グレース F-21

瀬川冬樹

ステレオサウンド 12号(1969年9月発行)
特集・「最新カートリッジ40機種のブラインド試聴」より

 おそろしく元気のいい音を持ったカートリッジで、低域に独特の量感があるし、中高域もかなり強調されていて、明るい派手な音を聴かせるが、音のキメが相当荒いことや、個性の強いキャラクターが全体のバランスをわずかながらくずしてしまっているという点で、今回テストした中では異色的な製品だった。逆カマボコ型に近い音質なので、華やかだが硬質のドライなタッチになり、ロスアンヘレスの声が別人のようにハスキーに聴こえるのはおもしろい。レクィエムもすばらしく威勢がいいし、モダンジャズも圧倒的迫力だ。スクラッチノイズまでが大きく勇ましい。音ぜんたいが、いかにも若さにまかせて走りまわっているような、ある種の逞しさに溢れている。

オーケストラ:☆☆★
ピアノ:☆☆★
弦楽器:☆☆★
声楽:☆☆★
コーラス:☆☆★
ジャズ:☆☆★
ムード:☆☆☆★
打楽器:☆☆★
総合評価:55
コストパフォーマンス:65

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