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オルトフォン MCA-76

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 CD4方式の4チャンネルステレオに対応する広帯域特性を得る目的で開発されたオルトフォン初のヘッドアンプで、CD4用の高域カットフィルター付属。入力インピーダンスは75Ω、ゲインは34dBである。
 柔らかな低域、豊かで響きのタップリとした中低域と硬質さを感じる中高域が特徴の帯域バランスだ。音の表情は穏やかで安定感があり、音場感は前後方向のパースペクティブが少し狭い。ロッシーニは穏やかで聴きやすいが、高域のディフィニッションが不足気味で反応が遅く感じられる。
 ドボルザークは、DGG独特の高域の輝きが少なく、メタリックにならない特徴はあるが、まとまりに欠け、峰純子もダイレクトさが出ず、ボーカルの声量が落ちて聴こえる。

オルトフォン T-20

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 トロイダルコアを採用した低インピーダンス専用昇圧トランスで、バイパススイッチの付いたモデルだ。
 聴感上の帯域バランスはトランスとしてはワイドレンジ志向型で、豊かで適度に芯のある低域、クッキリと粒立つ硬質な中域とスッキリと伸びた高域に特徴があり、音にコントラストをつけ、リアルに音を聴かせるタイプだ。音場感はシャープに拡がり、音像定位もクリアーにまとまる。音の表情には少し固さがあるが、分解能はSTA6600Lよりも一段上で、低域の力強さでも優れる。
 試みにFR7fを使うと、トランスの性質が相当に強く、空芯MC型独特の鮮明さと反応の速さは抑えられ気味で、力強い低域とクッキリとコントラストのついた明快型のFR7fになる。

オルトフォン STA-6600L

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 トランス本体を筐体の上部に取付けた6600以来のロングセラーを誇る製品。
 帯域バランスはヘッドアンプに比べれば狭いとはいえ、ナチュラルに伸び、やや柔らかい低域と程よく硬めの高域がバランスを保ち、中域に量感があるのはトランスならではの独特の味だ。
 MC20は、豊かで柔らかな低域が安定感のあるファンダメンタルを作り、適度に密度感のある中域とスッキリと粒立つ高城は安心して聴けるオルトフォンらしい魅力だ。4種のプログラムソースを、それなりに見事にまとめて聴かせる性能は、長期にわたるロングセラーの実力を示すものだ。
 試みにFR7fと66Sの組合せを使ってみると、細やかさ分解能の高さ表情の豊かさといったカートリッジの特徴をよく出す。

オルトフォン MCA-10

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 MC10カートリッジの開発にあわせて登場したヘッドアンプで、電源はバッテリー動作。フロントパネルの小型メーターは、ヘッドアンプ出力とバッテリーチェック共用である。
 聴感上の帯域バランスは、ヘッドアンプとして無理にワイドレンジを狙わず、スムーズなレスポンスをもったトランス的なニュアンスをもつタイプだ。低域は柔らかく豊かだが、音の芯が弱くソフト。中域は程よい厚みがあり、中高域には少し硬質なところがあり、マスキングのせいか高域はゆるやかに下降して聴こえる。
 MC20はそれなりに特徴を出すが、独特の豊かさやしなやかさが今一歩の印象であり、バランスは良いが不満も残る。FR7fにすると低域の力強さはあるがソフトな雰囲気になる。

オルトフォン STM-72Q

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 低インピーダンス専用に、開発された小型昇圧トランスで、型番末尾のQはCD4システムに対応できるワイドレンジ型の設計であることを示している。
 昇圧比は1対60とオルトフォンのトランスでもっとも大きいが、帯域バランスはナチュラルで、さして狭い感じはない。音の傾向は過度にスムーズさを持ちながらスッキリとした伸びやかさがあり、全体にまとまりの良いタイプだ。ロッシーニの軽快さと華やかさ、ドボルザークのプレゼンス、峰純子のダイレクトらしい鮮度感、さらにカシオペアのパワー感などを完全にではないが、それなりに聴かせる性能は、価格から考えれば見事という他はない。
 試みにFR7fを使うと音の細部が見えず木炭画のような粗い音になった。

オルトフォン MC10MKII

オルトフォンのカートリッジMC10MKIIの広告(輸入元:ハーマンインターナショナル)
(別冊FM fan 30号掲載)

MC10MKII

オルトフォン MC30

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 同社初の軽量振動系を採用し、広帯域、高コンプライアンス化を達成した最高級機。いわば古典型から現代型に変った新しい魅力は抜群。

オルトフォン MC20MKII

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 MC30に採用された三層構造のセレクティブダンピング方式を導入し、リファインした製品。伸びやかでスムーズな音が特長。

オルトフォン SPU-GT (E)

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 SPU−Aの業務用に対し、コンシュマー用のGシェル組込み、トランス内蔵型の製品。重厚で安定した音は、製品の伝統を物語る。

オルトフォン SPU-A (E)

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 現役最古の業務用MC型。ダイナミックバランス型の専用アームと組合せたときの音は、軽量級の現代タイプとは一線を画した領域。

オルトフォン MC10

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 考え方によれば、SPUのイメージをもっとも現代に伝えているモデルだ。無理のない帯域感と自然な表現は電力発電効率の高さのあらわれだ。

オルトフォン MC20, MC30, SPU-A

オルトフォンのカートリッジMC20、MC30、SPU-Aの広告(輸入元:ハーマンインターナショナル)
(モダン・ジャズ読本 ’80掲載)

ortofon

オルトフォン M20FL Super, M20E Super, MC10, MC20, MC30, MCA10, MCA76, T-30, RF297

オルトフォンのカートリッジM20FL Super、M20E Super、MC10、MC20、MC30、ヘッドアンプMCA10、MCA76、昇圧トランスT30、トーンアームRF297の広告(輸入元:ハーマンインターナショナル)
(ステレオ 1979年2月号掲載)

T30

オルトフォン MC20

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か プレーヤーシステムによって同じカートリッジの音がどのように変わったか」より

●オルトフォンMC20の基本的性格
 非常にいいところをもっているカートリッジだが、そのよさをいかすのには、なかなかむずかしいところがありそうだ。プレーヤーシステムによっては、音像が肥大することがある。それはおそらく、このカートリッジの持味のひとつであるひびきのなめらかさと無関係ではない。したがってこのカートリッジにおけるなめらかさは、諸刃の剣というべきかもしれない。暖色系の音で、なめらかで、まろやかで、だから、そのよさがそのまま示されたときにはいいが、音像を肥大させる方向に働くと、ひびきは、メリハリがたたなくなり、あつくるしくなる。よさをひきだすには、充分に慎重に使うべきだろう。

オルトフォン MC20

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・MCカートリッジ特選4機種2万〜3万5千円」より

 同社の最も得意とするムービング・コイル型の最新モデルである。いわゆるSPUシリーズを現代のカートリッジの、ムービング・マスやコンプライアンスを含めて、技術水準でもう一度洗い直し、新設計でつくり上げたものだ。根本的に確かにSPUのもっていたような重厚でエネルギッシュな音とはややかけ離れてはいるが、しかし、さすがに同じメーカーがつくっているだけあって、音のバランスや音の彫琢という点で、やはりオルトフォンのカートリッジだなと思わせるものをもっている。非常に重厚な低音にすばらしい中高域がバランスし、そして、高域の伸びはなんといっても、SPUを超えている。そしてまた、トレーシング能力のよさもSPUの比ではない。それだけに、SPUのもっている骨太のエネルギッシュな質からすると、少々現代カートリッジ的な少々やせぎすな、あるいは、ややつめたいという質感を伴ってくるのは、やむを得ないことかもしれない。だからといってMCくさい音というわけではない。MCとしてよくバランスがとれていると思う。
 SPUから見ると、高域が非常に伸びているため、ハイがサッとさわやかに出てきたという感じがするが、しかし、再生バランスとして決して高域が妙に上がってヒステリックになるというカートリッジではない。ある意味でハイ・コンプライアンスMCカートリッジとしてのブームをつくつたカートリッジではないかと、私は思う。SPUを未だつくり続けている中でオルトフォンとしては現代のカートリッジの製造技術をそこに新たに取入れ、新しいMC型をつくりたかったんだろうと思う。だから、この新シリーズができたのもだいぶあとになってのことだ。今までの
新シリーズはほんとどVMSタイプに代表され、そのラインアップが完成したあとにこのMC20が出てきたのだ。それまてのMCとしてはSPUシリーズのみをずっとつくり続けてきたわけで、その辺にも同社のメーカーの体質が現われていると思う。
 このカートリッジはその意味からも、オルトフォンとしてはかなり検討に検討を重ねて、出してきたMCカートリッジといえる。
 実際に使って、MC20は明らかにMC独特の豊かなプレゼンスを感じることができる。トレーシンク能力やハイコンプライアンスという点では、現代のすぐれたMM型から見ると、多少問題もなくはない。しかし、このカートリッジのもっているムービンク・コイル独特の一種の音のねばり、こういうものはやはりかけがえのないものだと感じる。その意味で、このMC20の存在の必然性ははっきりしていると思うし、現代の高級カートリッジの代表格と言ってもいい製品ではないかと思う。

オルトフォン FF15E MkII

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・MMカートリッジ特選4機種2万円未満」より

 オルトフォンは確かにカートリッジの専門メーカーであることに間違いないが、実際にはレコードをつくるカッティング・マシン、メッキ・システムなど、すべてレコードのマニファクチァリングのファシリティーをつくっているメーカーである。従って、レコードのことについては非常によく知っているわけである。
 そういうメーカーであるから、そのメーカーが開発するカートリッジが非常にすばらしいということは充分納得のいくことでもある。また、オルトフォンのカートリッジはあらゆるカートリッジ・メーカーの一つのお手本になっていると言ってもいい。
 そのオルトフォンが、ステレオLPレコード時代に入り、MC型のSPUシリーズでたいへんな好評を得、そして、さらにワイドレンジに製品のバリエーションをつくった。従来のMC型は生産効率も悪く価格も高いということから、大きく言えばMM型の一部に含まれる、つまり、コイルを動かす方式ではなく、オルトフォン独自のVMS(バリアブル・マグネティック・シャント方式)という、インデュースト・マグネットに近い方式の製品も手がけるようになった。その中でFF15EMKII、もちろんMKIIになる前はただのFF15Eだったが、普及クラスの価格の中できわめて品質の安定したカートリッジとして登場したものだ。
 このシリーズの中には、F15、FF15、さらにその高級版にはVMS20Eといったバリエーションがあるが、これらは基本的にはほとんど違わず要するに、非常に効率よく生産的につくっているということで、F15、FF15の実力は、実際のところ高級品VMS20Eなどとそう大きくは違わない。ただ、つくりやすくしているために、多少ムービンク・マスなどが大きい。そのために高域の特性がVMS20Eに比べ、それほど高いところまで伸びていないが、しかし、実際に使って音を聴いてみると、そのバランスのよさと使いやすさという点では、全く何の不足もないと言っていい。
 実際、1万円を切る値段の輸入力ートリッジで、これだけの信頼性とすばらしい音を聴かせてくれるカートリッジは、そうざらにはないだろう。
 そういう点で、オルトフォンという一つのすばらしいカートリッジの専門メーカーのブランド・イメージが、使う間にプレステージとして働きかける満足感のみならず、その満足感と相まって、実用的なパフォーマンスも非常に高いということが言えると思う。
 オルトフォンのサウンドは従来から一貫したバランスをもっており、私たちはそれをよくピラミッド型の音のバランスと言っているが、非常にしかっかりした重厚な低音にささえられ、その上に三角形のバランスのとれた帯域バランスをもっている。このFF15Eもそうしたバランスをいささかも損ねていない。具体的に言うと、非常に鮮明な音のするカートリッジで、その点でウォームな音のするカートリッジのグループとはやや趣きを異にするというのが、このカートリッジの持ち味であり、MM系に属するカートリッジ・グループの中では、やはり非常にすばらしいカートリッジだと言わざるを得ない。
 不思議なことに、メーカーそのものは意識をしていなくても、デンマークのオルトフォンという会社の体質が明らかに残っているということは、やはりこのカートリッジの存在の必然性をわれわれに感じさせる。

オルトフォン SPU-GT/E

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

この渋い独特の厚みある音質はMC型の里程機として歴史に残る名作。

オルトフォン VMS20E/II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

明らかにSPUの傾向を受け継ぐウォームな音質。使いやすい出力。

オルトフォン MC20

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

こんにちのMC型のひとつのスタンダードとなりうるバランスの良さ。

オルトフォン SPU-A/E

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

伝統を感じさせる重厚で洗練された、これならではの貴重な音である。

オルトフォン MC20

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

現代的な物理特性のよさをもった新しいオルトフォンの魅力である。

オルトフォン AS212MKII

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

アームのスタイルに一時代を作った同社の新シリーズ。

オルトフォン RMG309

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

SPU−Gタイプの長所を生かすには最も安心して使える専用アーム。

オルトフォン RMA309

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

Aシェル付SPUの本来の魅力を引き出す信頼性の高さは見事である。

オルトフォン RMG212

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

独特の優雅にS字を描くパイプの曲線は見るだけで楽しい。