ゴールドムンド Mimesis 2

早瀬文雄

ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 ゴールドムンド社は、1975年頃、ミッシェル・レバションによって設立され、超弩級アナログプレーヤー、リファレンスを筆頭にスタジオ、スタジエッタなどのアナログプレーヤーや、T5型リニアトラッキング方式トーンアームを世に送り出していた。かつてはフランスに本拠を置いていたが、高い精度を維持すべく、精密加工技術のアベレージレベルや技術者の質が高いスイスのジュネーブに、5年ほど前に移転している。また、フランス人であるレバション自身もスイス国籍になっているという。
 同社は、スイスにおいて、現地のアンプメーカーのスイスフィジックス、およびテープレコーダーメーカーとして歴史を誇るステラボックス社を吸収合併させ、本格的にアンプメーカーとしても活動を開始した。
 今回発表されたコントロールアンプ、ミメイシス2はすっきりとした薄型デザインで、比較的奥行きの深いプロポーションをもつ。細部の仕上げはさすがにスイス製だけあって精密機器的な雰囲気が濃厚だ。
 機能は、入力5系統、ステレオモード切替、テープコピー、アブソリュートフェイズ切替を装備。また、リアパネルには電源のフェイズを反転できるスイッチがあり、動作中に切り替えを行なっても、全くノイズレスで音のチェックが可能だった。
 スイッチの感触はすこぶるよい。回路の詳細は不明だが、内部は整然として美しく、高級パーツが厳選して使用されている印象だ。5系統の入力間の音の差は少なく、むしろその微妙な差を使いこなしの一部として楽しめた。回路設計はスイスフィジックスのエンジニア、デル・ノビレが担当している。ミッシェル・レバション自身はエンジニアではなく、マーク・レビンソン同様、優秀なエンジニアをその得意分野で使い分けるコンダクター的な存在であり、音決めを自らのポリシーに基づき行なっている。ちなみに、別売のイコライザーアンプ(アナログプレーヤーのリファレンス組込み用)は、かのジョン・カールの設計である。
 基本的には微粒子型のさらっとした質感をもち、端正で上品な柔らかさを感じる。音像の輪郭をミクロ的に見ると、角が穏やかに丸く硬質感をともなわない。その結果、繊細に切れこむ感じがありながら、刺すような刺激感は全くない。
 無垢な痛々しささえ感じる慎ましい甘さ、清潔感のある色香、艶が響きにひっそりと浸透しているのがわかる。これは、コントロールアンプ遍歴を重ねた、錯綜した願望をも満たす情緒的な響きだ。ライバル、マークレビンソンNo.26Lは音の輪郭線の張りがもうすこし強く硬質だが、線そのものは、もっと細く男性的な潔さがある。チェロ・アンコールは、さらにウェットな色香が強い。

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