菅野沖彦
ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より
A7の上級モデルでユニット別もの。クロスオーバーがA7の1・2kHzに対しこれは500Hzで、ドライバー、ホーンはより大型、ウーファーも一層ヘビーデューティである。その大らかな再生音は他では味わえないもので、悠揚迫らぬ音の世界の魅力は、この劇場用システムを、あえて家庭で味わうという熱心なファンを生んできた。至近距離で聴いても音は必ずしも粗くない。
菅野沖彦
ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より
A7の上級モデルでユニット別もの。クロスオーバーがA7の1・2kHzに対しこれは500Hzで、ドライバー、ホーンはより大型、ウーファーも一層ヘビーデューティである。その大らかな再生音は他では味わえないもので、悠揚迫らぬ音の世界の魅力は、この劇場用システムを、あえて家庭で味わうという熱心なファンを生んできた。至近距離で聴いても音は必ずしも粗くない。
瀬川冬樹
続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第5項・スペクタルサウンド クリエイティヴサウンドのもうひとつのタイプ」より
スピーカーの鳴らす音の快さは、柔らかく耳あたりの良い音ばかりとは限らない。反対に、ナマの楽器ではとうてい出しえない大きな音量やスケールの大きな響き、部屋いっぱいに満ちあふれるような堂々とした迫力、といった、いわばスペクタクルな音もまた、スピーカーの鳴らすひとつの世界といえる。この種の音は、やはり、アメリカのスピーカー、それも、映画の都ハリウッドが、トーキーの発達とともに育てあげたいわゆるシアターサウンドにとどめを刺す。
シアターサウンドといえば,はやり第一にアルテックの〝ザ・ヴォイス・オブ・ザ・シアター〟シリーズのA5やA7(こんにちではA7X)、ないしは、それを家庭用のデザインにアレンジした〝マグニフィセント〟などが代表製品としてあげられる。
その本来の目的から、映画劇場のスクリーンのうしろに設置されて、広い劇場のすみずみまで、世紀の美男美女の恋のささやきから、雷鳴、大砲のとどろき、駅馬車の大群、滝の轟音……およそあらゆる音を、しかもかなりの音量で鳴らし分けなくてはならないのだから、家庭用スピーカーの快い音や、モニターのための正確な音とは、まったく別の作り方をしてある。とうぜん、一般家庭用のリスニングルームに持ち込まれることなど、メーカーの側では考えてもみないことだったに違いない。
だが、朝に和食、昼に中華、夕にフランス料理を楽しむ日本人の感覚は、シアタースピーカーの音を家庭でも受け入れてしまう。4項であげたイギリス・ヴァイタヴォックスの〝バイトーン・メイジャー〟も、本来はシアター用スピーカーだ。ヴァイタヴォックスには、さらに大型の──というよりマンモス級の巨大な──BASS BINというスピーカーもある。むろんアルテックにもこの種の超弩級がある。このクラスになると、大きさの点だけでももう一般家庭には入りきれないが、バイトーン・メイジャーやA5、A7クラスを、ごくふつうの部屋に収めている愛好家は少なくない。JBLのプロ用スピーカーの中の〝PAシリーズ〟にも、この種の製品がいくつかある。
これらのスピーカーは、言うまでもなく本来はスペクタクルサウンドのための製品だが、しかしおもしろいことに、日本のオーディオ愛好家でこの種のスピーカーを家庭に持ち込んで楽しむ人たち多くは、決してスペクタクルな音を求めてそうしているのではなく、逆にそういう性格をできるかぎりおさえ込んで、いわば大型エンジンを絞って使うと同じように、底力を秘めた音のゆとりを楽しんでいるという例が多い。
けれど念を押すまでもなく、この種のスピーカーは、もっと広いスペースで、大きな音量で、まさにスペクタクルな音を轟々ととどろかせるときに、本来の性能が十分に発揮される。そしてこういう音を聴く快感は、まさにスピーカーの世界そのものだ。そしてそのためには、できるだけ広い空間、しかもその空間を満たす音量が周囲に迷惑をおよぼすことのないような遮音の対策が、ぜひとも必要だ。そういう意味でこの種のスピーカーは決して一般的なものとはいえない。ただここでは、スピーカーの鳴らす音の世界にそういう一面もあるという説明のために例をあげたにすきない。
井上卓也
ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より
巨大なエネルギーを感じさせる中域は大型ドライバーの独特の魅力。
井上卓也
HIGH-TECHNIC SERIES-1 マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ(ステレオサウンド別冊・1977年秋発行)
「内外代表パーツ200機種によるマルチウェイ・システムプラン」より
アルテックA5システムは、一般によく知られているA7−500−8システムを内容的に一段とグレイドアップしたタイプで、ザ・ボイス・オブ・ザ・シアターシリーズ業務用スピーカーシステムのなかでは、A7とならび、実用上、家庭内に持込んでコンシュマー用として使用できるもっとも小型な製品である。
現在、国内でA5システムと呼ばれているタイプは、A5Xシステムといわれるタイプをベースとして、ハイフレケンシーユニットと組み合わせるホーンを、マルチセルラ型から大型セクトラルホーン311−90に置換え、コンシュマー用に相応しい指向性を得ようとしたシステムである。
もともとA5システムは、開発された時点においては、現在のタイプとはまったく異なったより大型のエンクロージュアを採用しており、システムとしては、ウーファーと高音用のドライバーユニットの基本的な構造や規格で同じであることに類似点があるのみであるから、このA5システムも、A5シリーズのヴァリエーションのひとつとして考えてもよいと思われる。
エンクロージュアは、A7−500−8システムと共通のフロントホーンとバスレフ型を複合した独特の828Bで、ウーファーは、416−8Bの強力型ユニットである515Bを組み合わせている。このユニットは、コーン紙を含む振動系は、ほぼ416−8Bと同等だが、磁気回路はアルニコ系の鋳造マグネットを採用した強力なタイプで、出力音圧レベルは105dBと発表されている。
高音用には、振動系が改良され、モデルナンバーが異なる291−16Aが指定されていたこともあったが、現在では、オリジナルともいうべき288−16Gドライバーユニットと311−90セクトラルホーンを組み合わせて使用している。
クロスオーバー周波数は、より大型のドライバーユニットとホーンの組合せにもかかわらず、より小型なA7−500−8システムと同じ500Hzが指定されている。LC型ネットワークは、超大型のN500F−Aがマッチする。この場合の聴感上の特長は、A7−500−8にくらべ中音のエネルギー感と密度が格段に優り、低音も引締まった充実した響きで、いかにも業務用システムらしい堂々とした音が得られる点である。
また、A5システムは、フロントホーン付の828Bエンクロージュアを採用し、高音ユニットとのエネルギー的、音色的つながりが意図されていると同時に、低音と高音の両ユニット間の位相が調整されている特長があることも見落とせない重要なポイントとしてあげることができる。
マルチアンプ化のプランには、GASのアンプをベースにDBシステムズのエレクトロニック・クロスオーバーを使う。家庭用としての使用では、クロスオーバー周波数を指定より下げてみるのも大変に興味深い。
●スピーカーシステム
アルテック A5
●コントロールアンプ
GAS Thaedra
●エレクトロニック・クロスオーバー・ネットワーク
DBシステムズ DB-3+DB-2
●パワーアンプ
低音域:GAS Ampzilla II
中高音域:GAS Son of Ampzilla
菅野沖彦
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
アメリカのアルテックの代表的製品。ユニークな、フロントホーンをもったエンクロージュアには38cm口径ウーファーがおさめられ、上を500Hz以上をホーン・ドライバーが受持つ。ユニットは総てむき出しのまま。本来は、大劇場用の強力システムだが、家庭手も、優れた再生音が得られる。独特な風格あるもの。
瀬川冬樹
ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より
会議室や中程度のホール、またはそれ以上の広い会場で、できるだけ無理せずに楽しめる音を鳴らしたいというような条件があれば、アルテックを必ずしも好きでない私でも、A5あたりを第一にあげる。以前これを使ってコンサートツアーを組んで大成功を収めたことがある。私自身は家庭用とは考えていない。
井上卓也
ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より
特殊な例を除いて、われわれに使えるアルテックのトップ製品である。高音、低音ともに、A7より1ランク上のユニットが使われ古典型の業務用システムらしい凄みがある。
菅野沖彦
ステレオサウンド 31号(1974年6月発行)
特集・「オーディオ機器の魅力をさぐる」より
アルテックの劇場用大型システム。とても家庭に持ち込めるような代物ではないという人も多いが、それは観念的に過ぎる。絶対安心して鳴らせるスピーカー、つまり、どんなに大きな音でびくともせず、よく使い込んでいくと小さな音にしぼり込んだ時にも、なかなか詩的な味わいを漂わせてセンシティヴなのである。形は機械道具そのもの。デザインなどというものではない。これがまた、独特の魅力。凄味があっていい。
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