Category Archives: 海外ブランド - Page 8

アクースティックラボ Stella Elegans

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 ヨーゼフ・W・マンガーが人間の聴覚メカニズムとスピーカーユニット構造との相関性を追求し、30年の歳月と莫大な経費を投入して開発したBWTユニットを中心に、コンピューター制御された最適信号をサブウーファーに送る制御システムを組み合わせたアクースティックラボの新製品。空間に浮き立つ定位と臨場感に脱帽。

ウエストレイク・オーディオ Tower-12

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 全世界からスピーカーユニットを吟味して集め、ウェストレイクならではの個性的、かつ非常に洗練度の高い音とする独自のスピーカー技術は、前例のない見事さだ。当初は全てJBL製ユニットと思われたが、コーン、エッジ部が個となるためチェックをして仏オーダックス製なることを発見して再び驚かされた。音質は抜群の魅力。

アルテック Milestone 604

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 英タンノイのデュアルコンセントリックと並ぶ、米国の名門アルテックの同軸型604で、新システム化を図った新製品。想像を超える長期間にわたり細部の改良が積み重ねられたユニットだけに、本格派スタジオモニターとして非常に魅力的な存在。とくに、管球アンプファンにとって高能率ぶりは絶対の買いである。

ジンガリ 95-115 Studio Monitor

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 録音スタジオモニターらしい外形寸法と、38cm低域、非常に個性的なデザイン。そして想像を超えてディスパージョン優れたホーン型高域の組合せは、明るく、活き活きと表情豊かな音ながら、独特の陰影のグラデーション再現能力を備えている。従来のハイエンドオーディオにはない音の魅力を聴かせ必聴に値する。

ジェフ・ロゥランドDG Model 8T

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 オーディオアンプは全てメカニズムとエレクトロニクスの複合体として考える設計方針が最近とみにみられる,ジェフ・ロゥランドDGの最新パワーアンプ。電源部には振動発生源の電源トランスがあり、出力段半導体素子自体が加振源となって放熱版も鳴くのが常識。更に全てが高周波雑音発生源となれば筐体は重要。

インフィニティ Renaissance 90

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 小型トールボーイ・フロアー型システムにしてインフィニティが全力をつくして開発したモデルだけに、現時点でもその実力は、いささかの衰えもない。むしろ同社製品中でも内容の濃さは傑出した存在で、価格対満足度の高さは抜群のものがあり、音のクォリティ、音場感情報量の多さでもIRSに一歩もひけをとらない。

クレル Model 600

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 クレルの3機種の新パワーアンプは、それぞれに独自の魅力を備えた見事な兄弟ともいえる完成度を備えており、選択に悩まされるのが嬉しい現実である。600は、ナチュラルで、しなやかなパワー感とも、濃密にしてエネルギーを秘めた大人の風格とも表現可能な多面性を持つが、余裕あるAC電源容量が必要な点に要注意。

ジンガリ 95-206 Studio Monitor

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 イタリアの新進メーカー、ジンガリのベーシックモデルである。仮想同軸型配置の中心を占める木製ホーンとコンプレッションドライバーは、このシステムならではの、かけがえのない独自の魅力。小型とはいえ16cm2個の低域は、22cm低域と同等な振動板面積をもち、反応が早く俊敏な音は、さすがにモニターだ。

JBL 4312MKII

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 プロ用モニターとして最初に登場した4300シリーズ中で現在残る唯一の製品。懐かしいコーン型高域はドーム型に変ったが、闊達に弾み、よく鳴る30cm低域ベースの音は、さすがに大口径バスレフ型ならでは。ドラムスの風圧を感じさせる低域再生能力は真の低音であり、小型ウーファーの単なる低音感とは異質の見事さ。

AR Model 310HO

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 インフィニティで名声を博したクリスティが独立しARのために開発した自信作。小口径ユニットベースながら、この種のシステムで常識的な低能率に真正面から調整し高能率化した事実は特筆ものだ。理論派の作品だけに、高域ユニット回りの設計は、充分に納得させられるだけの確実さがあり、真のベストバイ製品。

BOSE 314

井上卓也

ステレオサウンド 121号(1996年12月発行)
特集・「ザ・ベストバイ コンポーネントランキング710選」より

 音響心理学から生まれた独自の音場再生理論に基づいて、シャープな音像定位と豊かな音場感再生を実現できる。小型ながら非常に効果的な魅力をもつ自信作。とくに斜め後方に音を放射する新開発7・5cm高域ユニットは想像を超えて見事なプレゼンスを生み、あたかも小型901と実感させられる音場感再生能力は驚異的。

AR Limited Model 3

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 リミテッド・モデル3は、マーク・レビンソンやジョージ・セクエラの両氏らが参加して開発されたARのリミテッド・シリーズのスピーカーシステムだ。静電型SPの魅力をダイナミックがたで具現化する構想は、そのデザインにも表われている。低域エンクロージュア上部の、2個のドーム型間に高域を配したレイアウト浅いよう。前面はパンチングメタルで覆われ、音の拡散に使われる。ナチュラルで、キメ細かく豊かな音は雰囲気が良く、音楽ファンには好適だ。

アコースティックリサーチ

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 現在、ブックシェルフ型と呼ばれているスピーカーシステムはかなり幅広い範囲で使われているが、これは本棚に横位置で収納できる程度の小型エンクロージュアで、フロアー型に勝るとも劣らぬ低域再生能力を持たせることに成功した、米ARの創始者エドガー・M・ヴィルチュア氏の発明による、AR1をその最初の製品としたアコースティック・エアーサスペンション方式が原点である。
 小型エンクロージュアに、低域共振を可聴周波数以下にしたユニットを組み込み、小型ユニットで優れた低域再生能力を持たせようとする発想は、AR以前に東京工大の西巻氏により提唱され、細い木綿糸などで振動系を支持する糸吊りサスペンションが、一時期国内のアマチュア間で盛んに行われたことがある。これを30cm級のウーファーを使い、コーン振幅が大きくなる分だけ、磁気回路のプレート厚の2〜3倍の巻幅をもつロングボイスコイルと、それに対応するエッジ、スパイダーを組み合わせ、完全に気密構造のエンクロージュアに密閉して、内部の空気そのものを振動系のサスペンションとする方式が、ARの特徴だ。
 幅広ボイスコイル採用だけに能率は激減し、この低下に見合う強力なアンプが必要となる。時代は折よく半導体アンプの登場期で、真空管と比べ圧倒的にハイパワーが低価格で可能となったことがこの方式の確立に大きく寄与している。
 ARの代表作は64年発売の30cm3ウェイ機のAR3aで、20cm2ウェイ機AR4x,25cm3ウェイ機AR5などがラインナップされ、独自な形態のAR−LSTがその頂点に立つシステムであった。約30年の歳月が経過し、ARはこれも超高級スピーカーで高名なジェンセン・グループに属しているが、AR3aの復刻版が限定発売され、再びハイファイマーケットで、かつての名声が復活しつつある。

ボルダー

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボルダーは、米国中西部ロッキー山脈の裾野に位置するコロラド州の都市の名称で、この地に生まれたジェフリー・P・ネルソン氏により、1984年にアンプメーカーとして創業されたが、活動開始は’82年ということだ。
 彼は、’72年に映画関係の音響部門に関連した事業として、自作のアンプなどを使ってレコーディングスタジオの経営をはじめ、’78年にはサンディエゴのパシフィック&エンジニアリング社で、マイクロプロセッサー制御の放送用NAB型カートリッジレコーダー用アンプ回路の開発に従事し、プロ機器に使われている回路をベースにした各種アンプの開発を行なっている。
 ボルダーとしての第一作が、160W+160Wのボルダー160で、’84年には高出力化、高信頼度保護回路採用のボルダー500に発展した。
 映画関係の音響出身であるだけに、細部にこだわらず、音楽の構図を大きく、外側から捉えた音とデザインはかなり個性的である。

BOSE 214, 314

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 新製品の214は、左右スピーカーの内側前面に、音響心理学に基づく独自のレイアウトしたステレオ・ターゲティング・トゥイーターを取り付け、広い範囲で正しいステレオイメージが得られるようにしたシステムだ。314は、214に加えて、後方側面にコンサートホールの空間を再現する為の7・5cmダイレクト・リフレクティング・トゥイーターをマウントすることで、間接音成分を増やすとともに、シャープな音像定位をも実現させる新技術が導入された、いかにもボーズらしい新製品だ。

BOSE 101MM

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 101MMは、’82年の誕生以来のロングセラーを誇る、ボーズ小型高性能スピーカー原点と考えられるモデルだ。901系の11・5cm全域型は、人間の可聴周波数帯域をカバーする最小のサイズとして決定された口径だ。ボイスコイルボビンはアルミ材で、その表面は特殊表面処理により絶縁されている。ボイスコイルには、縦横比4:1の四角断面をもつ米国特許のヘリカルボイスコイルを採用。磁気ギャップ内の磁気エネルギーの利用率が非常に高く、放熱効果も優れており、独自開発の高耐性接着剤のバックアップもあって、フルレンジの常識を破る強大なダイナミックレンジを実現している。また、国内特許が認められたLCRを組み合わせたパッシヴEQは、スムーズなfレンジを確保している。
 101MMは、業務用途に多用されているため、製品間のバラツキは極度に少ない。たとえば数年前のユニットと現在のユニット間でも、音質的な相違は皆無に等しいそうだ。また、各種アクセサリー類も完備しており、自由に屋外も含めた自由空間でオーディオを楽しめるパートナーとして、仕様の異なる101MMG/VM/SDVMなどとともにアクティヴに楽しめるシステムだ。

BOSE 121WB, 121

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 121WBは、WBシリーズの第一作としてすでに定評の高いモデルだ。モデルナンバー末尾にVが付くモデルはタテ型仕様で、化粧板の位置が異なる。
 121は、高域ユニットとアクースティマス方式の低域が組み込まれた242システムと組み合わせれば、121+242=363のように、363システムにステップアップすることも可能だ。
 また、マイカ混入型の新しいコーンを採用したことで、明解さが加わり、反応が一段とシャープになった。リジッドなエンクロージュアと独自のエアロフレアポートの低域再生能力が相乗効果的に働き、スピーカーの存在感をあまり意識させずに、想像を超えた低域再生能力が楽しめる、ボーズならではの意外性もすごく魅力的である。

ユニゾンリサーチ Simply Phono

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SIMPLY−PHONOは、入力部に47kΩ、100Ω、50Ω、22Ω/100pFのインピーダンス切替が可能。回路構成は、初段がグリッドリークバイアスの3極管1段増幅、2段目との段間にCR型フォノイコライザー素子が組み込まれており、2段目はセルフバイアスの3極管増幅、それに続いてカソードフォロワーの出力段が設けられている。

スタントン W.O.S.100, 681EEE MKIII, Trackmaster-EL

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ステレオ初期に、一点支持型トーンアームの先端にカートリッジを固定した、非常に未来志向型のステレオユニポイズを発表したピカリング社は、モノーラルLP時代からカートリッジの名門として高い評価が与えられた専門メーカーだ。そしてステレオLP時代となった’61年に、当時のピカリング社の社長であったW・O・スタントン氏が、同社のトップランクモデルに特別にスタントンのブランドを与えたことが、そもそものスタントン・ブランドの誕生である。同社カートリッジの発電方式は、MM型を中心にIM型も加えた、まさに適材適所の自由な設計が特徴だ。
 スタントンの評価を最初に高めたモデルが、’69年発売のIM型681EEで、その暖かみがありシャープな音は記憶に新しい。後に500、600シリーズが加わる。また、ディスクにブラシを接触させ、振動系の安定度を向上させるダスタマティックも注目された。
 ’80年になると、MM型のコイルを極限まで減らしたローインピーダンス(3Ω)の製品980LZSを発表した。このタイプは、すでに業務用としてはグレース、オーディオテクニカで製品化されていたが、基本的にはヘッドアンプ専用でトランスにはマッチしない。これ以後は針先形状が問題とされた時代で、同社ではステレオヒドロンが、その回答だ。
 WOS100は、チタンコートのボディに設計者W・O・スタントンのシグネチュアを刻んだ同社技術の集大成モデル。ブラシ付3・3mV出力のエネルギッシュで力強く、繊細さも見事なモデルだ。
 681EEE MKIIIは、681系の最新版。チタンコートボディ、サファイアコート・カンチレバーに菱形形状チップを採用している。
 トラックマスターELは、逆回転の頭出しにも耐える振動系とスタイラスに蛍光塗料コート・ヘッドシェル一体型だ。

ユニゾンリサーチ Mistero

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 MISTEROは、今年同社のラインナップに加わったライン入力専用のプリアンプである。ローレベル入力を扱うプリアンプでは電源の整流回路に半導体を使用するとスイッチングノイズの影響を受けやすいが、このMISTEROでは整流管を使い、チョークインプット型の整流回路を採用していることに注目されたい。
 入力部には、窒素ガス封入型接点使用のリレーによる入力セレクターがあり、ダイレクトにECC82/12AU7のSRPP増幅段に信号が加えられ、この出力部にボリュウムコントロール、続く出力段が、ECC83/12AX7の片側を使うカソードフォロワーになっている。初段のバイアスにはリチウム電池を使った固定バイアスが採用され、常に安定したバイアス最適値が、高いリニアリティとSN比の向上に寄与している。信号kは純A級動作のノンNF設計で、オプションでSIMPLYと共通のMM型フォノカートリッジ用SIMPLY−PHONOイコライザーアンプを使うための、電源供給用DIN端子を具えている。

ユニゾンリサーチ Simply Four

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SIMPLY FOURは、出力段がEL34/6CA7の並列接続シングル純A級動作のプリメインアンプだが、前段用の双3極管12AU7が3本となり、このモデル独自の設計が施されている。パワーは14W+14Wに抑えられているように受けとれるが、この値のほうがむしろオーソドックスな定格だ。
 回路構成は、2段目がSRPP回路、終段は並列接続で、出力トランスのタップを使ってNFをかけるUL接続、電源部はSIMPLY TWOの2倍の容量の平滑コンデンサーが採用され、並列接続での電流増加に対処した設計だ。なお、出力段はセルフバイアスだが、バイアスは深く、前段のドライブ能力が強化されたことと相まってオーバーロード時には強く、かなりのパワーマージンを備えた設計である。

ピカリング 625E-S2, 625DJ, 150DJ

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ピカリングは、1946年にニューヨークでノーマン・ピカリング氏が創立したカートリッジメーカーで、独自のマグネティック型発電方式で注目された。’58年にはそのステレオ版を発表し、その後、ダスタマティック・ブラシとアース付スタイラスアッセンブリーを開発。そしてMM型、MI型(可動鉄芯・マグネティック型)を加え、’73年には超高域再生特性が要求されるCD4用4チャンネルカートリッジを海外ではじめて発売するだけの、高度な針先形状と振動系などの技術を備えていたことで注目集めた。
 この成果により、針先形状の研究と振動系の軽量化、発電方式の新構造化が一段と図られ、以後の広帯域型への発展のベースとなった。
 注目したいことは、ターンテーブルの軸受部にドーナッツ型磁石を設け、この反発作用でターンテーブルをフローティングするジャイロポイズ方式の開発だ。これが’76年発売のプレーヤーシステムFA145Jに採用された。この発展型が国産のマグネフロートである。
 トーンアーム関係では、アーム支持部に水平回転軸のみを設け、先端部に上下方向にスイングするカートリッジ取付け部をもつユニークなタイプを開発。これはピカリング型と呼ばれ、LP時代にはオイルダンプ型と人気を二分する存在であったことを懐かしく思い出されるファンも少なくないだろう。独自のMI型ともども、国内にコピー・ピカリングが出現したことを考えても、同社技術の影響力は大きい。
 625E−S2は、同社の伝統を最も色濃く継承するMI型で、S2はヘッドシェル付。滑らかでウォームなサウンドはアメリカンポップスなどに最適。
 625DJは、デリケートな扱いが要求されるカートリッジを、強く逞しく、ノンブレーカブルに変身させた個性派。重針圧、耐逆回転性、蛍光ポイント付針先、針先保護Vガードと装備は抜群。
 150DJは出力8mV、円錐針、2〜4gの重針圧、信頼性と経済性の両面から、DJから最も信頼されている定番モデル。ジュークボックスでの成果の反映か。

ユニゾンリサーチ Simply Two

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SIMPLY TWOは、そのモデルナンバーが示すように、単純なEL34/6CA7の純A級シングル動作のプリメインアンプである。基本型は、入力部に入力セレクターとボリュウムコントロール機能を持たせたパワーアンプで、フィードバック切替スイッチが付属しており、一種のキャラクターコントロールとして使用可能だ。また、別売のフォノEQ用の電源供給ソケットが付いている。定格出力は12W+12Wと必要最小限のレベルであるが、小口径フルレンジユニットや感度90dB以上の2ウェイシステムと組み合わせれば、一般の家庭用再生レベルなら実用上での問題は皆無に等しいであろう。いわゆる5極管的な、古くはペントード的な音といわれた傾向は見事に抑えられており、常に手元に置いておきたい印象のモデルである。

ジョーダン・ワッツ Module Unit, JH1000, JH200

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 英グッドマンのフルレンジユニットの名器AXIOM80や、超小型ブックシェルフ型2ウェイシステムとして世界的にショックを与えたマキシマなどの開発者E・J・ジョーダン氏と、同社の技術マネージャとして活躍していたレスリー・E・ワッツ氏の2人が理想の小型スピーカーの開発を目指し、1964年に創立したユニークなスピーカーメーカーが、ジョーダン・ワッツだ。
 同社の最大の傑作は、10cmアルミ合金コーン、ベリリウム銅線サスペンション、コーン径より大きい磁石を15cm角アルミダイキャストフレームに組み込み、フレームに音響負荷をかけたフルレンジ型のモジュール・ユニットだ。このユニットの全域型らしい、生き生きとした表現力豊かで反応のシャープな音は、非常に魅力的で、1個使用のA12、2個使用のA25、さらに4個使用のB50などで一躍注目を集めたことは記憶に新しく、その音が鮮明に想い出される。
 その後、超小型のジャンボ、一つのエンクロージュアでステレオ再生可能な8個使用のステレオラなどで一段と評価を高めながら、ユニークな陶器製花瓶型システムのフラゴンに至る。
 そして、トゥイーターを加えた2ウェイ型、ドロンコーン採用などのプロセスを経て、80年にはモジュール・ユニットMKIIIとなり現在に至っている。
 JH1000は、口径を12・5cmに拡大した、モジュール・ユニットと同構造の低域と、5・1cmメタルコーン型高域を、450Hz/6dB型で2ウェイ構成としたトールボーイのフロアー型で、現在の同社のトップモデルである。
 JH200は、新開発のダンパーレス特殊サスペンションの9cm全域型を、英国高級エンクロージュアメーカーとして定評の高いR・ホールダーが設計したエンクロージュアに収めた珠玉の小型システムともいえる新製品だ。本機は、全域型ならではの鮮度感が高く、爽やかで生き生きした音が印象的である。

ハーマンカードン Citation System 7000

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ハーマンカードンは、1952年創立のオーディオメーカーだが、’60年初頭に発売された同社のトップモデルで構成するサイテーション・シリーズで、一躍当時のステイタスモデルとして最高の評価が与えられ、国内でもマランツ、マッキントッシュに次ぐ高級機として評価された。この記念すべき製品が、サイテーション1/3プリアンプと2/4パワーアンプだ。当然、管球式の凝った設計の製品で、程よくソリッドで明解な音は、こだわりのないストレートさが魅力で、マランツにもマッキントッシュにもない独特の味わいだった。
 ソリッドステート時代になると、早くから半導体化が試みられ、サイテーションAプリアンプとBパワーアンプがソリッドステート時代の頂点に位置づけされるアンプとして開発され、後にキットフォーム化されたような記憶がある。
 その後、米国企業によくあるように経営面で紆余曲折があったが、’80年代初頭に動的歪みをテーマとして、過剰なNFは音質を害すると提唱したマッティ・オタラ氏が設計したパワーアンプ、サイテーションXXで高級市場に復活を果した。この製品の開発は、当時の新白砂電気で行なわれ、続いてXXP、XIIプリアンプ、XIパワーアンプがマッティ・オタラ氏の手を離れて発売された。
 超高級機ではないが、サイテーションの名は現在でも使われており、現在はホームTHX、ドルビー・プロロジックに加え、独自のAVサラウンドシステムを提唱している。これは、後方に独自のデュアルドライブ・ダイポール・サラウンド・スピーカーを設置し、これをサラウンドロジック・プロセッサーで制御することで、後方中央にファンタム・リアセンター・チャンネルを設け、後方/左/右の3チャンネルと、前方の3チャンネルの合計6本の音軸をもつ、ジム・フォスゲート氏が提唱する6音軸ステアリング方式を特徴とするシステムが、サイテーション7000である。