井上卓也
ステレオサウンド 77号(1985年12月発行)
特集・「ジャンル別価格別ベストバイ・362選コンポーネント」より
手軽に適度なハイファイサウンドを楽しむプログラムソースとして、かなり魅力的な存在であるが、基本的に、いわゆるオシキセのプログラムソースであるために、送り出し側の番組制作の基本方針が直接的にFM放送の魅力にかかわりあいをもつのが、FMチューナーの特殊性であろう。
かつては、FM民放の存在そのものが、ややワンパターンな傾向の否めないNHK・FMに対して、新鮮な魅力であり、これが、FM放送を支えてきたわけだが、ここ数年釆、NHK・FMが、ヨーロッパの放送局との提携番組で、その内容がとみに充実してきたことに対比し、FM民放の番組内容に、オリジナルな制作が減り、単にディスク再生番組的な面が強調されている。このことが、FM放送に対しての魅力を低下させ、AVにその基盤をさらわれてしまったのは否めない事実である。
個人的にも、FMチューナーの電源を入れる確率が非常に低下しているが、NHK・FMの生送り出しは、一聴に値する素晴らしいFMの世界である。
●10万円未満の価格帯
ケンウッドの経験と実力は群を抜いているが、シルバーパネル採用のヤマハT2000Wは、音的な魅力を含み一服の清涼剤的存在。
●10万円以上の価格帯
KT3030の実力は文句なしにピカ一だ。事実上のFMチューナーの王者である。
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