菅野沖彦
ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より
「ドゥムキー」のヴァイオリンは硬質透明で華麗な音色。もう少ししなやかで柔軟な質感が欲しいと感じた。ピアノは輝きのある自然な質感で、プレスラーのタッチがよく生きていた。合奏の表現はよく抑揚が生きて弾みもよい。ベートーヴェンの「エロイカ」も明るく透明な音色で、やや硬質なウィーン・フィル。細部の明瞭度は実に鮮やかに浮彫りになり、分解能が高いことが音に現われている。陰や濁りは全くないので、若干ニュアンスの微妙さやムードに欠ける音だ。隅々にまで照明が当りすぎるという感じの音なのである。サン=サーンスの「オラトリオ」も同じ傾向で、こうしたヨーロッパ特有の雰囲気を持ったソノリティ(教会での録音)には見透しがよすぎて、やや違和感がある。ヘレン・メリルの声は充実していて生き生きとした生命感が感じられ、ロン・カーターの躍動感のあるベースの力と弾みも見事。ジャズの方が、明らかにこのアンプに同質の音だと感じた。
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