Category Archives: プリメインアンプ - Page 4

ラックスマン L-570

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
スケールは小さく、小柄な音にまとまるが、楽器の編成のあらましはわかる程度の情報量はあり、比較的自然な音場感と奥に引っ込んで定位する小さな音像が特徴。プログラムソースは、小編成の曲で、小さく凝縮してまとまる音の特徴が活かされるが、響きは抑え気味で、音楽に必要な要素を残して整理したイメージの音になる。

アキュフェーズ E-405

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
低域は柔らかく、高域が細身で、ほどよいシャープに特徴がある音だ。表情はしなやかさもあり、ローレベルのこまやかさと、中高域のキャラクターが、このアンプのメリットだろう。表情はおとなしく反応も穏やかであるが、低域はもう少し積極さがほしい。細部はよく出るが、全体のまとまりでは、いまひとつ説得力が必要だろう。

マランツ PM-95

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
低域が柔らかく、高域が硬質で独特のホーン型らしいキャラクターを持つスピーカーの特徴を標準的に引き出すアンプである。基本的に無駄な広帯域再生を指向しない安定感の良い音を特徴とするメリットが活かされた鳴り方である。A級動作は音と音の間がきれいに分離して聴ける印象があり、素直でプレゼンスの良さが魅力だ。

サンスイ AU-α907L Extra

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
タンノイ独自のコリっとした硬質な音の魅力とは異なるが、温故知新的な印象がある音場感たっぷりのプレゼンスの良さ、Dレンジ的な伸びの良さと、独自の音像定位のシャープさが共存した新鮮な感覚の音だ。大編成の曲のfffでも充分に駆動の能力があり、表情もしなやかで豊かだ。プログラムソースの適応性も広く好ましい。

アキュフェーズ E-305

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
雰囲気のある柔らかく滑らかな音を指向したタイプである。音の粒子は滑らかではあるが、やや粗粒子型で、低域はソフトフォーカス気味の軟調であり、高域は粗い質感の音となりやすいようだ。音の表情は真面目型だが、単調な傾向があり、やや突っ込み不足の傾向がある。バランス的には中域が薄く、音場感は平面的である。

サンスイ AU-α707L Extra

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ビクター SX-700との相性
響きが豊かでサロン風なイメージの音を聴かせる。バランス的には中域が薄く、SPのキャラクターを抑えるが、やや実体感は不足気味となる。柔らかい低域と一種の個性的な輝きを潜在的に持つ中高域は、ほどよくバランスを保つ。各プログラムソースを基本的に自分の音として聴かせる傾向が強く、小音量時にも楽しめそうな音だ。

ラックスマン L-540

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

タンノイ Stirling/HWとの相性
聴感上での帯域バランスは、ナローレンジ型のまとまりとなり、柔らかい低域と硬質な高域が2ウェイらしいバランスを聴かせる。音の傾向は薄く、軽く、聴きやすいタイプで、スケールは小さくまとまるようだ。音の反応は穏やかで、パルシヴな音は少し鈍く聴こえる。音像は小さいが、スピーカーの奥に引っ込んで定位する。

サンスイ AU-α707L Extra

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

セレッション SL6Siとの相性
ナチュラルで色づけが少なく、音場感的な情報量がたっぷりとあり、ステレオフォニックにプレゼンスよく音を聴かせる。バランス的には中域のエネルギー感が抑えられた音で、Pトリオは響きが過剰気味となり、かなりサロン風なまとまりだ。大編成の曲ではスケール感があるが、集中力が不足気味となり、実体感が今一歩だ。

パイオニア A-838

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

セレッション SL6Siとの相性
まず感じるのは「レクイエム」で、録音空間の左右の広がりや前後の奥行きがコンパクトなこと。このことはPトリオでも同様。響きよりも楽器自体の音の強さを表す傾向だと聴けた。それが顕著なのは「コリオラン」で、低音部の重いうなりをぐいぐいと押し出す。6Siが急に元気になった感じがした。

ササキアコースティック CB160M-ST, LA-1

早瀬文雄

ステレオサウンド 93号(1989年12月発行)
「オブジェとしてのミュージックシステム」より

 どれほど長い時間聴き続けても、演奏が終わったとたん、それがどんな音だったのか、うまく思い出せないようなオーディオ装置というものがある。
 ぼくがその夜、久しぶりに聴いた彼の音がそうだった。まずいことは何もないはずなのに、あきらめきったように淡白な響きで演奏そのものまでが平面的になっているように感じられた。それは、ちょっとした気のせいだったのかもしれないが、それにしても彼の中で何かが変わりつつあることはたしかなようだった。
 リスニングルームからダイニングルームへ移ると、調光器で柔らかく照らされた空間にコーヒーのいい香りが漂っていた。
 キッチンから彼の細君が細い腕で重たそうにコーヒーポットを抱えて出てきた。彼女のことはぼくも学生時代からよく知っていた。ほっそりと背の高い、個性的な美人だ。二人は結婚してから、そろそろ一年になるはずだった。背後ではバッハの無伴奏チェロ組曲がとても小さな音でなっていた。不思議に部屋の隅々までよく広がる、古典的で素朴な響きだった。美味しいコーヒーが味覚を手厚くもてなしてくれてはいたが、ぼくの意識はすでに音楽そのものに奪われていた。それはあまりにも懐かしい演奏だったのだ。
 サイドテーブルの横にあった棚の中に、ぼんやり紫色の光を発する円盤状の奇妙な物体が置いてあった。彼女は立ち上がると、その物体についていた小さなつまみをほっそりとした指でそっと触れた。
 その瞬間、音楽がやんだ。
 そんな風にして、ぼくはその物体がアンプであることを知った。
 なつかしさが現実感を喪失させ、感情がゆっくりと逆転していくと、そのアンプの奇妙な形態は、まるで小さなタイムカプセルのように見えはじめた。
 どんなスピーカーが鳴っているのかな、とふと思った。音が鳴りやんでも静かに記憶に残るような懐かしい響きだった。
「おもちゃさ」と彼がいった。そして、「彼女がみつけてきたんだ」、そういって、薄く笑った。
 彼女はコーヒーのおかわりをついだ後、アンプのつまみに触れた。ジョン・レノンの「イマジン」がそっと鳴り始めた。その瞬間、ぼくの中で心が軋む音がして、わずかな痛みがあとに残るのがわかった。
 彼女はぼくがここへやって来た本当の理由を知っていたのかもしれない。そう思って振り返ると、棚の上に小さなガラスの球体が二つ、適当な距離をおいて並んでいるのが見えた。スピーカーだった。
 それは何かを伝えようとしている。透明な瞳のオブジェのように見えた。
 ぼくはそのことの意味をぼんやりと考えながら、暗い夜道、遠い家路についた。

サンスイ AU-X1111MOS VINTAGE

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 AU−Xシリーズは、アンプのサンスイを象徴するスーパープリメインアンプとして、約10年前に登場した。AU−X1が、その最初のモデルである。
 このシリーズの概略の発展プロセスを眺めると、2年後の昭和56年に、AU−X11ヴィンテージとして新製品が登場した。
 このモデルで初めて、ヴィンテージというオーディオでは初めての言葉が、音楽愛好家への最高の噌り物という意味を込めて使われた。
 このAU−X1からAU−X11ヴィンテージが、いわばアナログディスク時代のスーパープリメインアンプであり、微小入力のMC型カートリッジの音を色づけなくストレートに増幅をして、強力なパワーアンプで、スピーカーを充分にドライブしようというコンセプトに基づく製品である。
 そして、CDがデジタルプログラムソースとして定着し、新しくAVが話題をにぎわせた60年に登場したAU−X111MOSヴィンテージは、新世代のサンスイのスーパープリメインアンプであり、デザイン、機能、性能なども全面的にリフレッシュした意欲作である。
●洗練されたデザイン
 今回、AU−X1111(ダブル・イレブン)MOSヴィンテージとして発売されたモデルは、AU−X1以来の単独使用が可能な強力パワーアンプに、付属機能を加えたパワーアンプ中心のプリメインアンプという基本構想に、AU−X111MOSヴィンテージでのパワーアンプのバランス型化、AV入力対応などを受け継いだスーパープリメインアンプの最新鋭機である。
 新生サンスイの新しいエンブレムをつけたパネルフェイスは、基本的な変更はないが、四面ラウンド仕上げのリアルローズウッド使用のサイドバネルの効果で、雰囲気は、AU−X111MOSヴィンテージより一段と大人っぼく、洗練された印象に変わった。
 本機の最大の技術的特徴は、バランス型パワーアンプの採用にある。ブリッジ接続とも呼ばれるこの方法は、サンスイがパワーアンプB2301で国内で初めて採用したものだ。
 バランス型パワーアンプは、アースに無関係に信号を扱うことができるため、外部雑音の影響が少なく、アンプで発生する歪を出力段でキャンセルできるなど、いわば理想のパワーアンプに一歩近づいた方式ではある。そのためには+信号系と−信号系の2系続のパワーアンプが必要であり、電源部も2倍の容量が要求されるなど、経済性ではかなりのデメリットがあるものだ。ちなみに、アースに依存しない点で、BTL接続とは似て非なるものである。
 パワー段は、MOS−FETを採用しているが、AU−X111やこれに続くAU−α907MOSリミテッドなどでの成果を踏まえて、初段からドライブ段までを全てカスケード型アンプ構成として、MOS−FETの使いこなし上でのノウハウが導入されている。
 大幅に変更が行われたのは、電源部とのことで、新開発電源トランスと電源コンデンサーによる動的なスピーカー駆動能力の向上、新設計の回路を十分に活かすためのコンデンサー、抵抗など新開発部品の積極的な採用などの他、ムクの銅を削り出した重量級インシュレーターにも注目したい。
 機能面では、高出力型MCにも対応可能な入力感度20mVのMM専用フォノイコライザー、2系統のプロセッサー人力、3系統のライン入力、3系統のテープ/ビデオ入出力をはじめ、パワーアンプダイレクト入力部での2系統アンバランス入力と1系統のバランス入力など、14系統の豊富な入力端子を備える。
 音質対策上での細かい部分ではあるが、従来のAU−X111でヘッドフォン回路の電源とビデオ部のそれとが共通であった点が改良され、ビデオ信号系とのアースによる干渉は排除された。
 このアンプの音はAU−X11に始まり、AU−X111、AU−α907MOSリミテッドと、サンスイ高級プリメインアンプに流れる、スムーズで音の粒子が細かく、流れるような音を聴かせる方向の音だ。
 しかし、基本的に異なるのは、柔らかいが充分に駆動能力があり、低域に代表される、SN比の高さに裏付けられた分解能の高さが、従来にない新しさだ。
 そのため、特に率直に柔らかい雰囲気をもって見通せる奥行き方向のナチュラルさが聴きどころだろう。趣味のオーディオにとって音とデザインの相関性は重要な部分だが、本機のまとまりはこの点も見事だ。

アカイ AM-A90

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 アカイからAM−A70とAM−A90の2モデルのプリメインアンプが発売された。アカイ・ブランドのアンプ類といえば、海外での評価が高く、ヨーロッパでは、知名度の高いブランドとしてオーディオショウでのブースの盛況ぶりに驚かされたものだが、本格的なプリメインアンプとして国内で発売されたのは、思えばこれが最初であろう。
 ブラックフェイスのパネルに標準的な440mm幅という外観は、流行かもしれないが画一的であり、各社間、各機種間のアイデンティティが薄いものだが、今回のアカイのように、単品コンポーネントのアンプのジャンルに初登場的な参入ともなれば、外観やブランドイメージに関係なく、本質的な基本性能と音質などで既存のメーカーと戦える、という意味では、ブラックフェイス一辺倒の傾向は、むしろ歓迎すべきものと思われる。
 新製品の技術的ポイントは、オープン・ループ・サーキット搭載にあるようだ。
 内容的には、オーバーオールのNFBループが存在しない、シンプルでストレートな回路のことで『ダイナミックな特性に優れ、NFBアンプでは再生できなかった音楽情報が再生される』という、やや過激な表現で説明されている。
 今回試聴した製品は、上級機種のAM−A90である。プリメインアンプとしては、ビデオ系の映像と音声の入出力を備えた、いわゆるAV対応型で、アカイのブランドイメージとしては当然の帰結だ。
 フォノイコライザーはMC型、MM型切替使用のタイプで、MC型使用時のカートリッジロード抵抗は100Ωであり、最大許容入力25mV、MM型使用時、定格入力感度2mVに対し最大許容入力250mVと、本格派の設計が見受けられる。
 パワーアンプ部は、このところひとつの動向になりかかっているパワーMOS型FETを出力段に採用し、145W+145W(6Ω負荷時)のパワーをもち、NFBレスのオープン・ループ・サーキットを採用している。電源部は、電源トランスにトロイダルトランスを採用しているが、ジュニアモデルのAM−A70と共通外形寸法の筐体を採用しながら、パワーアップをしたための対処であろう。
 機能面は、パワーアンプにストレートに信号を送るラインストレートスイッチ、独立型RECセレクターなど標準的装備だ。
 AM−A90は、素直で、基本を十分に押えた設計が感じられる、適度にストレートで、色付けの少ない音をもっている。フォノイコライザーは、昨今では軽視されがちだが、スクラッチノイズの質と量も水準以上で、よく調整されている。現在の技術と材料を駆使し、真面目に作れば、それなりの成果が確実に得られるという好例であり、いわゆる音づくりに専念しがちな先発メーカーへの小気味よい警鐘という印象。

サンスイ AU-D707XCD DECADE

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 CD時代のオンリーCDプリメインアンプを特徴として、アンプのサンスイから、AU−D707XCDディケードが新発売された。このアンプのもつ意味を簡単にいえば、MC型MM型対応のフォノイコライザーを省略し、CDプレーヤーに代表される、ハイレベルの高クォリティなプログラム専用のシンプル・イズ・ペスト的考え方に徹底した設計ということができる。
 CDプレーヤーが普及するにつれ、CDプレーヤー自体の問題点であるデジタル系のノイズや高周波の不要噂射が、筐体やAC電源を介して、アナログディスクの再生系に影響を与え、音が混濁し、鮮度感を大幅に損うことが次第に認識されるようになっているが、逆に、アナログディスク用のフォノイコライザーアンプが、プリメインアンプの筐体内で、フラットアンプやトーンコントロールアンプなどに影響を与え、CDならではの圧倒的な情報量や鮮度感、反応のシャープさを損っているのも事実で、最近のようにアナログディスクを使わずCD専用の使い方が増えると、このフォノイコライザーの妨害は無視しかねる問題だ。
 ちなみに、CD専用の使い方の場合に、フォノ入力に、最近では少なくなったが、入力をショートするショートプラグ(シールド線をプラグの近くで切り、芯線と外被を結んで作ることもできる)を挿して、再びCDの音を聴いてみれば、結果は明瞭だ。高域が素直に伸び、爽やかで、透明感のある音に変わっているはずだ。これは、注意して聴かなくても容易に判かる差だ。
 これを徹底して追求すると、フォノイコライザーアンプを取り外すことになるわけだ。因果関係は明瞭で、問題点はないが、フォノイコライザーアンプを省くことには慣例的に決断を要求されることになる。
 その他の変更点は、信号系が基板経由から信号ケーブルに、ヒートシンクと電源コードの強化、4連ボリュウムとアルミ・ムク削り出しツマミ採用、ランプのDC点灯化などの他、入力系の8系統化などがあり、かなり手作業の必要な高性能化である。
 CDダイレクト時には、専用ボリュウム経由で信号は、ツインダイヤモンドXバランスアンプに、他のアンプをバイパスして送られるため、約10dBのゲイン差があり、通常使用レベルでの音量差を少なくする特殊カーブを採用している。なお、CDダイレクト時には、ボリュウムツマミの12時位置にオレンジ色のパイロットランプがつく。
 基本的にCD直接、チューナーetc、TAPEとADAPTORの4系統の入力系があり、それぞれで音質や音色、音場感などが変わるが、変化が問題ではなく、この変化を利用して使うのがユーザー側の、素直な対応というべきであろう。CD直接が、たしかにナチュラルで色付けは少ないが、少し内省的ソフトさがある音だ。平均的な要求の場合には、アダプター入力やテープ1/2も適度に輪郭がつき楽しめる。

NEC A-10 TYPEIII

井上卓也

ステレオサウンド 78号(1986年3月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 NECのプリメインアンプA10は、昭和58年6月に、独自の構想に基づいたリザーブ電源方式を採用し、一躍NECオーディオの実力と魅力を世間に認めさせる、いわば画期的な成功をおさめたモデルである。昭和59年9月には、電源部を新リザーブII方式に発展させ、A10II
に改良されている。今回、二度目の大改良が加えられ、このタイプのファイナルモデルとでもいうべきA10TypeIIIとして発売されることになった。
 シンプル&ストレート思想は、かなり撤底され、イコライザー段はMM型専用。ノーマルの使用状態では、CD、TUNER、AUXなどの入力は、TAPE1/2を含み、セレクタースイッチ、ボリュウム、左右独立のバランス調整を通るのみで、ダイレクトにパワーアンプに送られる設計だ。
 機能面では、モード切替、トーンコントロール、テープモニター系が省略され、TAPE1と2は、ファンクション切替に組み込まれた。
 次に、プリアンプとパワーアンプを独立して使うための切替スイッチが設けられており、この場合のみに利得18dBのフラットアンプが信号系に入り、それを経て、プリアウト端子に送られる。フラットアンプ出力部には、別に利得0dB、位相が180度回る反転アンプがあり、独立した出力端子をもっており、この2種の出力端子とパワーイン端子間を外部接続で使い分ければ、左右チャンネル同相で、入出力の位相を正相にも逆相にもコントロール可能。この面での位相管理が行われることが少ないCDソフトヘの対応や、スピーカーの+端子に電池の+をつなぐとJISとは逆にコーンが引っ込む逆相型スピーカーや、アナログカートリッジでの正相型や逆相型に対応できるという、現状のオーディオの盲点をついた設計が非常にユニ−クである。なお、外部接続でプリアンプとパワーアンプを接続するときのフラットアンプの利得をキャンセルするアッテネーターがパワーアンプ入力にあり、利得は一定である。その他の機能にフォノダイレクトがあるのも、シンプル&ストレイト思想の表われだ。
 パワーアンプは、低負荷時のドライブ能力が向上し、約20%強化された電源部のバックアップで、ダイナミックパワーは8Ωで80W+80W、2Ωで320W+320Wの完全保証は見事な成果である。
 機構設計面では、金属製脚部が通常の4脚式の他、3脚式も可能で、設置場所でのガタや本体のネジレが解消され、音質上で利点は多いとのこと。
 A10TypeIIIは、穏やかであったA10IIと比較して、かつてのA10登場時点での鮮明で密度感があり、質的に高い音を再び現時点で甦らせたようなクォリティの高い音を聴かせてくれる。音質面での見事な成果と比較をすると、デザイン面の特徴は、古くなりすぎた印象だ。

サンスイ AU-X111 MOS VINTAGE

井上卓也

ステレオサウンド 78号(1986年3月発行)
「興味ある製品を徹底的に掘り下げる」より

 サンスイのプリメインアンプは、現在のシリーズの出発点であるAU607、707が発売されてから昨年で10周年を迎え、新しく10年後に向かって出発する意味をも含めて、DECADEシリーズとしてスタートしたのだが、この同じモデルナンバーを基本的に使うという意味での超ロングセラーは、プリメインアンプの歴史に残る快挙というべきであろう。
 これらのシリーズの製品は、基本的に607、707、907の3モデルをベースに、ときにはシリーズのジュニアモデルに相当する507を加えて発展をしてきた。そしてこのシリーズとは別に、プリメインアンプのスペシャリティモデルを随時開発してきたことも、同社の特徴だ。同社には、古くは管球アンプの時代の末期に、当時の一般的なプリメインからはとびぬけた存在で、トップランクプリメインアンプとして名声を得たAU111があった。07シリーズになってからでも、管球式時代のAU111的存在として、AU607/707に続く第2世代のAU−D607/D707/D907の時代に、AU−X1があり、D607F/D707F/D907F時点でのAU−X11が最近の例である。
 今回、AU−X11以来しばらくの期間をおいて、久し振りにデジタル/AV時代に対応する最高級プリメインアンプAU−X111MOS・VINTAGEが開発され、発売されることになった。
 この111という伝統的なモデルナンバーを持つ、プリメインアンプのトップランクモデルの登場を迎えるにあたり、温故知新的な意味を含めて、AU−X1、AU−X11の特徴を簡単にチェックしてみよう。
 まずAU−X1は、動的な歪として当時話題になったTIM歪やエンベロープ歪を低減でき、強力なドライブ能力をもつ新回路方式として、サンスイが開発したダイヤモンド義回路をAU−D607/D707/D907シリーズの成果として受け継いでいた。そして、高級アナログディスクとしてダイレクトカッティングが定着しはじめるなどのプログラムソース側のダイナミックレンジの拡大に対応し、ハイパワーへの要求にも応えるためにへ当時のプリメインアンプとしては異例ともいえる160W+160W(8Ω)のパフォーマンスを誇る製品として誕生した。当然、物量投入型の伝統的な設計方針は電源部に強く反映し、大小2個の電源トランスを使った左右独立、各ステージ独立型の8電源方式を採用したことでも話題になった。
 ブロックダイアグラム的に信号の流れを見ると、MCヘッドアンプ、フォノイコライザーアンプ、トーンコントロールを持たないフラットアンプとパワーアンプの4ブロック構成である。また、パワーアンプへは切り換えスイッチでダイレクトに信号を送り込める点が最大の特徴である。
 機能面もユニークな構想に基づくものだ。基本的には、信号系のシンプル化、ストレート化がポイントで、単純機能のプリアンプとハイパワーアンプを一体化し、同社が名付けたスーパーインテグレート型という構成を採る。前面パネルに左右チャンネルが独立したパワーアンプの入力ボリュウムコントロールがあり、トーンコントロールやモードセレクターなどは省かれているが、フォノイコライザーの出力をDC構成のフラットアンプをジャンプさせ、パワーアンプに直接入れる、現在でいうフォノダイレクト入力機能が目立つ特徴だ。
 次の、AU−X11は、AU−D607F/D707F/D907Fの07シリーズ第3世代の特徴であり、画期的な新技術として、スーパー・フィード・フォワード方式を採用している。このスーパーFF方式とは、NFアンプ以前から、歪低減化の回路として注目されながら、実用化の難しかったフィード・フォワード方式を、サンスイが独自の方法で実用化したものだ。
 ちなみに、この時代のAU−DD607Fを例にとれば、頭のDはダイヤモンド作動方式、末尾のFがスーパー・フィード・フォワード方式を象徴するネーミングだ。
 外観上は筐体両サイドにウッドボンネットが附加され、新しくVINTAGEの名称がこのときに付けられたが、パネル面の基本レイアウトはAU−X11譲りであり、機能面、4ブロック構成のMCヘッドアンプ/フォノイコライザー/フラットアンプとパワーアンプ、電源関係も、ほぼAU−X1を受け継いでいる。
 AU−X11でもっとも大きく変わったのは、筐体コンストラクションである。電気系の増幅部と同じウェイトで、音質を左右する要素である機構設計は、大幅に変更された。大型ヒートシンクと電解コンデンサーの位置が入れ替わり、限定生産モデルAU−D907リミテッドで採用された銅メッキシャーシ、ブロンズメッキネジなどがマグネティツク歪対策として使われ、筐体ボンネット部もアルミ製という凝った設計を採る。
 今回のAU−X111MOS・VINTAGEでは、管球時代の名作AU111のモデルナンバーと、AU−X11のVINTAGEに加えて、MOSの文字が示すように、サンスイ初のMOS・FET使用のパワー段が目立つ。
 回路構成上の他の特徴は、パワーアンプB2301で開発されたバランス型パワー段構成が最大の特徴だろう。
 この方式は、第五世代のEXTRAの時代の末期に、AU−D907F・EXTRAに、プリドライバー段だったと思うが、電源回路のアースからのフローティング化が行われ、音質的な利点が大きかったことからこれが採り入れられ、次世代のAU−D607G・EXTRAから始まる、グランドフローティングを意味するGのイニシャルを付けた新シリーズに発展した。これが進化してパワー段に及び、独自のダイヤモンド差動回路の特徴と結びついて、セパレート型パワーアンプB2301のバランス型パワー段が開発されたものと推測できる。
 この成果が、AU−D507Xに始まる4機種のシリーズに導入され、現在のDECADEシリーズに受け継がれている。
 デザイン的に新しいサンスイの顔をもつ本機は、その基本はセパレート型コントロールアンプC2301から受け継いでいる。異なった材料のもつ質感を巧みに活かしたデザインのまとまり、加工精度やフィニッシュの見事さなどは、サンスイ製品の最高峰であり、大きな魅力である。
 半分を大きなガラスで覆われたフロントパネルは、中央部が全幅にわたり傾斜面になっている。ここに角型のプッシュボタンスイッチを一列に配して、フォノ、CD、TUNER、LINE1/2の5系続の入力を切り替えるファンクションセレクターを丁甲央右側に、TAPE/VIDEO1/2/3の3系統の切り替えスイッチを左側に配置してある。大型のボリュウムツマミの下は、右端から、−20dBのミューティング、ボリュウムが−40dB位置の時に低域の200HZを+2dBほど上昇させるプレゼンス、TAPE系とは別系統で、グラフィックイコライザーやエキスパンダーなどに利用でき、2系統でシリーズにも使えるプロセッサー関係の3個のスイッチがあり、ファンクションとTAPE/VIDEO系スイッチとの間は、右側の大きいプッシュボタンがサブソニックフィルター、左側の小さいほうが、TAPE/VIDEOとSOURCE切り替えである。
 この傾斜スイッチ部分は、上部のガラスパネルの裏面から間接照明的にやわらかく照明され、ファンクションなどのレタリングとともに渋く浮き上がって見せるようになっており、シャワーライトと名付けられている。漆黒のパネルに際立つインジケーターと共に、雰囲気の優れたデザインで、従来の男っぼい無骨さが一種の魅力となっていたAU−X1とは、隔世の想いがするほどの変身ぶりである。
 パネル面の下段は、右端にLINE2用のフロント入力端子があり、リアパネルのLINE2入力とはスイッチで切り替え可能で、LINE3とも考えられる人力だ。続く3個のロータリースイッチは、右からRECセレクター、バランス調整、パワーアンプのダイレクト入力をバランス/インテグレート/ノーマル入力の1と2に切り替えるパワーアンプ・ダイレクト・オペレーションスイッチ。次の2個のツマミが独立して動作する左右のパワーアンプレベル調整。その左側に3系統のスピーカースイッチ、電源スイッチと並んでいる。
 筐抜構造は、ボンネットのフロントパネル寄りに幅の狭いウッドを配し、左右の両サイドにアルミ引抜材を採用し、フロントパネルのガラス面と美しい調和を見せてくれる、オリジナリティの豊かなデザインだ。
 現実にこの外形寸法をもつブリメインアンプとなると、試聴室レベルではさほどではないが、家に持って帰ると大きさに唖然とさせられたりするが、このAU−X111では無用に大柄な印象がなく使いやすいのは、デザインの成果に他ならない。
 一方、放送衛星も現実のものとなりつつあり、DATも年末には発売されるというデジタル時代、AV時代に備えて、本機ではVIDEO入力系も加わっているために、リアパネルの入出力系は複雑をきわめている。中でも、パワーアンプダイレクト入力時のバランス入力用のキャノンコネクターを左右独立で2個、スピーカー出力用に1系続(左右独立で2個)、計4個備えていることが、プリメインアンプのリアパネルとしては大きな特徴だ。
 マルチ入力に対応する豊富な入出力系と、パワーアンプセクションへ直接入力が加えられるというコンセプトによる本機の信号系の流れをチェックしてみよう。
 フォノ入力系は、MCヘッドアンプは省略され、MMカートリッジ専用である。この選択は、高級機では、昇圧手段を含んだものがMCカートリッジの音という考え方をすれば当然で、汎用型のMCヘッドアンプは不要と考えればよい。
 CD、TUNER、LINE1、REARとFRONTのLINE2からの入力は、フォノイコライザー出力とともに、ファンクション切り換えスイッチに入り、TAPE/VIDEO切り換え、プロセッサー入出力切り換え、ミューティングを通り、バランス調整、プレゼンス付マスターボリュウム、サブソニックフィルターを経由して、フラットアンプに送られる。
 別系統として、RECセレクターがあり、
これはCD、TUNER、SOURCE3→1、2→1のコピーが選択できる。また、新設されたVIDEO信号系は、入力が1、2、3、の3系統、出力がVIDEOとMINITORであり、VIDEO信号系のオーディオ系への影響による音質化対策として、リアパネルのピンジャック背面にICスイッチを置き、アンプ内部での配線の引き回しを一切行わず、このIC用の電源部も独立した専用トランスが採用され、VIDEO系の影響は最低限に抑える設計である。
 フラットアンプ出力は、パワーアンプ・ダイレクト・オペレーション・スイッチを経由してパワーアンプに入る。オペレーションスイッチは、バランス、インテグレードとノーマル1、ノーマル2人力に切り替わり、バランスとノーマル入力時に、フロントパネルのパワーアンプ・レベル調整が働く設計である。
 パワーアンプ出力は、2系統のスピーカーをリレーコントロールで切り替え可能。ヘッドフォンアンプはバランス型出力段の+位相側から信号を受け、ヘッドフォンをジャックに挿入したときのみ電源がはいる。
 回路設計上での大きなテーマは、CDソースのもつ95dBを越すダイナミックレンジをカバーするために、高いSN比を獲得することが最大のものであり、パワー段のMOS・FET採用も、微小信号レベルでの静けさを追求した結果ということだ。
 フォノイコライザーアンプは、ディスクリート構成DCアンプで、20Hz〜300kHz±0・2dBの偏差を誇る。
 フラットアンプ部はコントロールアンプC2301と同等の、純A級カスコード付プッシュプル構成。
 パワーアンプは、初段姜動増幅で、2組のダイヤモンド差動アンプを採用し、パワー段にMOS・FETを2個並列で、バランス型とした8個使用であり、入力部にバランス型入力を持つことが特徴である。
 電源部は、左右独立型のパワー段用、同じく左右独立型のプリドライバー段用と、安定化回路をもつフラットアンプとフォノイコライザー用、プロテクター用の5系統が大型トランスから給電され、別の小型トランスから、VIDEOアンプ、ヘッドフォンアンプ共用とインジケーターランプ用の2系統が給電されている。
 筐体の機構面では、本体のほぼ中央部に電源トランスを置き、その左右にツインモノ構成的に大型ヒートシンクをもつパワーアンプブロックがあり、フロントパネル側から見て、リアパネルの右側が入力系、左側がスピーカー出力と電源コードというレイアウトで、右側面がフォノイコライザーアンプである。この構成は、ほぼ前後左右の重量配分がとれている利点があり、大型の脚と相まって、安定度が高く音質的にも好ましい設計である。
 機構面での最大のポイントになる、機械的な共振や共鳴については、適度なダンピング処理を含めて、基本から見直し検討されている様子で、ほぼ完全にビリツキをシャットアウトしており、この振動防止対策の完璧さは現在市販されているアンプの中ではベストである。なお、ネジ類は、銅メッキやブロンズメッキをマグネティック歪対策として最初に採用したサンスイながら、本機には特にそのようなものは使っていない。何の理由によるものか、たいへんに興味深い点である。
 マルチ入力対応機では、接続の難易度も大切なポイントだ。フォノなどの入力系は左右が上下配置になっているが、フロントパネルのスイッチが右からフォノ、CDと並び最後がLINE1だが、リアパネルでは、LINE1と2が入れ替わり、フロントパネル側から手探り的に接続するときに少し戸惑いがちである。
 スピーカー端子は新開発の特殊型。キャップ部を取り外し、中央の穴にコードを通し、キャップを、ネジ込むタイプで、両手が必要となり少し使い難い。また、このタイプはコードの先端を単芯線のようにねじったままの場合と先バラの場合では接触が変わり、少し音質が変わることを注意したい。
 電源コードには、極性表示付大電流タイプを使用しているが、ACアウトレット部にもこれに対応した明快な極性マーキングがあればよりいっそう使いやすいだろう。
 フロントパネルのツマミは、感触を重視してすべてアルミ削り出し製である。プッシュボタンスイッチ類は、ノイズもなく、タッチも優れ、フィーリングよくまとめてある。
 入力にデンオンDL304と昇圧トランスをCDP553ESDをつなぎ試聴を始める。すでに数時間電源スイッチはONにしてあり、静的にはウォームアップしているはずだが、動的には不足だ。
 DL304の音は、中城に少し薄さのある広帯域型のレスポンスと、粒子の細かい滑らかな音となるが、やや鮮度感に乏しく見通しもいま一歩の印象だ。そこでしばらくウォームアップを続け、変化を待ってみる。音を鳴らしはじめてから約20分ほど経過すると、まるでモヤが晴れかかった時のように見通しがよくなり始め、音の細部が少し顔を覗かすようになる。ある程度安定するのには、約1時間が必要のようだ。
 ウォームアップしたアナログディスクの音は、軽くしなやかで、質的には充分に磨かれた音である。ただし、全体に表情が抑え気味の印象もあり、アナログディスク独特の、音溝を丹念に針先がトレースする、いわばレコードのメカニズム特有の音を聴かせる方向とは異なる傾向のようだ。音場感的な拡がりはスピーカー間にまとまる。
 CDに切り替える。基本的な音のエンベロープ的な印象や表現力は変わらないが、さすがに分解能が高く、ダイナミックレンジも広く、反応も早くなる。少し聴き込むと、鋭角的なデジタルらしい音のエッジを強調することなく、鮮度感や色彩感をこれみよがしにひけらかすタイプではないことがわかる。基本的クォリティが高く、丹念に磨き込んだ音だけに、もう一歩、使いこなしで追い込んでみたいと思わせるタイプの音である。
 そこで、CD入力をTUNERなどの他のハイレベル入力端子に入れて、音の変化を確認してみよう。TUNER端子では、高域のディフィニッションが不足するが、穏やかでまとまりがよい特徴があり、長時間聴いて疲れない音だ。LINE1端子では、適度に輪郭がクッキリとし、バランスが優れた立派な音。LINE2端子は、REARでは、LINE1の角を丸くした音、FRONTでは、全体に薄味でややリアリティ不足の音と細かい変化を示す。これは、LINE1の音をとりたい。
 これを、パワーアンプに直接入力した時の音と較べると、鮮度感は少し劣るが、適度にエッジの効いた、良い意味でのアナログ的雰囲気がある音で、これは充分に楽しめる音だ。
 充分に音楽信号を入れてウォームアップを完了した時のパワーアンプダイレクトNORMAL・IN1での音は、07シリーズとは異なるが、しっとりとした落ち着きがあり、柔らかくしなやかで、クォリティが高く、やはり高級機ならではの別世界の魅力がある。
 AU−X1の、低域のドライブ能力が抜群に優れ、豪快でエネルギッシュな音、AU−X11の、X1をベースとし、フレキシビリティが増し表情が穏やかで大人っぽくなった音と比較すると、本機の置かれた時代的な背景がみえてくる。AU−X111MOS・VINTAGEならではの、広帯域型のレスポンス、音の微粒子な点、適度にしなやかでフレキシビリティに富み、一種のクールさのある、サラッとしたこの音は、やはり現代のアンプならではのキャラクターといえるだろう。これこそがサンスイ・アンプの将来の方向性を示した新しい音で、サンスイ・アンプの新しい顔を見た思いである。
 価格的にはこれよりも高価格なプリメインアンプが過去も現在も存在しているが、開発コンセプト、デザインと仕上げ、機能と音質操作性と応用範囲の広さなどの総合的なバランスの高さからみれば、この製品は文句なしにトップランクの製品といえるであろう。試聴機は本格的な量産前の製品のためか、気になる箇所も散見されたが、総合的な能力が高く、潜在的に余力が残っているだけに、さらに追い込まれた状態で、じっくりと聴き込んでみたいと思わせるアンプである。

プリメインアンプのベストバイ

菅野沖彦

ステレオサウンド 77号(1985年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・362選コンポーネント」より

 ブリメインアンプの価格帯は3ランクで、10万円未満、10〜20万円、20万円以上と分類されている。そして、プリメインアンプという性格からすると、10万円未満というゾーンが主力であり、10〜20万円は高級機、20万円以上は特殊な超高級機として、その上のセパレートアンプと重複するゾーンであると考えてよいのではなかろうか。人によっては、10〜20万円を主力と考えるかもしれないが、最近のプリメインアンプのCPからすれば、僕は前述のような認識をもっている。特に、79800円という価格のブリメインアンプの質的充実は目覚ましく、単にCPの優れた製品として以上の内容の優れた製品が多いのである。さすがに、これを下廻る価格のものには、本格的なコンポーネントとしては少々不満の残るものが多く、10万円未満とはいっても、現実は79800円に集中したゾーンということになるようだ。
 この10万円未満のゾーンでベストワンとしてオンキョーのA817RXIIを選んだが、このアンプのもつ、高いスピーカードライブ能力と、余裕のある豊かなサウンドクォリティは、かなりの高級級スピーカーを接続しても一応不満の少ない品位をもっているし、極端に能率の低いスピーカーでなければ、広くブックシェルフタイプのシステムを鳴らすのに全く不満のないものだ。他にハーマンカードンのPM655を選んだが、この製品のもつ音の情感は注目に催する。価格はやや割高で、パワー表示からだけ見ると、特にその感が強いが、その音質と、パワー以上のドライブ能力からして、優れたブリメインアンプだと思う。もう一機種、ビクターのAX−S900を選んだが、この滑らかで艶のあるエネルギッシュな音は立派だ。しかし、選に入れなかった中には、これらと全く同列と思えるケンウッドKA990Vなどもあり、何故、これが入っていないのか? と問われると、答えは全く用意出来ない。強いて答えろといわれれば、KA990Vは他の機会に大いに評価して紹介しているので、ここでは他の製品にチャンスを与えたということになるのである。
 10〜20万円のベストワンはヤマハのA2000aである。A2000のリファインモデルだが、音は一長一短。A2000のひよわさはなくなったけれど、その分、情趣はやや希薄になった。美しく、所有する魅力のある高級ブリメインアンプだ。そしてケンウッドKA1100SD、サンスイAU−D907XDなど、いずれも充実した堂々たる製品である。
 20万円以上はマランツPM94をベストとしたが、これとは対照的なラックスマンL560とは比較すら困難だ。L560はクラスAでパワーは小さいが、風格と情緒性では表現しがたい魅力をもつ。PM94のほうがより一般的に強力なアンプではある。

プリメインアンプのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 77号(1985年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・362選コンポーネント」より

 今年のプリメインアンプの注目すべき価格帯は、10万円未満で、製品の内容が非常に高まったことと、20万円以上の価格帯に、セパレート型アンプの下限と競合する性能、音質を備えたモデルが登場してきたことである。
●10万円未満の価格帯
 基本的には、スピーカーシステムでの20万円未満の価格帯に相当するゾーンで、本格派のブックシェルフ型システムなどを充分にドライブしようとすると不満を生じるだろうが、気軽に音楽を聴こうという要求には適度な製品が存在している。
 最激戦価格は79、800円に絞られ、上位7機種中で6機種がこの価格の製品であり、ほとんどが新製品という過密ぶりである。それらのモデルの内容をジックリと見聞きしてみると、前作と比較して明らかに1ランクアップを果している製品があるのが判かる。その第一は、A750aだ。やや線が細く、弱々しさのある前作とは一線を画した、安定感のある充実した音は、かなりの本格派で、ドライブ能力もあり、安心して使える印象が好ましい。
 A817RXIIも特殊なトランスを各所に採用した結果なのだろうが、従来の独特のヌメッとした色彩感が大幅に減少して、オンキョー本来のスッキリとした抜けのよい素直な音になった点を大いに買いたい。
 ベスト1は、AX−S900である。もともと、この価格帯には異例の内容をもつ前作に電源部の改良をメインにしたモディファイが施され独自のGmボリュウムやGmスイッチ切替によるSN比の高さは、圧倒的に優れた見通しの良い音場感に現われている。また、スピーカーのドライブ能力も充分にあり、本格派プリメインとしての信頼感は非常に高い。やや異例な存在が、PM655だ。豪華な仕上げを競う国内製品と比較すると、異なった個性をもつが、ゆったりとした落着いた音は独特の魅力だ。
●10〜20万円未満の価格帯
 非常に内容が優れた製品が昨年一斉に発売されたが、予想外に需要が伴わなかったのが10万円台前半のモデルだ。PMA960のしなやかで落着いた音、A−X1000のダイナミックな迫力にも注目したいが、A2000aの安定感と密度感の高さはピカーの存在である。型番に変更はないが確実に改良が聴き取れるのがA150Dでダークホース的な存在。柔らかく、豊かな音を受け継ぎながらも、ピシッと一本芯の通った音が聴けるのは大変に好ましい存在だ。
●20万円以上の価格帯
 やや、ベストバイの印象から外れたゾーンである。PM94は、まさしく、スーパープリメインアンプ的存在で、同社のセパレート型Sc11とSm11と競合できるだけの質的高さは別格の存在である。LX360の独特の雰囲気も大切にしたい個性。

京セラ A-710

井上卓也

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 京セラのセパレート型アンプは、独自の振動解析に基づいた筐体構造を採用して登場した、オリジナリティ豊かな特徴があるが、今回発売されたA710は、プリメインアンプとして同社初の国内発売モデルである。ちなみに、一昨年度のオーディオフェアで発表されたプリメインアンプは、基本構造が共通のため見誤りやすいが、あのモデルはセパレート型アンプなどと同じ910のモデルナンバーを持つ本機の上級モデルA910であり、既に輸出モデルとして海外では発売されており、本機に続いて国内でも発売されるようだ。
 A710は、A910のジュニアタイプとして開発されたモデルで、外観上では、筐体両サイドがアルミパネルから木製に変わっているのが特徴である。基本的に共通の筐体を採用しているため、回路構成にも共通点が多いが、単なるジュニアモデル的な開発ではなく、シンプル・イズ・ベストのセオリーに基づいて、思い切りの良い簡略化が実行されている点に注目したい。
 それはこのクラスのプリメインアンプには機能面で必須の要素とされていた、バランスコントロールとモードセレクターを省略し、信号系路でのスイッチ、ボリュウムなどの接点数を少なくし、配線材の短略化などにより信号系の純度を保つ基本ポリシーに見受けられる。つまり、一般的な最近の機能であるラインストレートスイッチとかラインダイレクトスイッチと呼ばれるスイッチを動作させたときと、本機の標準信号経路が同じということだ。
 さらに同じ構想を一歩進めたダイレクトイン機能が備わる。この端子からの入力は、ボリュウム直前のスイッチに導かれており、0dBゲインのトーンアンプをバイパスさせれば、信号はダイレクトにパワーアンプに入る。簡単に考えれば、ボリュウム付のパワーアンプという非常に単純な使用方法が可能というわけだ。
 出力系も同じ思想で、パワーアンプは出力部に保護用、ミュート用のリレーがなく、回路で両方の機能を補っており、信号はリレー等の接点を通らずダイレクト出力端子に行き、その後にスピーカーAB切替をもつ設計だ。
 その他、MC型昇圧にはトランスを使用、左右対称レイアウトの採用、信号系配線にLC−OFCケーブル採用などが特徴。
 試聴アンプは、検査後のエージング不足のようで、通電直後はソフトフォーカスの音だったが、次第に目覚めるように音に生彩が加わり、比較的にキャラクターが少ない安定した正統派のサウンドになってくる。帯域は素直な伸びとバランスを保ち、低域の安定感も十分だろう。このあたりは独特の筐体構造の明らかなメリットだ。また、信号の色づけが少ないのは、簡潔な信号系の効果だ。華やかさはないが内容は濃い。

京セラ A-710

井上卓也

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 京セラのセパレート型アンプは、独自の振動解析に基づいた筐体構造を採用して登場した、オリジナリティ豊かな特徴があるが、今回発売されたA710は、プリメインアンプとして同社初の国内発売モデルである。ちなみに、一昨年度のオーディオフェアで発表されたプリメインアンプは、基本構造が共通のため見誤りやすいが、あのモデルはセパレート型アンプなどと同じ910のモデルナンバーを持つ本機の上級モデルA910であり、既に輸出モデルとして海外では発売されており、本機に続いて国内でも発売されるようだ。
 A710は、A910のジュニアタイプとして開発されたモデルで、外観上では、筐体両サイドがアルミパネルから木製に変わっているのが特徴である。基本的に共通の筐体を採用しているため、回路構成にも共通点が多いが、単なるジュニアモデル的な開発ではなく、シンプル・イズ・ベストのセオリーに基づいて、思い切りの良い簡略化が実行されている点に注目したい。
 それはこのクラスのプリメインアンプには機能面で必須の要素とされていた、バランスコントロールとモードセレクターを省略し、信号系絡でのスイッチ、ボリュウムなどの接点数を少なくし、配線材の短略化などにより信号系の純度を保つ基本ポリシーに見受けられる。つまり、一般的な最近の機能であるラインストレートスイッチとかラインダイレクトスイッチと呼ばれるスイッチを動作させたときと、本機の標準信号経路が同じということだ。
 さらに同じ構想を一歩進めたダイレクトイン機能が備わる。この端子からの入力は、ボリュウム直前のスイッチに導かれており、0dBゲインのトーンアンプをバイパスさせれば、信号はダイレクトにパワーアンプに入る。簡単に考えれば、ボリュウム付のパワーアンプという非常に単純な使用方法が可能というわけだ。
 出力系も同じ思想で、パワーアンプは出力部に保護用、ミュート用のリレーがなく、回路で両方の機能を補っており、信号はリレー等の接点を通らずダイレクト出力端子に行き、その後にスピーカーAB切替をもつ設計だ。
 その他、MC型昇圧にはトランスを使用、右左対称レイアウトの採用、信号系配線にLC−OFCケーブル採用などが特徴。
 試聴アンプは、検査後のエージング不足のようで、通電直後はソフトフォーカスの音だったが、次第に目覚めるように音に生彩が加わり、比較的にキャラクターが少ない安定した正統派のサウンドになってくる。帯域は素直な伸びとバランスを保ち、低域の安定感も十分だろう。このあたりは独特の筐体構造の明らかなメリットだ。また、信号の色づけが少ないのは、簡潔な信号系の効果だ。華やかさはないが内容は濃い。

テクニクス SU-V10X

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 CD、PCMプロセッサーなどのデジタルプログラムソース、ハイファイVTR、ビデオディスクなどのAVプログラムソースなど、多様化するプログラムソースに対応する現代のプリメインアンプとしてテクニクスから登場した新製品がSU-V10Xである。
 アンプとしての基本構成は、テクニクスが理想のパワーアンプを目指し、クロスオーバー歪とスイッチング歪を解消するシンクロバイアス回路ニュー・クラスA、トランジエント歪に対するコンピュータードライブ、理論的に歪を0とするリニアフィードバック方式などの技術と、大電涜が流れる出力段で発生する電磁フラツクスを抑えるコンセントレイテッド・パワーブロック構造の採用などが、従来からのテクニクスアンプのストーリーだが、今回さらに、駆動電圧と電流間に位相差をもつ実スピーカーに対し、リニアな駆動とドライブ能力を向上するコンスタントゲイン・プリドライバー回路を採用したことが特徴で、オンキョーのアプローチとの対比が興味深い。
 機能面では、AVシステムの中心となるアンプらしく、AV信号を連動切替するAV入力セレクター、単独切替のRECセレクターとグラフィックイコライザーなどを使用する外部機器専用端子、ターンオーバー可変型トーンコントロールなどが備わるが、AUX1/TV、AUX2/Video、TAPE2/VTRと3系統のAV入力端子のうち、AUX2/Video端子は、フロントパネル面にもあり、フロントとリアがスイッチ切替可能である。
 パワーアンプは、150W+150W(6Ω負荷)の定格をもつが、電源部は、従来のトランスと比較し10~20%以上太い線を高密度に巻ける尭全整列巻線法を採用し、レギュレーションを改善している。線材は無酸素銅線、3重の磁気シールド内に特殊レジン封入で振動が少ない特徴がある。なお、電解コンデンサーは全数300Aの瞬間電流テストを行なう特殊電解液使用のオーディオ専用タイプで強力な電源部を構成し、310W+310W(4Ω負荷)、400W+400W(2Ω負荷)のダイナミックパワーを誇っている。
 JBL4344とLC-OFCコードによるヒアリングでは、ナチュラルに伸びた広帯域型のバランスと、聴感上でのSN比が優れ、前後方向のパースペクティブを充分に聴かせる音場感と実体感のある音像定位が印象的である。優れた物理的特性に裏付けられたクォリティの高さ、という従来の同社アンプの特徴に加えて、スピード感のある反応の早さ、フレッシュな鮮度感のある表現力が加わったことが、魅力のポイントである。新製品が登場するたびに、ひたひたと潮が満ちるようにリファインされているテクニクスアンプの進歩は見事だ。

ヤマハ A-1000

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ヤマハからの新製品A1000は、昨年、高級プリメインアンプの市場に投入され見事な成果を収めたA2000と基本的に同一コンセプトをもつ製品である。
 このところ、ブラックパネルが大流行のようで、視覚的に各社間のデザイン的な特徴が希薄になりがちのなかにあって、ツヤを抑えたヤマハ独自のシルバー仕上げのパネルと、ウォルナット鏡面仕上げのウッドキャビネットを配したデザインは、クリアーで、エレガントな雰囲気をもつ新しいヤマハの顔であり、A2000とのパネルフェイスの違いは、好みが分かれるところであろう。
 アンプとしての構成は、MC型カートリッジをダイレクト使用可能な、NF/CR型ハイゲインイコライザー、低域をスピーカーに対応して約1オクターブ伸ばす独自の3段切替リッチネス回路とト-ンコントロールを備えたラインアンプ、B2x、A2000パワーアンプ部に順次採用されてきた、純A級アンプに電力損失を受持つAB級パワーアンプを組み合せたヤマハ独自のデュアル・アンプ・クラスA方式の120W+120W(6Ω負荷)、140W+140W(4Ω負荷)の出力をもつパワーアンプ、の3ブロック構成で、A2000の流れを受け継ぐものである。なお、パワーアンプ部にはヤマハ独自開発のZDR歪回路を採用し、一般的な純A級パワーアンプのわずかの素子の非直線性に起因する歪をも除去し超A級ともいえるリニアリティを実現し、織細で美しい音を得ている。
 電源部は、多分割箔マルチ端子構造ケミコン採用で、総計14万6千μFの超強力電源を構成し、2Ω負荷時のダイナミックパワーは、279W+279Wを得ている。
 機能面では、入力切替スイッチに2系統のTAPE入力を組み込み、アクセサリー端子を独立して設けたのが特徴。AV対応時のサラウンドアンプやグラフィックイコライザーなどの接続時に使い、使用しないときにはショートバーで結んでいる。なお、この端子の後に、ミューティング、モード、バランス、ボリュウムコントロールがあるため、接続されるアクセサリー横器の残留ノイズ等はボリュウムで絞られ、通常の使用時でのSN比は良く保たれる。
 JBL4344とLC-OFCコードによるヒアリングでは、音の粒子が、細かく滑らかに磨き込まれており、素直に伸びた適度なワイドレンジ感と、自然な雰囲気の音場感的な拡がりが印象的で、ナチュラルサウンドの名にふさわしく、洗練された音だ。A2000と比較すれば、全体の音を描く線が、細く、滑らかなのが特徴であり、このしなやかな表現力は、使うにしたがって本来の良さが判ってくるタイプの魅力だ。リッチネスを使うときのポイントは、わずかに、トレブルを増強することだ。

ソニー TA-F555ESII

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ソニーから、去る9月に発売された新プリメインアンプは、デジタルプログラムソースからアナログプログラムソースまで高忠実度で再生できるように、基本特性を向上させるとともに、AV対応にはビデオ入力端子を2系統と出力端子を1系統備えていることに特徴がある。
 アンプとしての基本特性の向上のポイントは、実使用時のダイナミックレンジ120dBと左右チャンネル間のセバレーション100dBを実現していることだ。
 アンプ構成上の特徴は、プリアンプ部とパワーアンプ部との間に新たにカレント変換アンプを設け、信号系をプリアンプ部とパワーアンプ部とに電気的に分離し、独立できるオーディオ・カレント・トラスファー方式にある。この方式は、電圧としてプリアンプ出力に出てくる入力信号を、いったん電涜信号に変換し、このカレント変換アンプ終段に設けたリニアゲインコントロール型アッテネーターで再び電圧信号に戻す、というものだ。この方式の採用でプリアンプとパワーアンプ相互間の干渉やグランドに信号電流と電源電流が混在することに起因する音質劣化や、歪、ノイズなどの問題が解消でき、実使用時のダイナミックレンジの拡大と優れたセバレーション特性を獲得し、音質を大幅に向上しているとのことである。
 この電流変換アンプに設けられた新方式アッテネーターは、最大から実際に使われる音量に絞り込むに比例してインピーダンスが低くなり、通常のリスニングレベルでの歪や周波数特性、SN比、クロストークなどの諸特性が改善できる特徴をもつ。
 パワーアンプ部は、独自のスーパー・レガートリニア方式パワーアンプと大型電源トランスを組み合せ、100W以上の大出力時にも広帯域にわたりスイッチング歪、クロスオーバー歪を激減させ、4Ω負荷時180W+180W、1Ω負荷で、瞬時供給出力500W+500Wを得ている。
 なお、音質を左右する大きな要素である配線材料には、このところ話題のLC-OFCを大量使用しているあたりは、いかにもOFCワイヤー採用以来のソニーらしい動向を示すものだ。
 JBL4344を、LC-OFCコードを使いドライブしたときの本機の音は、ピシッと直線を引いたように感じられるフラットな帯域バランスと、タイトで密度感があり、十分に厚みのある質感、ダイレクトな表現力などが特徴だ。低域は芯がクッキリとし、力感も充分にあり、従来のソニーアンプとは一線を画した見事なものだ。
 音場感的には、音像が前に出て定位するタイプで、輪郭はシャープ。前後方向のパースペクティプな再生も必要にして充分だ。
 質的にも洗練され、ダイナミックでストレートな表現力を備えた立派な製品である。

オンキョー Integra A-819RX

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 CDの登場により、デジタル記録をされたプログラムソースが手近かに存在するようになると、これを受けるアンプ系やスピーーカーも、根本的に洗いなおす必要に迫られることになる。いわゆる『デジタル対応』なる言葉も、このあたりをマクロ的に捉えた表現であるようだ。
 オンキョーからインテグラRXシリーズとして新発売されたプリメインアンプA819RXは、せいぜい入力系統の増設や1〜2dBのパワーアップ程度でお茶をにごした間に合せの『デジタル対応』でなく、根本的にデジタルソースのメリットを見直し、確実にそれに対応し得る本格派『デジタル対応』に取り組み完成した新製品だ。アンプ内部での位相特性を大幅に向上し、CDのもつ桁外れに優れた音場感情報の完璧な再現に挑戦したのが、新シリーズの特徴だとのことである。
 構想の基本は、スピーカーの電気的な位相周波数特性で、特にf0附近で大きく変化する電圧と電流の位相変位に着目し、これを駆動するパワーアンプの電源トランスに1対1の巻線比をもち非常に結合度を高くしたインフェイズトランスを設け、+側と−側の電解コンデンサーの充電電流の山と谷を打消して位相ズレ情報を除去し、電圧増幅部への影響をシャットアウトして、正しい位相情報を再生しようというものだ。
 また、インフェイズ・トランスにより、+側と−側の電解コンデンサーの充電電流が等しいということは、電源トランスの巻線の中央とアース間に電流が流れないことを意味し、フローティングも可能であるが、コモンモードノイズ除去のため、トランス中央はアースに落してあるとのことだ。
 アンプ構成は、MC対応ハイゲインフォノイコライザーアンプとパワーアンプの2アンプ構成で、パワーアンプは、SP端子+側からNFBをかけ、さらに、超低周波での雑音成分をカットするためのサーボ帰還がかけられ、SP端子−からはアースラインのインピーダンスに起因する歪や雑音をキャンセルする、ダブル・センシング・サーボ方式を採用。また、A級相当の低歪リニアスイッチング方式が採用されている。なお、音楽信号を濁らせる電解ノイズを低減するチャージノイズフィルター、外部振動による音質劣化を防ぐスーパースタビライザー、2系統のテープ端子用に独立したRECセレクターなども特徴である。
 試聴した印象では、独特の粘りがありながら、力強くエネルギー感のある低域をベースに、豊かな中低域、抜けの良い中域から高域がバランスをした帯域感と、説得力のある表現力を備えた独特のまとまりがユニークだ。音場感は豊かな響きを伴ってゆったりと拡がり、定位感もナチュラルである。この低域から中低域をどのように活かすかが使いこなしのポイントである。

プリメインアンプのベストバイ

菅野沖彦

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 プリメインアンプの価格ランクは4段階に分れているが、大ざっばにいって、価格の低いものにはスピーカーのドライブ能力の大きいもの、高価格クラスには、音の味わい、魅力、品格といったものを重視する見方をしたつもりである。したがって、8万円未満からは、一機種だけ、オンキョーのA817RXを選んだが、これは、このアンプが、この価格で大変力強く、豊かな音を聴かせる点で傑出したものだと思うからだ。もちろん、音色に非音楽的な癖が強かったりしては、いくら力強くても駄目だと思うが、このアンプの音は適度な華麗さと暖かさのバランスをもっていて聴き心地のよいものだ。
 8万〜13万円のゾーンは、プリメインアンプの激戦領域だけあって、優れた製品が目白押しに並んでいる。全体で10機種という枠の中で、6機種が、このゾーンからのものとなったのは必然だと思っている。
 中でのベストはケンウッドKA1100SDで、この音の洗練度の高さは、倍の価格でもうなづける。強靭な質感と繊細さ、そして豊かなプレゼンスをもち立派なものだ。NEC/A10IIは残念ながら親しく聴くチャンスに恵まれず、私には未知である。ユニークなのは、ラックスLV105で、スピーカードライブ能力の点で、やや弱さがあるので最音点にはしなかったが、この音の質感は他のアンプ群とはちがう自然さをもち、音のニュアンスう味わい深く再生するコニサー好みのものである。テクニクスSU−V10Xは、滑らかで透明な従来のテクニクスアンプに厚味と力強さが加わって、なかなか魅力的。サンスイAU−D707Xは、607Xのような空間感の漂いとは一味違ったソリッドな音で明る過ぎず、暗過ぎず、中庸の堅実型である。
 13万〜20万は、プリメインアンプとして標準を越える魅力が必要。この点、ヤマハA2000の内容外装共にきわめて洗練された美しさと能力の高さは評価しないほうがおかしい。サンスイAU−D907Xは、その充実のサウンドが超えている。
 20万以上は音の趣味性が必要な領域で、ラックスL550Xは50Wと小出力ながら、その音の熟成ぶりが断然光っている。E302はこれと対照的な輝やかしく艶やかなグラマラスな音。

プリメインアンプのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 73号(1984年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・435選コンポーネント」より

 8万円未満では、10万円少し上の異常に充実したともいえる価格帯に比べて、やや、希薄燃焼型のモデルが多いようだ。内容の充実さ、電気的な設計と機構設計、それに音質の総合バランスでは、ビクターA−X900は、さすがに’83COTYに輝やいただけの実力で、現在でも断然トップ。続いて穏やかだが安定感のあるデンオンPMA940、ダークホース的存在が、オンキョーA817RX、マランツPM64。
 8万〜13万円では、選ぶより落す製品を出すほうが早い、というくらいに、見事な製品が並んでいる。総合的に見て、トップは、ビクターA−X1000だ。とくに、GMセレクターを−6dBとしたときの音場感の拡がりは素晴らしいの一語に尽きる。僅差で続くのが、柔らかいが芯のシッカリとした低域をベースとした洗練された音のパイオニアA150D、ナチュラルサウンドそのものの音をもつヤマハA1000、がベスト3、これに、活気のあるケンウッドKA1100SD、素直なデンオンPMA960、充実した安定型の音をもつマランツPM84、軽快な反応の速さを聴かせるテクニクスSU−V10X、個性派のラックスLV105、オンキョーA819RX、正統派のソニーTA−F555ESIIと、どれを選んでも誤りのないのが、以上の機種である。
 13万〜20万円は、本来は、プリメインアンプとしてもっとも内容の充実した、これぞプリメインアンプ、といったモデルが存在すべき価格帯であるが、このところ製品の数が非常に少ないのが残念であり、’84COTYにも該当製品はなく、推薦できるのは’83COTYに輝やく、ヤマハA2000のみがスポットライトを浴びる製品。
 20万円以上はスペシャリティの価格帯で、古くからアンプでは名だたるメーカー各社から、高級プリメインアンプへのチャレンジともいうべきモデルが送り出されたが、成功作と呼べる製品は、ケンウッドL02Aのみといっても過言ではあるまい。ラックス独自の構想と開発による、いかにもAクラス動作のパワーアンプらしい清澄な音をもつ L550Xは、やはり、’84COTYに値する貴重な存在である。好ましい純粋ラックスらしい趣味性は賞讃したいものだ。