Category Archives: プリメインアンプ - Page 4

ルボックス B150

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

セレッション SL6Siとの相性
プログラムソースとの適応性の幅が広く、それなりに納得のできるバランスで聴かせる音だ。いわば、良い意味でのカセットデッキの音のように、巧みに、そして不満感を抱かせずに音楽を聴かせる特徴は、表現は悪いが、巧みにウソをつく音である。音の細部を聴く気にさせない特徴は、良くも悪くも国内製品にはない味である。

サンスイ AU-X111MOS Vintage

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
間接音成分が豊かで、柔らかく雰囲気の良い聴きやすさが特徴のアンプである。低域は軟調で一種独特のf特的なウネリ感があり、薄く滑らかな中域とスムーズな高域がバランスを保つが、音の緻密さや密度感は不足した音で、音楽の激しさ、力強さの表現は苦手なタイプの音だ。バスレフ方よりも密閉型にマッチしそうな音である。

ラックスマン L-570

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
L540の雰囲気よく聴かせる音とは対照的に、小さく凝縮した音を特徴とするアンプだ。低域の質感は軟調傾向であり、予想よりもドライブ感が不足した、きれいでオーディオ的にまとまった音である。音場感は標準より少し狭くまとまり、間接音は抑え気味となる。それぞれの個性が活かされない、相性の悪さが音に出た例だ。

サンスイ AU-X111MOS Vintage

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
柔らかく雰囲気のよい音と、タンノイとしては広帯域型で、中域が少し薄い帯域バランスを聴かせるが、全体の印象としては少し古典的なタイプに聴きとれるところが面白い。音場感は平均的であり、やや遠くに音源のある音像の立ち方だ。プログラムソースは、個性を抑えスムーズに聴かせる傾向があり、中域の独自の硬さが原因だろう。

アキュフェーズ E-405

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
適度にコントラストが付き、プログラムソースの音を正確に再現しようとする真面目なタイプの音である。音のクォリティは高く、音場感は標準的なレベルで間接音成分を抑え気味とした、明快なわかりやすいプレゼンスである。プログラムソースの特徴を整理して自分の音として聴かせるタイプであり、ややリファレンス的な性格の音だ。

ラックスマン L-570

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
スケールは小さく、小柄な音にまとまるが、楽器の編成のあらましはわかる程度の情報量はあり、比較的自然な音場感と奥に引っ込んで定位する小さな音像が特徴。プログラムソースは、小編成の曲で、小さく凝縮してまとまる音の特徴が活かされるが、響きは抑え気味で、音楽に必要な要素を残して整理したイメージの音になる。

マランツ PM-95

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
安定感があり、平均的な要求では、立ち上がりの良い明快で適度にドライブ感のある音と、すっきりとしたプレゼンスが楽しめるスタンダードな音である。A級動作ではローレベルのナチュラルさ、生き生きとした表情の豊かさ、ベール感のないナチュラルなプレゼンスが加わり、これこそ異次元の世界の音というにふさわしい。

アキュフェーズ E-405

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
低域は柔らかく、高域が細身で、ほどよいシャープに特徴がある音だ。表情はしなやかさもあり、ローレベルのこまやかさと、中高域のキャラクターが、このアンプのメリットだろう。表情はおとなしく反応も穏やかであるが、低域はもう少し積極さがほしい。細部はよく出るが、全体のまとまりでは、いまひとつ説得力が必要だろう。

サンスイ AU-α907L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
演奏会場の豊かなホールトーンを充分に聴かせる音場感情報がたっぷりとある音が特徴。スピーカーとアンプの低域のエネルギーバランスが少し崩れ気味で、本来の安定感のある低音にならない面があり、プログラムソースにより、トータルバランスはかなり変る。「レクイエム」は適度にまとまるが「コリオラン」は雰囲気型で密度不足。

アキュフェーズ E-305

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

パイオニア S-1000Tとの相性
比較的スムーズで滑らかな音が楽しめそうな組合せであるが、相性は悪いタイプである。軟調で質感が甘い低域と、高域に向かって下降気味の高域は、穏やかなバランスを聴かせるが、反応が鈍く、プログラムソースの特徴を抑え気味にし、単調な音楽として聴かせる傾向が強い。それぞれの低域の個性の違いがポイントだろう。

マランツ PM-95

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
低域が柔らかく、高域が硬質で独特のホーン型らしいキャラクターを持つスピーカーの特徴を標準的に引き出すアンプである。基本的に無駄な広帯域再生を指向しない安定感の良い音を特徴とするメリットが活かされた鳴り方である。A級動作は音と音の間がきれいに分離して聴ける印象があり、素直でプレゼンスの良さが魅力だ。

サンスイ AU-α907L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
タンノイ独自のコリっとした硬質な音の魅力とは異なるが、温故知新的な印象がある音場感たっぷりのプレゼンスの良さ、Dレンジ的な伸びの良さと、独自の音像定位のシャープさが共存した新鮮な感覚の音だ。大編成の曲のfffでも充分に駆動の能力があり、表情もしなやかで豊かだ。プログラムソースの適応性も広く好ましい。

サンスイ AU-X111MOS Vintage

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
固有のキャラクターが少なく、素直で、むしろナチュラルな音が聴かれる。柔らかさ、しなやかさが他のアンプにない音の特徴で中域に適度な硬質感があり、巧みにバランスを保つ音として聴かせる。音場感は最低限の情報量で、音像は大きくフワッとソフトにまとまる。スピーカーとアンプの相性の良さを感じさせる好例である。

アキュフェーズ E-305

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
雰囲気のある柔らかく滑らかな音を指向したタイプである。音の粒子は滑らかではあるが、やや粗粒子型で、低域はソフトフォーカス気味の軟調であり、高域は粗い質感の音となりやすいようだ。音の表情は真面目型だが、単調な傾向があり、やや突っ込み不足の傾向がある。バランス的には中域が薄く、音場感は平面的である。

ラックスマン L-570

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
L540と比較すると、スピーカーの全帯域に制動がかかり、総合的バランスはかなり自然になる。低域にスピーカーエンクロージュアの箱鳴り的な音が残るが、中域から高域は硬質で、音の芯をクッキリと出す傾向がある。音場感の広がりは最低限度で、ステレオイメージと言うには明らかに情報不足で、音像は相当に肥大型だ。

サンスイ AU-α707L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ビクター SX-700との相性
響きが豊かでサロン風なイメージの音を聴かせる。バランス的には中域が薄く、SPのキャラクターを抑えるが、やや実体感は不足気味となる。柔らかい低域と一種の個性的な輝きを潜在的に持つ中高域は、ほどよくバランスを保つ。各プログラムソースを基本的に自分の音として聴かせる傾向が強く、小音量時にも楽しめそうな音だ。

アキュフェーズ E-405

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
スピーカーに対するアンプの制動力は、E305と比べ大幅に向上し、とくに中低域を抑える効果は大きい。低域はまだ独特の個性が残るが、帯域バランスはほぼ平均的なレベルとなり、安定した印象が加わって、力強さも相当に聴きとれるようになる。音場感は最低限で左右方向の広がり感はあるが、音像は平面的に横一線型に並ぶ。

ラックスマン L-540

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
聴感上での帯域バランスは、ナローレンジ型のまとまりとなり、柔らかい低域と硬質な高域が2ウェイらしいバランスを聴かせる。音の傾向は薄く、軽く、聴きやすいタイプで、スケールは小さくまとまるようだ。音の反応は穏やかで、パルシヴな音は少し鈍く聴こえる。音像は小さいが、スピーカーの奥に引っ込んで定位する。

サンスイ AU-α707L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

セレッション SL6Siとの相性
ナチュラルで色づけが少なく、音場感的な情報量がたっぷりとあり、ステレオフォニックにプレゼンスよく音を聴かせる。バランス的には中域のエネルギー感が抑えられた音で、Pトリオは響きが過剰気味となり、かなりサロン風なまとまりだ。大編成の曲ではスケール感があるが、集中力が不足気味となり、実体感が今一歩だ。

サンスイ AU-α907L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
アンプ本来の響きの豊かさとスピーカー独自の低音とが相乗効果として働き、低音の質感が正しく再生されず、ボッテリとした音になる。音場感的広がり、音像定位ともに不明瞭となり、プレゼンスで問題のあるタイプだ。音の表情はアンプ側でも抑え気味のため、いまひとつ冴えない面が残るようだ。全体に引き締まったソリッドさが必要だ。

アキュフェーズ E-305

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
低域に独特の強調感がある個性的な音である。時間をかけて聴き込んでいくと、音は次第に姿・形を変え、音場感もかなりナチュラルになっていく。少し音量を上げ気味にして鳴らすと、音に活気が出て違和感が少なくなる。低域はブーミーであるが XPL200の特徴の一部が聴きとれるようになるが、音像は大きく、音は薄い。

ラックスマン L-540

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

JBL XPL200との相性
独特の個性ある低音が特徴の音である。聴感上での低域レスポンスはかなりウネリ気味で、ダイレクトな直接音成分をかなり抑えた、モワッとしたプレゼンスだ。音場感は、狭いというよりは、マルチモノ的で、音場感情報が少なく、左チャンネルの音が聴こえるような音である。結果としての相性は悪く、制動不足が問題か。

パイオニア A-838

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

セレッション SL6Siとの相性
まず感じるのは「レクイエム」で、録音空間の左右の広がりや前後の奥行きがコンパクトなこと。このことはPトリオでも同様。響きよりも楽器自体の音の強さを表す傾向だと聴けた。それが顕著なのは「コリオラン」で、低音部の重いうなりをぐいぐいと押し出す。6Siが急に元気になった感じがした。

ササキアコースティック CB160M-ST, LA-1

早瀬文雄

ステレオサウンド 93号(1989年12月発行)
「オブジェとしてのミュージックシステム」より

 どれほど長い時間聴き続けても、演奏が終わったとたん、それがどんな音だったのか、うまく思い出せないようなオーディオ装置というものがある。
 ぼくがその夜、久しぶりに聴いた彼の音がそうだった。まずいことは何もないはずなのに、あきらめきったように淡白な響きで演奏そのものまでが平面的になっているように感じられた。それは、ちょっとした気のせいだったのかもしれないが、それにしても彼の中で何かが変わりつつあることはたしかなようだった。
 リスニングルームからダイニングルームへ移ると、調光器で柔らかく照らされた空間にコーヒーのいい香りが漂っていた。
 キッチンから彼の細君が細い腕で重たそうにコーヒーポットを抱えて出てきた。彼女のことはぼくも学生時代からよく知っていた。ほっそりと背の高い、個性的な美人だ。二人は結婚してから、そろそろ一年になるはずだった。背後ではバッハの無伴奏チェロ組曲がとても小さな音でなっていた。不思議に部屋の隅々までよく広がる、古典的で素朴な響きだった。美味しいコーヒーが味覚を手厚くもてなしてくれてはいたが、ぼくの意識はすでに音楽そのものに奪われていた。それはあまりにも懐かしい演奏だったのだ。
 サイドテーブルの横にあった棚の中に、ぼんやり紫色の光を発する円盤状の奇妙な物体が置いてあった。彼女は立ち上がると、その物体についていた小さなつまみをほっそりとした指でそっと触れた。
 その瞬間、音楽がやんだ。
 そんな風にして、ぼくはその物体がアンプであることを知った。
 なつかしさが現実感を喪失させ、感情がゆっくりと逆転していくと、そのアンプの奇妙な形態は、まるで小さなタイムカプセルのように見えはじめた。
 どんなスピーカーが鳴っているのかな、とふと思った。音が鳴りやんでも静かに記憶に残るような懐かしい響きだった。
「おもちゃさ」と彼がいった。そして、「彼女がみつけてきたんだ」、そういって、薄く笑った。
 彼女はコーヒーのおかわりをついだ後、アンプのつまみに触れた。ジョン・レノンの「イマジン」がそっと鳴り始めた。その瞬間、ぼくの中で心が軋む音がして、わずかな痛みがあとに残るのがわかった。
 彼女はぼくがここへやって来た本当の理由を知っていたのかもしれない。そう思って振り返ると、棚の上に小さなガラスの球体が二つ、適当な距離をおいて並んでいるのが見えた。スピーカーだった。
 それは何かを伝えようとしている。透明な瞳のオブジェのように見えた。
 ぼくはそのことの意味をぼんやりと考えながら、暗い夜道、遠い家路についた。

サンスイ AU-X1111MOS VINTAGE

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 AU−Xシリーズは、アンプのサンスイを象徴するスーパープリメインアンプとして、約10年前に登場した。AU−X1が、その最初のモデルである。
 このシリーズの概略の発展プロセスを眺めると、2年後の昭和56年に、AU−X11ヴィンテージとして新製品が登場した。
 このモデルで初めて、ヴィンテージというオーディオでは初めての言葉が、音楽愛好家への最高の噌り物という意味を込めて使われた。
 このAU−X1からAU−X11ヴィンテージが、いわばアナログディスク時代のスーパープリメインアンプであり、微小入力のMC型カートリッジの音を色づけなくストレートに増幅をして、強力なパワーアンプで、スピーカーを充分にドライブしようというコンセプトに基づく製品である。
 そして、CDがデジタルプログラムソースとして定着し、新しくAVが話題をにぎわせた60年に登場したAU−X111MOSヴィンテージは、新世代のサンスイのスーパープリメインアンプであり、デザイン、機能、性能なども全面的にリフレッシュした意欲作である。
●洗練されたデザイン
 今回、AU−X1111(ダブル・イレブン)MOSヴィンテージとして発売されたモデルは、AU−X1以来の単独使用が可能な強力パワーアンプに、付属機能を加えたパワーアンプ中心のプリメインアンプという基本構想に、AU−X111MOSヴィンテージでのパワーアンプのバランス型化、AV入力対応などを受け継いだスーパープリメインアンプの最新鋭機である。
 新生サンスイの新しいエンブレムをつけたパネルフェイスは、基本的な変更はないが、四面ラウンド仕上げのリアルローズウッド使用のサイドバネルの効果で、雰囲気は、AU−X111MOSヴィンテージより一段と大人っぼく、洗練された印象に変わった。
 本機の最大の技術的特徴は、バランス型パワーアンプの採用にある。ブリッジ接続とも呼ばれるこの方法は、サンスイがパワーアンプB2301で国内で初めて採用したものだ。
 バランス型パワーアンプは、アースに無関係に信号を扱うことができるため、外部雑音の影響が少なく、アンプで発生する歪を出力段でキャンセルできるなど、いわば理想のパワーアンプに一歩近づいた方式ではある。そのためには+信号系と−信号系の2系続のパワーアンプが必要であり、電源部も2倍の容量が要求されるなど、経済性ではかなりのデメリットがあるものだ。ちなみに、アースに依存しない点で、BTL接続とは似て非なるものである。
 パワー段は、MOS−FETを採用しているが、AU−X111やこれに続くAU−α907MOSリミテッドなどでの成果を踏まえて、初段からドライブ段までを全てカスケード型アンプ構成として、MOS−FETの使いこなし上でのノウハウが導入されている。
 大幅に変更が行われたのは、電源部とのことで、新開発電源トランスと電源コンデンサーによる動的なスピーカー駆動能力の向上、新設計の回路を十分に活かすためのコンデンサー、抵抗など新開発部品の積極的な採用などの他、ムクの銅を削り出した重量級インシュレーターにも注目したい。
 機能面では、高出力型MCにも対応可能な入力感度20mVのMM専用フォノイコライザー、2系統のプロセッサー人力、3系統のライン入力、3系統のテープ/ビデオ入出力をはじめ、パワーアンプダイレクト入力部での2系統アンバランス入力と1系統のバランス入力など、14系統の豊富な入力端子を備える。
 音質対策上での細かい部分ではあるが、従来のAU−X111でヘッドフォン回路の電源とビデオ部のそれとが共通であった点が改良され、ビデオ信号系とのアースによる干渉は排除された。
 このアンプの音はAU−X11に始まり、AU−X111、AU−α907MOSリミテッドと、サンスイ高級プリメインアンプに流れる、スムーズで音の粒子が細かく、流れるような音を聴かせる方向の音だ。
 しかし、基本的に異なるのは、柔らかいが充分に駆動能力があり、低域に代表される、SN比の高さに裏付けられた分解能の高さが、従来にない新しさだ。
 そのため、特に率直に柔らかい雰囲気をもって見通せる奥行き方向のナチュラルさが聴きどころだろう。趣味のオーディオにとって音とデザインの相関性は重要な部分だが、本機のまとまりはこの点も見事だ。