基本を覆すほどの斬新な変換方法はいまだにあらわれず、依然としてムーングコイル型、つまりダイナミック型が、すべてのスピーカーユニットの主流の座にある。トゥイーターユニットでも、これは変わらない。
 たとえば、海外製品のうちで、今回の試聴に集められたアルテックの3000H、エレクトロボイスT35、T350、JBL・LE20、075などは、本誌6号時点でも、それぞれのメーカーを代表するトゥイーターであった。国内製品では、海外製品にくらべ、トゥイーターとしての平均的なクォリティもさして高くなく、製品の入れ替わりがあらゆるジャンルで難しいこともあって、海外製品に匹敵するロングセラーを誇るユニットはコーラルH1のみであり、これに準じた製品としては型番は変わっているが基本型が同じであるものに、YLの製品をあげることができる。
 いずれにせよ、新技術、新素材をベースとした技術革新のテンポが年ごとに早まり、現在もっともそれが激しいカセットデッキともなると、今年春に発表された製品が廃番になったり、そうでなくても代替機種が発表され、事実上の商品としての価値が失われたりしている状況と比較すれば、海外製品を中心としたスピーカーユニット全般にわたる製品寿命の長さは、いわば驚異的といってよいほどのものがある。
 トゥイーターユニットに限定して考えれば、現在の主流は、ブックシェルフ型スピーカーシステムが台頭して以来、完全にメーカーでアッセンブルしたスピーカーシステムである。かつてのようにスピーカーといえば、それは単体のスピーカーユニットの意味で、これを選択し、組み合わせ、エンクロージュアやネットワークを作って自分でシステムとして完成させるのが一般的であった時代が、大勢としては過去のものとなったことが大きな要因であると思われる。
 ユニットを選択し,組み合わせる、いわば自作型のスピーカーシステムづくりは、自らの求める音をつくりだすためにはもっとも相応しい方法で、現在でも市販のスピーカーシステムの限界をこえた性能、音を求める超高級ファンは、ただ一筋にスピーカーシステムのユニットの多角的な要求にもとづいた向上に努力している。しかし、市販のスピーカーシステムでは望みえない音を自らの手でつくり出そうとすることは、当然メーカー以上の予算、時間をかけ、その上で基礎となる技術、経験、間隔が要求されるため、ほとんど現実には不可能に近いといってもよいであろう。
 これに比較してメーカーでシステム化されたスピーカーシステムは、幅広い需要に対応する各種のコンセプトにより、数多くの製品が開発され販売される。つまり、量産効果を最大限に活用したメリットである価格帯性能・音質の比率が高い特長があり、この10年間急激に成長したオーディオの需要を満たすことができたが、反面においては、さして量産効果が活かされず、性能を向上させると飛躍的に価格が上昇する結果となり、単体ユニットの開発が限られることにもなる。
 国内製品のトゥイーターは、現在、予想以上に数多くの製品が存在している。これは、いきおい類型的にならざるをえない各メーカーのスピーカーシステムにあきたらずオーディオの原点に立ち返って、自らのためのオリジナルなスピーカーシステムをつくる、または、極めて単純に自分でスピーカーシステムをつくることに喜びを感じるファンが数を増し、その要求に答えるために開発された製品がほとんどといってよい。一部には、本質的な新技術や新素材の特長を活かし、従来では望みえなかった高度な性能・音質をもつ、いかにも現代のトゥイーターらしい製品があり、自らのスピーカーシステムをつくる場合に相応しいユニットというよりは、完成されたスピーカーシステムに追加して、システムそのものの性能・音質を改善する使用法を、これらの製品で試みることができる。この既製スピーカーシステムにトゥイーターを選択して、ある周波数以上を受け持つトゥイーター、もしくはスーパートゥイーターとして使う単体トゥイーターユニットの利用方法は、名器とうたわれる定評が高いスピーカーシステムから、現在のトップランクに位置づけされる最新のスピーカーシステム全般にわたって、ぜひとも一度は試みていただきたいものである。ある程度のオーディオやスピーカーの知識さえあれば、誰でも容易に着手できることであり、万一予想に反する結果を招いたとしても、スピーカーシステム本来の性能・音質に簡単に復元できる、いわば一種のギャランティが充分にあることも一つの大きなメリットだ。
 今回のトゥイーター試聴は、現在のトゥイーターの概要とその個々の性格を把握することを最大の目的としたことに注意していただきたい。このため、平均的で、しかも信頼のできる水準の性能・音質を備えたフルレンジ型ユニットJBL・LE8TをサンスイのEC20に組み込んだシステムをベーシックスピーカーとし、これにクロスオーバー周波数の選択が容易なエレクトロニック・クロスオーバーを使う、いわゆるマルチチャンネルアンプ方式でトゥイーターをクロスオーバーさせる、2ウェイを試聴の基本としている。
 各トゥイーターは、この条件のもとで使用され、クロスオーバー周波数の選択、レベルセット、それからLE8Tを含めた2ウェイシステムとしての音の試聴をおこなっている。当然のことながら、この場合ウーファーとして使ったLE8Tとトゥイーターとの相互関係、つまり性能、音質、音色、クォリティ、トゥイーター側の制約となるクロスオーバー周波数の選択の幅の広さなどで、本質的な各トゥイーターの音質やキャラクターを追求した結果とはなっていない。これは、55機種という数多くのトゥイーターを、同一条件で使うという原則からみれば仕方のないことで、たとえば、特定の、現在自分で使っているスピーカーシステムに、スーパートゥイーターとして追加する使用法を考えれば、今回の結果以上に充分に使えるトゥイーターが55機種のなかに存在するはずである。なぜならば、一般的にトゥイーターは高音専用ユニットであるだけに、クロスオーバー周波数を7〜8kHz以上にとり、受持帯域を狭くすれば、再生可能周波数下限まで使ったときにくらべて、予想以上に見事な音を聴かせてくれるものだからである。極端な例としては、標準的なクロスオーバー周波数で使った場合には、あまり高域のレスポンスが伸びていなかったユニットが、クロスオーバー周波数を7〜8kHz以上に上げて使うと、ナチュラルなプレゼンスが感じられるスーパートゥイーターになったという実例も数多くある。アルテックの3000H、JBL075などは、落してのあらわれかたの違いはあっても、トゥイーター、スーパートゥイーターと二通りの使い方ができる例である。もっとも、ローコストのトゥイーターのなかにも、スーパートゥイーター的に使ったほうが魅力が引き出せる製品が意外にあるはずである。かつてのテクニクス5HH17は、この好例といってもよいものである。
 試聴にあたっては、EC20のエンクロージュアの上にトゥイーターを置いておこなったが、トゥイーターもスピーカーユニットであるために、特別な例を除いて、いわゆるバッフル効果があり、30cm角程度のバッフルに取付けるとかなり結果としての音に違いがあらわれる。しかし、ドーム型は、バッフル面の仕上げや取付け方法が難しい、ホーン型は、予想よりもクロスオーバー周波数は高いほうがよい、また、ネットワークは6dB型がよいといった通説は、実際に数多くの経験をこなした上で実感として味わうものだと思う。

フォステクス FT1RP

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 フォステクスのRPシリーズのトゥイーターは、平面型の振動板を採用した大変ユニークな製品である。RPとはレギュラー・フェーズの略で、振動板の全面が同じ位相で動く、全面駆動方式をあらわしている。このタイプは、振動板が軽量なため超高域特性、過渡特性、指向周波数特性が優れることをはじめ、許容入力が大きくとれるなど多くの利点をもっている。FT1RPは、この方式を採用したユニット形式の製品で、能率面から20cm口径程度までのウーファーと組み合わせたい。

リチャードアレン DT20

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 直径20mmの薄いマイラーダイアフラムを使ったドーム型トゥイーターである。ユニット本体は磁気回路を含めて合成樹脂系のハウジング内部に収めてあり、ヨーロッパ系のユニットとしては美しく仕上げられた製品だ。ダイアフラムは取付フランジの厚み分だけ奥に取り付けてあり、周囲はテーパー状にカットしてある。クロスオーバー周波数は3・5kHz以上だが、ネットワークは、遮断カーブが鋭い18dB型と24dB型が、7kHzクロスオーバー時にも推奨されているのが特長である。

KEF T27

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 外観はシンプルなドーム型トゥイーターであるが、他の同様なユニットとくらべてユニークな構造を採用した製品である。ダイアフラムはKEF独特な黒色のプラスティック製で、磁気回路の前側のプレートの直径が108mmと大きく、この部分に直接ダイアフラムが装着されている。つまり、結果としては取付用フランジが前側の磁気回路を兼ねている独特な構造で、ダイアフラムは平面に取り付けられた純粋のドーム型である。クロスオーバーネットワークは18dB型が推奨されている。

JBL 2405

井上卓也

HIGH-TECHNIC SERIES-3 世界のトゥイーター55機種の試聴とその選び方使い方(ステレオサウンド別冊・1978年冬発行)
「世界のトゥイーター総試聴《内外55機種をJBL・LE8Tとの2WAYで聴く》」より

 外観上は、077と類似したプロフェッショナルシリーズのスーパートゥイーターである。075をベースとしてホーンのカットオフ周波数を高くし、指向特性面からホーンを矩形断面としている。開発時期は077より早く、077がこの2405のコンシュマー版である。矩形断面のホーン内壁が軽金属製となっている点が077と異なる。物理的な両者の差はわずかだと考えられるが、結果としての音は、077より一段と引き締ったシャープな音である。