セレッション Ditton 66

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

 柔らかく暖かい、適度に重厚で渋い気品のある上質の肌ざわりが素晴らしい。今回用意したレコードの中でも再生の難しいブラームス(P協)でも、いかにも良いホールでよく響き溶け合う斉奏(トゥッティ)の音のバランスも厚みも雰囲気も、これほどみごとに聴かせたスピーカーは今回の30機種中の第一位(ベストワン)だ。ベートーヴェンのセプテットでは、たとえばクラリネットに明らかに生きた人間の暖かく湿った息が吹き込まれるのが聴きとれる、というよりは演奏者たちの弾みのついた気持までがこちらに伝わってくるようだ。F=ディスカウのシューマンでも、声の裏にかすかに尾を引いてゆくホールトーンの微妙な色あいさえ聴きとれ、歌い手のエクスプレッション、というよりもエモーションが伝わってくる。バルバラのシャンソンでも、このレコードのしっとりした雰囲気(プレゼンス)をここまで聴かせたスピーカーはほかにない。こうした柔らかさを持ちながら〝SIDE BY SIDE〟でのベーゼンドルファーの重厚な艶や高域のタッチも、決してふやけずに出てくるし、何よりも奏者のスウィンギングな心持ちが再現されて聴き手を楽しい気持に誘う。シェフィールドのパーカッションも、カートリッジを4000DIIIにすると、鮮烈さこそないが決して力の弱くない、しかしメカニックでない人間の作り出す音楽がきこえてくる。床にじかに、背面を壁に近づけ気味に、左右に広く拡げる置き方がよかった。

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