井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
パイオニアからパックスに移管されたエクスクルーシヴ・ブランドに初めて本格派の重量級プレーヤーシステムP3が登場することになった。価格的制約や妥協を一切排除し技術開発力を結集して商品化するというエクスクルーシヴの思想は、このモデルにもはっきりと現われている。異方性磁石採用の10kg・cmのカッターレースに匹敵する強大なトルクをもつデュアルローター構造のリニアトルク・クォーツロックDDフォノモーターEM03は、全周積分型の回転数検出周波数を従来より3倍高くし正確かつ応答性の早いサーボ過渡特性を実現し、外乱に強く、0・003%WRMS以下の低回転ムラとし、回転系の軸受側圧と回転部分の重心を下げるため軸受構造を天地逆転させたSTABLE・HANGING・ROTER構造としている。
トーンアームEA03は、低等価質量とトラッカビリティ、低域大振幅時の混変調歪を解決する目的で軸受上部に着脱自在レベル可変型のオイル制動をかけ、フロントのパイプは軸受に近接した位置にもコネクターのある二重構造で、P3専用のカーボンファイバーストレートパイプと汎用シェル用S字型パイプの2種類を選択可能だ。
構造面ではモーターとアームは硫酸バリュウム積層10mm厚のアルミ板に一体懸架され総重量は12kgで、全体はインシュレーターでキャビネットから完全フロート状態にしてある。キャビネットインシュレーターは、62mm直径のスプリングとピストン構造のオイルダンプ、さらに特殊ゴムの3重構造で25kgの全重量を支え、固有振動周波数は5Hz以下である。
機能はマニュアル専用型だがプレーヤーシステムの基本を忠実に守り重量で振動を吸収させようとする開発思想は、音質面にダイレクトに現われ、情報量が格段に大きく緻密で引締まり、充分な低域の安定度をもつため、レコードにいかに多くの音が入っているかが実感として体験できるほどのパフォーマンスを示した。
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