Category Archives: CDプレーヤー - Page 5

CDのメリットを活かすためには

井上卓也

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
特集・「いま一番知りたいオーディオの難問に答える」より

Q:CDのメリットをはっきり聴きとれるレベルのベーシックシステムを構成するとどの程度のものになるのでしょうか。選択上の注意点を含めて、具体的に製品をあげて下さい。

A:質問を読んでみると、まず、問題となるのは、『CDのメリットをはっきりと聴きとれるレベルのベーシックシステムを構成する』という日本語としての意味をどのように解釈するかが、この質問を解決する鍵であるようだ。
 では、CDのメリットとは何だろうか。ここでは、どのような人が、どのような部屋もしくは場所で、何の目的でCDを聴きたいのか、が判からなければ、解答するだけの経験と情報を私が持っていたとしても、答えられるはずはない。条件を設定しないことが今回の質問の面白さとかが編集部の見解であるようだが、質問の次のポイントである、ベーシックシステムという奇妙なカタカナの持つ意味の漠然とした点をも含めて、改めて編集部に確認をとるために電話をかけたところ判かったことは、CDを聴くための、もっとも簡単なシステムを組み合せろ、ということが質問の意味であるということであった。
 とかく、オーディオでのいわゆるQ&Aと称する項目には、誤った解答を含め、数多くの問題点が存在するが、それはさておいて、引き受けた以上は何か解答めいたことを書かなければならない。
 CDが登場して以来、アナログかデジタルかとか、伝統的なアナログディスクの芸術性をけがすものとかの記事がオーディオ誌上をにぎあわせたが、嵐のあとの静けさのように、話題性が薄れた現在ではかつてのアンチCD論を唱えた人々も、現実にはひとつのプログラムソースとして使っているというのが実状であるようだ。
 では、CDが実用化されて、オーディオはどのように変わっただろうか。漠然とCD登場以来の新製品、オーディオ誌上でのいわゆる音質評価のリポートなどを眺めていればそれほどの変化は認められず、スピーカー、アンプ関係、カセットデッキ、テープ関係の広告コピーに、『デジタル対応』という表現がしばしば見受けられる程度というのが平均的な見方であるだろう。
 この『デジタル対応』なる言葉はときには新鮮なひびきに受取られるであろうが、簡単に考えて、従来から使われてきたいわゆる新製品とか、新型とかと同義語と受取るとよい。でないと、『デジタル対応型』とそうでないものの間に差があるということもになりかねない。現実に、CDプレーヤーを管球タイプの古いアンプに組み合せても、同時代のスピーカーシステムを使っても、音楽を楽しむ点でで問題があろうはずはない。
 ただし、CDのスペック上の特徴である、ワウ・フラッター、クロストーク、SN比、ダイナミックレンジなどの項目での従来のプログラムソースに比べて圧倒的な優位性を活かすためには、現用のシステムに接続するだけでは、CDのもつ情報量の豊かさを音に活かすことはできないことに注意したい。
 つまり、トータルなシステムの再点検や、より高度な使いこなしが要求されるわけだ。
 オーディオでは、周波数特性的な面が重視され、CDの再生機器が問題にされやすいが、従来のプログラムソースに比較して約20dB増加したダイナミックレンジは、ダイナミックレンジ的なフィデイリティの高さであり、クロストークやワウ・フラッター、SN比が優れていることは、音場感的な空間情報量が圧倒的に優れていることを意味するものだ。したがって、モノーラル時代から受継がれてきた、サウンドバランスのみを重視する聴き方では、CDのもつ特徴は聴きとれないだろう。かつての4チャンネル時代以後、2チャンネルステレオでの音場感情報をいかに増すかについて努力を続けてきたメーカー側の技術開発や新素材の導入に対しての過少評価については、反省してほしいことと思う。つまり、サウンドバランスだけで2チャンネルステレオを聴くことはナンセンスである。
 音質面、音場感情報の豊かさ以外にも、CDには機能面、外形寸法的な特徴で、従来のディスクとは比較にならぬ優位性がある。
 この使いやすさ、一度ディスクをセットすれば、イジェクトしない限りにおいて安定性や再現性に優れるため、かつてのアンチCD論者も、開発側のメーカーでも、最近ではプログラムソースとしてCDを使う例が非常に多くなっている。このことが、アンプやスピーカーに結果として表われているようだ。
 例えばコントロールアンプの開発では、従来は、アナログディスクをプログラムソースとするため、基本データーが得られたあとの音質面でのチェックは、まず、MCヘッドアンプ、RIAAイコライザーを追込み、次いでハイレベル入力以後、コントロールアンプ出力までのフラットアンプやトーンコントロールアンプ、フィルター段などを調整するため、結果として、RIAAイコライザーを受けるハイレベル入力以後コントロールアンプ出力までの増幅段は、いわば、パワーアンプとの間のサウンドやキャラクター調整用アンプといった性格が強く、各社のコントロールアンプで、この部分のみを比較すると音の違いに驚かされたものだが、昨年あたりの新製品では、CDを使うことが多いためか、まず、この部分から追込みが始められているようで、ハイレベル入力以後の増幅段の質が大幅に向上しているようだ。このあたりは、プログラムソースと共存して進歩するオーディオ機器の姿をクリアーに表わしている面だと思う。
 そろそろ、本題の解答の組合せをまとめたいが、簡単にCDの機能と音質を楽しむ目的なら、CDプレーヤーは、10万円未満の、ヤマハ、オーレックス、ケンウッドで好みのモデルを、スピーカーで聴くとすれば、ボーズ101MM+1701アンプで、あまりコンポーネントシステムらしくなく、気軽に、それも、予想よりもダイナミックな音で楽しむのが、ユニークな方法だと思う。

CDの導入にあたって予算50万円をどう使うか

菅野沖彦

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
特集・「いま一番知りたいオーディオの難問に答える」より

Q:予算50万円で、アナログプレーヤーのグレードアップを考えるべきか、それともCDプレーヤーを新規に購入すべきか迷っています。ただ、CDプレイヤーにはこの価格帯のものはありません。正直なところCDの音はアナログのそれを越えているのでしょうか。

A:この質問は解釈が難しい。簡単に受け取ることも出来るが、難しく考えると、アナログVSデジタル論にならざるを得ないのである。質問のポイントも曖昧だ。50万円で、プレーヤーのグレードアップというが、今まで使っていたプレーヤーがなんなのか、どの程度のものだったのかは不明である。こんな質問に答えろというのだから無茶な話である。この質問の意味するところは50万円ぐらいのプレーヤーで鳴らしたアナログディスクの音と、CDプレーヤーによるコンパクトディスクの音を比較して答えてほしいようにもとれる。CDプレーヤーの場合、50万円ぐらいの価格のものがないことは質問者はよく御存知だから、どの辺のもので比較論を述べよといわれるのか? 何から何まで意味の不明確な質問である。
 仕方がないから、ここは、この質問を一つのヒント・テーマとして考えてみることにしよう。
 CDが発売されて一年半ほどになるが、タイトル数も2000を越えたといわれ、CDプレーヤーも、すでに各メーカー共に、第三世代の製品も市場に送り出すところである。私の手許にも、もう200枚を越える数のCDが集まっているし、自分でも、CDを制作してみた。CD制作を通しては特に数々の興味深い体験をして、デジタル録音の理解を深めることが出来たし、音というものの複雑微妙な性格を改めて思い知らされた気もする。そして、今の私は、CDや、デジタル録音には何の嫌悪感もアレルギーも、偏見も持っていない。それどころか、むしろ、この新しいテクロジーに対して畏敬の念までもっているものだ。しかし、だからといって、デジタル一般やCDが、音の点で、アナログのそれを越えているなどとも思っていない。強いて、現時点でのCDとアナログディスクとの音を比較して述べるならば、部分的には一長一短、総合的には甲乙つけ難しというのが私の感想だ。部分的、総合的というのは少々説明を要するかもしれないが、簡単にいうことにしよう。つまり、部分的といったのは、ノイズがあるかないか、解像力の優劣、微弱音、間接音などのローレベル再生の雰囲気、弦の質感、打楽器の、あるいは管楽器のそれといった、音色の個性への適応性などを微視的に分析して聴き、比較した話であり、総合は、それらの部分的な優劣のプラス・マイナス、さらに扱い易さ、機能、価格などを加えて、全体としての商品の魅力としての評価を意味したつもりである。とするならば総合的には、甲乙つけ難しというCDは、誕生して、わずか二年足らずの商品だということを考える時、その技術の先進性が可能にする将来の発展性の大きさへの期待がふくらんでくるのである。また、アナログディスクについては、技術的に決して現段階が最終的なものではないわけで、まだまだ、将来への発展の可能性があるにもかかわらず、デジタルの出現により、急速に、デジタルとのドッキング方向に向ってしまっている事実を認識しなければなるまい。現に、すでに現在、アナログディスクの新譜の多くはオリジナルがデジタル録音である。今後、アナログディスクが消えてなくなることはないとしても、純血のアナログディスクは生れにくい。おそらく、80年代をもって、純アナログディスクの制作は終焉を迎えることになるだろう。そして、今までに制作された厖大なアナログディスクはゆるやかに下降をたどり、中で優れたものはCD化される方向へ行くのではないだろうか。ただ、ヒットソングのような、いわゆるシングル盤に対するCDの対応が遅れているから、事はそう単純にはいかないと思うが……。ポピュラー分野でのアナログ技術は、まだまだ根強いと思われる。レコーダーのデジタル化が端緒についたばかりであって、その他、録音制作に必要な関連機器のデジタル化はまだまだ先のことである。
 こうした現実の中で、私自身は、録音再生のオーディオ技術へのデジタルテクノロジーの参入は尊ぶべきことであって、アナログ技術と対立させて優劣を云々すべきものではないと考えている。ただ、強調しておきたいことは、新しいテクノロジーなるが故に、何が何でもデジタルが優勢であると考えてしまう誤った感覚、そして、同じことだが、アナログ技術を過去のものとして、前向きに捉えての研究開発を怠る姿勢の危険についてである。アナログにはまだまだ大きな可能性が秘められているはずだ。そして、デジタル技術も、その録音再生に関与してみると、まだまだ未完成な技術であることが判る。
 さて、そこで、質問者の迷いに答えることにしよう。結論的にいって、今現在使用中のアナログプレーヤーに大きな不満がなければ、予算50万円のうち、15万円ほど、CDプレーヤーにお使いなさい。そして残りの35万円のうち、とりあえず、10万円ほどはCDを買ってみる。25〜30タイトルのCDが買えるはず。これは、全発売タイトルの1%にも満たないわけで、結構、選択の楽しさ、難しさを味わえるはず。そこで、残りの25万円については、気が乗れば、さらに大量のCDを買い込むもよし、アナログディスクを買い足すのもよいだろう。あるいは、25万円あれば、現在のアナログプレーヤーのグレードアップも、かなりのレベルで出来るのではないだろうか。アナログディスクに、オープンリールテープ、カセットテープ、FM/AMチューナー、そして、新たにコンパクトディスクが加わったというように考えて、この新しいメディアのもつ数々の特徴を楽しんだらいかがなものだろう。もし、質問者が、徹底的にアナログだけの追求をやりたいというのなら、それもまた素晴らしい。しかし、50万円では徹底的追求にはほど遠いグレードのプレーヤーに留まるともいえるだろう。

CDの魅力を十全に聴きとるには(組合せ)

井上卓也

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
特集・「いま一番知りたいオーディオの難問に答える」より

Q:コンパクトディスクならではの魅力を(機能の豊富さを含めて)完全に聴きとれるシステムを構成したいと思います。CDの良さが十分に発揮されるコンポーネントの組合せをお願いします。

A:他のCDについての質問と言葉の意味上で差別の少ない設問である。『コンパクトディスクならではの魅力を(機能の豊富さを含めて)十全に聴きとれるシステムの構成を』がポイントである。この件について、編集部に問合わせたところ、いわゆるCDを聴く現状でのリファレンスシステムの組合せをつくれ、ということであるとの答を得た。それにしても、オーディオ的な日本語の表現は大変に、意味を把握することが難しいものだ。
 この質問は、問合わせの結果としてリファレンス的なシステム、という目的が判かっているだけに、考え方はあるはずである。
 リファレンスという意味も、オーディオではよく使われる言葉であるが、これも、実際には相当に幅広い意味で使われているようだ。必ずしも、リファレンスシステムだから現代の最高級(最高価格かもしれない)コンポーネントを集めて組み合せればよいとはかぎらない。巷には、とにかく、最高価格の製品を可能なかぎり多数組み合せて、これぞ最高のシステムとする風潮が一部にはあるらしいが、集めただけで、素晴らしい音楽が、音が聴けるという保証があろうはずはなく、集めて組み合せた時点が出発点であり、それ以後、技術的な感覚的な意味をも含んだ使いこなしの結果が、目的とする素晴らしい音楽、音に到着する道のりであり、どの程度の期間が必要かはまったく予測することができないほど遠い道のりであるのは事実だ。とかく、使いこなしが軽視され、というよりは忘れ去られ、コンポーネントを買うことが終着駅的な風潮が平均的になったことが、オーディオを面白くなくさせ、業界は低迷を続け、基本方針も明確でないAVとやらが登場すると、オーディオがだめならAVがあるといって安易に転向することになるわけだ。
 ちなみに、オーディオコンポーネントシステムの中央に、チューナー部分を省略したわりには高価格なモニターテレビとハイファイVTRを置けばAVシステムになるのだろうか。もしかりに、高画質、高音質がAVのメリットだとしたら、一般的に家庭用のテレビの画質に神経をとがらせ、何年に一度アンテナを交換し、いつCRTを交換しようかと考える人がどれだけ居ることだろうか。ハイファイVTRが出現して急激にAV時代が釆たとするならば、AVの前途は、まさにバラ色に輝いた末来があるはずである。家庭のテレビは、もともとAVなのである。
 やや横道にそれたが、本題にもどして、設問にあるCDのためのリファレンスシステムを考えよう。まず、リファレンスとなるCDプレーヤーをどう考えたらよいのだろうか。
 CD登場以来、一年半の年月が経過し、製品としては、ほぼ第三世代のプレーヤーが市場に登場しているが、大勢は、価格低減化の競争にあり、この争いが一段落しないと、いわゆるオーディオ的な意味でのCDの規格を活かした優れた製品は開発されないであろう。
 では、現在の製品でどのクラスのCDプレーヤーを選べば、リファレンス的に使えるのだろうか。ここでは考えなければならぬ点はCDの特異性である。スペック上で見れば、99800円から180万円まであるCDプレーヤーで基本的なスペックは細部を除けば同一であるということだ。少なくとも、このようなオーディオ製品はアナログ系では存在しえなかったものだ。これが、PCMプロセッサーを含み、デジタル系のコンポーネントの際立った特徴である。
 オーディオを科学の産物とすれば、スペックが同じであれば、正しい使い方をすれば、ほぼ、類似した結果である音は得られるはずではないだろうか。現実は、市販のCDプレーヤーは、アナログ系のコンポーネントよりは、いくらか差は少ないとしても、音的な差は、かなり大きい。しかし、現状のCDプレーヤーの問題点を正しく把握していれば、それぞれの機種に応じた使いこなしで、かなり接近した結果に導くことは可能である。
 その問題点は大きく分けて二つある。その一は、機械的な振動に非常に敏感であり、音質、音場感情報が大きく変化することである。簡単に考えて、アナログプレーヤーより一段と設置場所の選択に注意が必要と判断すべきである。外形寸法的に小型であるため、安易に、プリメインアンプやコントロールアンプの上に乗せて使うことは厳禁である。しかし現状は、しかるべき権威のある団体のCDプレーヤーの試聴会場で、CDプレーヤーを積み重ねて試聴をしていた例もあるほど、この件に関しては、特例を除いて業界全体が認識不足である。例えば好例として、メーカーのCD試聴会場で、CDプレーヤーの上にCDのケースを乗せたままヒアリングをすることが多いが、その場合は、メーカー自身もCDプレーヤーを使う心得がないと判断されたい。
 その二は、CDプレーヤーのACプラグをどこから取るかの問題だ。基本は、アナログ系のアンプ類と異なった壁のACコンセントから取ることで、誤ってもコントロールアンプのスイッチドACコンセントから取ることは避けたい。この理由は、数多くの問題点を含んでいるために説明は現状では出来ない。
 組合せを作らねばならないが、現時点での組合せ方法論は、CD登場以前とは根本的に変化をしており、いわゆる長所を活かす方法とか、欠点を補いあう方法では好結果は望めない。ここではスペース的な制約があるため、あえて在来型でまとめることにするが、要は使いこなしにつきることを注意したい。CDプレーヤーは、他社にないアプローチがユニークな京セラのDA910、アンプは同じく、C910、B910が好適だが、プリメインなら、パイオニアA150DかビクターA−X900あたりが機構設計上の長所で候補作だ。スピーカーは、聴感上のSN比が優れたダイヤトーDS1000、次いでビクターZero100。

デンオン DCD-1800

井上卓也

ステレオサウンド 70号(1984年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 一昨年、脚光を浴びて新登場したCDプレーヤーも、大勢としては、ローコスト化の方向に向いながらも、すでに、第二、第三の世代に発展しているが、今回、デンオンから、第二弾製品として、同社独自の開発によるDCD1800が発売された。
 価格的にも、標準と思われるクラスの製品で、デザイン的にも、左右にウッドパネルを配した、同社の高級モデルに採用されるポリシーを受継いだ落着いた雰囲気を備えており、機能面でも、ダイレクト選曲、プログラム選曲、インデックス選曲、イントロサーチ、スキップモニター、2点間リピートを含むリピート、タイマー再生など、リモコン機能を除き、フル装備というに相応しい充実ぶりである。
 ブラックにブルーの文字が鮮やかに輝やく集中ディスプレイは、トラック、インデックス、演奏経過時間とプログラムされた曲番と次の演奏曲番表示をはじめ、プレイ、ポーズ、リピートなどの各機能が3色に色分けされて表示される。
 本棟の注目すべき点は、レーザーピックアップ駆動に業務用仕様DN3000Fに採用された扇形トレースアームの外周をモーター駆動するリニアドライブトレーサー方式が導入され、トレースアーム軸とディスク用スピンドルの2軸が完全平行を保ちながら、厚手のダイキャストベースで支えられ、かつ、ダイキャストベースはシャーシからフローティングされ、外来の振動を防止して、高精度、耐久性、応答性の早さ、などを獲得している機構にある。それに加えて電気系の最重要部たるDAコンバーター個有の、アンプでいえばB級増幅のスイッチング歪に相当するゼロクロス歪を解消する新開発スーパーリニアコンバーターを採用し、特性上はもとより、聴感上での、いわゆるデジタルくさい音を抑え、飛躍的に音質を向上させたことがあげられる。
 聴感上では、本機は、ナチュラルな帯域バランスと細かく、滑らかに磨込まれた音の粒状性が特徴である。平均的にCDプレーヤーは、シャープで、音の輪郭をスッキリと聴かせる傾向が強いが、伸びやかさとか、しなやかさで不満を感じることが多い。DCD1800は、この部分での解決の糸口を感じさせてくれるのが好ましい。
 音像は比較的に小さくまとまり、音場感もスムーズに拡がり、水準以上の結果を示すが、もう少し改善できそうな印象がある。
 問題点の出力コードの影響は、比較的に少ないが、平均的なコントロールアンプ程度の影響は受けるため、細かい追込みには、各種のコードの用意が必要である。
 機能面は実用上充分であり、機能の動作、フィーリングも、ほぼ安定している。ただテスト機では、トレイのオープン時の反応が鈍かったが、個体差であろう。安定感が充分に感じられる手堅い新製品である。

NEC CD-803

黒田恭一

別冊FMfan臨時増刊 ’84カートリッジとレコードプレイヤーの本(1983年10月発行)
「CDの本当の実力を垣間見た」より

 世代という言葉はゼネレーションという英語に対応すると考えていいであろう。「広辞苑」では世代をこう定義している、「生物が母体を離れてから成熟して生殖機能を終わるまでをいう。ほぼ三十年間をひとくぎりとした年齢層。親・子・孫と続いてゆくおのおのの代」。
 ところが、昨今では、あちこちで、CDプレイヤーの第二世代といったような活字を目にする。なに? 第二世代? といったところである。もし、「広辞苑」の定義にしたがうとすれば、昨年の秋から今年の前半にかけて発表されたCDプレイヤーが親の世代で、それ以後のものが子の世代ということになる。

 なにごとによらず変化の激しい時代ではあるが、一年もたたないうちに親の世代から子の世代にかわってしまうというのでは、いかになんでもドラマチックにすぎるように思うが、どんなものか。しかし、現実には、その第二世代のCDプレイヤーがつぎつぎに登場しつつある。まだそれらのうちのごく一部のプレイヤーにふれただけなので、断定的なことはいいにくいが、おおむね親のいたらなさを子がおぎなっているようである。とりわけ使い勝手の点で、そのことがいえそうである。
 親の世代の製品を買った人間としては、どうしたって心おだやかではいられない。しかし、あわててどうなるものでもない。一年未満で第一世代が第二世代に変わったのであるから、来年の今ごろには第三世代の製品が世にでていても不思議はないわけで、そのたびにあたふたしていては身がもたない。ぼくにも人並みに自己防衛本能があるから、親が子に変わり、子が孫に変わっても、すでに冷静でいられるようになった。
 おそらく、今のぼくがしなければならないのは、CDプレイヤーに関しての最新情報とやらに動揺する前に、現在使用中のCDプレイヤーを十全につかいきることであろう。はじめのうちは、CDプレイヤーはどんなつかい方をしてもいいという、あちこちからきこえてきた言葉を信じて、ひどく無頓着につかっていたが、そんなつかい方をしていたのではCDプレイヤーのよさが引き出せないとわかった。
 そのことがわかってから、あれこれ試行錯誤がはじまった。むろんそれなりに面倒なことではあるが、その面倒なことがまたたのしいと思う気持ちは、オーディオに関心を抱いでおいでの方なら、ご理解いただけるのではないか。夜が更けてから、つまり俗にいわれるアフター・アワーズに、いろいろ試しているうちに、思いもかけぬ発見をしたりして、ひとり悦に入ったりした。
 今はNECのCD-803というCDプレイヤーをつかっている。恥をさらすようであるが、そのCD-803をいかなるセッティングでつかっているかを、なにかのご参考になればと思い、書いておこう。ぼくの部屋に訪ねてきた友人たちは、そのCDプレイヤーのセッティングのし方をみて誰もが、いわくいいがたい表情をして笑う。もう笑われをのにはなれたが、それでもやはり恥ずかしいことにかわりない。
 では、どうなっているか。ちょっとぐらい押した程度ではぴくともしない頑丈な台の上にブックシェルフ型スピーカー用のインシュレーターであるラスクをおき、その上にダイヤトーンのアクースティックキューブをおき、その上にCDプレイヤーをのせている。しかも、である。ああ、恥ずかしい。まだ、先が。

 CDプレイヤーの上の放熱のさまたげにならないような場所に、ラスクのさらに小型のものを縦におき、さらにその上に鉛の板をのせている。このようなことをしていればどうしたって、今はやりの「ほとんど病気」という言葉を思い出す。しかし、念のために書いておきたいと思うが、見た目は、いくぷんユーモラスではあっても、美観(!)をそこねるようなものではない。
 そして、CDプレイヤーからプリアンプにつながっているコードは、ブチルゴムを六重に(!)まいたものである。普段はその状態で聴いている。しかし、今日は徹底的にコンパクトディスクを聴こうと思うときには、NECのCD-803ではアウトプットのレベルが可変なので、CDプレイヤーからでているコードをダイレクトにパワーアンプにつなぐことにしている。この方法はかなり効果的である。
 相手の可能性を信じられたときに、人間は挑戦的になれる。尻をたたいてもしれている駄馬と思ったら、鞭を手にしたりしない。駿馬と思えばこそ、ジョッキーは狂ったように鞭をふるう。
 なぜこのような恥さらしをも辞さずにありのままを書いてきたかといえば、それは、NECのCD-803が、すくなくともぼくにとっては駿馬だからである。ごく無造作につかっているときにも、その音質的な面での卓越性には気づいていた。しかし、つかっているうちに徐々に使い手であるこっちが追いこまれた、というのが正直なところである。あのようにしてみたらどうであろうとか、次はこうしてみようとかいったことを次々考えた。

 相手に魅力があればこそ夢中になれた。NECのCD-803にはそれだけの潜在能力があったということである。ラスクをつかえば、あきらかにそれまでとは違う音を聴かせた。調教しがいがあった、とでもいうべきかもしれない。
 今、ラスクでサンドイッチにしたようなかっこうでCD-803をつかっていで、そこできける音には十分に満足しているし、デジタルであるがゆえの不満はなにひとつない。コンパクトディスクはどうもデジタル臭くてなどという人にかぎって、CDプレイヤーをプリアンプの上とかカセットデッキの上においていたりする。こっちが愛情と誠意々もって接しなくては、相手だってほどはどの力を示してとどまる。道具でも人間でも、そのことでは同じである。
 NECのCD-803は、ばくの聴いたかぎりのことでいえは、第一世代のCDプレイヤーのなかでは、音そのものの実在感とでもいったものを示すことにかけてひときわ抜きん出た能力をそなえている。よくいわれるようにともすると響きが薄くなりがちなところがコンパクトディスクにはあると思うが、そこから巧みに逃れているのがCD-803だ。

 もともとそのような能力をそなえているCD-803を、一応ほくなりに追いこんだかたちでつかっているわけであるが、そこで聴ける音はコンパクトディスクはやはりミュータントであるという思いをあらたにさせる、と自分では思っている。したがって、今のところは、第二世代の機器が登場しようと、さほどあたふたとはしないでいられる。なぜかといえば、いまなおCD-803に夢中であって、とても子の世代の機器に浮気をする気持ちになれないからである。
 たしかにCD-803には使い勝手のうえでもう一歩と思うところがなくもないが、慣れとは恐ろしいもので、しばらくつかっているうちにその点でのいたらなさも気にならなくなった。アバタモエタボとでもいうべきかもしれない。
 今ぼくは、CD-803でコンパクトディスクをきいて、CD万歳! といいたい気持ちである。

ソニー CDP-5000

菅野沖彦

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
「プロ用CDプレーヤー ソニーCDP5000試聴記」より

 CDプレーヤーが発売されて、まずまずのスタートをきった。昨年の9月に、一部の新製品が出たが、期待と興味をもって迎えられた第一群の売行きは好評であったときく。一通り、そうした先取りの気鋭に富んだ人達の間に行き渡り、現在は、その第二号機に、より一層の完成度を求める慎重派が待ち構えている気配である。また、メーカーの側も、先行メーカー群──といっても、ほんの2〜3社だが──の成行きを見守りながら、製品の発売を準備している慎重組が控えている様子である。
 こういう革新的な新しいものが出る時は、常に、このような情況になるわけだが、僭越ながらユーザー代表の一人を自認する私のような立場の人間も、言動に慎重を期すべき時期といえる。いつの間にやら、一部では、私はアンティ・デジタル派と決めつけられているようだが、迷惑な話であって、この可能性の大きな新技術の熟度を望む者の一人だと自分では思っているのである。それだけに、この頃は、自宅で、CDを熱心に聴いている。そして、CDが、発売第一号機で、これだけ素晴らしい再生音の世界をつくり出すプログラムソースであり、プレーヤーであることに、大きな喜びと楽しみを感じているのである。そして、CDにとって、再生系のクォリティの水準が高いことが、その真価を発揮させるためにぜひ必要であり、この新しいプログラムソースは、広くコンシュマープロダクツとして便利であるだけではなく、高度なマニアの趣味の対象としても魅力の大きなものになり得ることを感じている。すでに何枚かの愛聴盤も生れたし、街に出れば、CDの売り場を必ずのぞくようにもなった。あの小さなピカピカの円盤への新規な違和感も、今やほとんどなくなった。
 こんな状態の私のもとへ、ある日、コンパクトディスクを演奏するための非コンパクトな大型プレーヤーが持ち込まれてきた。ソニーの局用プレーヤーCDP5000である。12cm径のディスクをかけるためのこの機械は、500(W)×883(H)×565(D)mmもあって、これはスタジオで使うための便利さからきたサイズだと思ったが、なんと、中味はけっこうつまっているではないか。きわめて高精度な頭出し機能やモニター機能、そして、VUメーターなど、放送局などで使うための操作性を万全に備えたプロ機であるため、コンソールのフラットデッキ部分をそれらが占有し、エレクトロニクス部は、下部の台座部分に収納されている。民生用の現在の機器は、ピックアップを移動させてトラッキングしているのに対し、これは、ディスクを移動させる方式をとっている。詳しいことは不明だが、たぶん、フォーカスサーボ系と、トラッキングの送り機構のメカニズムを二分した構造なのであろう。偏心などに対するトラッキングサーボの機構は対物レンズで対処していると思われる。
 CDプレーヤーの音のちがいは、数社の製品の比較で確認させられているし、大方の指摘しているところであるが、このプロ用プレーヤーの音は素晴らしかった。一段と透明度が高く、SN比がよい。現時点でのリファレンスとして、ソニーが開発したいとがよく解る。一般に理解されているデジタル技術の常識による判断を越えた、ちがいがあることは確かであった。それがDAコンバーター以後のアナログ部分の差とだけは断じきれない何かがあるように感じられたのはたいへん興味深いことであった。
 この機械は、また、リファレンス機器として、CDA5000という、アナライザーと組み合わせ、CDの記録データをCRT表示によってTOCやインデックスのエラー、再生時の訂正、補間の回数など、CDのサブコードやオーディオ信号のエラーデータを検出することがCDチェッカーとして機能する。つまり、この機械は、局用のプレーヤーとしてだけではなく、CD生産のプロセスに組み入れて使う品質管理測定器としても使う工業用機器でもあるわけだ。
 とにかく、このCDP5000、今のところ、CDプレーヤーのリファレンスとしての信頼性の最も高いものだと感じられたし、このプレーヤーの水準に達する一般用のプレーヤーがほしいという気にさせる代物であった。プレーヤーとしての基本性能をこのままに、プロ用の機能は一般に必要ないと思われるのでとりぞいて、愛好家用の高級CDプレーヤー誕生の母体となり得るものだし、また、そうしてほしいものである。

オーレックス XR-Z90

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(オーディオアクセサリー 27号掲載)

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テクニクス SL-P10

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Lo-D DAD-1000

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(オーディオアクセサリー 27号掲載)

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NEC CD-803

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(オーディオアクセサリー 27号掲載)

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