ビクター HP-660

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 中〜高域に一種の華やぎの感じられる音色だが、バランス的には、どのプログラムソースに対してもどこかおかしいというようなことはもなく、周波数レインジも十分とはいえないまでも高・低領域によく伸びている。耐入力は十分あって、かなり音量を上げても音がくずれるようなことがなかった。ただ、この価格ということを頭に置かなくてはいけないのだろうが、どこか品位を欠く音色で、楽器のもっている音色の格調の高さが出にくいのは致し方のないところだろうか。ステレオのひろがりと定位はふつうだが、どちらかといえば「耳もとで鳴っている」感じが強く、音が耳もとを離れて空間に漂うようには鳴ってくれない。もうひとつ、イヤパッドの形が耳たぶをややおさえすぎる感じがあって長時間かけ続けていると疲労感の増す傾向のあることも、音を耳もとに意識させる一因かもしれない。デザイン的には、ヘッドバンドを含めて総体に大げさでない作り方は好ましい。

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