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JBL SA600

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 このアンプの特徴はよくのびた低域特性と、ローレベルでも澄んだ切れこみの良い解像力の良さに集約される。低域の良さはオルガンの再生によく現われて、このアンプを使うとスピーカーの低域がグンと延びたように思われる。一方、音量を絞り込んだときにもディテールを少しも失わない切れ込みの良さは、まるで澄んだ深い湖を覗き込む感じである。しかしスピーカーはかなり選ぶ。

ソニー TA-1120A, TA-1080

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 TA1120Aは国産のプリメインの中では文句なしに最高の性能。ただタンノイやアルテックのようなスピーカーでは、なぜか音に闊達さが失われてお面白く聴けない。弦やチェンバロが硬く平面的になる傾向があった。マッキントッシュ5100やJBL600もこれに似た傾向があるのは、トランジスターの限界だろうか。TA1080の方は今や少々魅力に欠ける。

5万円〜6万円クラスのプリメインアンプの印象

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 プリメイン型も6万円前後となると、音質の点でも機能や操作のおもしろさの点からも、最高クラスのアンプに非常に接近してくる。たとえば、カートリッジやスピーカーシステムに世界最高水準のものを組み合わせても、アンプの方でそう位負けしないということで、ここから上野アンプの音質の差は非常に微妙なものになってくる。つまりこの辺からが、オーディオアンプとして正統かつ本格的なクラストいうわけだ。

ラックス SQ301

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 これも試作品だが、良いアンプだと思った。オーソドックスでバランスの良い音質。音の奥行きがいくらか平面的になるような傾向はあったが、管球式に似た温かい肌ざわりと、いろいろなタイプのスピーカーに順応する良さは高く買える。AU777同様にいじるところがたくさんあって、マニアにとっても楽しいアンプだ。きめ細かな神経のゆきとどいた作り方は、さすがに手馴れたもの、この水準をぜひとも落さずに量産化されることを望みたい。

エロイカ Almighty-55

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 素直で重厚なたっぷりした量感のある音質。高域でもう少し鮮明な切れ込みを示してくれれば申し分ないが、適度に潤いのある爽やかな音質は管球式の良さだろう。スピーカーの選り好みをしないで、どのタイプも美しく鳴らしてくれた。

ジュピター CS-33

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 試作品だったから正確な評価は下すべきではないかもしれないが、誘導雑音が多く、三極管にしては硬質の音で潤いが無かった。

サンスイ AU-777

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 バランスのとれた良いパーフォーマンスを持ったアンプだと思った。低音が仲々しっかりしていて、オルガンの低域のファンダメンタルな動きをよく再現するし、ローレベルからハイレベルにかけて盛り上ってゆくクレッシェンドでも破綻のない再現性を示した。こういう音の傾向はソニーの1120によく似ていると思ったが、比較してみると、山水の方に、気のせいかほんのわずかの曇りが感じられる。しかしここで4万円の差があることを考慮に入れたら、5万円台では最もお買徳なアンプのひとつに入るだろう。

ラックス SQ38Ds

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 このアンプの身上は、定評どおり音の素直さと中〜高音域の澄んだ美しさにある。反面、中低音部にふくらみが欠けていて、バランス上どうしても淋しい痩せた音質になりやすい。
 しかしこの音質は、室内楽とか合唱曲など、クラシックの中でも凝った曲をじっくり鑑賞しようというとき、長く聴いても疲れない良さを持っていて、それがこのアンプの名声の裏づけになっていると思われる。

ニッコー TRM-120

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 音質の点では最も良好。素直でクセの無いオーソドックスな、まともなアンプの音であった。ローレベルでも、音が繊細で抜けが良いし、ハイレベルでも安定によく音が延びてゆく。パワーにも十分のゆとりが感じられてこのクラスでは最も安心できる音質。

トリオ TW-80D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 こうして改めて聴いてみると、もはやこのアンプの時代は終ったという印象が大きく残った。これは私見だが、80DとなってNF型のトーンコントロールを採用してから、かえって高低域両端に、ドンシャリ的な強調感が現れてかえって音がヒステリックになってきたのではないか。ワイドレインジの良いスピーカーでは、これがたいへん耳ざわりだった。

コーラル A-1000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 ちょっとしたはずみで周期の遅い低域発振を起こして、スピーカーのコーンが大きくフラフラとゆれはじめるのは問題だと思った。コーラルの二機種ともこの稽古ヴかあったのだから、偶然の故障とはちがうだろう。
 音質は大味で、高域の刺激的な音のとりきれない、いわゆるトランジスター的カラーの残ったもの。

コーラル A-707

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 トランジスターアンプの中では発売時期が古い方で、そのためかいわゆるトランジスター的なカラーが強く、刺激的で長く聴いていると疲れるような音だった。低域を延ばしすぎているのか不安定で、ちょっとしたショックでモーターボーディングを起こすのには閉口した。ただSNは非常に良く、ボリュームを上げてもノイズの性質も仲々良かった。

パイオニア SA-81

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 このグループ唯一の管球式で出力も大きい方。音のバランスとしては、フラットなクセの無い特性を狙っていて、その意味では良くまとまって欠点は無く、たっぷりした音量感は安心感を与えてくれる。ただ弱レベルの再生音のとき、もう少し繊細な音が欲しい──、切れ込みにシャープさが欲しいとも思った。

ラックス SQ77T

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 前のトリオと逆に中・低域のふくらみが少し不足していて何となく弱々しい音になる点は、SQ38Dなどと似たラックスの弱点かもしれない。音は割合素直だが、TW61と同じくローレベルで何となく歪っぽい、トランジスター・アンプの匂いが残っている。今回はテストしなかったが、同価格のSQ5Bbと、非常に対照的な音のように感じられた。

トリオ TW-61

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 ローレベルでは多少ザラついた感じのつきまとう歪がわずかにあるようだが、音が実にたっぷりしていること、音量を上げても刺激的な音のしないことなど、三万円台ではベストバイにあげてよいと思った。
 トーン・フラットのポジションでも中低域に意識してふくらみを持たせた音質で、こういう作りかたは、コロムビアMA20と同じ意味でローコスト・アンプにはむしろ好ましい。
 ただ、ノイズの性質はあまり良い方ではなく、トランジスターのボソボソいう雑音が、音量を上げたときには少し気になったがこれは製品ムラかもしれない。ヘッドフォン使用時に残留ノイズが割合耳ざわりだった。

2万円クラスのプリメインアンプの印象

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 このクラスにいえることは、三万円台の総合アンプの場合と同様、正面切ってフィデリティを求めないで、ひずみの少ない、おだやかで聴きよいバランスのとれた再生音を狙うべきだということ。
 テストの結果は、四機種とも、表示パワーの割には音量を上げようとするとうるさくなってあまり大きなパワーは出せないことと、低音域の量感にどうしても不足を感じた。この点は総合アンプの三万円グループと同じだが、回路構成は総合アンプより手の込んだものが多くて、やはりプリメイン独立型だけのことはあると思った。
 総じてこのクラスのアンプでは、あまり本格的なスピーカーを組み合わせないで、気軽に、組合せそのものを楽しむべきもののように思う。

ミラフォン AG-15W

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 音は割合に素直だけれど、どことなくひよわな感じを受けた。

パイオニア SA-40

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 音質の点ではビクターに次ぐもので、これでもう少し弱レベルの音の粒が揃えば、もっと品位の高い再生音になる。

ビクター MCA-102

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

四台の中では音質がいちばん素直で、特別大きな音量を望まなければ、トーンで低音を上げ気味にするとか、このアンプだけについているローブーストスイッチをONにすると、低音も最も良く延びて、楽器のファンダメンタルらしい音も結構再現してくれた。ただしヘッドフォン端子では、電源の誘導のようなジーというハムが、わずかだが気になった。

フィッシャー 700T

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 さすがに手馴れたもので欠点は無いが、輸入して24万円強という価格では、これでなくてはという魅力に乏しい。

オンキョー STA-201

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 試作品のためか誘導ハムがあったので、弱音の再生についてはよくわからなかったが、音の延びは仲々良く、音質の傾向はビクターAST140Tなどのオーソドックスな系統で悪くなさそう。トーン・コントロールの上昇・下降点が切換えられるのは総合アンプでは唯一のものだけれどターンオーバー周波数のとりかたには、もう少し検討の余地がありそうだ。デザインも斬新さを狙ったのかもしれないが十分にこなれていない。

ジュピター CS-W8

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 トーンコントロール中点では、高域の抜けない、冴えの悪い音がするが、トーンをうまくコントロールしたりラウドネスをうまく使ったりすると、小型のスピーカーでは割合聴ける音になる。ただ、音像の小さいときは良いが、ハイレベルでは少しどぎつい音になって、トーン・フラットでは都合のよいことがあるかもしれない。

サンスイ SAX-700

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 TW880、SX100TAの中間的な音質。出力や機能の割には柄が大きいという印象が先に立って、同価格のSX100TAにくらべて損をしている。保護回路の利きが良すぎて、ちょっとしたショックで動作してしまうのは少し神経質すぎるようだ。

パイオニア SX-100TA

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 特に色づけのない、フラットでバランスの良い音質。SX30Tによく似た音色で、おとなしいがもう少しツヤっぽさがあってもいいのではないかと感じた。しかし大出力アンプを小柄なケースにうまく収めた全体のまとめかたはたいへん好ましい。SN良好。

トリオ TW-880

瀬川冬樹

ステレオサウンド 3号(1967年6月発行)
「内外アンプ65機種の総試聴記と組合せ」より

 TW510の音からみると多少強調感があって、クラシックよりはポピュラーものに向くという印象であった。弱音で音が汚れる感じも高級アンプらしくない。パワーアンプというメリット以外にはTW510の方をおすすめしたい。