瀬川冬樹
続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第33項・市販品をタイプ別に分類しながら(6) デザインの美しさ、ユニークさを特徴とするスピーカーたち」より
たとえばJBL4343のような、ほんらいは録音スタジオで使われることを目的として作られたスピーカーであっても、その〝WX〟モデルのように、高級材と云われるウォルナットの木目も美しい仕上げを施したものは、そのままどんな部屋に置いてもインテリアの雰囲気をこわすどころか十分に美しい。JBLのスピーカーは、これにかぎらずどれをとっても、音質ばかりでなくデザインや仕上げの美しいことで有名だ。JBLばかりではない。一流といわれる製品は、音質と共に外観もまた美しいのが通例だ。
しかし、そういう例でなく、もっと積極的に、モダーンインテリアに、まだ逆にアンティーク調に、あるいは奇抜な形に、と、デザインにくふうを凝らしたスピーカーが、いくつかある。いくら形が美しくとも奇抜であっても、音質を犠牲にしてしまったようなものではここにとりあげる価値はない。形も仕上げも美しく、また意表をついていながら、その音質もまた、一聴に値する──。そういうスピーカーのいくつかをとりあげてみる。
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JBLのパラゴン。ステレオの初期、もう20年あまり昔に作られたこの類のないユニークなスピーカーは、およそどんなインテリアの部屋に置いても、部屋ぜんたいの格調を高めるような、風格のある姿をしている。音量をどこまで絞っても、逆に部屋一杯にボリュウムを上げても、いまや数少ないオールホーン独特の、力強く緻密な音は少しのくずれもみせない。
もしもシンプルでモダーンなデザインの部屋になら、イギリスの中型スピーカーの中から、ブースロイド・スチュアートのメリディアンM1、B&WのDM7、フェログラフS1、レクソンLB1およびSP1などを探し出すことができる。ゲイルのGS401Aは、クロームの光沢メッキに、黒いグリルクロスというコントラストの強いデザインだが、こういうスピーカーの似合う部屋があればおもしろいだろう。そしてこれらのイギリスのスピーカーは、それぞれに、繊細で雰囲気を豊かに再現するとても良い音質だ。なかでもメリディアンは、26項で説明したモニター用として使えるほどの、正確な音の再生できる素晴らしいスピーカーだ。音質の犠牲なしにデザインを美しくリファインした好例といえる。
少し変わったところでは、ジョーダン・ワッツ(英)のフラゴンとキュービック。フラゴンは陶製の壺。キュービックはサイコロ型のエンクロージュアの横腹に陶製のタイルを貼りつけたもの。……というとまるでゲテものすれすれみたいだが、実物は意外に渋い仕上りで、使いようになってはとてもおもしろい。
もうひとつ、これはいわゆるアンティーク調で、セレッションのデッドハム。虫喰いのあとまで作った手作りのエンクロージュアがユニークだこれほど凝ってはいないが、アメリカ・マランツのSL1や、前出(23項)のアルテックのマグニフィセントIIなども、どちらかといえばクラシック調だ。
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