パイオニア XL-A800

黒田恭一

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
特集・「音の良いプレーヤーシステムは何か クォーツロック・DDターンテーブル18機種をテストする」より

 細い筆でこまかいところを書きこんでいくというより、太い筆にたっぷりと絵具をふくませて書きあげるとでもいうべきか。細部にこだわってきくと、幾分ものたりなさを感じなくもないが、これはこれでひとつの性格と考えるべきではないかと思ったりもする。だからといって、カートリッジの個性を無視して一色でぬりつぶすというわけでもない。それぞれのカートリッジの持味には、それなりに順応する。
 ききながらとったメモの中に、「すっきり」という言葉がまったくなく、「くっきり」という言葉が数多く認められるのが、特徴的だ。このプレーヤーシステムできける音は、敢ていえば寒色系の、そして細身の、つまり「すっきり」という言葉で表現できるものから、遠いところにある。しかし、ここで評価すべきは、ひびきの輪郭をあいまいにしないことだろう。
 太くなったり、重くなったりするものの、あいまいにならない。その点で、ききてを安心させるということはあるのだが、もう少し「すっきり」の要素がほしいと思う。

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