菅野沖彦
ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より
ゲイルGS401Aは英国の製品で、このシステムは20cm口径ウーファーを2つ使い、スコーカーに10cmコーン、そしてドーム・トゥイーターという3ウェイ構成をとったブックシェルフ型である。一味ちがう雰囲気をもった音の世界はエキゾティックだが、全帯域のクォリティの統一やバランスに、やや未完成なところが感じられる。
菅野沖彦
ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より
ゲイルGS401Aは英国の製品で、このシステムは20cm口径ウーファーを2つ使い、スコーカーに10cmコーン、そしてドーム・トゥイーターという3ウェイ構成をとったブックシェルフ型である。一味ちがう雰囲気をもった音の世界はエキゾティックだが、全帯域のクォリティの統一やバランスに、やや未完成なところが感じられる。
瀬川冬樹
続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第33項・市販品をタイプ別に分類しながら(6) デザインの美しさ、ユニークさを特徴とするスピーカーたち」より
たとえばJBL4343のような、ほんらいは録音スタジオで使われることを目的として作られたスピーカーであっても、その〝WX〟モデルのように、高級材と云われるウォルナットの木目も美しい仕上げを施したものは、そのままどんな部屋に置いてもインテリアの雰囲気をこわすどころか十分に美しい。JBLのスピーカーは、これにかぎらずどれをとっても、音質ばかりでなくデザインや仕上げの美しいことで有名だ。JBLばかりではない。一流といわれる製品は、音質と共に外観もまた美しいのが通例だ。
しかし、そういう例でなく、もっと積極的に、モダーンインテリアに、まだ逆にアンティーク調に、あるいは奇抜な形に、と、デザインにくふうを凝らしたスピーカーが、いくつかある。いくら形が美しくとも奇抜であっても、音質を犠牲にしてしまったようなものではここにとりあげる価値はない。形も仕上げも美しく、また意表をついていながら、その音質もまた、一聴に値する──。そういうスピーカーのいくつかをとりあげてみる。
*
JBLのパラゴン。ステレオの初期、もう20年あまり昔に作られたこの類のないユニークなスピーカーは、およそどんなインテリアの部屋に置いても、部屋ぜんたいの格調を高めるような、風格のある姿をしている。音量をどこまで絞っても、逆に部屋一杯にボリュウムを上げても、いまや数少ないオールホーン独特の、力強く緻密な音は少しのくずれもみせない。
もしもシンプルでモダーンなデザインの部屋になら、イギリスの中型スピーカーの中から、ブースロイド・スチュアートのメリディアンM1、B&WのDM7、フェログラフS1、レクソンLB1およびSP1などを探し出すことができる。ゲイルのGS401Aは、クロームの光沢メッキに、黒いグリルクロスというコントラストの強いデザインだが、こういうスピーカーの似合う部屋があればおもしろいだろう。そしてこれらのイギリスのスピーカーは、それぞれに、繊細で雰囲気を豊かに再現するとても良い音質だ。なかでもメリディアンは、26項で説明したモニター用として使えるほどの、正確な音の再生できる素晴らしいスピーカーだ。音質の犠牲なしにデザインを美しくリファインした好例といえる。
少し変わったところでは、ジョーダン・ワッツ(英)のフラゴンとキュービック。フラゴンは陶製の壺。キュービックはサイコロ型のエンクロージュアの横腹に陶製のタイルを貼りつけたもの。……というとまるでゲテものすれすれみたいだが、実物は意外に渋い仕上りで、使いようになってはとてもおもしろい。
もうひとつ、これはいわゆるアンティーク調で、セレッションのデッドハム。虫喰いのあとまで作った手作りのエンクロージュアがユニークだこれほど凝ってはいないが、アメリカ・マランツのSL1や、前出(23項)のアルテックのマグニフィセントIIなども、どちらかといえばクラシック調だ。
菅野沖彦
ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より
ユニークな外観をもつ20cmウーファー2個をベースとした3ウェイスピーカーだ。英国製だけにさすがにまとめ方はうまく、いぶし銀のような渋い味わいと雰囲気を湛えている。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
クロームと黒の現代的な外観の美しさ。くっきりと浮かぶ音像の繊細さ。
黒田恭一
ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイントの試聴メモ
カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきは、はれやかで効果的だ。
❷低音弦のひびきは、しっかりしていて、充分にひろがる。
❸木管と弦楽器のとけあいもよく示している。
❹響きが重くひきずりがちにならないのがいい。
❺クライマックスの力と鋭さをよく示す。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像が小さくまとまり、すっきり提示されるのがいい。
❷音色的な対比を軽やかに、さわやかに示す。
❸室内オーケストラ特有のひびきのさわやかさがある。
❹第1ヴァイオリンのフレーズは、実にすっきりしている。
❺特に木管楽器の音色の示し方がいい。
J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶音像がしっかりしていて、セリフの声に誇張感のないのがいい。
❷接近感を鮮明に示す。子音のひびき方も自然だ。
❸声とオーケストラとのバランスはよくとれている。
❹はった声はかたくならない。もう少し力が感じられてもいい。
❺さまざまなひびきがよくとけあっている。
「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶ひびきの性格としてはたっぷりしたものだが、定位は確かだ。
❷声量をおとしても言葉が不鮮明になったりしない。
❸残響は感じられるが言葉の細部もききとれる。
❹ひびきに敏捷さがあり、誇張感のないのがいい。
❺自然にしめくくりのひびきがのびている。
浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的、音場的対比は、はなはだ鮮明である。
❷後方へのひきが充分でひろがりが感じられる。
❸ひびきの飛びかうさまが無理なく感じられる。
❹ひびきはさわやかにひろがり、前後のへだたりも充分に示す。
❺ピークでの圧倒的なもりあがりがすばらしい。
アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶後方でのかすかなひびきがすっきりと示されている。
❷ギターの音像がふくれていないのがいい。
❸ことさらめだつわけではないが、一応の効果はあげる。
❹軽やかにひびいて、音色的なアクセントをつけている。
❺はなはだ望ましい感じで示されている。
ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶幾分かためのハイコードが効果的に示されている。
❷この部分で求められる効果を提示しえている。
❸ハットシンバルのひびきのぬけでてき方がいい。
❹重低音をそぎおとしたドラムスの感じがよくわかる。
❺言葉のたち方、声の重なり具合、いずれも好ましい。
ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶特に迫力を強調するわけではないが、鮮明な提示がいい。
❷指の動きをくっきり示すが、部分拡大にはなっていない。
❸必要最少限には音の消え方を示している。
❹こまかい音の動きをあいまいにならずに示している。
❺サム・ジョーンズとの対比が不自然でなくていい。
タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ドラムスのアタックの鋭さがよくわかる。
❷ブラスのひびきにもうひとつ力がほしいが輝きは充分だ。
❸求められる効果はあげているが、もう少しワイルドでもいいだろう。
❹音の見通しがいいために、トランペットの参加は効果的だ。
❺ここでのリズムは切れが鋭くすばらしい。
座鬼太鼓座
❶充分に距離がとれているために、ひろがりが感じられる。
❷尺八のひびきは、脂っぽくならず、のびのびときこえる。
❸ことさらではないが、一応ききとれる。
❹大きさは提示しないが、力強さは示す。
❺きこえる。効果的なひびきのまとまりがある。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より
国産をずっとまとめて聴いてきたあとで突然これが出てくると、やはり製品を生んだ風土──というよりそれを作った人間の音の感受性──の違いというものを思い知らされる。第一に、原音場の空間のひろがりの再現性がまるで違う。すっと眼前がひらけた感じで、かなりの音量で鳴らしても、音がかたまりにならず、音源が空間のあちこちに互いに十分の距離を置いて展開するように聴こえるので、メモをとりながら聴いていてもやかましさや圧迫感がなく、とても気持がいい。音のバランスという意味では、少し前のイギリス製品によくあった、中音域をやや抑えて低域をあまりひきしめないで甘口にこしらえてあるし、高域端(ハイエンド)を多少強調する感じもあるので、高域にピーク性のくせを持つアンプやカートリッジを避ける方が安全だ。しかし、低域の表面的な甘さにもかかわらず、オーケストラの中で鳴るティンパニなども、国産の多くのようなドロドロした音でなく、タン! と切れ味よく響くし、音量をぐんぐん上げていっても楽器の実体感がよく出て、音離れがよく各パートの動きも明瞭だ。能率が低い方なので、本気で鳴らそうとするとアンプは100W級では少々不足のこともあるが、耐入力は十分にあるので大出力アンプでも不安なくこなせる。専用のスタンドがあるのでそれに乗せて、背面は壁から少し離す方が低域の解像力が増す。レベルコントロールは高域をやや絞る方がバランスがいい。
菅野沖彦
ステレオ別冊「あなたのステレオ設計 ’77」(1977年夏発行)
「’77優良コンポーネントカタログ」より
イギリスのゲイル・エレクトロニクスが発売するシステムで、大変ユニークでオリジナリティに溢れた製品である。構成は、3ウェイ4スピーカーで、20cmウーファーのトゥインドライブで豊かな低域再生を得ている。中域は10cmのコーン・スピーカーだが、よくコントロールされた振動板の設計だ。トゥイーターは1.9cmのドーム型である。401Aはブラックとクロームのユニークな感覚を見せるモダーンなデザインもポイントだ。
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