サウンドオーガナイゼーション Z021

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「アナログプレーヤー徹底試聴 アナログ再生を楽しむプレーヤー4機種を自在に使いこなす」より

 細いスチールパイプで組み上げられている構造上、音圧の影響は受けにくいだろう。しかし、けして皆無ではあり得ない。叩けば結構金属的な「鳴き」がある(当然ではあるが)。ひとつ不思議なのは、肝心のプレーヤーを直接置くトップパネルの材質で、とても薄く、とても軽いのだ。これはリンの主張で、LP12はとにかく軽い台に設置したほうがベターだという。なぜだろう。これまでの常識とは逆行する理論だ。堅くて重い物質がもつ、払拭し難い鋭い共振を嫌ってのことだろうか。真偽のほどは不明であり、謎として残った。たとえば異種金属をあわせたときにダンプ効果があるように、Qの異なった素材をうまく組み合わせ、しかもそれぞれが大きな質量を持たなければ、共振のエネルギー自体も弱く、コントローラブルになるのかもしれない。
 その音だが、たしかに音の輪郭にメリハリはつくし、中高域の分解能が向上したかのように聴こえるときもある。音楽的な抑揚もよくついて、弾みのある表情豊かな響きにはなる。他に、変化として、まず低域はやや軽くなる傾向をみせ、総じて響きの密度がわずかに「疎」になるような印象。弦の響きの表面に、わずかに金属的な響きがつく。音場のスケールがやや小さくなる。聴感上、音の反応がシャープになり、ハイエンドの伸びが増したようになる。サーフェイスノイズのピッチが上がる。強い響きに強引さがなくなる反面、求心力がやや後退する。冷たい響きの温度感が、やや上昇する。低域のリズム楽器の輪郭はつくが、実体感、押し出しがやや希薄化する。音像はふやけず、フォーカシングはシャープ。しかし、神経質な感じは全くない。以上のような傾向が、ミクロ的ではあるが聴取し得た。

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