ラックス P-22

ラックスのアナログプレーヤーP22の広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

P22

サテン M-11/E

サテンのカートリッジM11/Eの広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

M11E

ナショナル FRONTIER740

ナショナルのシステムコンポーネントFRONTIER740の広告
(スイングジャーナル 1968年8月号掲載)

Frontier740

ヤマハ YM-50A

ヤマハのシステムコンポーネントYM50Aの広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

YM50A

ラックス SQ505

ラックスのプリメインアンプSQ505の広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

SQ505

ソニー Hi-Fidelity

ソニーのオープンリールテープHi-Fidelityの広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

Sony-HiFi

ナショナル RS-790, RP-8058

ナショナルのオープンリールデッキRS790、スピーカーシステムRP8058の広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

RS790

トーレンス TD124/II

トーレンスのターンテーブルTD124/IIの広告(輸入元:銀座さくら屋)
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

TD124

トリオ MT-65

トリオのシステムコンポーネントMT65の広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

MT65

シュアー V15 TypeII

菅野沖彦

スイングジャーナル 10月号(1968年9月発行)
「ベスト・セラー診断」より

 この製品については今さら説明することのほうが無駄と思えるほど、オーディオ・マニア間では有名な製品で、最高級カートリッジとして名実共に第一級の製品なのである。シュア一社はアメリカの音響機器メーカーで、もともとマイクロフォンの専門メーカーだった。カートリッジはステレオ時代になってから急に名声が上り、現在ではアメリカを代表する有力メーカーとして世界的に、その高性能と豊富な種類、大きな販売実績を誇っている。V15IIの特長について一言にしていえば、最も安定した動作をもった素直な音のカートリッジということになるだろう。私がこのカートリッジを初めて手にした時その宣伝文句が、トラッカビリティという新語をもって、レコード溝への追従能力の抜群さをうたっていたために、手持ちのほとんどのカートリッジがビリつきを生じるレコードをかけたのにもかかわらず、V15IIはまったく悠然と歪みなく再生してしまったことだ。〝トラッカビリティ〟という言葉はシュア一社のつくった新造語だが、カートリッジの針先がレコードの溝を完全になぞる能力といった意味である。カートリッジの本来の役目が、レコードの溝を針でなぞって、それによって起る振動を電気のエネルギーに変えるというものだから、その性能はまず、完全に溝の動きに追従しきれるかどうかということが条件であることは理解していただけるだろう。
 したがって、よくいわれるように、MM型とMC型とかいったことよりも、本当は針先の形状、大きさ、針のついた金属棒(カンチレバー)や、これを支えるダンパーと支点などの材質や組立て具合のほうが根本的な条件として大切なわけだ。シュアーV15IIはMM型つまり、ムービング・マグネット・タイプといって、小さな磁石を針と一緒に振動させて磁場の中に巻かれたコイルから電気を誘発するという方式のカートリッジだ。そして、溝を忠実になぞるというカートリッジの必要最小条件を満足させることによって、周波特性や音色の素直さといったむずかしい条件を含む諸問題を一挙に解決したのである。ちょっと表現がむずかしいが、それまでのカートリッジが周波数特性とか、弱音から強音までの幅や直線性、または左右の分離能力による臨場感の再現、音楽を生き生きと再現する豊かな音色といったような問題について多角的に、あちらこちらから検討され、手さぐりで改良されていたのに対し、V15IIは、そういったいくつもの条件を針の追従能力を徹底的に追求することによってのみ解決してしまったというような気がするのである。このためには情報分析をコンピューターによっておこなうなど、データの豊富な蓄積と積極的な実験精神、技術者が軽視しがちな経験の裏付けによる直感力といった人間の能力の結集によるところが大きい。
 V15IIは28、000円という高価格だから決して一般的とはいえない。一般的には同社のM44シリーズがベストセラーであろう。しかし、このカートリッジはマニア間ではたしかにベストセラーといってもよいほどの売行きを示している。経済的に余裕があれば、投資に見合った結果は必ず得られる製品だと思う。好みの強い個性的な音を求めると見当ちがいで、レコードに入っている音をかなり忠実に再生する信頼感あふれるカートリッジだと思う。かなり…と書いたように、これが決して終着点とは思えない。しかし、V15IIはカートリッジとしておさえなければならない大切なポイントを、他製品に先がけておさえた、つまり最もビリツキの少ない安定した製品だ。

トリオ KA-6000, KA-4000

岩崎千明

スイングジャーナル 7月号(1968年6月発行)
「新製品試聴記」より

 トリオが久しぶりに豪華型アンプの「新商品」を出した。KA6000とKA4000である。これは新製品の誤りではなく、あえて「新商品」といいたい。
 いわゆるサプリーム・シリーズという技術的に先端を行く超デラックスな製品の第一陣として、サプリーム1・マルチ・アンプが発表されたのが一昨年末である。その後もFMつきの大型アンプは発売されているが、いわゆるプリ・メイン総合アンプとしてはTW61、TW41のベストセラー・アンプのみで、これらのアンプは豪華型というより普及実用型といえよう。
 そしてまたサブリーム1はトリオの世界的なアンプの企画設計の優秀性を誇示する製品にちがいないが、これがメーカーにとって利益をもたらす商品として成功しているということは、現段階ではいえないのではなかろうか。しかしこの米国市場を驚嘆させた世界で最初のマルチ方式アンプは、日本のハイ・ファイ技術の水準を世界に知らせ、トリオの製品の高品質ぶりを轟かせた点で特筆すべきものであった。
 そしてまた、昨年末から待望されていたトリオの豪華型アンプが、今やっと覆面をとった。
 期待と栄誉をになって登場したのが、KA6000でありKA4000なのである。すでに関係者には、2か月ほど前に発表会があって、その折に初めてこの名実ともにデラックスなアンプにお眼にかかることができたのであった。
 そして、サブリーム1における磨きぬかれたトランジスタ技術を、この価格の新型アンプの中に見いだした時、このシリーズこそ、トリオが本格的なアンプとして、大いに売る気を出した「商品」としても筋金入りなのだな、と感じた。つまり魅力ある高性能であり、しかもいっそう魅力をそそられる〝お買徳〟価格なのである。その大きなポイントは、一般の音楽ファンに対しては内部的な性能に加えてデザインが大きなセーリングポイントとなりえよう。その点でもTWシリーズに対してこの新シリーズはすばらしい。サプリーム・シリーズのアンプの流れをくむデラックスなものだ。
 大型つまみを主調に、オリジナリティのはっきりしたアウト・ライは、いかにもトリオらしく取扱いやすさを意識した狙いも生きている独特の一列に並んだスイッチ群も、最近の世界的な傾向をいちはやく採り入れたものである。豪華製品としては他社製品よりひとまわり小さいこのデザインの中に秘めた高性能ぶりこそ注目すべきであろう。まずその出力は、180ワット(KA000)、または120ワット(KA4000)というおどろくべき大出力である。
 KA6000においては70/70ワット実効出力という、同級ではずばぬけたハイパワー。これは50%高価な製品をも上回るもので、しかもそのときのひずみのなさも特性上だけでなくジャズのアタックの再生に威力を発揮しよう。
 加えてもうひとつの大きなポイントは低出力MC型カートリッジを直結できるヘッド・アンプ内蔵という点である。残留雑音の点からどのメーカーも敬遠するこの魅力的な回路は、単独で1万円以上もするめんどうな部分であるが、これを内蔵させるという英断は、サプリームのバックグラウンドとしたトリオ以外で、この級では不可能といえそうだ。SN比が問題となるからである。
 実際このアンプを手元において試聴したとき、まったく静かな室内の空気に、スイッチが入っているのを確めたほどだったし、曲がはじまるや轟然とたとえたくなる強烈なアタックを楽々と再生、ミンガスのフルバンドのサウンドが今までになく力強く室内に満たされた。

オンキョー ST-880D

オンキョーのシステムコンポーネントST880Dの広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

ST880D

ナショナル SA-53

ナショナルのレシーバーSA53の広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

SA53

ナショナル FRONTIER740

ナショナルのシステムコンポーネントFRONTIER740の広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

Frontier740

トリオ KA-6000

トリオのプリメインアンプKA6000の広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

KA6000

パイオニア SX-30TA

パイオニアのレシーバーSX30TAの広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

SX30TA

ソニー TC-255, TC-355

ソニーのオープンリールデッキTC255、TC355の広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

TC355

パイオニア CS-5

パイオニアのスピーカーシステムCS5の広告
(スイングジャーナル 1968年7月号掲載)

CS5

トリオ MT-75

トリオのシステムコンポーネントMT75の広告
(スイングジャーナル 1968年6月号掲載)

MT75

サテン M-11/E

サテンのカートリッジM11/Eの広告
(スイングジャーナル 1968年6月号掲載)

M-11E

パイオニア T-5000

菅野沖彦

スイングジャーナル 6月号(1968年5月発行)
「新製品試聴記」より

 パイオニアT5000。4トラック・ステレオ・テープ・デッキとして同社が初めて開発した意欲作である。音響専門メーカーとしてパイオニアがこれで完全に全製品を網羅することになった。もともとスピーカーの専門メーカーとしてスタートした同社は今や音響機器の綜合メーカーとして名実共に横綱格。数年前からターンテーブルが好評で回転機器の分野でも信頼度を高めた。マニアが、パイオニアのテレコを期待したのも無理はない。
 そうした大方の期待の中で登場したのが、このデビュー作T5000であるが、さすがに数々の独創的なアイデア、機構をもったオリジナリティに溢れた製品だと思う。この製品の出現で、従来、とかく面倒くさがられたオーブン・リール式のテープ演奏が、ずっと楽になり手軽に扱えるようになったといってもよい。つまり、オープン・リール式のテープは、あのペラペラしたものを狭い間隔(キャプスタンとピンチローラーの間やヘッド・ハウジング)を通して引張り回し、片方のリールに巻き込むのにずい分厄介であったが、T5000では大巾に簡略化されている。その仕組みは、テープを両脇からはさんで駆動するキャプスタンとピンチローラーのうち、後者はパネル内に納っていて、テープをかけてスタートする際にハネ上ってはさむ仕掛になっている。だから、狭いギャップなどというものはなく実に扱い易い。そして、4トラックの往復再生と録音が自動逆転機構(手動も可)で安定した動作が得られるという至れり尽せりの機構を備えている。ピンチローラーが中央にあって駆動すると書いたが、その両側にそれぞれの方向専用の消去ヘッドと録再ヘッドが2個づつ、計4個配置されていて完全なシンメトリック・アレンジメントで住復作動のデッキとして大変よく練られた設計だ。自動逆転機構は今やこの種のテープデッキの必須条件といってもよく、このT5000では、テープの両端にセンシング・テープをはっておこなう。長いプログラムの録音など、テープをかけかえたり、ひっくりかえしたりしないで往復録音可能というのは大変便利で、この機構を持たないテレコを使っていた方にはその有がたさのほどが分るだろう。そして逆転の際の立上りスピードが実によく、実用上ほとんど瞬間的に規定スピードとなる。もしこの立上りが悪いと、その間まことに不快だし、録音ソースが連続していると穴があくことになるから、これは大切な問題なのである。ワン・モーターでよくここまでの性能をだしたものだ。
 再生操作面と録音のそれとをステップで処理した鮮やかさ、VU計内のパイロット・ランプが、再生時は白、録音時は赤に切り換るところなどはなかなかの冴えを感じさせる。左右リールの円形と巧みなバランスを見せるヘッド・ハウジングの扇形デザインも美しい。
 実際に使ってみると動作は大変スムースで確実である。欲をいうとプレイ、ストップ、そして早送りのレバーがややかたいこと、録音レベル調節ボリュームのツマミの左右の位置や形態にもう一工夫ほしい気もするが、その他の点では大変すばらしいテープ・デッキである。音響専門メーカーとして、音マニアの気質を知り尽した心増いばかりの商品。そして肝心の音は実に明解でシャープな切れ味である。他の同種のテレコと多数比較できなかったが、このクラスのものとして最高の音質だと思う。録音のいいテープだと、レコードからは得られない安定した豊かな肉づきをもった音が魅力的。レコードという便利で、すばらしい音のプログラム・ソースが、がっちりと網を張っているにもかかわらず、4トラックのレコーデッド・テープが着実に愛好層を獲得していることは何を物語っているか。本誌でも再三テープ音楽のすばらしさについては取り上げられている。
 昔はレコードと同じ程度のクォリティの得られるテープレコーダーは大変高額で手が出なかった。このテレコは5万円台だが、同価格のレコード・プレーアーと比較してそのクォリティを考えるとまるで夢のようである。

オルトフォン社長に聞く

菅野沖彦

スイングジャーナル 6月号(1968年5月発行)
「オルトフォン社長に聞く」より

 オルトフォンといえば世界一のカートリッジの代名詞。まず、その名を知らぬ人はいないだろう。しかし意外にそれ以上のことは詳しく知られていない。無理もない。オルトフォンというメーカーは北欧デンマークにあって、本来プロ機器専門のメーカーなのである。メッキ設備からプレス機、そしてカッティング・マシーンなど、レコードを製造するためのすべての機械を作っている特殊なメーカーである。そして、そのカートリッジとトーン・アームだけが、一般愛好家にも縁がある商品で、このところ高級ファンを中心に広く使われるようになった。オルトフォンという名前を聴いただけで、艶やかで重厚な、豊かに響く音がイメージ・アップするファンも少なくないだろう。オルト(ギリシャ語のパーフェクト、つまり完全)フォン(ラテン語の音)の名のごとく、それは現在、私たちが入手し得る最高のカートリッジである。
 このオルトフォンの社長ハ−ゲン・オルセン氏が初めて来日した。それを機会に早速オルセン氏に会見を求め、オルトフォンという企業について、それを代表するオルセン氏の、音についての考えなどを詳しく聴くことができた。私の質問に答えるオルセン氏は気品のある初老の紳士でおだやかな風貌の中にも鋭い感性と技術者らしい潔癖性をしのばせる。
 以下、氏との対話をもとに筆者の印象も加えて紹介するとしよう。
 まず、オルトフォンという会社、正しくはフォノフィルム・インダストリーとはいかなる会社か?
「1918年に二人のトーキー・エンジニア、ピーターセンとポールセンによって創設されました。そして、1943年ぐらいまで、トーキー関係の仕事を専門としてきたのですが、この年からレコード製造機器の製造を始めました。この頃はデンマークは第二次大戦中で大変困難な時代でしたが、1946年に初めてカッター・ヘッドを完成しました。これはヘッドからのフィードバックによってカッティングしている音をモニターできるという点で世界で初めてのヘッドでした。このカッター・ヘッドで切った原盤を試聴するについて、よいカートリッジがないことを知り、続いてカートリッジの製造に着手したわけです。もちろん、当時はモノーラル・カートリッジで、タイプA、タイプCと呼ばれるものです。このタイプCカートリッジは大変好評で世界中のレコード会社や放送局からの注文が殺到しました。1951年から数年間のことです。そしてステレオ時代になったのですが、初期のステレオには問題がありましたが、私共が最初のステレオ用のカッターヘッドを作ったのは1959年で、同時にステレオ用のムービング・コイル・カートリッジを作りました。これが、SPUシリーズです。私共の会社は全部手づくりで製品を仕上げていますので、そんなに数はできません(現在月産7000個)、同じ形のものでも年々性能の向上があります。」
 思ったより新しい会社だ。タイプA、タイプCのモノーラル・カートリッジも日本での使用者が少くない。そしてSPUシリーズというカートリッジは、オルトフォンの名を完全に浸透させた傑作で、ステレオ・カートリッジの名品である。その後、S15という新型を出したが、残念ながらあまり評判時よくなかった。これについてオルセン氏は
「S15は優れたカートリッジです。SPUより一段と進歩した製品です。しかし、一つだけ、このカートリッジについて誤解されていることがあると思うのです。それは、ヴァーティカル角が完全に15度のカッティング・ヘッドで切られたレコードだけを考えて設計されている点です。実際にアメリカや日本ではカッティング角が15度のものばかりではなく、そうしたことでこのカートリッジが受け入れられなかったかもしれません。」
 ちょっと本誌の読者にはむずかしいかもしれないが、S15も悪くはないということだ。そして、1年後にその不評の巻き返しを計るかのごとくSL15が発売されたのであった。このSL15は期待にそむかぬ優秀な製品で好評を得た。
「SL15はS15より設計基準を広げ、広い適応性を計りました。同時にSPU、S15の開発時にはできなかったことをSL15では実現しています。SL15は今までのオルトフォンの中での最高のカートリッジです。」
 自信満々のオルセン氏は説得力をもって語る。
 オルセン氏がこの会見を通じてもっとも強調したことは、音響機器についてのセールス・トーク、つまり宣伝文句のナンセンスについてであった。オルトフォンのカートリッジやアームについて大きな宣伝文句をもって表現されることは好まないというのである。オルセン氏の語ることはすべて技術的な裏付けのあることであり誇大な表現は一切しないということをくり返しくり返し力説しながらカートリッジの針圧の軽量化の必要性と、一方では過度になる危険性、針先のコンプライアンスについての最適値についてなど、こまかい技術的な話しが続いた。
 ところで、カートリッジの最終チェックはどういう方法をとるか。つまり、測定できるファクターはすべて厳格に測定することはもちろん、私の聴きたかったのは音を決めるにあたって耳による聴感をどう扱っているかの問題だった。
「ご質問の聴感テストについてですが、実は製品の開発、チェックを問わず、これをたいへん重視しています。新しい機構や仕様を採用する時、新製品の開発にあたっては、たくさんの耳のよい人たちにモニターしてもらって意見をききます。そして、私たちの社内での試聴を最終決定にします。製品の検査としては100個に1個の抜きとりで最終測定と試聴をします。私の経験では、100個に1個の割に検査していけばまず問題はないと思うのです。なぜなら、各プロセスにおいて厳重な検査がされ、組立てはすべて手で慎重におこなわれるからです。」
 聴感テストにはどういうレコードを使うか? これは大変重要な問題である。つまり、聴感によるテストには、聴感と科学的な分析とを関連づけて耳を測定器のように利用する方法と、もう一つ完全に感覚器として美意識に結びつけて評価するものとがあるからだ。後者の場合は、とくにどんなレコードを演奏するかということは非常に重要なことだといわねばなるまい。
「試聴に使うレコードは90%以上ドイツ・グラモフォンのレコードです。」
 しめた! 実際私はそう思った。実は飛び上らんばかりに嬉しかった。ドイツ・グラモフォンのレコードはクラシックが中心だから本誌の読者にはあまり縁のない話と思われるかもしれないが、オルトフォンのカートリッジほどグラモフォンのレコードを、すばらしく再現するものはない。これは私がつね日頃感じていたことで、私なりの空想で、オルトフォンのカートリッジとグラモフォンのレコードの音溝の形状とは非常によくあい、相互関係的なものがあるのではないかと、思っていたのである。というよりも、グラモフォンのレコードはオルトフォン以外のカートリッジでかけた場合、音色に異質なものが加わるというような事だけではなく、時に歪っぼい不安定な再生音になることすらあるのだ。そして、逆は真なりとはいかないところが不思義で、オルトフォンのカートリッジはいかなるレコードをかけても不安定になることがない。これは、オルセン氏の次の説明が理解の糸口となるように思われる。
「商品としての機械は誰がどう使おうと常に安定した動作が得られるものでなければなりません。そのためには極度に軽い針圧や、高いコンプライアンスは好ましくないと思います。また、針先の形状は非常に重要です。特に最近のダ円針については問題があります。私共はカッターを作っていますので、レコードの溝については徹底的に解析しています。一口にダ円いっても正確なダ円針はそうありません。オルトフォンの針先はそうした点で完全に磨かれ、検査されています。」
 これをまとめて私なりに解釈するとこういうことになる。聴感によるテストのうち、感覚的な美的判断という点では、オルトフォンのカートリッジは、あの重厚な豊かなグラモフォン・レコードの響きへの共感をもってなされる。つまり、ジャズ・ファンにはやや縁遠いが、それはベートーヴェンやブラームスの、そしてベルリン・フィルの伝統的な重厚な響きである。そして、カッティング・マシーンのメーカー、オルトフォンのレコードへの徹底的な理解の成果は、オルトフォン・カートリッジの機器としての万能性、安定性として現われている。この結論は、次のような少々意地の悪い質問によって導きだしたものである。〝オルセンさん、もしAという人がオルトフォン・カートリッジを買って、カラヤン指揮のベルリン・フィルによるベートーヴェンの交響曲をグラモフォン・レコードで聴き、すばらしいカートリッジだといったとします。そして、Bという人はコロムビア盤のマイルス・デヴィスを聴いて不満をもらしたとします。あなたはこれをどう解釈されますか?〟

ティアック A-2050

ティアックのオープンリールデッキA2050の広告
(スイングジャーナル 1968年6月号掲載)

A2050

ソニー Hi-Fidelity

ソニーのオープンリールテープHi-Fidelityの広告
(スイングジャーナル 1968年6月号掲載)

Sony-Tape

パイオニア PL-41C

パイオニアのアナログプレーヤーPL41Cの広告
(スイングジャーナル 1968年6月号掲載)

PL41