私の推奨するセパレートアンプ

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 94機種プラス46組合せと、合計140回。それに1機種ごとにリファレンスを念のために聴き、また実際に試聴はしたが種々の事情で掲載されない10機を加えると、ざっと300機種ぶんほど聴いた計算になるが、これだけ数多く聴いた中で、試聴後もあえてメモをみなくてもその音をはっきり思いだせるようなアンプが、ほんとうの意味で優秀な製品といえるにちがいない。しかし機種名を聞いてとっさに音が思い浮かばなくても、メモを参照すると、あ、そうだとたちどころにその音を思いだせる程度のアンプなら、一応の合格機種ということになりそうで、その線までは一応の水準と考えた。もっとも、あまりにもひどい音がして忘れないというアンプも中にはあるから、音を憶えているということが必ずしも基準にはなりえないが。
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■同一メーカーの組合せによる推薦機種
 別表の①から⑨までは国産、⑩から⑲までは海外の、それぞれ同一メーカーどおしの組合せ(⑪のみ例外)をまずあげる。
 ①から③までは、その音質はもちろん、外観や仕上げの良さ、コントロール機能に至るまで、それぞれに水準以上のできばえで、いわば特選クラスといえる。ただし①のラックスは、私か実際に入手するとしたら、トーンコントロールアンプ5F70を必ず追加したいところだ。
 次の④から⑥までの三機種は、音質という面ではそれぞれのよさはあっても、①から③までのようなどこからみてもスキのない完成度の高さまでには至っていない。たとえば④のアキュフェーズは、デザイン面と、コントロールアンプがあまりにもシンプルで実際の使用に際してはときとして機能上に不満を感じることがあるだろう。⑤のオンキョーも機能的に省略しすぎて、少なくとも私には、トーンコントロールやフィルターが、ごく簡素なものでいいから欲しいし、それなりに出てくる音優雅さにくらべて、外観が失礼ながら野暮すぎる。その点⑥はさすがラックスで、デザインには不満は全くないが,やはりファンクションが少々不足であることと、音がいくらか甘口なのでその点使用者の感覚とピントが合わないと理解されにくい。
 ⑦はやや硬調ぎみだが音楽の表現力、彫りの深い表現がとても好ましい。調子の出るまでにかなり時間のかかる点は使いこなし上の注意点だ。しかしコントロールアンプのデザイン(というより仕上げや色あい)は、誰にすめても嫌われるので、この点がややマイナスポイントという次第。
 ⑧はデザインも音質もトータルにバランスがとれて、中庸をおさえたおとなの風格を持っていて、製品としての完成度は最上位のグループにひけをとらないが、音質の面でこれならではという魅力をわずかに欠くという点で特選とまではゆかないが、反面、あまり個性の強い音を嫌う向きには喜ばれるだろう。
 その点では⑨にも同じことがいえる。ただし、外観が少々メカ志向であること、ファンクションが私には少々ものたりないことで、やはり上位には入らない。
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 海外製品に移ると、⑩のおそろしく透明度と品位の高い、しかしやややせ型の音質と、⑪透明感でわずかに劣るが⑩にはない音の厚みと豊かさをとるか、の違いはあるが、ともに私自身がこんにちの世界中のアンプの中でベストに入れたい組合せだ。
 ⑫はそれとは全く逆に、書斎やベッドルームや、またオーディオマニアでない愛好家のインテリアを重視した部屋などで、出しゃばらず場所をとらず、いつまで飽きずに使えるアンプとして、やはり存在価値が高い。
 ⑬から⑮までは、トータルバランスのよさ、そしてグレイドの高いハイパワーアンプでしか聴くことのできない充実感と安定感が、それぞれに音のニュアンスを異にするもののいずれも見事なバランスに支えられて好ましい。
 ⑯のマッキントッシュは、⑭のGASと共に必ずしも私個人の好みとは違うが、この豪華な味わいはほかのメーカーの製品からは決して得られない。
 ⑰と⑱は、スリムで簡潔な作りの、最近のアメリカのセパレートタイプのひとつの傾向の中で、バランスよく手際よくまとめられた手ごろな製品で、ともに肩ひじの張らない音のよさが見陸だ。
 ⑲は、この仕上げの粗さが必ずしも私の好みではないが、内容本位という点で、ローコストであることを前提にその割には良い音、という意味であげた。

■コントロールアンプ単体
 ❶のML1Lについては改めていうまでもない最上の音質。ただ、実際に使ってみて私にはやはりトーンコントロールのないのがちょっぴり不満になる。
 ❷は設計がアメリカ、製造が日本で、そのためにかなりローコストだが、価格以上の音質で、仕上げもよく、機能も充実して、コントロールアンプによいものの少ない現時点では、注目してよい製品。
 ❸のハフラーはメーカーとしては新顔だが豊富な体験を持つヴェテランの作品らしく、簡潔な手際よいまとめかたで、仕上げはまあまあだが輸入品としては安いという点が魅力。
 ❹から❻までは、コントロールファンクションが省略されすぎているが、最近の海外のソリッドステート技術のいわゆる反応の鋭敏さがそれぞれの音質の良さを支えている。
 ❼はコントロールアンプ唯一の国産品だが、パワーアンプとの組合せで示さないのは、同じシリーズどおしでは少々音がブライトすぎるように思われるので、もう少し穏やかなパワーアンプと組合せることを前提に、時間がなくて試みれなかったが、案外後出のダイナコの管球パワーアンプなど、おもしろいのではないかという気がした。

■パワーアンプ単体
 ❽と❾は、ともに数少ないヨーロッパ製のアンプだが、その繊細な品の良さ、滑らかでことにクラシック系の弦や声を鳴らすときのほどよい艶のある美しさと、やややせぎすながら立体的な彫りの深さはとても魅力的で、いずれもすばらしいパワーアンプだ。
 ❿はプロ用として入力回路が平衡型低インピーダンスになっているので使用上の注意が必要だが、内容は❽をプロ用としてモディファイした製品で、いくぶん硬質だが支えのしっかりした骨太の安定感のある音は独特だ。
 ⓫から⓰までは、国産の、それぞれによくできていると思われる製品を列挙した。これらはすべて、ペアとなるコントロールアンプとともに企画されている製品ばかりだが、あえてパワーアンプ単体だけをあげたは、裏がえしていえばペアとなるべきコントロールアンプの完成度が、それぞれのパワーアンプのレベルまで達していないと思えたからだ。その意味では、これらをより一層生かす、或いは持てる能力を100%抽き出すコントロールアンプが、それぞれに欲しくなる。ただ、⓬のパイオニアM25は、バランスを無視すればエクスクルーシヴC3があり、⓭のラックスM12は5C50が、またアキュフェーズはC220が、それぞれにあり、同じメーカーの中に良いコントロールアンプがある。もちろん他のメーカーの優秀製品と組合せることは一向に差し支えない。⓰についてはコントロールアンプの❼のところで書いた事を繰り返しておく。
 ⓱から⓳までの3機種は、アメリカ製の、それぞれに性格のかなり強いパワーアンプで、中ではダイナコ/マークVIの、いささか反応が遅いがすばらしく豊かで暖かい音がいまだに耳に残っている。解像力の良いコントロールアンプと組合せたときに音が生きてくる。⓲のDBシステムズと⓳のスレシュオールドは、ともにコントロールアンプがあるが、同一メーカーどおしで組合せない方がその個性が生かされそうに思って、別々にあげた。

国産/組合せ特選機種
①ラックス 5C50+5M21
②エクスクルーシヴ Exclusive C3+Exclusive M4
③ヤマハ C-2+B-3

国産/組合せ準特選機種
④アキュフェーズ C-220+M-60 (×2)
⑤オンキョー Integra P-303+Integra M-505
⑥ ラックス CL32+MB3045(×2)

国産/組合せ推薦機種
⑦トリオ L07C+L-05M (×2)
⑧デンオン PRA-1001+POA-1001
⑨テクニクス SU-9070 II+SE-9060 II

海外/組合せ特選機種
⑩マーク・レビンソン LNP-2L+ML-2L (×2)
⑪マーク・レビンソン LNP-2L+SAE Mark 2600
⑫QUAD 33+303

海外/組合せ準特選機種
⑬アムクロン IC150A+DC300A IOC
⑭GAS ThaedraII+AmpzillaII
⑮マランツ model P3600+Model P510M

海外/組合せ推薦機種
⑯マッキントッシュ C32+MC2205
⑰GAS Thalia+Grandson
⑱スレシュオールド NS10custom+CAS1custom
⑲スペクトロアコースティック Model 217+Model 202

コントロールアンプ特選機種
❶マーク・レビンソン ML-1L
❷マランツ Model 3250
❸ハフラー DH-101

コントロールアンプ準特選機種
❹AGI Model 511
❺DBシステムズ DB-1
❻オーディオ・オブ・オレゴン BT2
❼ビクター EQ-7070

海外/パワーアンプ特選機種
❽ルボックス A740
❾QUAD 405
❿スチューダー A68

パワーアンプ推薦機種
⓫Lo-D HMA-9500
⓬パイオニア M-25
⓭ラックス M-12
⓮サンスイ BA-2000
⓯アキュフェーズ P-300S
⓰ビクター M-7070 (×2)
⓱ダイナコ Mark VI (×2)
⓲DBシステムズ DB-6
⓳スレシュオールド 400A custom

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