オーディオテクニカ AT-15E

菅野沖彦

スイングジャーナル 3月号(1975年2月発行)
「ベスト・バイ・コンポーネントとステレオ・システム紹介」より

 AT15Eはオーディオ・テクニカが同社のオリジナルであるVM型の発電機構を持ったカートリッジとして何回か改良を経て完成した最新製品である。この後に普及版の、AT14シリーズを発売しているが、同じ設計思想にもとずくものだ。AT15Eのよさは、VM型の同社のカートリッジに共通のきわめて明解な音像再現に加えて、豊かな陰影やニュアンスの再現力が得られたところにあると思う。VM型の振動発電系というのは.45/45方式の現在の2チャンネル・ステレオ・ディスクの溝の構造と同系のもので、互いに45度ずつ傾いた左右の壁の振動を、ちょうど、その振動を刻み込んだカッティング・ヘッドの左右のドライビング・コイルのポジションのようにV字型に2つ独立したマグネットが設けられて変換するというものだ。その構造が、いかに音質に結びついているかを明確に断言する自信はないが、今まで聴いてきた同社のVM型に共通した音質傾向が、先に述べたように、明解な音像再現とクリアーなセパレーションにあったといえる。曖昧さのないソリッドな音の再現は、時にドライで鋭角な印象を与えられ、音楽のニュアンスによっては不満を感じる場合があった。AT15Eでは、それが大きく変化して、適度な味わいと音のタッチの快さを感じるものになったのである。カートリッジは変換器として、ディスクの溝に刻まれた信号を忠実にとり出すことが、その大きな役目であるから、こういう音のカートリッジ……というような存在や、表現は本来おかしいというのは正論である。カートリッジが音を持つことは間違いだという理屈は正しいと思う。しかし、それはあくまで理屈の上であって.現実は大きく違う。全てのカートリッジは固有の音をもっている。カートリッジだけではない。全ての機械系をもつ変換器は固有の音を持っているのが現実である。そして、そこに楽しさや、喜びを感じることは間違いだといってみてもはじまらない。いい音、快い音は、まきに好ましいのであって、感覚に正邪はないのである。私はよく自分の部屋でカートリッジをテストするが、自分の作ったレコードでは、よくそのマスター・テープと聴きくらべることがある。変換器として、マスター・テープに近い音を良しとするのは当然だが、そういう比較は遠い昔にやめてしまった。つまり、近いといえば全てのカートリッジはマスター・テープに近いし.遠いといえば全て遠いのである。そして、その差の部分は千差万別で、そこにカートリッジの音として固有の音楽的魅力の有無が存在することのほうに大きな楽しみを見出してしまっている。

高品性かつ豊かな感性を持つジャズ・サウンドを再現
 そんなわけで、このAT15Eに対する私の評価も、かなり柔軟な態度で音楽を聴いた上でのものであり、このところそうした味わいを聞かせてくれるカートリッジが国産でポツポツ出始めてきたことに喜びを感じているのである。ところで.このAT15Eを使って一式コンポーネントを組み合わせろという編集部の注文だが、小さなカートリッジ一個から、システムに発展させるというのは、少々こじつけがましいこともあり、本来、カートリッジは最後に決めて、なお、その上でも、いくつかのものを使い分けるという性格からすれば、この注文は少々無理があろうというものである。そこで、AT15Eの価格や実質性能、感覚的な満足度にバランスした装置を漠然と考えてみると、やはりかなり高級なシステムになるようだ。決して10〜20万の普及システムはイメージ・アップされてこない。AT15Eというのはそういうクラスのカートリッジなのだろうと改めて思った。ここに作ったシステムは、それでも、ギリギリ節約して作ったつもりのものである。プレイヤー・システムとしてはAT15Eのよさを発揮させるにはアームが重要。多くの普及、中級、時には高級システムまでが、トーンアームに問題があって、カートリッジの性能を充分に発揮しきれないのである。ひどい場合はトレース不能、ビリつきを生じて、一般にはカートリッジのせいにされている。
 デンオンDP3700Fはこの点で安心して使える。シンプルだが精度のいいアームは高感度でしかも神経質ではない。私の好きなアームの一つだ。モーターはいうまでもなくDDの有名なもの。話が前後するが、AT15Eのシェルはあまりいただけない。形は気取っているし、作りもよいが、音は最高とはいえない。他のシェルに変えて、よりよい結果が得られた経験がある。シェルに対するカートリッジ本体の食いつきもよくないし、ダンピングが不充分だ。
 アンプは同じデンオンのPMA700Zを使う。デンオンのプリメイン・アンプとしては既に定評のあったPMA700の改良でMKII的新製品である。音の透明度と実感がより確かな感触になった。よく練られた回路は高度な技術に支えられた音の品位のよさを感じさもる。味わいも豊かで、音楽の生命感がみなぎる。
 スピーカーはダイヤトーンの新製品DS28Bだ。去年の暮に発売になったばかりだが、すでにかなりの台数がファンの手許に渡っているという。ダイヤトーンのスピーカー技術が、商品としてまとめの技術とよく結びついた完成度の高いもので、とにかくよく鳴る。AT15E、

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