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ゴールドムンド Mimesis 2a

井上卓也

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 アンプリファイアー篇」より

 フランスの超弩級アナログターンテーブルで知られたゴールドムンドが、最初にエレクトロニクス系の製品として手がけた超薄型のステレオプリアンプが前作のミメイシス2である。デザインや精緻な仕上げは同じグループに属する超小型2トラック・オープンリールデッキの76cm対応の SM7や、その4チャンネル版SQ7のイメージを彷彿させる。本機は昨年に改良が加えられ2aに発展したが、基本的にはライン入力専用機である点は変らず、フォノイコライザーはPH01からPH2にモデルナンバーが変更され、本機と同じ筐体内に納められるタイプとなった。それとともに、ミメイシス10プリアンプの内容に似たリモートコントロールユニットは中止されたようだ。
 現在の高級プリアンプの主流は信号系のバランスライン化であるが、本機は頑なにアンバランス型信号伝送を固持する設計方針であり、この店が大きな特徴である。ここでは、「サインウェーブの伝送アンプではなく、音楽信号という非対称・非同期性の信号を増幅して音楽を楽しむためのアンプとして完成する」という本来の意味でのオーディオエンジニアリングが行なわれている。その意味ではゴールドムンドのアンプは文字どおり、世界のトップに位置付けできる高度な次元にあることは、疑うことのできない厳粛な事実である。
 とくに、エレクトロニクスとメカニズムの相乗効果を積極的に活かした手法は合理的であり、非常に効果的である。これは一般的な想像の域をはるかに超えたものと知るべきだ。ミメイシス2aとなり、それまでのやや線が硬く音の隈どりがくっきりとした音から、音の粒状性が一段と細かく磨かれ、音の細部をクリアーに描き出しながら適度に力強くエネルギー感を伴ったナチュラルな音に発展したことは、素晴らしい成果といえよう。

ゴールドムンド Mimesis 2a + Mimesis 9.2(JBL S9500との組合せ)

井上卓也

ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」(1993年3月発行)
「ハイエンドアンプでProject K2 S9500を堪能する」より

 S9500のヨーロッパ系アンプに対する適応性をチェックするとともに、彫りが深く、力強く、輪郭のクッキリとした方向の再現性をも調べるためのアンプ選択である。
 各アンプの設置場所は、本誌試聴室の標準位置、結線関係はすべてアンバランス型ケーブルを使っている。
 信号を加えると、小ぢんまりとしたごく普通の音が聴かれる。数分間も経過すれば、次第に水準を超えたある種のまとまりのある音の姿、形が顔を見せ始めるが、もともとこのアンプは寝起きが悪いタイプなので、徐々にではあるが、あまり右往左往せずに、本来あるべきであろう音の方向にウォームアップしてくるのを待つのは、それなりの忍耐力のいるところだ。
 ほぼ30分間も待てば、音の精度感が高く、安定感があり、充分に磨き込まれた本格派の音を印象づける。ゴールドムンドらしい特徴の音が出はじめる。
 しかしまだ、全体に音のコントラストが弱く、やや光沢を抑えたスッキリとした爽やかな音の範囲を超えず、音場感的にも奥行き方向のパースペクティヴは、やや不足傾向である。
 ゴールドムンドのパワーアンプのように、AC電源側のレギュレーションに依存する電源設計では、供給電源側の状態が直接的に音を左右するため、電源事情は、常に意識していなければならぬ。
 今回の試聴では、各アンプは可能な限り電源スイッチをONとして、信号を加えないでプリヒートさせているためへ、もともとの部屋の電源容量の制約、AC電源自体の歪の増加、さらにTV、FMなどの強力な電波が電源に乗っていること、などが相乗効果的に働き、この種の外乱に弱いアンプでは、直接結果としての音質を左右する。
 この意味では、今回の電源事情はゴールドムンドのペアにとってはかなりのデメリットになっているに違いない。
 ウォームアップはゆるやかに進むが、安定した内容の変化で、ほぼ2時間近くになればやっと安定したかな、というイメージの音となる。
 帯域レスポンスはナチュラルに伸びた、過不足感のないものではあるが、中域はやや薄く、量的にも抑えた印象がある。
 低域はやや軟調で音色が暗く、中域から中高域は磨き込まれてはいるが粗粒子的な粗さがあり、慣れた耳にはホーン型の固有音とわかるキャラクターが聴き取れる。
 2ウェイ方式の特質を明確に聴かせるアンプの力量は見事ではあるが、性格は厳しく、使う側の資質が要求されるようだ。