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テクニクス SB-2510 (Technics6)

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 ベルリン・フィルの内声部が引っこんで、栄養失調のやせっぽちオケと化してしまった。音がひ弱で充実感が不足し、迫力や説得力に欠ける再生音としかいいようがない。音づくりの派手なレコードでは、ソースの個性でもつが、まともな録音ではどうも淋しい音となるようで、特に中音域の充実を考えるべきではないかと思う。試聴レコードの中ではピアノが一番問題が多く、腰の弱い力のない打音はリアリティのない再生しか得られなかった。

サンスイ SP-2002

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 オーケストラの再生では中音域に多少鳴きが感じられた。もう少し中域が締まると、このシステムはかなり高度なものだと思う。全体の音のまとまりがよく、量感もあるし、緻密さもある。ジャズの切れこみ、迫力も十分でベースの音程も明晰、シンバルのリアリティもよい。インパルシヴなピアノやヴァイヴは派手な音に聴こえるが、これは中音域のキャラクターだろうと思う。この辺の暴れが、また、ある種のソースでは魅力となることもある。

ビクター BLA-E30

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 すっきりとした明るい音は美しい。切れ込みも良く、バランスも整っている。ただ、音に余裕がなく、オーケストラの量感、ステレオフォニックな陰影の再現には、やや不満があって音が平板である。しかし、傾向としては弦楽器を主体としたクラシック・ムードに向き、しなやかな高域は魅力的である。ジャズのような極度なオン・マイク・セットによる音の解像力となると中域の締まりが不足し、音のやせた印象が出てくる。

サンスイ SP-200

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 中域が充実したシステムだが、プログラム・ソースによってはやや、盛り上りが過ぎる嫌いがなくもない。オーケストラのテュッティでブラスの音がやや、ガーガーとうるさい印象で鳴るのが耳障り。しかし、全体にクオリティがよく、再生音は力強い。広いDレンジにも余裕ある対応を聴かせ、ジャズの近接マイクによるアタックにも鋭い立ち上がりと余裕のある響きを聴かせる。室内楽の緻密な質に対する要求にはやや、高域の品位が物足りない。

パイオニア CS-A77

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 低音域が不明瞭で解像力が悪い。にぶく音程がはっきりしない。中音域はレベル的には盛り上がり気味ではあるが、質が良くなく、抜けが悪い。マッシヴな再生音を臨んでも無理で、なんとなくムードで聴くほかはないようだ。。割れ鐘のような音がする。これは、単にバランス上の問題だけではないようで、クォリティに不満がある。好みといえばそれまでかもしれないが、これは、少々はみ出しすぎているように思える。

フォスター FCS-300

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 低域ののびが不足し、また、中高域のまとまりや連続性もよくない。音のキャラクターが荒く、きめの細かい、緻密な再生音は期待できない。ベルリン・フィルが安っぽい音になってしまったし、源のしなやかな美しさも出てこない。ジャズのベースの音もしまりがなくだらしのない響きとなる。価格から考えても同クラスの他製品の間で占める位置はどうしても低くならざるを得ない。残念ながらもう一歩というところである。

ブラインド試聴者の立場から

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 これがアンプの場合だったら、せいぜい同じカテゴリーの中で音のバランスやニュアンスが多少違うという程度なのに、スピーカーときたら、同じレコードがよくもこれほど違って聴こえるものだと呆れるくらい、五十組が五十通り、それぞれ違った音で鳴るのだから、はじめのうちしばしば途方に暮れた。
 ところが、二日、三日と聴き込んでゆくにつれて、スイッチのナンバーと出てくる音とが、少しづつ結びつくようになってくる。終りの頃は、ほかの人にスイッチを押してもらっても、たいていの音を当てられるし、当然、細かな相違もわかるようになってきた。ブラインドテストのやり方についても、いろいろ考えさせられる貴重な体験だった。

■試聴テストのポイント
 スイッチによる聴きくらべ、それもブラインドテストの場合には、心理的に陥りやすい罠が数多くあって、その一つひとつはスペースの関係で詳しく解説できないが、わたくしとしては、できるだけその面での弊害は除くよう、慎重に考慮したつもりである。ただ、ブックシェルフ型のスピーカーは、とくに置き場所によって音のバランスが変わりやすく、しかもこれほど数多く並らべ積み上げた場合には、多少とも互いに共鳴するという現象もあって、物理的に完璧を期すことは無理だと思う。少なくともそういう現象によってマイナス点がでないように、聴く位置を変えてみたり、トーンコントロールを大幅に変化させてみたり、また、それでもおかしいものは、置き場所を移動してもらう等、できるかぎりの確認を試みた。結果としては、音の質そのものが良くないスピーカーは、そうして条件を変えてみても決して点数が良くはならないし、音の素性がもともと良いものは、少しぐらい不利な場所におかれても、時間をかけて聴き込んでゆくと必ず浮かび上ってくるものだということが分った。しかし、あくまでも、この結果は本誌試聴室でのものであり、条件が大幅に変われば、また違った結果が出るかもしれないことは、想像に難しくない。わたくしとしては、ともかく与えられた条件の中で、最善の努力をしたつもりである。

 採点にあたって与えられた分類法は、○や□の印による四段階法であり、採点法に個人的には疑問が残っているが、一応、試聴した五十組の中で最良のものを三重丸とし、以下順位を割り振った。従ってこの中に、もう一つでも、もっと大型の本格的なスピーカーシステムが比較用にでも入っていたら現在の三重丸が◎か○になってしまう可能性は無いわけではない。いずれにしても、○印そのものは、音の硬さ柔らかさ、音の分離や切れ込みの良否といった音質そのものを決して現わさないから、○の数が多いからといって、これは聴感上の好みとはあまり関係が無いという矛盾を含んでいる。
 コストパフォーマンスについては、わたくしの基準は8以上がいわゆる買徳品、6~7は大体価格相応、4~5がその下のランクで、3以下は価格が高すぎるか音質に難点が多すぎるかのどちらか……といった採点である。
 音質の評価は、前述の理由から音のバランスそのものは重視せず、低音ではトーンコントロールで強調しても箱鳴りその他の欠陥が無いもの。中~高音では妙なクセ或いはトゥイーター等の欠陥によって針音やテープヒスが強調されないもの。そして中音域で音がスムーズにつながるものに良い点をいれるようにした。総体的には、音のクオリティ(品位、品格)そのものの良し悪しに重点を置いて、特に楽音のニュアンスやコントラストを正しく美しく再現するものを選んだ。また、わたくし自身は、ステレオの再生では音像定位の再現性を重視しているが、今回のようなスピーカー配置ではこの点の評価は無理だったので、一切ふれていない。
 なお、念のため、わたくし自身試聴した五十組のほとんどをまだ知らずに居る。テストを終ったいま、編集部ではいつでも教えてくれるというが、たまには、印刷された本誌を手にとるまで、知らずにいた方が楽しみが多い。

テクニクス SB-2506A (Technics4A)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 前項同様、No.26、33、43、それこの47と、最初のうちから総体的に良い点数が浮かんでいて、ほかのスピーカーの音に相当なじんでからも、採点はあまり変わらなかった。おそらくこの辺が、国産(だと思うが)の平均的水準をゆく良いスピーカーの代表例なのだと思う。

テスト番号No.47[推選]

サンスイ SP-2002

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 音のつながりがよく、柔らかく気持よく鳴るという点では、No.26や33、および後述の47などと相通じるところのある良いスピーカーだ。

テスト番号No.43[推選]

Lo-D HS-500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 能率が高い方ではないから、単純な切替え比較では損をしそうな製品だが、いろいろといじの悪い聴き方をしても全くボロを出さないし、物理特性もかなり良さそうだ。低域から高域まで、音のつながりもかなりスムーズで、全域にピーク性の危い音が全く無いのは見事だが、少々ドライな印象を受けることは否めない。固有の音色とか音のクセを嫌う人には選ばれそうな製品。

テスト番号No.31[推選]

ダイヤトーン DS-33B

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 ちょっとドンシャリ的で、とくに高域の鋭さは耳につく。安っぽいハイファイ・トーンというイメージが無いわけではないが、よく聴くと、全体としてかなり注意深く作られた製品のようで、もしも、中〜高域のレベルを少し落せるなら、全体の音の印象はもっと向上するはずである。今回のテスト機種の中には、トーンコントロールで高域を多少抑えたぐらいでは、とても聴くにたえないものが七〜八に止まらなかったが、このNo.29にはそういう製品とは一線を引いて違う良さがある。

テスト番号No.29[推選]

パイオニア CS-10

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 あるていどパワーを入れてやらないと、うまいバランスの音になりにくいという点では、No.21とにているが、絞っていっても、21ほど正確が変わることはない。中域、あるいは中低域にかけて、ちょっとクセがあるので採点上は良くないが、もしかしたら、レベルコントロール(この製品にそれがついているとしたら)を調整し直せばよくなるといった性質のものかも知れない。

テスト番号No.27[推選]

アコースティックリサーチ AR-5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 どんなソースも一応ソツの無さで、採点上では推選になったが、個人的には疑問の多いスピーカーだ。とくに、音量の大小によって音のバランス──それも周波数特性上のバランスというよりも、各楽器の音色や音量差や距離感がガラリと変わるのは、不思議だ。とくに、絞り込んだときの音は貧相である。しかし、音量を相当上げて聴くと、朗々と豊かな音になるのだから始末が悪い。ハイパワーの好きな人にという前提つきで。

テスト番号No.21[推選]

アルテック Lido

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 能率のあまり良い方でなく、しかも周波数レインジもあまり広い方ではないという音で、切替え比較では、ラフな聴き方をされると損な製品という点では、No.2にちょっとにているが、音の品位は相当に高く、これなら室内楽でもじっくり聴き込める。そして、どんなソースでもイヤな音を決して出さない。はったりも何も無い音だから、レコード音楽に長いこと親しんだ人でないと、見過ごしそうな音だと思うが、ともかく良い製品だ。

テスト番号No.16[推選]

サンスイ SP-50

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 No.2とは正反対に、能率も中以上だし(少なくとも聴感上は)、朗々と鳴るという感じの音質。低域と高域に、少々抑制の足りないところが無くはないが、おそらく手なれた、かなりの説得力を持った音の作りかたである。グラマーだが大柄でなく、トランジスター・グラマーといった音。

テスト番号No.8[推選]

フォスター FCS-250

瀬川冬樹

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴 純粋聴感で選ぶベストシステム」より

 切替えたとたんに音量がぐんと小さくなる。能率が低いという点では、No.5やNo.27に次ぐ製品だから、出力の大きいアンプが必要だろう。何を鳴らしても一応ソツなくこなすという性質は26や33に似ているが、音質の傾向はずいぶん違って、少し抑制が利きすぎたのではないかと思えるほど、控え目で地味で、しかも無味乾燥になる一歩手前でうまくまとめたという感じである。いわば、入社早々で少しばかり固く構えているという風情だが、しかしこの生真面目さは、仲なか好ましい。
テスト番号No.2[推選]

ビクター BLA-304

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 オーケストラの内声部が引っこみ、やせた音になる。そのためかどうか、プレゼンスの再現も不充分で、オーケストラの雰囲気に空間感がない。これはステレオ再生では大変不利であり、また音楽のスペクトラムの中核である中域が引っ込むのはまったくまずい。ジャズではこれが致命傷といってよく、ジャズ音楽の本質が生きない。中域不足はバロックのアンサンブルなどでは一種クールで端正だが、ジャズには全く不向きという他ない。

テレフンケン TE-200

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 表情豊かというか、個性的といおうか、快適な音が印象的。適度に油の乗った充実感があり、長く聴いていると耳について気になりそうな音色が、こういう試聴では効果をあげる。つまり、巧みな音づくりなのである。華麗な音色、人為的なバランスがどんなソースにもそれなりの効果をあげるから不思議である。中高域の硬さ、レンジの狭さが不満として残るが、極めて印象的なスピーカー・システムであった。

パイオニア CS-7

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 大変まともなバランスがとられていて、いかなるプログラム・ソースにも妥当な音楽的バランスを聴かせてくれるスピーカー・システムだった。音質は、やや軽く安手の感じは残るけれど、他面、明るくおだやかで疲れない音だ。ジャズの再生では、締まり、深み、力感などの面でもう一歩の不満がかんじられるが、まともにソースの情報を伝えてくれるので、聴いていて気持がよい。強い魅力には欠けるかもしれないがオーソドックスな製品だ。

ビクター BLA-E20

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 オーケストラのテュッティの再現ではややスケールが小さく、プレゼンスが不足する。しかし、ポピュラーものでの味つけは効果的で甘さとシャープさが巧みに交錯する。軽やかな中域が親しみやすいキャラクターを作っているのだろう。価格も二万円を切るようだし、このクオリティなら相応のものといえるのかもしれない。室内楽やクラシックのヴォーカルには当然のことかもしれないが質の緻密さの点でかなり物足りない。

ダイヤトーン DS-22B

菅野沖彦

ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)
特集・「スピーカーシステムブラインド試聴」より

 バランスのよくとれたシステムで音色も切れ込みもよい美しいもの。再生音のスケールは大きくないが緻密なクオリティで好ましい。オーケストラやジャズでは小じんまりした感じはあるが音がよく立ち、生き生きしている。ピアノのクオリティが、やや不安定なのが気になったが、この他はすべてスムーズに通った。透明度も高くよく抜けるシステムだ。抜ける感じは何によるものかは全体の問題としてきわめて興味深く、また難しい問題だと思う。