Category Archives: パワーアンプ - Page 30

マークレビンソン LNP-2L + ML-2L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 単体でのML2Lの音の説明が、すなわちLNP2Lと組み合せたときの音そのものなのだから、組み合わせての印象はそちらを参照して頂くことにして、ここではもう少し別のこまかなことを補足する。まずML2Lは、電源を入れてから動作の安定するまでに少なくとも30分。さらに音質の安定するまでには鳴らしはじめてから2時間以上が必要だ。また、あまりデッドに仕上げたリスニングルームや低域の調整に不備のあるスピーカーシステムとの組合せでは、かなりやせた感じの音に仕上りやすいので注意が要る。またLNP2Lは、ゲイン切換(パネル右端上のツマミ)が10または20のところが最も音のバランスが良いと私は思う。ゲインが高すぎるときは、メーター両わきのレベルコントロールで−10ないし−15程度まで絞っても、ゲイン切換はできるだけ20以上を保ちたい。単体のところでも書いたように、別売のバッファーアンプを追加すること。一旦電源を入れから、使わないときでも電源を切らない。

BGW Model 410

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 大陸的なスケール感の大きい、ウォームトーン系の柔らかく粘った印象の音をもつパワーンあプである。
 聴感上での周波数レンジは、現在の水準からすればややナローレンジ型で、バランス的には、ローエンドが抑えられた、中低域がタップリとした安定型のレスポンスであり、高域はやや下降気味のように受けとれる。音の粒子は全体に粗粒子型で、低域は甘く重く、中域は硬質な面が感じとれる。203コントロールアンプとの組合せに感じられたトータルキャラクターは、パワーアンプ側に多くあるようだ。表情はおおらかで落ちつきがあり、反応はおだやかで、独特のエネルギー感がある。

マークレビンソン ML-1L + ML-2L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 LNP2Lは組み合わせたときとくらべて、音質がどう変化するのか、が興味の中心だろう。単体のところでも書いたように、旧JC2からML1Lと型番が変ると共に内容も一新されたために、旧型ほどの両者の音の差はなくなって、ほんの紙一重のちがい、とでもいえるほどになってきたが、むしろこのクラスになればその紙一重が重要だ。したがって聴感上はきわめてわずかの差をやや拡大して書くことになるが、一例を上げれば、菅野録音のベーゼンドルファーのあのこってりと脂と艶の乗った響きの部分、あるいはシェフィールドののテルマ・ヒューストンの黒人独特の照りのある声の艶、などが、LNPにくらべるとわずかに厚みの減る傾向になる。またクラシック全般については、LNPよりもMLの方が、これもほんのわずかながら音が硬めに仕上がる。ことにM得る2Lとの組合せでは、両者ともぜい肉をことさらおさえる傾向があるため、かなり細身の音に聴こえがちだ。

アムクロン IC150A + DC300A IOC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 とても大らかな安定感があり、良い意味で男性的な、細部にこせこせとこだわらずに必要な音はすべて大づかみにぴしっと決めるという、とても気持の良い音がする。リファレンスに使っているLNP2Lと510Mの組合せがこう何度も反復して聴いていると、あまりにも細部を彫り起してディテールを細かく聴かせる音がときどき鼻についてくるが、そういうときにこのアムクロンのような、充実感もスケール感もかねそなえた、足をしっかり大地にふみしめて立つ感じの、総身によく知恵もまわった大男のたくましさのような音を聴くと、とても良い気分になってくる。音が細かくケバ立つようなことがなく、しかし細部を塗りつぶすわけではなく十二分にディテールを聴かせるが暖かくソフトな肌ざわりが聴き手を大きく包み込むようで、まさに父親の大らかなやさしさのようだ。厚みがあって厚ぼったくなく、ひよわでないが色気もあり、なにしろ気持の良い音だ。質感の乾いていることすら気にならない。

マランツ Model P3600 + Model P510M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のセパレートアンプテストのときには、プロフェッショナルタイプでない方の♯3600と510Mの組合せを、また今回のテストのリファレンス用には、Pのつかない方の510Mを、何回もくりかえして聴いている。というわけで、マランツの音にはずいぶん馴染んでいることになる。かなり優秀と思われるアンプでも、長い時間をかけていろいろな機会にいろいろな組合せで聴いていれば、どこか鼻につく音が気になってくるものだが、そういう意味では驚くべきことにマランツというアンプには、目立って耳ざわりな音いうものがない。ことにこのPシリーズの方は、Pなしのモデルよりも総体に音の強調感を(ほんのわずかの問題だが)抑えてあるらしく、テストソースを通じて、密度の高い充実感のある、危なげのない安定な、いくぶん明るいが決して輝きすぎでなく、やや乾いているが決して不快でない質感の良さ……という具合に、前回でも中庸をおさえた音と発言したことを再びくりかえす結果になった。

アムクロン DC300A IOC

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスコントロールアンプLNP2Lと組み合わせると、エネルギー感がタップリとし、ゆったりと伸びやかに鳴るようになる。表情は、豊かでおおらかに鳴り、クォリティが高く、充分に楽しませてくれる。
 聴感上での周波数レンジはナチュラルに伸びており、基本的にはウォームトーン系の音である。低域は力感があり、軟調気味ではあるが、厚みが充分にあって、安定したベーシックトーンとなっている。中域は少し密度が薄い傾向があり、粒子が少し甘くなるが、量的にタップリあり、エネルギー感もかなりあるために、さして不足感はない。高域は少しラフな面があるが、トータルなまとまりは良い。音像はかなり締っている。

マランツ Model 3250 + Model 170DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 510Mや、プリメイン型の♯1250も含めて、少し前のマランツのアンプには、高域に一種キラキラした輝きのある力強い音が特徴であった。ところが♯3250と♯170DCの組合せでは、デザインも一新されたことに現われているようにその音の傾向もずいぶん変って、ごくオーソドックスに、いかにも特性が平坦であることを思わせるバランスの良さと、周到に練り上げられた美しい明るい音を聴かせる。ただその明るさは、単体のところでも書いたように、どこか人工光線で一様に照らされたという感じの、いいかえれば翳りの部分の少ないやや平面的な印象を与える。そのこととも関連してか、音の質感もやや乾いた傾向で、それも自然乾燥でなく慎重にエアコンディショニングされた感じの、いくぶん静的な美しさといえる。こうした音はどちらかといえばパワーアンプの性格が支配的で、コントロールアンプの方はもう少し中庸を得た音に仕上っている。価格を前提にすれば最上のできばえといいたいほどだ。

Lo-D HCA-7500 + HMA-9500

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 HMA9500でLo−Dの音は傾向が変った。そのことは単体のところでも書いたが、したがってコントロールアンプは7500でも、トータルの音は別のメーカーのように違ってくる。まず、HCA7500の持っていたいくらか線の細い、密度の薄いやわらかい音は、HMA9500の男性的な腰の太い音にカバーされてか、すっかり影をひそめてしまう。というより、9500のときとして少々力を誇示しすぎる傾向を7500のやわらかさがうまく補うのか、力強さと繊細さとがうまくミックスされて、かなりグレイドの高い聴きごたえのある音に仕上ってくる。音量をぐんと上げても危なげのない安定感が快い。細かくいえば弦のしなやかさ、アメリンクの声の女っぽさやほのかな色気、あるいはベーゼンドルファーの脂こい艶、そしてキングズ・シンガーズの声の響きのやさしさ、などといった面でわずかにあとひと息、という欲は出るものの、総合的にはかなりの水準の音が楽しめた。

Lo-D HCA-7500 + HMA-7300

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 7500どうしの組合せにくらべると、基本的な音の傾向は全く同じだが、音の緻密さはやや増してくる。ここでの価格と出力の差は投資効果が大きいようだ。本質的には、7500の組合せで画いたと同じくさしい音。やかましさを嫌った柔らかい音。7300単体のところでも書いたように、女性的ともいえるウェットな感じが大すじを支配している。またそこでも書いたように、これとごく対照的なのがダイヤトーンで、中〜高域をかなり張り出させて硬質に仕上げているのに対して、Lo−Dの方はちょうどその音域を逆におさえこむかのように、音量を上げてもうるさくない。そのことが、線の細い感じをいっそう際立たせる。ただ、こういうやさしい音を本当の長所として生かすためには、中音域から重低音域にかけての音の力の支え、というよりも密度をもう少し濃く仕上げるべきではないかと思う。しかしこの音はほかのメーカーでは得られないのだから、やはりひとつの個性として存在価値が大きいといえるのか。

Lo-D HCA-7500 + HMA-7500

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のセパレートアンプの別冊でも、8300シリーズの合評のところで、他の国産アンプにくらべてかなり異色の音がしたので、思わず、妙な感想を口走ってしまった(同号181ページ)。その印象は7500シリーズになっても一貫していて、これが従前までのLo−Dの目差していたひとつの方向だったことを改めて感じる。ひと言でいえばとてもウェットでやさしい音。できるかぎり音の荒々しさ、やかましさを抑え、小骨を注意深く取り除いた感じで、やわらかい。単体のところで書いたように、この傾向はことにパワーアンプの方にあるらしく、7500どうしを組合せると、コントロールアンプの方が持っている柔らかい中にもいくらか芯の硬さがうまく相補うのか、音はかなり整ってくる。とはいうものの、フォルティシモからピアニシモまで急激に変化する部分では、軽くエキスパンダーをかけたかのように強弱を強調する傾向も聴きとれて、ずいぶんユニークな音のアンプだと感じた。

ダイヤトーン DA-P15S + DA-A15DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 P15、A15のどちらも、音の輪郭の鮮明さや切れこみのよさを際立たせるタイプの、どちらかといえば金属的で硬質のハードな輝きを持っているが、両者を組合せるとそれがかなり相乗効果を招いて、総じて冷徹でコントラストの強い音に仕上ってくる。同じ♯15のつくシリーズ同士の組合せなのだから、これはかなり意図的に作りあげられた個性なのだろう。こういう輪郭も鮮明な音であっても、本質的には骨格の太い、構築のがっしりした支えがあるために、表面的にわめくタイプの音ではなく、たとえばピアノの強打や、あるいはシェフィールドのダイレクトカッティングレコードの、テルマ・ヒューストンのヴォーカルを支えるバックのリズムセクションなど、かなりのパワーでも腰がくだけたりせずに、良く張り出して力を失わない。パワーアンプ単体のところでも書いたが、ダイヤトーンの相性が、基本的にはクラシック系よりもポップス系にピントを合わせてあるらしく、この積極的にハードに徹した作り方はひとつの特徴といえる。

ダイヤトーン DA-P15S + DA-A10DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パワーアンプの方が兄貴分のA15DCにくらべてややおとなしい音に仕上っているためか、同じP15との組合せでも、総合的にはニュアンスのかなり違う音になる。P15+A15DCのときの、ひとつひとつの音が輪郭をかちっと隈取られてバックから飛び出してくるかのようなコントラストの強い、金属質かつ硬質に徹してしまう傾向の方が、ひとつの強烈な個性として徹底していておもしろいといえなくもないが、ただそれでは少々硬すぎると感じる向きには、P15+A10DCの方が、むろん基本的にはダイヤトーンの個性を保ったまま、もう少し穏やかな方向の音として受け入れられるのではないたろうか。しかしパワーアンプ単体のところでも書いたように、本質的にポップス志向といえると思う。つまり、弦や女性ヴォーカルにはかなりハードな感じをあたえるのに対して、このアンプの持っている骨太に前面に押し出してくる力の強さが、ポップス系のことにハードな音楽には一種の特徴となる。

デンオン PRA-1001 + POA-1001

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプ、パワーアンプ、それぞれ単独にテストした場合よりも、組み合わせた形の方がまとまりがよく、価格とのバランスを頭に置くかぎり、弟分の1003シリーズよりもこちらの方がやはり、セパレートアンプを入手したという満足感があるだろう。非常にバランスのよいこなれたまとめかたで、あらゆるプログラムソースに対して、ひととおり水準以上の音を聴かせる。低音から高音までのバランス、音の力と密度、立体感、そして音楽の表情の描写、どこからみても、ことさら際立った特徴は聴きとれないかわりに明らかな弱点がない。しいていえば中〜高域にエネルギーのわずかに固まる傾向があって、ことにクラシックの弦や声にもっとやわらかさや潤い、そして音のデリケートな余韻の空間に漂って消えてゆく繊細なひろがりが欲しい。しいて細かく言えば、ポップス系のように音源側でコントラストの強い傾向のプログラムソースの方が、どちらかといえば向いているといえそうだ。

デンオン PRA-1003 + POA-1003

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 大づかみにとらえると、プリメインタイプの名作といわれたPMA700Zの傾向をきめこまかくグレイドアップした感じの音質で、バランスがよく整っているし、際立った個性もないかわりに音楽の表情を抑え込むようなことがなく、クラシックからポピュラーまで、いろいろなプログラムソースをひととおりの水準で楽しませる。ただ、セパレートタイプとしてもまた最近の高級プリメインタイプと比較しても高出力型ではないせいもあって、音のスケールの大きさの要求される(例えば「オテロ」のような)曲では多少小造りになるし、ハイパワーを要求する(例えばシェフィールドのような)レコードでは極端なハイパワーは出せないというように、価格の制約を頭に置いて選択の対象にしないと不満が出るかもしれない。しかしデザインや必要なコントロールの機能などを含めて全体のまとめかたは、とてもよくこなれていて、セパレートアンプを手に入れようという期待感を裏切ることはないだろう。

オーレックス SY-88 + SC-77

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 いままでに何度か、オーレックスのプリメインアンプを試聴した機会にも、またスピーカーの試聴でも感じたことだが、このメーカーの鳴らす音は、つねに慎重で、おとなしい模範サラリーマンふうのところがあって、荒々しさや歪っぽさをごく注意ぶかく取除いて作られている。そうした傾向は、音のやかましさやおしつけがましい個性を嫌う人には歓迎されるだろうが、しかし音楽には荒々しさと引きかえに躍動する生命感も、高ぶる感情を抑えながら情感をこめた歌い方もある。そうしたいわば演奏家の生きた表彰あるいはバイタリティ、または情熱のような部分を、このアンプはどちらかといえばかなりおさえて、むしろよそよそしいといいたような感じに仕上げて聴かせる。また、コントロールアンプにもパワーアンプにも、中低音域から重低音にかけての量感や厚みをおさえる傾向があったが、両者の組合せではいっそうその傾向がはっきりしてくる結果、中〜高域重視型のバランスに聴きとれる。

ヤマハ B-3

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 軽快で伸びやかな、フレッシュな音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、現代アンプらしいナチュラルなワイドレンジ型で、音の粒子は細かく滑らかに磨き込まれており、バランス的にはフラットレスポンスタイプであるが、中域の密度は少し薄い印象がある。音色は、軽く明るく滑らかであり、音の反応が早く、伸びやかに活き活きとした音を聴かせる。
 ステレオフォニックな音場感は、左右方向にも前後方向のパースペクティブをもよく広げて聴かせ、音像定位もナチュラルであるが、スケール感はやや小さく、音場が箱庭的な精緻さで再現される傾向がある。

アキュフェーズ C-220 + M-60

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 C200SとP300Sの組合せが一聴して音の切れこみや鮮明さを際立たせたのに対して、C220とM60(×2)の組合せは、アキュフェーズがもともと目ざしていた音のまろやかさ、あるいは機械臭さや電気臭さのないよくこなれた上品な音、という方向に仕上っている。「オテロ」のフォルティシモでも、音がわめくような荒々しい感じが少なく、しかし十分に底力を感じさせる充実した音がする。欲をいえば重低音の厚みがもう少し欲しい気はするが。また、これはM60の特徴だが、音像をいくぶんオフぎみに、どちらかといえば奥の方に定位させる傾向はC220との組合せでも変らない。ヴォーカルの場合には、歌い手の声帯のしめり気を感じさせるような、音の潤いはとても好ましい。300Wというパワーを露骨に感じさせないようないくぶんスタティックな印象があるが、音の上品さとあいまって、音楽ファンを十分に満足させるだろう。調子が出るまでにはいくらか時間のかかるタイプのようだ。

ビクター M-7070

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 シャープで立ち上りの早い、反応の早い音が特長のパワーアンプである。
 トータルバランスやエネルギーバランスの面では、EQ7070よりも、むしろこのM7070のほうが一段と優れており、120Wの定格パワーから予想した音よりも、充分にパワーの余裕を感じさせる音である。バランス的にはフラットレスポンス型で、音色は低域から高域に渡ってよくコントロールされた、明るく軽く、細やかなタイプで、音の表情も活き活きとし、鮮度が高い爽やかな音を聴かせる。ステレオフォニックな音場感は、ナチュラルに広い空間を感じさせるタイプで、音像の立ち方もクリアーで、実体感がある。

アキュフェーズ C-200S + P-300S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 内容に多少の手が加えられてSタイプと名前が変ったにしても、すでに発売以来5年を経過するのだから、内外を通じても最も寿命の長い製品で、まして変転の激しいセパレート型アンプの中ではきわめて稀な好例といえ、こういう製品づくりの姿勢には心から拍手を送りたい。さて当初のC200+P300の音は、いわゆるトランジスター臭を極力避けたかのように注意深く練り上げられながらも、こんにちの時点ではいささか音の粒の粗さと解像力の甘さが感じられたが、今回の改良で音は一変して新鮮味を加え、とても切れこみの良い、音の輪郭もディテールも鮮明な現代ふうのアンプに変身した。おそらく改良の意図も解像力の向上にあったと思われるが、例えばアメリンクの声などで、歌の表現の抑揚がごくわずかだが大ぶりになりがち。あるいは「サイド・バイ・サイド3」のギターのコードもやや際立つなど、高域にかなりアクセントがあるようだ。また低音ではリズムを幾分重く聴かせる傾向も聴きとれた。

ビクター M-3030

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 低域ベースの安定した、かなり活気のある音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、豊かな低域をベースとした安定感のあるバランスで、高域もハイエンドは少し抑え気味の印象を受ける。低域の音色は、豊かで柔らかく重いタイプで、重心の低いズシッとしたエネルギー感があり、中域は、量的には充分なものがあるが、音の粒子がやや粗粒子型で、滑らかに磨かれてはいるが、引き締ったクリアーさでは今一歩という感じがする。カートリッジは、4000D/IIIや881Sよりも、ピカリング系のソリッドで輝きがあり、クォリティの高いタイプがマッチしそうで、アンプ本来の特長が活かせるだろう。

トリオ L-07M

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 安定感のあるソリッドで、かなりタイトな音をもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを少しシャープに落したような印象があり、このためか、中域が量的にタップリとあり、張り出した活気のある音となっている。バランス的には、低域の音色はやや柔らかく甘く暗いタイプで、反応は少し遅いが安定感は充分にある。中域は寒色系の硬質な音で、とかくなめらかで細かいが中域が薄く充実感に欠けがちの最近のパワーアンプのなかでは、このパワーアンプのソリッドさは、一種の割り切った魅力にも受け取れる。音の表情は、L07Cよりも伸びやかさがあり、反応も一段と早いようだ。

トリオ L-05M

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 同じモノ構成のパワーアンプL07Mと比較すると、音の伸びやかさが一段と加わった、滑らかで細かい音がこのパワーアンプの魅力である。聴感上での周波数レンジはかなりナチュラルに伸びており、バランス的には中域が少し薄く、低域は豊かで柔らかい。音の粒子は細かく、よく磨かれていて、細やかなニュアンスの表現や、表情の伸びやかさをかなり引き出して聴かせる。
 ステレオフォニックな音場感は、左右にもよく広がり、前後方向のパースペクティブをもナチュラルに聴かせるが、音源は少し距離感を感じるタイプで、左右のスピーカー間の少し奥まったところに広がる。音像はソフトで適度なまとまりと思う。

テクニクス SE-A1 (Technics A1)

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スケール感の大きな、ゆとりが感じられるパワーアンプである。音の細やかな表現や、情報量の豊かさがベースとなるステレオフォニックな音場感の再現性では、コントロールアンプA2のほうが一枚上手のようである。音色は軽く柔らかく滑らかなタイプであり、ゆとりがタップリとあるために、スケール感の非常に豊かな音を聴かせる。表現はおだやかでやや間接的な傾向があり、マクロ的に音を外側から枠取りを大きく掴んで聴かせる特長があり、バランス的には、中域の密度がやや薄く、中高域あたりには少し音の粒子が粗粒子型で、柔らかく磨いてあるのが感じられる。おおらかで安定した音は、ハイパワーアンプならではのものだろう。

私の推奨するセパレートアンプ

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 94機種プラス46組合せと、合計140回。それに1機種ごとにリファレンスを念のために聴き、また実際に試聴はしたが種々の事情で掲載されない10機を加えると、ざっと300機種ぶんほど聴いた計算になるが、これだけ数多く聴いた中で、試聴後もあえてメモをみなくてもその音をはっきり思いだせるようなアンプが、ほんとうの意味で優秀な製品といえるにちがいない。しかし機種名を聞いてとっさに音が思い浮かばなくても、メモを参照すると、あ、そうだとたちどころにその音を思いだせる程度のアンプなら、一応の合格機種ということになりそうで、その線までは一応の水準と考えた。もっとも、あまりにもひどい音がして忘れないというアンプも中にはあるから、音を憶えているということが必ずしも基準にはなりえないが。
     *
■同一メーカーの組合せによる推薦機種
 別表の①から⑨までは国産、⑩から⑲までは海外の、それぞれ同一メーカーどおしの組合せ(⑪のみ例外)をまずあげる。
 ①から③までは、その音質はもちろん、外観や仕上げの良さ、コントロール機能に至るまで、それぞれに水準以上のできばえで、いわば特選クラスといえる。ただし①のラックスは、私か実際に入手するとしたら、トーンコントロールアンプ5F70を必ず追加したいところだ。
 次の④から⑥までの三機種は、音質という面ではそれぞれのよさはあっても、①から③までのようなどこからみてもスキのない完成度の高さまでには至っていない。たとえば④のアキュフェーズは、デザイン面と、コントロールアンプがあまりにもシンプルで実際の使用に際してはときとして機能上に不満を感じることがあるだろう。⑤のオンキョーも機能的に省略しすぎて、少なくとも私には、トーンコントロールやフィルターが、ごく簡素なものでいいから欲しいし、それなりに出てくる音優雅さにくらべて、外観が失礼ながら野暮すぎる。その点⑥はさすがラックスで、デザインには不満は全くないが,やはりファンクションが少々不足であることと、音がいくらか甘口なのでその点使用者の感覚とピントが合わないと理解されにくい。
 ⑦はやや硬調ぎみだが音楽の表現力、彫りの深い表現がとても好ましい。調子の出るまでにかなり時間のかかる点は使いこなし上の注意点だ。しかしコントロールアンプのデザイン(というより仕上げや色あい)は、誰にすめても嫌われるので、この点がややマイナスポイントという次第。
 ⑧はデザインも音質もトータルにバランスがとれて、中庸をおさえたおとなの風格を持っていて、製品としての完成度は最上位のグループにひけをとらないが、音質の面でこれならではという魅力をわずかに欠くという点で特選とまではゆかないが、反面、あまり個性の強い音を嫌う向きには喜ばれるだろう。
 その点では⑨にも同じことがいえる。ただし、外観が少々メカ志向であること、ファンクションが私には少々ものたりないことで、やはり上位には入らない。
     *
 海外製品に移ると、⑩のおそろしく透明度と品位の高い、しかしやややせ型の音質と、⑪透明感でわずかに劣るが⑩にはない音の厚みと豊かさをとるか、の違いはあるが、ともに私自身がこんにちの世界中のアンプの中でベストに入れたい組合せだ。
 ⑫はそれとは全く逆に、書斎やベッドルームや、またオーディオマニアでない愛好家のインテリアを重視した部屋などで、出しゃばらず場所をとらず、いつまで飽きずに使えるアンプとして、やはり存在価値が高い。
 ⑬から⑮までは、トータルバランスのよさ、そしてグレイドの高いハイパワーアンプでしか聴くことのできない充実感と安定感が、それぞれに音のニュアンスを異にするもののいずれも見事なバランスに支えられて好ましい。
 ⑯のマッキントッシュは、⑭のGASと共に必ずしも私個人の好みとは違うが、この豪華な味わいはほかのメーカーの製品からは決して得られない。
 ⑰と⑱は、スリムで簡潔な作りの、最近のアメリカのセパレートタイプのひとつの傾向の中で、バランスよく手際よくまとめられた手ごろな製品で、ともに肩ひじの張らない音のよさが見陸だ。
 ⑲は、この仕上げの粗さが必ずしも私の好みではないが、内容本位という点で、ローコストであることを前提にその割には良い音、という意味であげた。

■コントロールアンプ単体
 ❶のML1Lについては改めていうまでもない最上の音質。ただ、実際に使ってみて私にはやはりトーンコントロールのないのがちょっぴり不満になる。
 ❷は設計がアメリカ、製造が日本で、そのためにかなりローコストだが、価格以上の音質で、仕上げもよく、機能も充実して、コントロールアンプによいものの少ない現時点では、注目してよい製品。
 ❸のハフラーはメーカーとしては新顔だが豊富な体験を持つヴェテランの作品らしく、簡潔な手際よいまとめかたで、仕上げはまあまあだが輸入品としては安いという点が魅力。
 ❹から❻までは、コントロールファンクションが省略されすぎているが、最近の海外のソリッドステート技術のいわゆる反応の鋭敏さがそれぞれの音質の良さを支えている。
 ❼はコントロールアンプ唯一の国産品だが、パワーアンプとの組合せで示さないのは、同じシリーズどおしでは少々音がブライトすぎるように思われるので、もう少し穏やかなパワーアンプと組合せることを前提に、時間がなくて試みれなかったが、案外後出のダイナコの管球パワーアンプなど、おもしろいのではないかという気がした。

■パワーアンプ単体
 ❽と❾は、ともに数少ないヨーロッパ製のアンプだが、その繊細な品の良さ、滑らかでことにクラシック系の弦や声を鳴らすときのほどよい艶のある美しさと、やややせぎすながら立体的な彫りの深さはとても魅力的で、いずれもすばらしいパワーアンプだ。
 ❿はプロ用として入力回路が平衡型低インピーダンスになっているので使用上の注意が必要だが、内容は❽をプロ用としてモディファイした製品で、いくぶん硬質だが支えのしっかりした骨太の安定感のある音は独特だ。
 ⓫から⓰までは、国産の、それぞれによくできていると思われる製品を列挙した。これらはすべて、ペアとなるコントロールアンプとともに企画されている製品ばかりだが、あえてパワーアンプ単体だけをあげたは、裏がえしていえばペアとなるべきコントロールアンプの完成度が、それぞれのパワーアンプのレベルまで達していないと思えたからだ。その意味では、これらをより一層生かす、或いは持てる能力を100%抽き出すコントロールアンプが、それぞれに欲しくなる。ただ、⓬のパイオニアM25は、バランスを無視すればエクスクルーシヴC3があり、⓭のラックスM12は5C50が、またアキュフェーズはC220が、それぞれにあり、同じメーカーの中に良いコントロールアンプがある。もちろん他のメーカーの優秀製品と組合せることは一向に差し支えない。⓰についてはコントロールアンプの❼のところで書いた事を繰り返しておく。
 ⓱から⓳までの3機種は、アメリカ製の、それぞれに性格のかなり強いパワーアンプで、中ではダイナコ/マークVIの、いささか反応が遅いがすばらしく豊かで暖かい音がいまだに耳に残っている。解像力の良いコントロールアンプと組合せたときに音が生きてくる。⓲のDBシステムズと⓳のスレシュオールドは、ともにコントロールアンプがあるが、同一メーカーどおしで組合せない方がその個性が生かされそうに思って、別々にあげた。

国産/組合せ特選機種
①ラックス 5C50+5M21
②エクスクルーシヴ Exclusive C3+Exclusive M4
③ヤマハ C-2+B-3

国産/組合せ準特選機種
④アキュフェーズ C-220+M-60 (×2)
⑤オンキョー Integra P-303+Integra M-505
⑥ ラックス CL32+MB3045(×2)

国産/組合せ推薦機種
⑦トリオ L07C+L-05M (×2)
⑧デンオン PRA-1001+POA-1001
⑨テクニクス SU-9070 II+SE-9060 II

海外/組合せ特選機種
⑩マーク・レビンソン LNP-2L+ML-2L (×2)
⑪マーク・レビンソン LNP-2L+SAE Mark 2600
⑫QUAD 33+303

海外/組合せ準特選機種
⑬アムクロン IC150A+DC300A IOC
⑭GAS ThaedraII+AmpzillaII
⑮マランツ model P3600+Model P510M

海外/組合せ推薦機種
⑯マッキントッシュ C32+MC2205
⑰GAS Thalia+Grandson
⑱スレシュオールド NS10custom+CAS1custom
⑲スペクトロアコースティック Model 217+Model 202

コントロールアンプ特選機種
❶マーク・レビンソン ML-1L
❷マランツ Model 3250
❸ハフラー DH-101

コントロールアンプ準特選機種
❹AGI Model 511
❺DBシステムズ DB-1
❻オーディオ・オブ・オレゴン BT2
❼ビクター EQ-7070

海外/パワーアンプ特選機種
❽ルボックス A740
❾QUAD 405
❿スチューダー A68

パワーアンプ推薦機種
⓫Lo-D HMA-9500
⓬パイオニア M-25
⓭ラックス M-12
⓮サンスイ BA-2000
⓯アキュフェーズ P-300S
⓰ビクター M-7070 (×2)
⓱ダイナコ Mark VI (×2)
⓲DBシステムズ DB-6
⓳スレシュオールド 400A custom

テクニクス SE-9060II (Technics 60AII)

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなり国内製品のパワーアンプとしては平均的な性格をもった、オーソドックスな音である。聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドを少し抑えたナチュラルなバランスであり、音色は均一で軽く、やや明るいソフトなタイプで、低域もあまり柔らかくなりすぎないのが特長である。バランス的には、中域は量的には充分のものがあるが、エネルギー感としては不足気味で音が伸びず、頭を抑えられた印象の音となる。リファレンスコントロールアンプLNP2Lの特長を引き出して聴かせることができず、あまり音の反応が早くなく、本来のペアの魅力が出ないが、このクラスのセパレート型アンプとしては、これが本当だろう。