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BOSE 901WB

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 現在の901WBは、ウェストボロウ・シリーズの表面仕上げと細部のデザインのマイナーチェンジが施されたモデルで、専用スタンドPS9が別売で用意される。エンクロージュアは、比重が大きく硬度の高いMDF材が新しく採用され、響きが明るく、音の分解能が向上して、全域型独自の生き生きとした表現力豊かな音が楽しめるようになった。外形上は小型なシステムであるが、11・5cmユニット9個の振動板面積の合計は、34・5cm全域型ユニット1個分相当になり、想像以上の空気駆動能力を備えていることがわかるであろう。
 901に好適なリスニングルームは、程よくライヴで響きの美しい部屋が好ましい。そして聴取位置に対しての角度調整や、床からの高さ、両方のスピーカーの間隔などを調整し、最も響きが自然になる設置位置を決めてから、アクティヴEQをプリアンプのテープ系か、外部アクセサリー端子に入れて、サウンドバランスを調整すればよい。セパレート型アンプを使用する場合は、プリアンプとパワーアンプ間に入れる使用方法と聴き比べてみるとよいだろう。
 901WBの発展した使用方法として、小型高密度な特徴を活かして2段重ねにスタック設置にして使うと、一段と豊かなプレゼンスを余裕タップリに楽しむことができるだろう。

BOSE 901 Series

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボーズのフラッグシップモデルとして良い伝統を誇り、同社を代表するモデルが901シリーズである。コンサートホールでの直接音と間接音の比率は、数多くのホールで測定したデータからすると、直接音1に対して間接音が8の比率になることから、リスニングルームでコンサートホールの雰囲気を再現するために、前面に1個、背面に角度を付けて4個1組が2組の計8個をセットした独自のユニット配置法を採用。しかも、そ全ユニットには、ボーズで全域型に最適な口径と決定された11・5cmタイプを採用していることが特徴だ。また、自然な周波数特性を実現するために専用アクティヴEQが付属しており、低域から高域にかけての位相特性、周波数特性をスムーズなものとし、システム全体で見事な音場再生を可能としている。

BOSE

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボーズのスピーカーシステムはすべてDr.ボーズのユニークな音響理論に基づいて開発されている。その主なものはまず、ダイレクト/リフレクティング理論で、よい音には3要素があり、一つは全周波数のエネルギーバランス、二つめはどの方向からどれだけのエネルギーが来るかの空間的アスペクト、三つめは音源から出た音のエネルギーが聴取者に届くまでの時間である。この3要素をスペクトラル、スペイシャル、テンポラルと呼び、これらが家庭内でどこまで再現できるが、実際の演奏会場での音に近い再生ができるかどうかの鍵になり、そのために、直接音と間接音を調整し複雑に混合することで、自然なエネルギーバランスと方向性を作りだそうというわけだ。つまり、スピーカーの放射パターンを拡散させて間接音成分を増し、自然な音色と立体感を感じさせているわけである。
 次はステレオ・エブリウェア理論。これは、正しいステレオイメージを広範囲な聴取位置で得られるようにするための理論で、最初に到達する音よりも、後から到達する音を大きくしてマスキングさせようという考え方。ボーズではこのため、スピーカーユニットに特定の角度を付けて音響エネルギーと方向性をコントロールし、広いサービスエリアを実現している。
 アクースティマス方式は、小型エンクロージュアで強力な低域再生能力を獲得するボーズ独自の技術だ。共振と共鳴を利用し、低歪みで高いダイナミックレンジが得られる方式で、構造上、方向性を感じさせる高域輻射がなく、設置位置を選ばせない特徴は大きい。
 アコースティック・ウェイヴ・ガイド方式は、長大なチューブの内部に低域ユニットを取り付け、その前後両面に放射されるエネルギーを利用して、共振点の異なる2本のチューブ中の空気を共振させ、3オクターブもの広い帯域の重低音再生を可能とするものだ。
 それぞれの方式論は、米国特許が認められており、ボーズ製品に幅広く活用されている。

BOSE AM-033

BOSEのサブウーファーAM033の広告
(サウンドレコパル 1994年夏号掲載)

BOSE

BOSE 222, 242, 121 West Borough

BOSEのスピーカーシステム222、242、121 West Boroughの広告
(サウンドレコパル 1994年夏号掲載)

BOSE121

BOSE 901VC

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド創刊100号記念別冊・1991年秋発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 アメリカのボーズ社については、もう今さら説明の必要もないほど有名なブランドになった。MITの教授であるアマー・ボーズ博士が創立したこのメーカーの理念といってよいのが、この901である。1966年に8分の1球体というユニークな呼吸球フルレンジユニット22個を使った2201がその原形として作られたが、翌年、これを商品性を高めてリデザインしたシステムが901である。つまり、901はすでに四半世紀の歴史をもつているが、その現行モデルが901VCである。
 901というナンバーが示すように、システムは11・5cm口径の全帯域ユニットを9個内蔵し、その中でリスナーに向かって直接音を放射するユニットは1個だけ。残り8個はすべて後面に取り付けられている。アコースティックマトリックス型と呼ばれるエンクロージュアもユニークで、9個のユニットの内圧を実に巧みに処理してアコースティカルコントロールをしている。アクティヴイコライザーが付属しているが、スタンドや吊金具は別売である。ボーズ博士の直接音と間接音の比率が、自然な音の録音再生の重要なファクターとなるという理論を実践したのがこのシステムであるから、ボーズある限りこのシステムは存在し続けるであろう。小口径ユニットの高リニアリティの技術はボーズ社の得意とするところだが、それはこの901シリーズのために必要な技術であった。今や小型システムを一つのカテゴリーとして確固たるものにしたばかりではなく、そのハイリニアリティ性とパワーハンドリングの大きさでPAやSR用としても大きなシェアをもつボーズ社のシンボル的銘器といえるのだから、この901VCの存在感は大きい。一流品たる所以である。大き目の部屋で、このシステムと壁との距離をカット&トライで調整し成功した時の901の音の素晴らしさを知る人は意外に少ない。それだけ、取組み甲斐のある趣味的スピーカーでもある。

BOSE 301AVM

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 ボーズの301シリーズは、同社の製品群中でも中核をなす、優れた音質、優れた音楽性をもつシステムである。現行の301MMII/301VMに加えて、新しく301AVMがラインナップに加わった。
 まず、外観上の変化である。直線を基調としたシャープな印象が特徴の301MMIIに比べ、ラウンディッシュカーブと呼ばれる、全体に滑らかに円弧を描く柔らかなラインは、一種の新鮮な驚きでもある。
 またカラーバリエーションが豊かなことも、301AVMの特徴である。エンクロージュアの仕上げが、ブラック(301AVM)、シルバー(301AVMS)、ホワイ
ト(301AVMW)の3種。ホワイト仕上げには、レッド、グリーン、ブルー、それにホワイトの4種のグリルがある。なお、ブラックとシルバー仕上げには、同系統のカラーネットが組み合わされる。
 基本構造は、この方式は2個のトゥイーターを角度を変えてセットしたもので、ボーズ独自のプレゼンスを聴かせる。301MMII以来、すでに定評の高いバイ・ディレクショナル・ラディエーティング方式だ。
 低域は、20cm口径ウーファーによるバスレフ型であるが、ポート形状が、細長いスリット型のポートに変わり、エンクロージュア内部の雑音が放射されることを低減し、低域の音色もコントロールしている。なお、新モデルの各ユニットは、キャンセリングマグネットを使う低磁束漏洩型だ。
 外形寸法は、301MMIIシリーズより22mm広く、12mm高く、9mm奥深くなり、重量は、301MMII/301VMが6・5kg/7kgに対して、9・8kgと大幅に重くなり、許容人力も、70W(rms)から120W(rms)に向上し、事実上の301の上級機種とも考えられる、シリーズのトップモデルである。
 301シリーズの魅力のひとつでもある豊富なアクセサリー類は、重量増加による安全対策面から共用できず、201AVM専用アクセサリーが、ホワイトバージョン
用を含めて数多く用意されている。
 試聴室にある2、3種類のスピーカースタンドを使い、音の傾向を聴いてみる。
 基本的には、301シリーズの延長線上にある音ではあるが、デザインの変更に見られる視覚的な印象と同様に、301AVMの音も角がとれ、聴き上げられたようだ。やや線は太いが、開放感があり、屈託なくのびやかに鳴る301MMIIと比べ、かなり大人っぽい雰囲気が加わった音だ。
 低域の適度な粘りは、力感に裏づけされた新しい魅力であり、やや光沢を抑えた中高域の華やかさは、現代スピーカーならではの味わいとも受け取れるものだ。プログラムソースとの対応性もしなやかで、幅広い要求に応えられる注目のモデルだ。

BISE 901V Custom

井上卓也

ステレオサウンド 78号(1986年3月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ボーズの理論を具体化した第1号製品として伝統を誇る901シリーズに、新製品901V Customが加えられた。
 901シリーズ内での位置づけは、901SS−Wのジュニアモデルに相当する。直接音成分11%を前方に、関接音成分に相当する反射音89%を後方の壁に反射させて使う、ボーズならではのダイレクト・リフレクティング方式だけを受継いだヴァリュー・フォー・マネーな新製品である。
 本機ではプロフェッショナル用802IIと同様に、ダイレクトな音を楽しむために901SS、SS−Vで採用されたサルーン・スペクトラム方式は省略されており、そのため専用のイコライザーアンプは、基本的な回路上の変更はないが、901SS−W附属のタイプと較べテープモニター系が2系統から1系統になり、イコライザーバイパススイッチとダイレクト・リフレクティング方式とサルーン・スペクトラム方式の切替スイッチが省略されている。
 しかし、新たに低域を35Hzで−6dBにするパススイッチが加えられた。
 基本的なデザインは旧901Vを受け継いだ伝統的なものだが、木部は美しいウォルナットのオイル仕上げ、イコライザーアンプのシャンペンゴールド系の色調と微妙なカーブを描く曲面をもつシャーシは、高級機ならではの格調の高い良い雰囲気だ。
 使用ユニットは、口径11・5cmのコーン型の901SS−Wと同じタイプ。ボイスコイルインピーダンスは0・9Ω、角形比4:1の断面をもつ銅線をヘリカル(エッジワイズ)巻きしたタイプだが、字宙開発技術の産物である高耐熱接着剤で固められ、線間の接着層は1ミクロン、2000度の温度に耐えるとのことだ。全ユニットはコンピューターコントロールで生産され、ユニット間の差は事実上ゼロといえるレベルに達している。
 エンクロージュアはシリーズIII以来のアクースティック・マトリックス型で、SS、SS−W同様にサーモプラスティック射出成型のこの部分がエアタイトにつくられ、これを外側の木製キャビネットが締め付ける方式に変わった。なお、シリーズIVでは天地がオープンで、木製エンクロージュアと組み合わせてエアタイトとしていた。
 専用スタンドは、新デザインのタイプに変わるが、試聴には間に合わなかったためP社製木製ブロックを片側に2個タテ位置にして使い聴いてみる。スタンドの置き方、後ろと左右の壁からの距離と角度を追込んだ後、イコライザー補整をすれば、木製スタンドの利点もあって、SN比がよく、緻密で表情が豊かな音が楽しめる。いわゆるサラウンドとは異なるプレゼンスが見事だ。

BOSE 301MM-II(組合せ)

菅野沖彦

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
特集・「CDで聴く海外小型スピーカー中心の組合せに挑戦」より

 BOSEのスピーカーというのは、一般的なスピーカーの考え方とは違って、間接音を豊かに再生することによって、より自然な音が聴けるという主張のもとにつくり出されたもので、この思想をはっきりと具現化したのが、901です。901ほどまでには同社独自の思想が徹底して生かされていませんが、よりコンベンショナルな形で実用的なブックシェルフ型にまとめたのが301MMIIといえます。トゥイーターを二個、角度を変えてエンクロージュアにマウントし、高域を拡散するところにBOSE独特の考え方が生きていますが、全帯域はほとんど正面へ出ていますから、まったく普通のスピーカーと同じように使えます。
 BOSEの音の特徴、個性を一言にして言うと、アメリカ文化の音だと思うんです。それも301MMIIは、アメリカ大衆文化の音ですね。このスピーカーを聴くたびに思い出すのはマクドナルドとか、ケンタッキーフライドチキン、デニーズ、これらを思い出します。非常に大衆的ではあるけれども、ある文化の薫りを、それも異文化の薫りを持つことで成功している。そして、大衆的な値段ではあるけれども、ある種の格好のよさも保っている文化性が、BOSEの301MMIIとか、あるいは101MMの持っている音の特徴というものに、非常に合っていると思うんです。アメリカで生まれた大衆文化の中から誕生したものですから、よく売れるスピーカーだと思うんです。つまり、個性が非常にはっきりしていて、思い切りが非常にいい。特に、BOSEは小型のスピーカーで大型スピーカー並の十分な馬力を出す、パワーハンドリングも優れているというところに特徴があるわけです。この301MMIIも、相当パワーをぶち込んでもびくともしないというところが、大きな特徴と言えます。しかも出てくる音は、音量を絞ったときでもパワー感のある、非常にエッジのはっきりとした、あいまいさが全然ない、明快そのものな音と言えます。そして、その色合いが非常に濃厚であるため、他と比較するまでもなく印象づけられてしまうスピーカーです。
 デリカシーという点に関しては、文句を言いたいところもあります。しかし、きちんとしたオリジナリティを持っていますから、ある意味では、現代の大衆の心をばっちりつかむ音だと思う。そういう点で、このスピーカーを高く評価します。
 とにかく比較的安い値段で、異文化の薫りがあって、しかも何か強烈な個性の主張を聴きたいということだったら、迷うことなく、この301MMIIを勧めます。日本のスピーカーにものたりなさを感じ、もうちょっとコクのある音で、思い切り鳴らしたいというような要求を持っている人には、まさにぴったりのスピーカーです。それだけ、他のスピーカーと違ったよさを持っているということです。
 このスピーカーはペアで10万円を切る値段です。普通だったら、異文化の薫りを味わえる値段ではないともいえるわけですから、非常に安い買物と言える。だから、組合せのトータル額もできるだけ安く抑えて、異文化の薫りを充分に味わってみようということで聴いてみました。
 このスピーカーは、ボストン・アクースティックスのA40Vのようにいろんな方向にもっていくということは望めない。とにかく301MMIIが目指している方向を、ぎりぎりまで生かすべきだと考えて、最初の組合せは、アンプにオンキョーのA815RXと、CDプレーヤーはパイオニアのPD5010にしてみました。
 A815RXは、同社のプリメインアンプの中で一番安いアンプですが、オンキョーが追求してきた、電源の問題の解決によるスピーカーのドライブ能力の向上が、このA815RXからも充分感じられます。この値段のアンプとしては非常に力のあるアンプですね。その分、高域にややキャラクターがついていて、繊細な品位のある音を望むと、ちょっと艶っぽかったり癖があったりという感じがしますが、301MMIIを鳴らす限りにおいては、むしろ、それがいい方向に作用して、生き生きはつらつと鳴ってくれる。A815RXと301MMIIのコンビというのは、値段的な点からいっても非常によくマッチした組合せだと思います。
 PD5010は五万九千八百円という、現在のCDプレーヤーの最低価格のところへぶつけてきたパイオニアの意欲作ですが、ソニーのD50とか、あるいはマランツのCD34とは一味違っていますね。CD34やD50は独特のコンセプトの方向に踏み切っていますが、PD5010というのは、より価格の高いCDプレーヤーのコンセプトを、ぐっと値段を下げて実現したという感じがします。音も、非常に明快でふっきれてますね。CD34のように、何か雰囲気をつくろうというのでもなければ、D50のように徹底的に、小型軽便で、音も非常に明るい方向に徹しているわけでもない。つまり、その中庸をいくというのか、非常にまともな音です。つくりも非常にまともです。実際にさわってみてびっくりしたのは、メカノイズ、サーチノイズが少ないし、アクセスが早い。上級機種に堂々と伍していけるようなフィーリングを持っていることです。
 こうしてA815RXとPD5010と並べて置くと、デザイン的にもまったく違和感がない。同じブラックで、色合いの調子も合ってるから、デザイン的にも統一されるし、当然、音的にも非常にうまくいった組合せだと思います。できるだけ値段を安くして、301MMIIの能力をフルに発揮させる、という意図が見事に成功した例です。
 二番目の組合せは、NECのプリメインアンプA10IIとCDプレーヤーCD609を使いました。NECの製品には、常に高性能ということが印象づけられる。音の情緒性、感性という点で、やや現代的過ぎて、ぼくにはついていけない面があるのもたしかです。しかし、保証された物理特性のレベルは、非常に高いものです。その保証された高いレベルの物理特性で鳴らせば、301MMIIの個性と能力が相当なレベルで発揮できるんではないかという気持ちで鳴らしてみたわけですが、非常によく合うんですね。最初の組合せ以上に、性能のいいことを感じさせる音になります。音に精巧さが加わって、ソリッドです。アキュラシーというよりも、プリサイスな感じです。最初の組合せと同じ方向の音ですけども、明らかに、こちらの方がクォリティアップしたという感じがします。
 この301MMIIのようなスピーカーになりますと、鳴らすソースがはっきりと決ってくる。例えば、マーラーのシンフォニーでいえば、今回ハイティンクの第四番と、ショルティの第二番を使ったんですが、301MMIIはショルティ盤が相応しいですね。この両者は演黄も違えば録音も全然違う。ショルティの第二番の、ロンドンのレコーディングは、徹底的に拡大鏡でオーケストラを部分的にのぞいていったような録音なんです。マルチマイクロフォンの一つの極だと言える。こういう録音は、絶対的に、あるレベル以上の性能がないと、全然生きてこない録音になる。雰囲気でフワッと聴けない音です。ところがハイティンクの方は、雰囲気がよくない装置でないと聴けないというくらいに、両者にははっきりとした録音のコンセプトの違いがあるし、演奏にもはっきりとした違いがあります。ショルティはアメリカの指揮者ではないけれど、彼の演奏というのは、極めて戦闘的で、真っすぐ猪突猛進するところがある。それと、アメリカのオーケストラとが組み合わさって、そして、ロンドンの録音でマーラーをやられると、独自の世界と言わざるを得ないくらいになる。こういうマーラーもあってもいいんだろうけれども、一方に、ハイティンク、コンセルトヘボウの、繊細緻密でロマンティックなマーラーもある。BOSEのスピーカー音は、ハイティンクのマーラーとはまったく異質だという感じがするんです。ところが、ショルティをかけると、小型スピーカーとは思えないくらいのダイナミズムを発揮して、快適な爽快感が味わえる。
 三番めの組合せも、前の二例と同じ方向を狙いますが、もう少しパワーハンドリングを上げたいと思って選んだのが、マランツのPM84です。CDプレーヤーのソニーのCDP302ESと組み合わせて鳴らした音は、前の二例と比べて少し雰囲気が出てきます。A10IIが、いわば冷徹とも言えるハイパフォーマンスな感じに対して、マランツとソニーの音は、そこに少しぬくもりとある種のしなやかさが加わってきたように思います。
 クォリティ的には互角の第二例と第三例のどちらを選ぶかとなると、徹底的な現代性というものを求めるんだったら、NEC同士の組合せの方を、そこにニュアンスを求めたいのならば、マランツとソニーの組合せ、といったところです。

BOSE 901SS-W, 301MM-II

井上卓也

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
「BEST PRODUCTS」より

 ボーズからの新製品は、同社のトップランクモデルとして開発された、901SS−Wシステムである。その基本型は、前面と背面の2通りの使い方ができるバイフェイシャル方式のユニークなモデルとして発売された901SSで、これに数々の改良が加えられた新モデルであり、901シリーズIVとは、異なったラインの製品である。
 このモデルの最大の特徴は、エンクロージュアの仕上げが、落着いたローズウッド調のダークブラウン系にまとめられていることで、エンクロージュア底面には、入力端子と天井取付金具CB1、スピーカースタンドSS5が使えるように、ナットが埋込まれており、別売のスタンドには色調を揃えた茶系のPS4SSが用意される。
 発表資料によれば、901SS−Wの音質面での特徴は、高域における繊細さをさらに洗錬させるための改良を随所に施し、SN比の向上、ダイナミックレンジの拡大と併せて、音楽性をより一層高めた、とある。
 インピーダンス0・9Ωのフルレンジユニットを9個直列接続にして、8・1Ωとしていることをはじめ、エンクロージュアの基本構造はシリーズIVと変わらないが、細部においては、合成樹脂系の成形品で作られている内部構造材と木製のジャケット的な外皮でエンクロージュアとしシリーズIVと比べ、内部構造材そのものだけでエンクロージュアを形成してこの部分の気密性を高めてあること、ユニット関係では、振動系の外観上の変化は少ないが、高域の歪の低減をはじめ、耐入力、耐破損性を高めるとともに、コーン裏側に施したダンプ材料のコーティングなど、細部を含めればシステムとして100箇所あまりの改良が加えてあるというのが、ドクター・ボーズのコメントであるとのことだ。
 なお、専用イコライザーは、初期の901SSでは、ブラックパネルに2個のレベルメーターが付いたタイプであったが、これが新タイプに発展したブラック仕上げが901SS用であるが、この901SS−W用には、シルバー仕上げのイコライザーが専用として用意されている。
 301MM−IIは、発売以来すでに4年が経過し、仕様を変更して、今春シリーズ IIに発展している。これにともない301MMのカラーバージョン301MM−WもシリーズIIに変わった。
 主な変更点は、まず、ユニット構成が従来と同様に2ウェイ方式であるが、トゥイーターが2個になり、エンクロージュア内部で一定の角度で前後に向けて固定され、旧型のフォーカシングコントロールがなくなったことが最大の特徴である。その他、前面と側面のウレタン製グリルが布製になり、BOSEのエンブレムが固定式となった。また、左右グリル間の木製の板が成形品となったことも印象が異なる。
 エンクロージュアの外形寸法は旧型と同様だが、板厚が数mmほど厚くなったためPR3以外の従来の取付金具は使用できず、新タイプの金具が用意されている。
 ユニット関係は、振動系コーンの色調がグレイ系から新製品共通のブルー系のコーン材料に変更され、裏側にダンピング材料がコーティングされている手法は901SS−Wと共通なところだ。
 901シリーズの音は、小口径フルレンジユニットを前面に1個、背面に8個分散させ、実際のコンサートホールでの直接音と間接音の比率をリスニングルームに再現するというユニークな構想に基づいた特徴に加えて、小口径フルレンジユニットの音に不連続な面がなく、緻密で、いきいきとしたサウンドの特徴を活かした点にある。低域と高域の不足を電気的なイコライザーで補い、その技術的内容がダイレクトに音として感じられる、プレゼンスとサウンドの魅力がメリットである。
 901シリーズIVが、穏やかなまとまりを示しながらも、緻密で内容の濃い音を聴かせるのに比べ、901SSは、同じようにダイレクト/インダイレクトの使いわけをしても、適度に広帯域型で、分解能が向上したクリアーで現代的なクールな音と雰囲気が、コントラストを作っていた。今回の901SS−Wは、901SS系をベースに分解能が一段と向上した印象である。細やかさ、しなやかさが、穏やかで暖かな雰囲気のなかにまとまって、熟成されているのが魅力であろう。
 この性質は、直接音を大きくして使う、サルーンスぺクトラムの場合でも、901SSとの性質の違いとなってあらわれるが、エンクロージュア左右に一対として付属しているフィンが、901SS−Wでは、木製ということもあって、バイフェイシャルな使いかたで、音とプレゼンスが大きく変化する。一例として、壁面から数十cm離して設置し、901シリーズIVと同様にフィンを閉じた状態と、外側のフィンを壁と平行とし、内側のフィンを各種の角度で使ってみると、音のバランスをはじめ、音像定位、音場感が相当に変化をするのが聴き取れるだろう。つまり旧301MMのフォーカシングコントロール的に考えればこの2枚のフィンは、サウンドキャラクターとプレゼンスのコントローラーとして使いたいユニークな機能である。この901SS−Wの小型高密度タイプでありながらクォリティが高く、音場感的プレゼンスに富むところは、他に類例のない魅力である。
 なお、301MM−IIは、旧型よりキメ細かく、しなやかとなり聴感上でのSN比が良いのが特徴だ。2個の固定した高域を活かすためには、使用にあたり内側と外側に置換えて調整するのがポイントだ。

BOSE 901 SALOON SPECTRUM

井上卓也

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤー賞 第1回」より

 901シリーズは、コンサートホールのプレゼンスをリスニングルームで再現する目的で、全域型ユニットを前面に1、背面に8個使用したユニークな構成と、活々とした鮮度感の高い音質で、既に高い評価を得ている。
 今回の901SSは、従来の特徴に加えて、業務用システムとして定着し、PAシステムのスタンダード的な存在である802のストレートでダイナミックなサウンドと、モニターシステムとして使えるようにグレイドアップさせた音の、二つの異なったサウンドが、ひとつのシステムで対応できるように開発されたボーズ製品中のトップ機である。
 基本構成は901を受継ぐが、エンクロージュアは表面仕上げが変更され、上下にリジッドなダイキャストフレーム、左右に回転可能なウイングが取付けられているのが特徴だ。
 専用イコライザーは、高SN比設計のダイレクトリフレクティングとサルーンスペクトラム切替イコライゼーション付の新型である。
 エンクロージュアが強化され、イコライザーの性能が向上したため、901と比較しても帯域バランスは一段とフラットになり、分解能が確実に1ランク上がっている。また新しいサルーンスペクトラム使用での明解で音像がグッと前に出るモニターライクな音も新鮮な魅力である。
 デジタル時代にマッチした、許容入力の大きさ、直線性はユニット設計の優位性を示し、エンクロージュア内部に吸音材を使わない音響設計は他の追従を許さぬ異次元の世界だ。とくにデジタルソースでの音質は絶品である。

BOSE 901 SALOON SPECTRUM

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
❶の総奏でのひびきのひろがりは充分に示されているものの、それぞれの楽器の位置の提示ということになると、かならずしも鮮明とはいいがたい。❸ないしは❺のコントラバスは、むしろ、大きなチェロといった感じにきこえる。❹のフォルテで音がきつくならないのはいいところであるとしても、音場感的に雰囲気優先で細部があいまいになるところがある。❷でのヴァイオリンは艶のあるひびきで美しい。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❶でのエレクトリック・ピアノは大きめの音像で前にせりだす。同じことが❷での声についてもいえる。ストライザンドやギブの音像も大きめである。このましかったのは❺で、ここでのギブの音像も小さくはなかったが、はった声が硬くならず、バックコーラスとのからみ方も効果的であった。❸でのギターの奥へのひき方などには独自のものがあり、これはこれで大変に魅力的であったといえなくもない。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
ほかのスピーカーでのきこえ方と、とりわけ音場感的なことで、大変にちがう。横へのひろがりということではまことに積極的である。したがって、❸でのティンパニの左右への動きの提示などには独自のめざましさがある。ただ、前後のひろがりは、思いのほか感じられない。❹でのブラスなどは一応奥の方からきこえてはくるが、ひびきに力強さが不足している。❷でのティンパニの質感ももう一歩である。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
❶ではピアノの音よりベースの音の方がきわだつ傾向がある。❷でのピアノの音は丸みが感じられてこのましいが、これでもう少し力感が感じられればさらによかったと思う。ここでも③のレコードでの場合と同じように、音場感的にほかのスピーカーといくぶんちがった印象である。これはこれで独自の説得力をそなえてはいるが、❸でのシンバルのひびき等にもう少し輝きがほしいと思わなくもない。

BOSE 901 SALOON SPECTRUM

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 独自の雰囲気のある音の提示のしかたというべきかもしれない。細部にこだわったきき方をすると、いくぶんものたりなさを感じなくもない。たとえばその意味では①のレコードの❶の総奏などはまことに特徴的であったというべきであろう。
 そこでどのような楽器がどこにいて演奏しているかをききとろうとすると、鮮明さで不足を感じなくもないが、弦楽合奏団がそろって音をだしたためのひびきのひろがりはこのましく示す。そういうところがこのスピーカーのこのスピーカーならではの魅力である。むろんだからといって単に雰囲気的な提示にとどまっているということではない。
 音色的にあかるく、しかも一種のさわやかさがあるために、きいての印象はすっきりしている。ついに重くべとついた感じにならないのがこのスピーカーのいいところである。開放的に音楽たのしもうとする人に適しているスピーカーシステムというべきかもしれない。

BOSE 901SS, 901IV, 802, 802W, 601II, 402, 402W, 301MM, 101MM

BOSEのスピーカーシステム901SS、901IV、802、802W、601II、402、402W、301MM、101MMの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

BOSE

BOSE 901SS

BOSEのスピーカーシステム901SSの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

901

BOSE 101MM

BOSEのスピーカーシステム101MMの広告
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

101MM

BOSE 901IV

BOSEのスピーカーシステム901IVの広告
(モダン・ジャズ読本 ’82掲載)

BOSE

BOSE 601 SERIESII

井上卓也

ステレオサウンド 61号(1981年12月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 BOSEのスピーカーシステムは、実際のコンサートホールプレゼンスを確保するために、ユニークな音響理論に基づき直接音成分と間接音成分のバランスを巧みにコントロールするユニット配置を採用している。シンプルな構造、適切な材料選択と優れた基本設計によって、非常にパワーハンドリングの優れたユニットによるパワフルでダイナミックなサウンド、豊かなプレゼンスですでに確固とした支持をオーディオファンの中に築き上げている。今回、フロアー型の601を大幅な設計変更により発展、改良した新製品、シリーズIIが市場に送り出されることになった。
 従来の601は、BOSEのコンシュマーユース独特の、ディフィニションに優れプレゼンス豊かな再生をするモデルとして一部で認められてはいたが、周波数帯域的なバランスでは低域から中域が量的に多く、軟調な再生になりやすいことと、シャープで緻密な音というにはやや分解能が不足であり、トップモデル901シリーズIVほどの定評は得られていなかった。
 今回の601シリーズIIは、これらの問題点を根本的に解決するために、新しい手法としてサブ・メインダクト方式を採用し、低域から中域の締まりのよさと、室内の反射物により生じる250Hzあたりの盛り上がったレスポンスをコントロールすることが可能になったと発表されている。
 口径20cmのウーファーは、コーンのストロークが長いタイプがエンクロージュア上側に斜めに取り付けられ、さらにエンクロージュア正面にはノーマルストローク型がセットされるという独特なダブルウーファー設計である。この2個のウーファーは、それぞれエンクロージュア内部に独立した専用のバックキャビティをもち、メインのエンクロージュアとは個々のバックキャビティの後ろに設けられた補助ダクトを通して空気がつながり、さらにメインエンクロージュアにも独立した別のダクトがあって、これを通して外気につながるといった2重構造をとる。これが、サブ・メインダクト方式と名付けられた理由である。
 簡単に考えれば、一般的にはバッフル面にあるダクトをエンクロージュア後面に設けた2個のシステムを、大型のエンクロージュアに取り付け、その大型エンクロージュアにはダクトのみをつけたタイプと思えばよい。従来にないユニークな構造である。
 内部のサブダクトはチューニングがブロードになる設計で、その中心周波数は250Hz、一般的なリスニングルームの多くで壁面などにより強調されやすい250Hzあたりの音の濁りをを、メインエンクロージュア内部で吸収しようとする設計であるようだ。また、メインのダクトは35Hzにチューニングされ、バスレフ方式で低域をコントロールしているのは一般的なシステムと同様だが、ダクトの位置がエンクロージュア上部の前側にあり、パイプダクトが上を向いているのも特長である。
 トゥイーターとウーファーのクロスオーバーは、これもBOSE独特の設計によるデュアルフレケンシー・クロスオーバー方式と呼ばれるタイプだ。トゥイーターとウーファーのクロスオーバー部分を、約1オクターブオーバーラップさせ、位相特性と振幅特性を完全にマッチングさせようとする方法である。実際に601シリーズIIでは、ウーファー側は1・3kHzあたりで約2dBほどレベルが下降してから再びフラットになり、2・5kHzあたりからまた下降するという段付き特性になっており、トゥイーター側はこの逆で、2・5kHzあたりで一度レベルが約2dB下がったあとフラットになり、1・5kHzあたりで再び下降するレスポンスを示す。2箇所でレスポンスが下降するために、デュアルフレケンシー・クロスオーバー方式といわれるのであろう。
 601シリーズIIは小型のフロアー型システムであり、独自の直接音と間接音の輻射バランスをとるために、エンクロージュア上部のサランネットがかかった部分の左右には、物を置かないようにセットする必要がある。インストラクションによれば、
 1 壁面にエンクロージュアを密着させて最初のヒアリングをする。
 2 低域が強調される場合は、壁から離して、その距離で調整をする。
 3 低域がこもる場合は、床からの位置を上にあげて調整をする。
の3点が指示されている。
 ステレオサウンド試聴室でもこの指示に従って試聴を始めたが、1では全体にローバランスになり、2でも多少のコントロールはできるが、抜けがいま一歩不足気味であり、結局3に従って、床からの位置を数ステップ調整して一応のバランスが得られた。使用アンプの低域のドライブ能力が充分にあり、プレーヤーシステムもヘビー級であったため、3の位置を上げたセッティングが必要であったと思われる。
 この時の音は、爽やかに抜ける音場感の拡がりと響きの美しさに加えて、こだわりなくストレートに、吹き抜けるようなダイナミックな表現力が聴かれた。国内製品とはひと味違った、実体感のある音楽が楽しめるタイプだ。組み合わせるカートリッジやアンプは、中域から高域で分解能が高く、反応の速いタイプを使うことが、システムの独自の魅力を引き出すポイントである。

BOSE 301 Music Monitor

黒田恭一

サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より

 このスピーカーはいい。価格を考えたら大変にお買得である。
 むろん、スケール感がほしいとか、腰のすわった低音をききたいとか、あれこれむずかしい注文をだしても、このランクのスピーカーに対応できるはずもないが、きかせるべき音を一応それらしく、あかるい音で、すっきりきかせる。小冠者、なかなかどうしてようやるわい──といった感じである。きいていて、いかにもさわやかで、気分がいい。
 このボーズ301MUSIC MONITORのきかせる音は、ひとことでいえば軽量級サウンドである。それにしても、吹けばとぶような音ではない。しんにしっかりしたところがあるので、音楽の骨組みをあいまいにしない。そこがこのスピーカーのいいところである。なかなかどうしてようやるい──と思えるのは、そういういいところがあるからである。
 ハーブ・アルバートのレコードのB面冒頭には、しゃれたアレンジによる「ベサメ・ムーチョ」がおさめられているが、それなどをきいても、いくぶん小ぶりな表現ながら、細部を鮮明に示して、あざやかである。このアルバートによる「ベサメ・ムーチョ」は、深いひびきのきざむリズムにのってはこばれるが、あたりまえのことながら、本当に深いひびきは、このスピーカーではきけない。それをきこうとしたら、やはりどうしても大型のフロアースピーカーのお世話にならなければならない。しかし、このボースの301MUSIC MONITORは、その深いひびきの感じを、一応、それらしく示す。
 音場的なひろがりの面でも、このスピーカーは、あなどりがたい。ハーブ・アルバートのレコードが、せまくるしくあつくるしくきこえたら、きいていてやりきれなくなるが、その点で、このスピーカーの示す音場とひびきの質は、このましい。あくまでもさわやかであり、すっきりしている。このスピーカーもまた、ウェストコースト・サウンドの特徴をそなえているといっていいように思う。
 マーティ・バリンのレコードもよかった。うたわれた言葉はシャープにたちあがる。ただ、難をいえばリズムをきざむソリッドな音に力が不足している。そういうこのスピーカーのいくぶんよりよわいところが、ランディ・マイズナーのレコードではより強く感じられるとしても、決して湿っぽくなったり、ぐずついたりしないひびきのこのましさがあるので、致命的な弱点とはいいきれない。
 アルバートのレコードにしても、バリンのレコードにしても、マイズナーのレコードにしても、大滝詠一のレコードにしても、音がべとついたり、ぼてっとしたりしたら、それぞれのレコードできける音楽の本質的な部分がそこなわれ、その音楽の最大のチャーミング・ポイントをたのしめないことになる。すくなくともそういうことは、このボーズの301MUSIC MONITORではない。
 もし環境の面で許されるなら、パワーを少し入れてやると、ひびきの力感に対しての反応もよりこのましくなるであろうし、このフレッシュな音をきかせるスピーカーは、魅力充分といえそうである。

BOSE 901 SeriesIV

BOSEのスピーカーシステム901 SeriesIVの広告
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

BOSE

BOSE 901 SeriesIV

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 コンサートホールのプレゼンスをリスニングルームに運び込む目的で、背面に8個、正面に1個の小口径フルレンジユニットを配置した特殊構造のエンクロージュア方式と、専用イコライザーを使う、901の最新モデル。充分な間接音成分とシャープな直接音のエネルギーバランスは絶妙で、ソリッドでパワフルな低域は外形からは驚異的でさえある。必要に応じて2段、4段と積重ねるのも効果的で、ひと味ちがった使用法だ。

BOSE 301 Music Monitor

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「’81最新2403機種から選ぶ価格帯別ベストバイ・コンポーネント518選」より

 小口径フルレンジ型ユニットを複数個使ってシステムアップするボーズの特殊技術の成果は、小型ポータブルPA用スピーカー802の凄くパワフルなサウンドに代表されるが、301はミュージックモニターと名付けられたように小型モニターを目標として開発された製品。聴取位置正確な音像定位をコントロールするフォーカシング機構はユニークで効果は抜群だ。ガッツがあり、パワーハンドリングの優れた音は、さすがにモニター。

BOSE 301MM

BOSEのスピーカーシステム301MMの広告
(オーディオアクセサリー 21号掲載)

BOSE301

BOSE 901 SeriesIV

BOSEのスピーカーシステム901 SeriesIVの広告
(スイングジャーナル 1980年7月号掲載)

BOSE1

BOSE 901 SeriesIV

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 ボーズ901IVは、アメリカのボーズ社のユニークなシステム。IV型になって著しく改善された音が印象的だ。11・5cm口径のフルレンジスピーカーを9個、それも正面は1個だけで、8個は背面につけられているという独特のものだが、付属のアクティヴイコライザーをうまく使い、壁から少し離して置くと抜群の成果が得られる。