瀬川冬樹
ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より
ずいぶん以前から聴き馴染んだスピーカーだったが、今回の製品では外装デザインが変り、音質も少しだが変っていると聴きとれた。何よりもまず、暖かい音、穏やかな音、心温まるようなしみじみとした鳴り方が特色だ。言いかえればこういう音は、いわゆる高忠実度スピーカーの、透徹に音を分析してゆく完璧さとは逆のゆき方。イギリスには、ハイ・フィデリティに対応するグッドリプロダクションという言葉があるがまさにそのものを思わせる。実に快い安心感に身をまかせておける。何とも豊かな気持になってゆき、ハイがどうのレインジがどうのという聴き方を一切放棄したところからでなくてはこの鳴り方の魅力は説明しにくい。ヨーロッパには古くから良質の電気蓄音機の作り方の伝統があり、音楽のバランスを決してくずしたりすることなく、しかもプログラムの欠点を露わにしたり耳を刺激したりするような鋭い音を注意深くとり去って、良識ある姿勢を保ったこういう鳴り方が、ハイファイ・スピーカーの──たとえばKEF♯104の閃くような鳴り方に対して一方に厳として存在している。このスピーカーは、床の上に直接置いた方がバランスがいい。
周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆☆
総合評価:☆☆☆☆
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