早瀬文雄
ステレオサウンド 90号(1989年3月発行)
「スーパーアナログコンポーネントの魅力をさぐる フォノイコライザーアンプ12機種の徹底試聴テスト」より
およそ国産の製品からは絶対に聴くことができないような、あるいはアメリカやドイツの響きとも一線を画した、これは北欧の気候風土の影響を色濃く漂わせた個性豊かな響き、ということができる。オルトフォンのカートリッジがもつ独特の匂い、あるいはアクともいえるものを、けして浮き上がらせず、響きに溶け込ませてしまうことのできる貴重な存在だ。
間接音成分のたっぷりした響きは、中間色的な複雑な響きが薄く幾重にも重なってできたような、独特の深みがある陰影感をみせ、あたかもアメ色のツヤがのった、贅沢な透明感を聴かせる。これは、ディテールを鋭角的に掘り起し、スケスケの薄いガラスのような透明感を聴かせるアンプとは、一線を画す、別世界の音だ。
まさに暗がりの情念ともいうべきものがめらめらと燃えているような、くすんだ微光を感じさせる耽美的な瞑想感が魅力的。
0 Comments.