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サテン M-18BX

岩崎千明

週刊FM No.10(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 今まで、何回となく、こんなによくなった、というメーカーの言葉ほどには変わりばえのなかったサテンのMC型。扱いやすさの点で確かに11型になったとき格段の向上をみせて以来、もっとも大きく音の良さを獲得したのがこのM18ではないだろうか。
 少なくとも、豊かさという点で、どうしても突破れなかったサウンドはM17あたりから、かなりはっきりした変わり方で、今までにない「大らかさ」を音楽の中に加えてきている。そして、サテンでは初めてベリリウム・カンチレバーを作ったのがこのM18BX。もともと、くっきりした繊細感という点では、ひ弱な繊細感の多い国産品の中で目立った存在だったサテンだが、中域から低域にかけての力強さが、はっきりと感じられるようになったのははじめてだ。特にBXはその力強さの点では、かつてないほどの迫力を発揮してくれるのがいい。サテンの場合、針圧の許容範囲の点でクリティカルなのが弱点ともいえるが、それも次第に確実に改良されて向上を重ねてきたのも見逃せない。
 カートリッジ自体の重量の重いのは相変わらずだが、あまり極端な軽針圧用アームさえ避ければ十分に使える。ただこれに変えると必ずアームの水平バランスをとり直さねばならない手間が加わる。しかしMC型としては驚くほど出力が大きく、トランスやヘッド・アンプは不要なので手軽だ。

サテン M-18BX

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 オリジナルな高能率発電方式をミクロの芸術とも言える精緻な工作により実現した、サテン・カートリッジの最高機種。盤面の裏まで見えるような音は異例のものだ。

サテン M-117G, M-18G

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 空芯スパイラルコイルとゴムダンパーを使用しない独創的な発電方式と超精密工作で定評が高い、ユニークなMC型カートリッジをつくるサテンから新しくGシリーズの新製品が発売された。
 Gシリーズは、サテンで開発された 『音をこわさないステレオ』創りの技術に基づいて完成された製品で、サテンのトーンアームAR1、プリアンプPA1、メインアンプMA1、スピーカーシステムSP1など一連の製品と組合せて本来の性能を100%発揮するように作られているとのことだ。新シリーズは現在、M117G、M18G、M18GBなど5モデルがあり、外見上ではM117やM18と同様に見えるが、サテンのトーンアームからスピーカーシステムまでの一連の製品の完成によって、一段と音をこわす箇所を厳密に取除くことが、可能になったようで、この原因は一般におこなわれている動的歪やスルーレイト等を含め、非常にレベルが低く測定不能の領域のものと発表されている。
 今回は、M117GとM18Gを従来どおりのステレオサウンド試聴室のシステムを使って聴いたが、ともにローレベルの再生が明瞭であり、直線的に伸びる音の立上がりがシャープな見事な音をもっている。とくに、M18Gは一段とリアリティが豊かで格調が高く、昇圧トランスなどを必要としない高出力型MCカートリッジならではのダイレクトな音である。

サテン M-18BX

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

驚くべき発電効率の高さと超精密工作を誇る芸術品的な貴重な存在。

サテン M-18BX

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 サテンは日本のカートリッジの専門メーカーとして、いかにも専門家らしい行き方をしてきたメーカーだ。信じるコンセプションを一貫し、独自の構造を磨き上げ、本当に一品一品作るクラフトマンシップをもつ。MC型だが高出力で、振動系に不用意にイージーな弾性体を使うことを避け、明解きわまりない音を出す。

サテン M-18BX

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 型番は同じでもBXだけは別シリーズ、とサテンで言うように、18EやXとはひとつ次元の違う全く独特のリアル感のある音場を展開する。ただしヘッドシェルやアームの組合せが多少難しい。アンプやスピーカーも解像力の良いものでないと生かし切れない。ややデリケートで扱いに細心の注意が要る。

サテン M-18BX

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 すでに定評がある超精密工作を基盤としてつくられる純粋なMC型で、ダンパーにゴム材を使用していない特長がある。M18BXは、ベリリウムカンチレバー採用のトップモデルで、いわゆるカートリッジらしい音をこえた異次元の世界の音を聴かせる製品だ。

サテン M-117E, M-117X, M-18E, M-18X, M-18BX

井上卓也

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 サテンのカートリッジは、超精密工作をベースとした、高出力MC型であり、その構造・方式にオリジナルなものが多く採用してあり、その音も、他の製品とは一線を画した、ディスク再生の枠をこえたものとして定評がある。なお、サテン製品については、オプションのSR60ダンピング・アダプターを併用することにした。
 M18BXは、サテンの18シリーズのトップランクのモデルで、かつサテン最新の製品である。従来のスッキリと抜け切った色付けがないサテンの音から想像すると、この18BXは、ちょっと聴きには、素直でおとなしい音と受け取れるだろう。この音は、表情がおだやかで落着いており、素直でサラサラとしたナチュラルさがある。プログラムソースには、素直に反応を示し、その内容を拾い出すために、ダイレクトカッティング盤のメリットをもっともよく聴かせてくれたカートリッジである。組合せコンポーネントシステムのキャラクターをリアルに感じさせる面があり、このカートリッジの性能をフルに引き出すためには、かなりの経験とクォリティの高いシステムが要求されるように思われる。
 M18Xは、BXよりも、明快でスッキリとしたMC型らしい音である。表情がクールでストレートであり、コントラストが明瞭につき、低域にも力強さがあるために、充分に聴きごたえがするタイプの音だ。音場感はよく拡がり、音像がクッキリと前に立ち、空間の広がった感じがある。音楽への働きかけは18BXよりもアクティブで、一般的な使用では、むしろこの18Xのほうが大きな効果が期待できよう。
 M18Eは、18Xよりも、音に丸味があり、低域から中低域に量感があるため、マイルドな表情のMC型としての特長がある。中域から中高域はクリアーで抜けがよく、ヴォーカルはクッキリとアクセントがついて、ややハスキー調となり、オンマイク的な効果があるが、強調感というほどではない。音場感は18Xと同様によく拡がるが、18Xのスッキリとした広さにたいして、フワッと柔らかく拡がる感じである。
 M117Xは、全体に音のスケールを小さく表現する傾向がある。ヴォーカルは、ハスキー調で口先で歌う感じとなり、ピアノは右手がクリアー、左手がソフトでスケール感が充分に出ない。スッキリとした感じは、18シリーズほどではないにしても、充分にありながら、安定した音として決まらないのは低域から中低域の量と質の問題であろうか。
 M117Eは、音の粒子がサテンのモデル中では粗くなり、聴感上のSN比は一般的な感じである。全体に、音はクリアーで明快なタイプだが、聴感上の帯域バランスが充分にコントロールされ、とくに中域が充実している良さがある。低域から中低域に厚味があり、響きが豊かで安定感がある。ヴォーカルはハスキー調だが力があり、ピアノはキラメキ型だが甘さがあってよい。性質が素直で健康であり、表情もナチュラルな良さがある。

サテン M-117E, M-117X, M-18E, M-18X, M-18BX

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 ムービング・コイル型としてはほかにない針先交換可能という、オリジナル指向をそなえたサテンの製品は、現在M117シリーズとM18シリーズの2系列にまとめられている。そして、これらの全製品は、振動系支点を明確にするために、板バネ2枚とテンションワイヤー1本とにより、厳密に一点化する機構が採用されている。この技術は明らかに音の上にも感じられ、MC型特有の、ごく澄んだ力強い音色で、密度の濃さからは独特の気品高い雰囲気に包まれる。
 それは、まさに優雅というにふさわしく、すき透った薄衣をまとったような品の良さをかもし出している。サテンというブランド名はそのまま高級な布地のきぬずれを思わせる。このサテンのピックアップの歴史は、かなり古く、モノーラル時代からのメーカーだが、Mシリーズの一連のMC型カートリッジにより、振動系の中からゴムを追放するという大きな技術テーマに取組み、現在では、その技術指向もいきつくところまで行ってしまった感さえある。こうした独特の技術指向を、おそらく気の遠くなるほど永い期間追い求めていく姿勢は、日本ではまったく珍しいといえるだろうし、現実に、研究の成果は着々と実を結んでいるといってよいだろう。
 M117Eは、まずこれまでのサテンにあったような針先のきゃしゃな感じがなくなり、扱いやすくなっているのが特徴だ。音も若いファンを意識した、立上りの良い鮮やかな音に仕上げている。色彩感も強く出し、ときとして高域のどぎつささえも感じられる。ただ、今までのもっていたサテンの一種の派手さとは種類が違って、図太いと感じさせる一面も持っている。117Xは、全体のバランスとしては、Eと驚くほどの差はないが、Eタイプで時々気になる高域の色づけが、抑えられていることが大きなメリットといえるだろう。
 M18シリーズは、ダイナミックレンジのきわめて広いレコードに対しても、そのディテールの再現性において優れ、デリケートな音に対しては絶妙にレスポンスすることができる特徴が大きくクローズアップされてくる。
 このM18シリーズの中でも、もっとも価格の安いM18Eは、全体におとなしくまとめられてはいるが、力強さに欠けるところもあり、全体に音の厚みが不足しているのが気になる。どうも、もうひとつサウンドイメージがひ弱になってしまうのだ。それに比べてM18Xは中域の厚みが増し、これまでのサテンになかったエネルギー感をもった音を再現する。ステレオ感の再現にしても好ましい音像をつくり、前後感も充分に再現しているところは、やはり高級機らしい。ただし高域については、ブラスがやや必要以上に輝くのが気になるところだ。
 ベリリュウムカンチレバーを採用したM18BXは、サテンのこれまでの技術的キャリアを一度に昇華させた意欲作といえるが、とにかく驚くべきことは、これまでのどのタイプの、どのメーカーのカートリッジにもなかった再生音を聴かせ、その音は、まさに超高忠実度再生といえるものであることに異論を唱える者はおそらく非常に少ないだろう。何といっても、そのダイナミックレンジは、これまでの数倍はあるように感じられ、それが再生音であることを忘れさせてしまうかのようだ。ただ、それがいかにもダイナミックレンジの良さを感じさせ、周波数帯域の広さ、を感じさせてしまい、結局、音楽を聴くことに集中できない人も出てくるようなことが起る可能性は十分にあるところだけが気になる。

サテン M-18E

井上卓也

ステレオサウンド 38号(1976年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サテンのカートリッジは、もっとも古いモノーラル用のモデルであるM−1以来、独自のポリシーのもとに、鉄芯を使用せず、ステップアップトランスも不要な、高出力MC型一途に、製品を送り出している。
 最近では、久しぶりに沈黙を破って、M−117を発表したが、今回の新製品、M−18は、M−117をベースとして発展させたモデルではなく、逆に、M−117のプロトタイプとして、M−117に先だって開発されたモデルである。
 サテンのムービングコイルは、三角形に巻かれているために、いわゆる、オムスビ型をしたスパイラル巻きであるが、M−18、M、117ともにダ円形のスパイラル巻に変更され、コイルが磁束を切る有効率が1/3から1/2に増し、M−117でも、質量は1/2と半減している。
 新シリーズは、カンチレバーの支持方法が、従来のテンションワイヤーによるものから、二枚の板バネとテンションワイヤーを組み合わせたタイプに変わり、カンチレバーは、二枚の板バネとテンションワイヤーの中心線の交点を支点として支持されるため支点は厳密に一点である。これにより、従来は不可避であったカンチレバーの軸方向まわりの回転運動がなくなったことが、新しい支持方式の大きなメリットである。また、コイルを保持し、カンチレバーの動きをコイルに伝えるアーマチュアも、大幅な改良が加えられ、50μの厚みのベリリュウム銅でつくったアーマチュアとコイルとの結合部がループ状になっており、電磁制動が有効に使えるタイプになっている。
 サテンのMC型は、針交換が可能なことも、忘れてはならない特長である。新シリーズは、交換針を本体に取付ける方法が、従来のバネによるものから、MC型が必要とする磁石の磁力によって交換針を保持する方式に変わった。
 M−18は、M−117の高級機であるために、精度が一段と高まり、ムービングコイルが、さらに軽量化されている。M−18シリーズは、4モデルあり、0.5ミル針付のM−18、ダ円針付のM−18E、0.1×2.5ミル・コニック針付のM−18Xと、コニック針付で、カンチレバーにベリリュウムを使ったM−18BXがある。
 試聴したのは、M−18シリーズのスタンダードとも考えられる、M−18Eである。MM型では、負荷抵抗による音の変化は、ほぼ、常識となっているが、MC型でも、変わり方が異なるとはいえ、負荷抵抗によって、音量が変化し、出力電圧も変化する。サテンでは、負荷抵抗として30Ω〜300Ωを推奨しているが、50kΩでも可とのこともあって試聴は、一般のカートリッジと同様に50kΩでおこなうことにした。
 M−18Eで、もっとも大きな特長は、聴感上のSN比がよく、スクラッチノイズが、他のカートリッジとくらべて、明らかに異なった性質のものであることだ。M−18の音は、文字で表現することは難しく、周波数帯域とか、バランスといった聴き方をするかぎり、ナチュラルであり、問題にすべき点は見出せない。ただ、いい方を変えれば、いわゆるレコードらしくない音であり、例えば、未処理のオリジナルテープの音と似ているといってもよい。他のカートリッジであれば、レコード以後のことだけを考えていればよいが、M−18Eでは、レコード以前の、いわば、オーディオファンにとっては見てはならぬ領域を見てしまったような錯覚をさえ感じる。この音は、誰しも、素晴らしい音として認めるが、使う人によって好むか好まざるかはわかれるだろう。

サテン M-18BX

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(オーディオアクセサリー 1号掲載)

サテン