シュアーのカートリッジV15 TypeIV、V15 TypeIII-HE、V15LT、M97HE-AH、M97LT、M95HE、M75HE Type2、MV30HEの広告(輸入元:バルコム)
(モダン・ジャズ読本 ’82掲載)
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シュアー V15 TypeIV, V15 TypeIII-HE, V15LT, M97HE-AH, M97LT, M95HE, M75HE Type2, MV30HE
シュアー V15 TypeIV, V15 TypeIII-HE, M95HE, M75B Type2, M44G
シュアー M75G TypeII, M91GD, SC35C, M95ED, V15 TypeIII
井上卓也
ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より
シュアーは、当初からMM型の発電方式を採用したカートリッジをつくりつづけており、ステレオ初期以来、つねに新製品は、数々の話題を投じている。音色は、適度にコントラストがついた、耳あたりがよく活気がありキレイに音を聴かせる、いわば演出型の音が他にない個性となっている。
V15/IIIは、粒立ちはまず標準的という感じで、最近の高級カートリッジと比較すると、さして細かさは感じられない。帯域バランスは、低域から中低域に独得なスケール感を感じさせる音があり、中域から中高域にも、やや硬調な効果的に輝く個性がある。ヴォーカルは、ちょっと聴きには、スッキリと抜けてニュアンスが充分にわかる感じがあり、音像がクッキリと立つタイプであるが、聴き込むと、キリッとした輪郭がなく、ピアノはスケール感はあるが低音が甘くベトつき気味である。プログラムソースにはフレキシブルに対応して気持よく聴かせる特長がある。高級コンポーネントシステムよりも、中級以下のシステムの場合に見事な音を聴かせる傾向があるが、システムのクォリティが高くなると、薄味の華やかさになり、音がベタツキ気味になるのが興味深い。
M95EDは、柔らかく耳あたりがよい音をもっている。中低域に量感があって、軽くよく響くが、やや粘る感じもあって奇妙にスッキリと爽やかにならない面がある。ヴォーカルは表情が甘く、声量がなく、オンマイク録音のように細部を見せるが、表現が表面的で実体感が乏しいようだ。ピアノはソフトで適度に輝くが、クリアーにカッチリとした音にならない。
M91GDは、低域のダンプが適度であり、音の粒子は上級モデルよりも粗くなり、聴感上のSN比がときおり気になることがある。音の傾向は、M95EDよりもクリアーでスッキリとした感じがあり、暖かみがあり、ベトツキがなくなっている。低域は、量感があって、少し甘く感じられるが、弾力性もあってリズミックな表現も充分にこなすだけの力量がある。ヴォーカルは、子音を強調気味でハスキー調となるが、適度にコントラストをつける効果があり、力感もあるために、スッキリとクリアーな印象がある。ピアノは、スケール感もかなりあって、響きが美しく明快である。トータルバランスはかなりコントロールされて巧みにとられているために、音の魅力ではM95EDを上廻り、活気があり、リズミックに音を楽しく聴かせるメリットが大きい。
SC35Cは、帯域が狭く、線の太いマクロ的に音をまとめるタイプだ。粒立ちは粗くノイズが耳ざわりである。低域から中低域にかなりエネルギーが感じられる、腰が強いソリッドなメリットをもつが、全体に音が大味にすぎて、細部の表現がかなり不足する。
M75G/2は、粒立ちは粗いタイプだが、あまり聴感上のSN比が劣化しない特長がある。帯域はナローレンジ型で、全体に音の傾向は甘く柔らかい。普及型システムと使うと、安定した面白味がある音になる。
シュアー M75G Type2, M91GD, SC35C, M95ED, V15 TypeIII
岩崎千明
ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より
シュアーは、今やマイクメーカーというよりも米国を代表するもっとも高名な、そして高級なカートリッジの量産メーカーだ。
ステレオの初期において、他社にさきがけてMM型の実用的な高級品を完成した。アメリカ国内のライバルメーカーが追いつくまでに、音溝の追従性を技術的テーマとしてカートリッジを軽針圧化したのが、今日のシュアーの礎だ。
今日のすべてのムービング・マグネット型カートリッジが、このシュアーの影響を受け、おそらくすべての技術の源であるといって差しつかえあるまい。
約十年前に、すでにV15を完成し、それは今、第三世代になっている。
シュアーV15タイプIIIは、おそらく誰でも一度は手にしているだろう。高級ファンにとって、このカートリッジは少なくともひとつの基準ないしは、信頼の源点にあるはずだ。
タイプIIIになって確かに伸びた高域は、低域からまるで定規でひいたようにフラットそのものの特性をもつ。これは驚き以外の何ものでもない。しかも、この特性が世界的に売られる量産品に保たれていることこそ、注目しなければならない。
やや甘いローエンドも、ちょっとばかり細身な中低域も代々のV15の個性でもあり、特徴でもあった。それが気にくわなければ、タイプIIIとは妥協できない。何はともあれ、これが音楽再生の基準として、もっとも広く使われている事実。これだけで、このカートリッジの価値は、あらゆるファンにとって必要であろう。ステレオ音像の無類の広がりも、トップモデルにふさわしい。
M95EDは、V15タイプIIIの実用型ともいうべきモデルといえるが、単に実用型にとどまらず低域の充実感がプラスされたことによって、音が積極的な面をもつに至っている。
ヴォーカルが聴き手の間近に再現され、小編成器楽曲が迫力をもって再現されるので若いファンにとっては喜ばれよう。無論、相対的に中高域がややおとなしいという傾向をもち、それがクラシックの、とくに弦楽器の再生において好ましいともいえる。ステレオ音像は、ふやけることもなく、適度な広がりをもたせ、さすがにシュアーのキャリアを物語っている製品といえる。
SC35Cは、一般マニア向けというよりもディスコテックなどの業務用であり、針圧指定値が、5gということからも、まさにヘヴィーデューティであることがわかる。そのごついカンチレバーを通して出る音は、まさにナローレンジには違いないが、まったく確実な情報を伝えてくれるのがもっとも大きな特徴ということができる。
M91GDは、シュアーの特徴ともいうべきウェルバランスの再生音が得られ、決して単なる普及機に終らない良さをもつ。音楽再生のカンどころをおさえた周波数バランスをもち、シュアーのもうひとつの特徴でもある針圧に対する印加幅の広いことも、この機種についていえる。トレース能力も実用上かなり高く、そうした点も高く評価したい。
M75Gタイプ2は、ローコスト機種ながら、音楽再生上、一般マニア向けというよりもより音楽を大切にするファンに推められよう。それほど広帯域とは思えない再生音は、音楽ジャンルを問わず素直なバランスを聴かせてくれる。
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