Category Archives: スピーカー関係 - Page 27

デンオン SC-304

井上卓也

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的には、従来のSC104IIをベースにシステムとしての完成度を一段と高めた新製品で、SC106に対する現在のSC306に相当する位置づけにあたる。
 デンマーク、ピアレス社製ユニット採用の3ウェイであることは従来と同様である。25cmウーファーは、デンオン独自のサウンドラチチュード特性を従来の測定法に加え、振動系と支持系をより追求して、ピアレス社と共同開発した新ユニットだ。コーンはノンプレス系でエアドライ方式の新乾燥法を採用。表面はアクリル系樹脂でスプレー含浸処理され、ボイスコイルボビンはアルミ製で高耐入力設計としてある。10cmコーン型スコーカーは、SC306同様、バックチャンバーとフレームを軽合金ダイキャスト一体構造とし、ウーファーからの振動を遮断する特長をもつ。3・2cmドーム型トゥイーターは、特殊布成型振動板を採用し100Wの耐入力をもつ。エンクロージュアは密閉型で、低音は独特のサンドイッチ方式マウントを採用。裏板部の一部は、アルミラミネートブチル系ゴムを貼り合せて振動モードを調整している。
 SC304は、サランネットを外した状態で高域レベル−2でウェルバランスとなる。SC104IIとの比較では、音色が明るくなり、活気のある表現力が加わった。重く力強い低域と明快な中域、独特の華やかさのある高域がバランスしている。

インフィニティ Reference Standard 1.5

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 なかなかさわやかな音をきかせるスピーカーだ。TDKのカセットテープADの音を思い出させなくもない。高い方の音に独特の個性があって、それがさわやかさをきわだてている。その意味で魅力的なスピーカーといえる。しょうしゃで粋な音楽を、音量をおさえめにしてきいたら、しゃれた感じになるだろう。しかし、スケール感ゆたかな、迫力にとんだ音楽を、手ごたえたしかな音でたのしもうと思ったら、どうしてもものたりなさを感じることになるにちがいない。❷のレコードできかれるグルダの声などはきめこまかくこのましいが、グルダによってひかれたピアノの音は、いかにもこあじで力強さに欠ける。❸のレコードでも、ひびきのひろがりはあきらかにされるが、ブラスのつっこみは軽くなり、音色面での対比が不充分になる。使い手の好みにあえば、魅力的なスピーカーといえるだろうが。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(物足りない)

ヤマハ NS-100M

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 スコーカーとトゥイーターにソフトドーム・ユニットを使った、20cmウーファーをベースにした3ウェイで、エンクロージュアは密閉型というヤマハ得意の手法といえる製品。全体によくまとまったバランスは、質的にも帯域的にも優れたもので、どんなプログラムソースをもってきてもバランスで妥当な響きの造形を聴かせてくれる。特に瑞々しい魅力といったものはないし、スケールの大きさの点でもサイズ並みだけれど、大型システムをスケールダウンして、イメージとして決して小粒にならないといったよさを持っている。ちょぴりカラシの利いたトゥイーターの効果、たっぷり響くベースの豊かさが、持てる能力の限界を補って巧みに効果を創り上げているようだ。こういう音のまとめ方は、キャリアと感性がなくてはできないものだろう。うまいまとめだと思う。欲をいえば、もう一つすっきりとした位相感というか、空間感のようなものが再現され、プレゼンスが豊かに聴ければ、いうことはなかった。

総合採点:9

タンノイ Super Red Monitor

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 タンノイであれば、何よりも弦が美しく鳴ってくれなくては困る。そういう期待は、誰もが持つ。しかしなかなか気難しく、ヴァイオリンのキイキイ鳴く感じがうまくおさえにくい。もともと、エージングをていねいにしないとうまく鳴りにくいのがタンノイだから、たかだか試聴に与えられた時間の枠の中では無理は承知にしても、何かゾクッと身ぶるいするような音の片鱗でも聴きとりたいと、欲を出した。三つ並んだ中央のツマミはそのままにして、両わきを一段ずつ絞るのがまた妥当かと思った。しかし、何となくまだ音がチグハグで、弦と胴の響きとがもっと自然にブレンドしてくれないかと思う。エンクロージュア自体の音の質が、ユニットの鳴り方とうまく溶け合ってくれないようだ。もっと時間をかけて鳴らし込んだものを聴いてみないと、本当の評価は下せないと思った。ただ、総体的にさすがに素性のいい音がする。あとは惚れ込みかた、可愛がりかた次第なのかもしれない。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:9
質感:8
スケール感:9
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:9
音の魅力度:8
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:調整要

パイオニア S-955

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 ひとことでいえば、オーソドックスな音ということになるだろう。硬い音も軟い音も、軽い音も重い音も、あるかい音も暗い音も、実にバランスよく示す。そのために、使い手によっては、きわだった魅力にとぼしいといったりするかもしれぬが、しかし、このスピーカーの、使い手にいらぬ神経をつかわせないところはすばらしいと思う。試聴につかった3枚のレコードでも、どれが特によくて、どれに問題があったといったような、いわゆる凹凸がなかった。どのレコードに対しても、安定していた。個々の音のエネルギー感の提示に無理の感じられないところがいい。しなやかな音はしなやかに、強い音は強く示すという、あたりまえといえばあたりまえの、しかしそれがなかなかなしえないことを、このスピーカーはなしとげている。バランスのいい、オーソドックスな音だから、安心してきいていられる。

総合採点:10

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

ダイヤトーン DS-32B

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 オールコーンのオーソドックスな3ウェイで、エンクロージュアはバスレフのブックシェルフ型となれば、ダイヤトーンが最も作りなれたフィーチュアで、当然あるレベル以上の信頼感が持てるシステムと予想した。私の鳴らし方がよほど悪かったのか……つまり、使ったアンプなどのマッチングが不幸にして悪かったのか、残念ながらこのシステムは予想に反するものだった。周波数帯域では十分な能力を持つシステムであることはわかったが、全体のバランスは決してよいものではなかった。各ユニットの質的なつながりは、ベテランのダイヤトーンらしからぬものがあるといいたいほどだ。特に指摘したいのはトゥイーターの音で、かなりノイズが目立つ。音も決してしなやかさと滑らかさをもったものではない。ヴァイオリンはトゲが気になるし、ピアノの中域は明らかに不明瞭だ。ジャズでも、ハイハットやシンバルの高域の質感は決して品位の高いものではなく、少なくともジルジャンの音ではなかった。

総合採点:6

インフィニティ Reference Standard 2.5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 中音域以上はバッフルの前後両面に音が放射されるバイポーラー(双指向性)型に近い作り方なので、背面と壁との距離や確度、左右のひろげかたなど、部屋の構造や特性によって慎重な調整が必要だと思う。試聴室では、できるだけ音がやわらかくひろがるようセッティングした。低音は新しくポリプロピレンのコーンが採用され、古いインフィニティよりも音が明るくなったが、背面の壁との距離のせいか、音像がやや奥の方に感じられた。中〜高域はコンデンサータイプと一脈通じる柔らかい味わいがあるが、反面、静電型同様に音の芯が柔らかすぎて、手ごたえのする緻密な力になりにくい点が何となくもどかしい。さわやかだが、パワーを加えていってもそれに比例した力が出てこないような感じがあって、物足りなさからどんどんパワーを上げてゆくと、ビリつきぎみになるのでこわい。耳障りな音がしないから、上質のムードミュージックなどさりげなく楽しむには最適かもしれない。

総合採点:7

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:8
質感:7
スケール感:8
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:8
音の魅力度:7
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや工夫要

オンキョー M-77

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 全体の傾向として、鮮烈な音楽・演奏には物足りないが、ソフトな音楽性に持味の生きるスピーカー。ピアノの粒は丸く聴きよいが、ややもったりとして切れ味の鋭さに欠けるといった具合である。その反面、弦楽器はしなやかでよく聴かれる耳ざわりな刺激音が出ない。むしろ、なかなか魅力のある、しっとりした美しさが楽しめた。シルヴィア・シャシュのソプラノはやこもり気味で、リアリティが不足したようだ。ソプラノらしい倍音の再生が十分ではないのか、聴きようになってはメツォのようなクードになる。ジャズではリズムが鈍く、シンバルや張りのあるスネアのスキンに冴えと切れ味の不足が感じられた。ブラスも倍音の冴え、透明感が不十分であった。甘美でソフトな持味を生かす音楽、あるいはそうした音色を嗜好する人々にとっては好ましいスピーカーといえるだろう。つまり、全体のバランスや音色の点でも、滑らかさではかなり優れた水準にあると思えるからだ。生き生きした元気のよさが望まれる。

総合採点:7

プラズマトロニクス Hill TypeI

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
「スピーカーシステムの未来を予見させる振動系質量(マス)ゼロのプラズマレーザー方式〝プラズマトロニクス/ヒル・タイプI〟の秘密をさぐる」より

 電気エネルギーを空気の疎密波という、いわば空気の圧力の変動に変換して、音をつくり出すのがスピーカーであるが、そのためにどうしても必要なのが、振動板である。金属、紙、布、プラスティックなど、いろいろな材質が使われているが、いかなる物質を使おうと、これらは必ず質量をもっていて、その運動は慣性の影響から逃れることはできない。長年の研究開発の結果、より軽く剛性の高い材質が使われ実用上はかなりの水準に達していることは、市販の優れたスピーカーの音を聴けば納得できるのだが、決して理想通りとはいえない。振動板という物質の存在は、この他にも多くの問題があって、スピーカー固有の音色の原因の多くがここに存在している。つまり広義の歪の要因といえるものだ。この電気振動と空気振動の媒体となっている振動系の質量を、0にしようという発想は昔から多くの技術者が持っていた(イオノフォンもその一つ)。つまり、振動板の機械振動以外の何らかの方法で空気を直接エキサイトする新しい技術だ。
 ニューメキシコ州アルバカーキにあるプラズマトロニクス社から発売された、ヒル・タイプ・ワン・プラズマ・スピーカーシステムは、この分野に挑戦し、実用レベルの製品化に成功した画期的なスピーカーシステムである。
 このスピーカーの開発者は、同社の社長であるアラン・E・ヒル博士で、この音楽好きの物理学者の十数年にわたる研究・実験の賜物が、この製品である。ヒル博士は長年、米空軍のエレクトリック・レーザー開発部門に籍をおき、途方もなく強力なレーザーを開発したが、ここでの博士とプラズマの触れ合いが、このスピーカーシステムの誕生の背景となった。空軍の高級化学者としての仕事の傍ら、毎晩、毎週末、毎休日、博士は趣味として自宅の研究室で、レーザー・プラズマの応用技術の一つである、このスピーカーの研究に夢中になっていた。なにしろ、11歳の時にオシロスコープを自作したり、平面振動板スピーカーを手がけたりしていたらしいし、同時に強烈な音楽少年でもあったという博士のことだから、物理学者として一家をなしてからも、まるで少年のように、ひたむきな情熱で、プラズマ・スピーカーの開発に夢中になっていた姿は想像に難くない。片瀬は「この頃(11歳)から、私はマス・レス(無質量)の発音構造の可能性を実現するのが夢でした」と語っている。余談だが、博士のレーザー光線の実用技術は、なんと赤ちゃん用のゴムの乳首に小さな穴をあけるのが最初だったというから面白い。1977年に博士は空軍を辞して、プラズマトロニクス社を設立、苦節を重ねて、このタイプIの完成を見ることになったのだった。
 ヒル・タイプIスピーカーシステムは、700Hz以上の帯域をプラズマ・ドライバーが受け持ち、それ以下は、16cm口径コーンスピーカーと36cm口径コーンスピーカーが130Hzのクロスオーバーで構成されているが、全帯域をプラズマ・ドライバーで構成することは、常識では及ばないコストと実用技術の困難さがあるらしい。しかし、マス・レス・スピーカーの利点は700Hz以上で充分現われているし、コーンユニットとプラズマ・ドライバーとの音質的バランスが見事にとられていることには感心させられる。ここには、博士の音楽ファンとしてのセンスも十分生かされていると感じるのである。プラズマ・ドライバーの動作原理の詳細は現在パテント申請中で明らかにされていないが、3000度Cもの高熱によって電離した、青白く輝くプラズマから放射される無指向性の球面波は、きわめて繊細・緻密な音像と、豊かな音場プレゼンスを再現する。現実に、実用レベルで音楽を奏でてくれる様に接することは、まことにエキサイティングでファンタスティックな体験である。システムにはプラズマ・ドライバー専用アンプと、エレクトロニック・クロスオーバー・アンプが内蔵され、別に低域用アンプを使ってバイアンプ・ドライヴするようになっている。さらに大きなヘリウムガス・ボンベが付属し、約300時間毎にガスを充填させる必要がある。放射線の心配は絶対にないそうだ、念のため。未来形スピーカーの日本上陸である!!

エレクトロボイス Interface:DII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 かなり寝起きのよくないスピーカーらしい。というのは、鳴らしはじめの頃は、中域だけで高・低両端の極度に不足した硬い音で、これはひどい、と思ったのだが、鳴らしこむにつれて、少しずつバランスが整ってきて、中域の力は快い充実感を助け、音量を上げても危ない音のしない、安定化つ明快な音が楽しめはじめた。血も肉もいっぱい詰まった血色のいいアメリカ人、という感じで、さすがインターフェイスのシリーズもここまでくると、質も向上し、本当の力に支えられた気持の良い音になってくる。低音の量感のコントロールが使いこなしのひとつの鍵のようで、背面からの離しかたと、独特の低域のアッテネーター、そして付属のイコライザーアンプの併用とで、低音がこもらず、しかし十分の量感をもって鳴るポイントを探し、調整しなくてはならない。調整がうまくゆけば、やや中域の張った独特のバランスを好むなら、明るい、力のある音で、プログラムソースを選ばず楽しめる。

総合採点:9

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:8
質感:8
スケール感:9
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:9
音の魅力度:8
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:かなり難し

BOSE 901 SeriesIV

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このスピーカーの示す音場感は独自だ。独自だといっても妙な癖があるということではない。とりわけ❸のレコードなどでは、まさにオペラティックというべきひろがりが感じられる。ホルンのひびきがひろびろとひろがり、低音弦の動きがくっきりと示される。そして、その中央からバルツァの声がひきしまってきこえる。その一方で、❷のレコードできかれる、なかばうたい、なかば語っているようなグルダのうたいぶりを、なまなましく提示する。ただ、❶のタイプのレコードは、そのサウンドの軽やかさをそこねはしないものの、このスピーカーにあっているとはいいかたい。どうやら、アーティフィシャルな録音によったレコードヘの対応のしかたは、あまり得意ではないようだ。それに、検聴といった感じできこうとすると、ごくこまかいところがいくぶんききとりにくいということがいえるかもしれない。

総合採点:8

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

Lo-D HS-90F

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 新しい傾向のサウンドへの対応にすぐれたスピーカーといえようか。音は、決して軽快といえるようなものではないが、湿りけや暗さがないために、❶のレコードの場合などでも、さわやかさをもたらしうる。それに音場感の面でも、ひろがりの提示もいい。重厚な音への対応より、きめこまかな音への対応にすぐれているとみるべきかもしれない。❷のレコードできかれるグルダのかすれぎみの声はきわめてなまなましくきかせるが、❸のレコードでのバルツァのはった声は、わずかながらではあるが硬くなる。さらに、そこでのブラスのつっこみも、かならずしも充分とはいいがたい。しかし、低域が適度にふくらむようなことがなく、全体としてのまとまりということでは、ある程度の水準に達しているとみるべきだろう。もう一歩力感の提示がしっかりできるといいんだがと、試聴しながら考えていた。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(物足りない)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

ハーベス Monitor HL

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 このスピーカーのきかせるあかるく、軽やかで、さわやかな音色は、なかなか魅力的だ。音像も、決してふくらみすぎることなく、きりりとひきしまっているので、きいての印象は、まことに心地いい。とりわけ❶のレコードなどは、チャーミングなひびきできかせてくれた。その意味で、あなどりがたい魅力をそなえたスピーカーだということを認めた上で、どうしてもいっておかねばならないことがある。特に❷のレコードであきらかになることだが、ピアノの、強い打鍵による音の提示が、弱くなる。❸のレコードでの、バルツァのフォルテではった声も、金属的とはいえないまでも、硬めになるのも、気になった。しかし、基本的にはしっかりしたところのあるスピーカーであることはたしかで、❸のレコードできかれる低音弦の動きなども、あいまいにならず、あきらかにされていた。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(好ましい)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(物足りない)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

ダイヤトーン DS-70C

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 くせのない音──といっていいだろう。しっかり基本をおさえた安定のいい音といういい方もできるにちがいない。ただ、シャープな反応に不足するところがあるというべきか、角のある音の提示に甘いところがある。たとえば、❸のレコードでのブラスのひびきなど、もう少し力と光をもって示されると、音色的な対比ということで、まろやかな音もはえるにちがいない。声についていえば、❸できかれる強い声より、❷できかれるかすれぎみの声の方で、このスピーカーのよさが示される。❶のレコードできかれるサウンドは、もう少し軽やかさにきこえる方がのぞましいが、それぞれのサウンドキャラクターは、一応つつがなく示されている。とはいっても、このスピーカーとしては、❶より、❷や❸のレコードの方が、その本領を発揮しやすいということはいえるだろう。まとまりのいい、くせのない音をきかせるスピーカーだ。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

パイオニア Exclusive Model 3401W

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 基本的に、カチッと引締った、緻密だが、いくぶん硬い金属質を感じさせる。しかしその硬さや金属質の肌ざわりは、欠点とはならず、むしろ冷たい快感ともいえる魅力的な音色に仕上っていて、このまま鳴らし込んでゆけば、もっと柔らかさも出てくるのではないかという期待を抱くことができる。パワーはいくらでも入るという感じだし、上げるにつれて気持の良さも増してくる。かといって絞った音が悪いわけではなく、すばらしくクリアーで透明だ。レンジは十分に広く、バランスも良い。ただしレベルコントロールはMIDを−1に絞った方がよかったが、質感は極上。スカッと音離れもいいし、どこか国産離れした気持の良い鳴り方をする。背面は壁につけ、ブロック平置き程度の低めに設置して、重低音を十分に補うほうがいい。初期の製品の印象はあまりよくなかったが、ずいぶん練り上げられてきたと思う。

総合採点:9

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:8
質感:8
スケール感:9
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:10
音の魅力度:9
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや難し

フォステクス GZ100

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 まろやかなひびきは、むろんこのましい。再生音で音楽をきいているときに、もっとも嫌悪すべきは、金属的なというべきか、刺激的な音だ。ただ、音楽は、まろやかな、耳にやさしいひびきだけでできているわけではない。強い音がどうしても必要だ。それに、本来のまろやかなひびきは、強くしっかりとささえられているといういい方もできるにちがいない。その点で、このスピーカーシステムには、ものたりなさを感じた。ふっくらとたっぷりひびくのは、たしかに美質のひとつにちがいないが、そのために音像がふくらんでしまう。そして、音楽のうちの硬と軟の対比が不充分になる。音場感的にも、どうしても平板になりがちだ。軟は硬と対比されて、軟本来のこのましさがあきらかになるといういい方もゆるされるにちがいない。まろやかなひびきのよさは認められるにしても、いささかものたりなかった。

総合採点:6

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

AR AR-9

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 目の前に置かれてみると、見上げるような感じで、相当に大型の、背の高いスピーカーであることがわかる。まず一聴してわかるのは、高域のレインジを平らにしかもハイエンドまでよく伸ばしていること。そして、従来は中域を盛り上げて低・高両端をおさえぎみのいわゆるカマボコ型周波数特性であったが、新シリーズは現代的なフラットレスポンス型に変っている。つまりARはもはやアメリカ東海岸の一地方色(ローカルカラー)でなく、十分に国際的(インターナショナル)なバランスに仕上っている。さすがに大型でローエンドも十分量感があるためか、背面は必ずしも壁に密着させなくともよく伸びてきこえる。レベルコントロールはマイナス側に3dBステップと粗っぽいが、好みによって中高域または高域を、−3まで落としてソフトタッチに徹した方がよいこともありそうだ。このたっぷりと、いかにも血の濃い感じの音は、相当に聴きごたえがある。ながい時間聴き込んでゆくと、もうひと息、上質かつ緻密な質感や、音の艶を望みたくなってくるが、良いスピーカー。

総合採点:8

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:8
質感:8
スケール感:9
ステレオエフェクト:9
耐入力・ダイナミックレンジ:8
音の魅力度:8
組合せ:普通
設置・調整:やや工夫要

セレッション Ditton 662

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 レベルコントロールが例によってついていないから設置のしかたが全体のバランスや鳴り方を支配する。662は、背面を壁にぴったり寄せて低音の量感を補う置き方が基本だと思うが、そうすると、こんもりと暖かく、くるみ込まれるような穏やかな音がする。また逆に背面を大きくあけると、ローエンドは不足するが、音の鮮度が増して音離れのよい印象になる。いずれをとるにしても中途ハンパに背面をあけるのはよくないように思う。KEF105IIと比較すると、105ほどの広がりや定位のこまやかさや正確さは持っていないが、暖かく、鋭さのない、聴き手を十分に楽しませくつろがせるやわらかい魅力的な音色を持っている。音のこまかなアラを目立たせない。適度の肉づきと適度の厚みがある。ほどの良さということをイギリス人は最もよく知っているというが、このスピーカーなどまさにそのひとつの典型かもしれない。質が高くしかも穏やかだから、カートリッジやアンプの質の良さをよく鳴らし分ける。

総合採点:9

●9項目採点表
音域の広さ:8
バランス:9
質感:9
スケール感:8
ステレオエフェクト:8
耐入力・ダイナミックレンジ:8
音の魅力度:9
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや工夫要

KEF Model 105 SeriesII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 数ヵ月前から自宅でリファレンス用として使っているので今回の試聴でも物差しがわりに使った。とくに、音のバランスが実によく練り上げられている。しかしこのスピーカーの特徴を聴くには、指定どおり、いやむしろ指定以上に、中〜高音域ユニットと聴き手の関係を、できるかぎり正確に細かく調整する必要がある。左右のスピーカーの正しい中央に坐り、焦点が合うと、スピーカーの内中央に歌い手が確実にそしてシャープに定位し、たとえば歌手の声(口)の位置と伴奏との、音源の位置──左右、奥行、そして(信じ難いことだが)高さの相違まで、怖いようなシャープさで鳴らし分ける。ただこのスピーカーの音色は、やや抑制の利いた謹厳実直型、あるいは音の分析者型、で、もう少し色っぽさやくつろぎが欲しくなることがある。また、ポップスではJBL的なスカッと晴れ渡った音とくらべると、ちょっと上品にまとまりすぎて物足りない思いをする。それにしても、価格やサイズとのかねあいで
考えれば、たいした製品だ。

総合採点:10

●9項目採点表
音域の広さ:9
バランス:10
質感:9
スケール感:8 
ステレオエフェクト:10
耐入力・ダイナミックレンジ:8
音の魅力度:9
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:やや難し

オーレックス SS-L8S

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 かなりコストのかかった入念な作りで、内外ともに充実した製品だ。バスレフのフロアー型に30cmウーファーをベースにコーン型スコーカーとドーム型トゥイーターを組み合わせた3ウェイシステムである。ところで、肝心の音の方だが、音質の品位はかなり高く、各ユニットのクォリティのよさが感じられる。しかし、全体の音の印象としては少々抑圧がききすぎて、柔軟さが足りないように感じられる。どこか抑え込まれてきゅうくつなのである。音が重い印象で、圧迫感がある。余韻や、空間のライブネスなどのデリケートな再生が不十分で、雰囲気があまりよく出てこない。ピアノの歌うべきパッセージも、おとが 一つ一つ途切れ気味で、音が高揚しない傾向を持っている。パワーハンドリングには余裕があって、少々のハイパワードライブにもびくともしないから、ジャズやロックの大音量再生は安心して楽しむことができる。ただ、バスドラムのチューニングがやや高くなる傾向が気になったし、リズムも楽しく弾んでくれない。

総合採点:7

オーレックス SS-L8S

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 すべての面でほどほどの──といったら、否定的にうけとられかねない。たしかに、このスピーカーに、きわだった魅力があるかといえば、ノーといわざるをえない。しかし、このスピーカーのきかせる、おさえるべきところをきちんとおさえた音は、ききてを安心させるものだ。背のびをしたり、身のほどしらずの表現をしようとしたりしないところがあるので、このスピーカーのあぶなげのなさをうみだしていると考えるべきだろう。こまかいあじわいの提示より輪郭をあいまいにしない音のきかせ方にひいでている。ひびきは、どちらかといえば重めだが、音像がふくらむようなこともなく、さして気にならない。これでもうひとつ高い方の音にきらりと光る輝きがでれば、さらに魅力をましたのだろう。❸のレコードでの迫力、ひろがりの提示などは、この価格帯のスピーカーとしては、なかなかすぐれている。

総合採点:8

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(好ましい)

オンキョー Monitor 100

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 堂々たる貫禄はブックシェルフ型の限界といってよいだろう。スピーカーとしての能力は大型フロアータイプに迫るものがあるが、コントロールにもう一つ、つめが欲しいと思う。それは、わずかながら中高域にピーキーな汚れが感じられることだ。バランスのいいオーケストラのトゥッティなどを聴くと、この傾向がちらりと顔を出す。全体にはスムーズな、むしろやや内向的な鳴り方でこれは同社のM6などの音色とは全く趣を異にするものに感じられるだろう。しかし、よく聴きこむと、必ずしもそうとはいかないようだ。ウーファーとスコーカーのつながり付近の音の表情には一脈通じるところもあるようだ。ハイパワーで鳴らせるが、音の本質にやや弱々しいところがあって、音量のわりには迫ってくるものが少ない。いわば骨細の音のイメージがつきまとう。しかし、いずれのソースも全体を大掴みながらバランスよく再生するし、リニアリティが高く、指向性のよさと相まって、水準の出来といってよいスピーカーである。

総合採点:7

オンキョー Monitor 100

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 グルンディッヒ/プロフェッショナル2500がきかせる音とは対極にある音をきかせるスピーカーといえよう。グルンディッヒが硬とすれば、これはまぎれもなく軟だ。声の、とりわけ弱音のものなどは、まろやかさとしなやかさをあきらかにして、なかなかこのましい。ただ、その声が、❸のレコードできかれるようなはった強い声になると、金属的に鳴り、音像もふくらむ。❶のレコードできけるようなタイプの音楽は、このスピーカーにあっていないといっていいかもしれない。あたかも飛来するといった感じできこえてくるはずのアルパートのトランペットの音が、ふくらみぎみになり、直進力も弱い。❷のレコードでも、弱音は、それなりのまとまりを示すが、強い音に対しては反応が充分でない。おそらく、このスピーカーシステムは、音量をおさえぎみにして、静かな音楽をきく人のためのものといえるだろう。

総合採点:6

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(ほどほど)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

グルンディッヒ Professional 2500

黒田恭一

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 独特の手ごたえのある音をきかせるスピーカーだ。音のクォリティは決して低くないと思うが、個々の音を力づくでおしだしてくるようなこのスピーカーの音のきかせ方には、個人的には、抵抗を感じる。たとえば❷のレコードできけるグルダによって強くうたれたピアノの音の迫力がでるものの、微妙なニュアンスということになると、いかにもものたりない。❸のレコードでは、バルツァの声が、太く感じられ、そのシャープな表現がいくぶんあいまいになる。❶のレコードなどは、このスピーカーシステムにもっともあわないものといえるだろう。サウンドのとびちり方は、それなりに示しはするが、ひろびろとした音場感の提示はできない。しっかり腰のすわった、たくましい音ということはできるにちがいないが、すべての音がたくましさでカバーできるわけでもない。まさに独特の、たくましい音をきかせるスピーカーだった。

総合採点:7

試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(ほどほど)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
 カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)

グルンディッヒ Professional 2500

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 4ウェイ4スピーカーの密閉ブックシェルフ型。その名も「プロフェッショナル2500」という力の入ったものだ。大いに期待した初対面であった。しかし、残念ながら期待が満たされたとはいえなかったのである。まずユニットそのものから、それほど品位の高い音が出ていないということ。エンクロージュアの出来もそれほど剛性は高くないらしく、低音の質が決してよいとはいえないもので、かなり共振の感じられる不明瞭な低音だった。全体としてバランスのとり方はうまく、効果的に音楽のイメージをふくらませる音とはいえるが、トーンクォリティが不満なのである。ダンピングが悪いというか、密度が足りないというべきか、音の触感が緻密ではない。もっとソリッドな締ったクォリティなら、この音のまとめで数段素晴らしく聴けただろうと思われる。重厚なオーケストラのトゥッティも悪い響きのバランスではないし、シャシュのソプラノもいい声だ。それにもかかわらず、常に本質的な音の質感に不満がつきまとうのである。

総合採点:6