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セレッション Ditton 25

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 セレッション・ディットン25は、トールボーイ・スタイルのフロアー型システムで、このクラスの外国製の中では、かなりの大型といえる。ドロンコーン付で、4ユニットによる3ウェイ構成だが、セレッションらしい肉付きのある音だ。ウーファーの品位が高く、フロアー型にありがちな音源の低さがないし各ユニットの配置も近い。

セレッション Ditton 66, Ditton 25

瀬川冬樹

続コンポーネントステレオのすすめ(ステレオサウンド別冊・1979年秋発行)
「第21項・イギリス・セレッションのディットン ちょっと古めかしい、だが独特の暖かさに満ちた音の魅力」より

 前項までのさまざまな「正確(アキュレイト)」な再生のためのスピーカーの鳴らす音を、仮に写真のような正確さ、だとすれば、それに対する写実主義ないしは初期の印象主義の絵のように、現実をそっくりそのまま再現する音に対して、そこに創作者の美意識という濾過器(フィルター)を通して美しく、整えて聴かせる音、を目ざしたスピーカーがある。それを私は2項で、アキュレイトサウンドに対する「クリエイティヴサウンド」と仮に名づけた。創作(クリエイト)するといってもそれは事実を歪めるのでなく、どこまでもナマの音楽の持っている本質に即しながら、それをいっそう快く、いっそう美しく鳴らすという意味である。
 楽器のナマの音が常に美しく快いとは限らない。また、それを録音し再生するプロセスでも、ちょっとしたかすかな雑音、レコードに避けることのできないホコリやキズ、など、それをどこまでも忠実に正確に再生することは、ときとして聴き手の神経をいら立たせる。したがって、音や音楽の鑑賞のためには、どこまでも正確な音の再現を目ざすよりも、美しく描かれた写実絵画、あるいは薄い紗幕をかけてアラをかくして美しく仕上げた写真、のように、音楽の美しい画を抽出して、聴き手に快い気分を与えるほうがよいのではないか──。
 こういう考えは、実は英国人の発想で、彼らはそれをアキュレイトサウンドに対してコンフォタブルサウンド、またはハイフィデリティ・リプロダクション(忠実な音の再生)に対して、グッド・リプロダクション(快い、良い音の再生)というふうに呼ぶ。
          ※
 そういう考え方をはっきりと打ち出したイギリス人の作るスピーカーの中でも、セレッションという老舗のメーカーの、〝ディットン〟と名づけられたシリーズ、中でも66と25という、ややタテ長のいわゆるトールボーイ型(背高のっぽの意味)のスピーカーは、同じイギリスのスピーカーでも、15項のKEF105などと比較すると、KEFが隅々までピンとのよく合った写真のように、クールな響きを聴かせるのに対して、ディットンは暖色を基調にして美しく描かれた写実画、という印象で音を聴かせる。厳密な意味での正確さとは違うが、しかし、この暖かさに満ちた音の魅力にはふしぎな説得力がある。ことに声の再生の暖かさは格別で、オペラや声楽はもむろん、ポピュラーから歌謡曲に至るまで声の楽しさが満喫できる。別に音楽の枠を限定することはない。家庭で音楽を日常楽しむのには、こういう音のほうがほんとうではないかとさえ、思わせる。
 こまかいことをいえば、同じディットンでも、66よりも25のほうがいっそう、そうした色あいの濃い音がする。創られた音。しかし、ある日たしかにそういう音を聴いたことがあるような懐かしい印象。その意味でやや古めかしいといえるものの、こういう音の世界もまた、スピーカーの鳴らすひとつの魅力にちがいない。

スピーカーシステム:セレッション Ditton66 ¥198,000×2
プリメインアンプ:トリオ KA-9900 ¥200,000
チューナー:トリオ KT-9900 ¥200,000
プレーヤーシステム:トリオ KP-7700 ¥80.000
カートリッジ:エレクトロアクースティック STS455E ¥29,900
計¥905,900

スピーカーシステム:セレッション Ditton25 ¥128,000×2
プリメインアンプ:ラックス LX38 ¥198,000
プレーヤーシステム:ラックス PD121 ¥135.000
プレーヤーシステム:オーディオクラフト AC-3000MC ¥65.000
カートリッジ:ゴールドリング G900SE Mark2 ¥38,000
計¥692,000

セレッション Ditton 25

菅野沖彦

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より

 同社の代表的製品で、独特な豊かさと明快さを兼ね備えている。そういう意味ではいかにも伝統ある英国製らしいが、うまく鳴らさないかぎりバランスの崩れた音になりやすい危険性大。

セレッション Ditton 25

瀬川冬樹

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 独特のトールボーイのプロポーション。本質的には特性を重視したワイドレンジの設計なのに、鳴ってくる音には、良質の電蓄に磨きをかけたような穏やかな響きが聴きとれる。

セレッション Ditton 25

井上卓也

ステレオサウンド 35号(1975年6月発行)
特集・「’75ベストバイ・コンポーネント」より

 さすがにDitton15の兄貴分だけあって、トータルな性格は、よく似てはいるが、充分にあるスケール感は、2ランクばかり上といっても過言ではあるまい。

セレッション Ditton 25

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 ずいぶん以前から聴き馴染んだスピーカーだったが、今回の製品では外装デザインが変り、音質も少しだが変っていると聴きとれた。何よりもまず、暖かい音、穏やかな音、心温まるようなしみじみとした鳴り方が特色だ。言いかえればこういう音は、いわゆる高忠実度スピーカーの、透徹に音を分析してゆく完璧さとは逆のゆき方。イギリスには、ハイ・フィデリティに対応するグッドリプロダクションという言葉があるがまさにそのものを思わせる。実に快い安心感に身をまかせておける。何とも豊かな気持になってゆき、ハイがどうのレインジがどうのという聴き方を一切放棄したところからでなくてはこの鳴り方の魅力は説明しにくい。ヨーロッパには古くから良質の電気蓄音機の作り方の伝統があり、音楽のバランスを決してくずしたりすることなく、しかもプログラムの欠点を露わにしたり耳を刺激したりするような鋭い音を注意深くとり去って、良識ある姿勢を保ったこういう鳴り方が、ハイファイ・スピーカーの──たとえばKEF♯104の閃くような鳴り方に対して一方に厳として存在している。このスピーカーは、床の上に直接置いた方がバランスがいい。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆☆

セレッション Ditton 15, Ditton 25, ゴールドリング 800 Super E

セレッションのスピーカーシステムDitton 15、Ditton 25、ゴールドリングのカートリッジ800 Super Eの広告(輸入元:成川商会)
(ステレオ 1972年11月号掲載)

Celestion