井上卓也
ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤー賞 第1回」より
SXシリーズのスピーカーシステムは、それまで海外製品の独壇場であったソフトドーム型ユニットを完全に使いこなした製品、SX3の発売以来、すでに10年以上のロングセラーを誇る、国内製品としては例外的ともいえるシリーズ製品である。
今回のSX10SPIRITは、ソフトドーム型独特のしなやかでアコースティックな魅力を活かしながら、永年にわたり蓄積された基本技術とノウハウをベースに最新の技術を融合して、現代の多様化したプログラムソースに対応できる最新のスピーカーシステムとして完成された点に注目したい。
SXシリーズの伝統ともいえる西独クルトミューラー社と共同開発のウーファーコーンは新しいノンプレス型であり、コニカルドーム採用はSX7を受け継ぐものだ。ソフトドーム型ユニットは、素材、製法を根本的に見直してクォリティアップをした新設計のもので、トゥイーターのドーム基材の羽二重は、従来にはなかった材料選択である。
大変に仕上げの美しい弦楽器を思わせるエンクロージュアは、表面桐材仕上げの5層構造で、響きを重視した設計で、ネットワークも結線にカシメ方式を使うなど、まさしく、SXシリーズの伝統と最新技術の集大成といえる充実した内容だ。ソフトドーム型ならではの聴感上のSN比が優れた特徴を活かしたナチュラルな音場型の拡がりと表現力の豊かさは、とかく、鋭角的な音となりやすい現代のスピーカーシステムのなかにあって、落着いてディスクが楽しめる数少ない製品である。
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