パイオニア S-955

菅野沖彦

ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より

 大型のブックシェルフタイプで、まさにこのクラスでの王者的風格をもったシステムだ。26cmウーファーをベースにドーム型スコーカー、リボン型トゥイーターの3ウェイ構成は、弟分のS933と共通したもので、各ユニットの品位、仕上げの高さといった製品としての作りは最高級品といってよい。スピーカーの場合、必ずしも高級な作りがそのまま音のよさにつながらない難しさがあるが、このシステムは、音の点でも高い品位をもっている。全体のスペクトラムのエネルギーバランスがよくとれているので、どんな音楽もその全体の姿が美しく、あるべき形で再現される。3ウェイの各帯域の音色的なつながりの点ではS933の方がより溶け合っているようで、本機ではドームとリボンユニットのつながりにやや異質感が感じられるときがある。そのためか、全体にもう一つ透明感が欲しい気もするが、とにかく立派なシステムだ。オーケストラのテクスチュアの重厚で緻密な味わい、ジャズの質の高い迫力等オールラウンドに素晴らしい。

総合採点:9

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