菅野沖彦
ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より
SMEのトーンアーム3012Rを装備したセミオート・プレーヤーでカートリッジは付いていない。本格派のアナログプレーヤーの標準的な製品といったところである。音はトーレンスらしい適正なダンピングとQのコントロールにより、大人の雰囲気を持ち、柔軟性と高解像感のバランスは中庸を保っている。
菅野沖彦
ステレオサウンド 133号(1999年12月発行)
特集・「ジャンル別・価格帯別 ザ・ベストバイ コンポーネントランキング798選」より
SMEのトーンアーム3012Rを装備したセミオート・プレーヤーでカートリッジは付いていない。本格派のアナログプレーヤーの標準的な製品といったところである。音はトーレンスらしい適正なダンピングとQのコントロールにより、大人の雰囲気を持ち、柔軟性と高解像感のバランスは中庸を保っている。
井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
ヘルマン・トーレンスがオルゴール製造のためにトーレンスSAを創立したのは1883年で、その後、蓄音器、ハーモニカ、電磁型ピックアップ、電気式レコードプレーヤー、トラッキングエラーレス・ピックアップ、ラジオから業務用円盤録音機、SP用オートチェンジャーなどを順次開発。60年代になるとEMTフランツ社と共同出資の形態をとるようになった。
オーディオファンの間で一躍注目されるようになったのは、57年のTD124ベルト・アイドラー型フォノモーターの登場からだ。本機は、当時リファレンスとして評価の高かった英ガラード社の♯301アイドラードライブ型に比べ、圧倒的にワウ・フラッターが少なく、静かなターンテーブルとして究極のモデルといわれた。現在でも、現用モデルとして、愛用するファンは多いと思う。
以後、TD124のオートチェンジャー版、ターンテーブルを非磁性体化したMK2と続くが、この当時が世界の王座に君臨していた栄光の時代であり、80年代のトーレンス・リファレンスが超弩級機としての頂点であろう。
TD520RW/3012Rは、16極シンクロナスモーターを電子制御で使うダブルターンテーブル型ベルト駆動アームレスプレーヤーTD520RWに、ロングサイズのSMEの3012Rトーンアームを組み合わせたモデル。さすがにメカニズムの見事さは抜群で、要所を絶妙に押さえたトータルバランスの良さは感激ものだ。現代のリファレンス機として、アナログならではの音を楽しみたいときに、最も信頼性の高い素晴らしいシステムだ。セオリーどおりに微調整すれば、想像を超えた音が楽しめ、軽針圧型から重針圧型までのカートリッジとの対応性も穏やかである。
TD318MKIIIは、同社の技術をベーシックモデルに結集した快心作。このところのアナログディスクの復活に的を絞った、素晴らしく良く出来た音の良い注目の新製品だ。
菅野沖彦
レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)
「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より
トーレンスのプレーヤーのよさを一言でいうなら、バランスのよさ。アナログプレーヤーという機械には必要悪が山ほどある。そして、これらは互いに多くの矛盾を孕んでいて、総合的に一つの機能体としてまとめるには明確かつ一貫した思想を必要とするものである。
どんなに微細な一部分でも変えれば音が変わるのも、機械振動のすべてが音として鳴るプレーヤーの宿命といえる。レコードに刻まれている波形のすべてを、過不足なく電気信号に変えるのが使命であることは、いうまでもない。これが仮に実現すれば、プレーヤーとして正しいわけだが、古今東西のプレーヤーでどれがもっとも正しい変換器であるかは誰にもわからないのが現実である。
個々のアナログプレーヤーの設計者のなかには、自分のものだけが唯一無二の正しい変換装置だと主張する人が少なくないが、本当に音と音楽を知っていれば、そんな傲慢な姿勢をとれるはずがない。トーレンスのプレーヤーはこういうことをよく知っている。その結果必要悪は文字どおり、必要なことと肯定してバランス設計思想を尊重することになったのである。SMEのトーンアームも同様である。ストレートアームや超重量リジッドプレーヤーなどは、また違う思想であり、当然音も違う。大人の美しい妥協が生み出した不偏向な音のプレーヤーである。
現在のトーレンスの上級機であるが、いかにも中庸の、しかも表現性の豊かな音が得られる。弦の艶と輝きのバランス、強靭な音の芯と漂うような響きのバランス、十分な細部の再現性ながら、けっして鋭利すぎない音を聴かせるボディや陰影のニュアンスがある。
「エラ&ルイ」のナローレンジをもっとも素直に聴かせトーキーサウンドを彷彿させたのも、このプレーヤーならではだ。部分的、分析的にはより優れた特質を聴かせるものは多くある。しかしバランスではこれを凌駕する製品は少ない。
井上卓也
オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 アナログプレーヤー/カートリッジ/トーンアーム篇」より
トーレンスは、往年の銘器として世界のトップレベルに君臨したTD124や、そのオートプレーヤー版TD224以来、つねに高性能、高音質かつ操作性の優れたシステムを世に送り続けている。
TD520RW十3012Rは、アームレスのTD520RWに、トーンアームにSMEの2Rを搭載し、エレクトリックコントロールのアームリフトを組み込んだ、カートリッジレスのセミオートターンテーブルである。このアームリフターの装備は、CDプレーヤーの機能性に慣れた現状では、実用上で不可欠な機能である。
3・2kgの二重ターンテーブルは、シングルターンテーブルと比べ単一の固有共振が出難く、スタート/ストップ時のタイムラグもほどよく充分にコントロールされた結果での重設定であろう。
同社はトーンアーム、ターンテーブルをフローティングして処理する方法を一貫して採用している。コイルスプリングの選択や、その組合せ、またリーフスプリングを使う現在のサスペンション方式は、長期にわたる熟成期間を経て完成されたメカニズムである。これは上下方向にタップリとしたストロークがあり、前後、左右を抑えた設計で、耐ハウリングマージンが大きい。このタイプの理想に近いコントロールによって、ダンピング量も巧みにコントロールされている。
SME3012Rは、いわゆるロングサイズのトーンアームで、現状のオルトフォンやデンオンに代表される1・5〜3gの針圧で使うカートリッジを対象とすれば、好適なタイプであろう。設定方法、調整を正しく行なえば、組み合せるカートリッジの音を確実に引き出すだけの能力をもつところが本機の信頼性の高さだ。
使いこなしポイント
駆動モーターはサーボ型であるだけにAC電源にも気を使いたい。極性をチェックし、アンプのACアウトレットを使わずにアンプ系とは別の電源から取ることが必須条件。
最近のコメント