ヤマハ B-6

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 B6はデザインのユニークさもさることながら、アンプの高能率化とハイクォリティを両立させた、今後のパワーアンプのひとつの方向性を示した画期的な新製品である。
 わずかに重量9kgの軽量でありながら、200W+200Wのパワーと200W、8Ω負荷時に20Hz〜20kHzでTHD0・003%をクリアーする高性能は、2つの新方式の採用のめざましい結果だ。
 まず電源部のX電源方式は、電源部の負荷であるパワーアンプの消費電力に応じて最適量の電力を電源の大容量コンデンサーにチャージさせるタイプで、電源トランスの一次側に切替用素子としてTRIACを直列に入れ、出力側の直流電圧の低下を基準電圧と比較し、フォトカプラーを通して高速フィードバックによりTRIACを制御し、交流の通電位相角を変え高能率低電圧回路としたものである。
 パワーアンプのX電源方式は、電源電圧を2段切替とし低出力時に低電圧をかけ発熱による損失を抑え、大出力時には高電圧に切替えハイパワーを得るという構想だ。
 リアルタイム・ウェーブプロセッサーによる電源電圧の切替は、100kHz一波でも正確にレスポンスし、電源電圧の切替えの立上りの遅れによる波形の欠損はなく、音楽信号に忠実に応答するとのことである。
 B6とリファレンス用コントロールアンプのマークレビンソンのML6×2を組合せる。新方式の成果を調べるためには、低域の十分に入ったプログラムソースによる試聴が応しいが、B6は低域レスポンスが十分に伸び、とくに50Hz〜100Hzあたりの帯域では、X電源の定電圧の特長が感じられる引締った再生が目立つ。聴感上の帯域感は最新のアンプらしいワイドレンジ型で、音色は明るく機敏な反応を示す。中高域の分解能は、非常に優れたピュアカレントサーボ方式で純A級増幅のBX1と比較すると一歩譲るが、アンプのランクからみれば充分に優れており、トータルなパワーアンプとして考えれば、200W+200WのパワーのゆとりはBX1を凌ぐとさえいえるようだ。

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