テクニクス EPC-270C-II, EPC-405C, EPC-205C-IIS, EPC-205C-IIL, EPC-205C-IIH

岩崎千明

ステレオサウンド 39号(1976年6月発行)
特集・「世界のカートリッジ123機種の総試聴記」より

 日本のダイレクトドライブターンテーブルのパイオニアとして、テクニクスの海外での人気は、非常に高く、国内においてもSP10MkIIの発表以来、他のDDターンテーブルにまた一段と差をつけた感がある。こうした技術指向の非常に高いテクニクスは、カートリッジにおいても、新素材・新技術に積極的にとり組んだ製品が数多く、他社との製品の差もそこにあるのが大きな特徴だ。
 テクニクスのカートリッジは、昭和43年に発表されたテクニクス200C以来、独特の円盤状マグネットとワンポイント・サスペンション方式が採用されている。マグネットはエネルギー積の大きいサマリウムコバルトが使われている。テクニクスのカートリッジといえば、205C/IIシリーズに代表されるといってもよいかもしれない。205C/IIシリーズは、最近ローインピーダンス型(250Ω・1kHz)の205C/IILと、高出力型(7mV・1kHz、5cm/sec)の205C/IIHとが加わった。さらに、205C/IIもマイナーチェンジされて205C/IISに発展している。
 270Cは、テクニクスカートリッジの中でも、もっとも普及型といえる価格で、耳あたりの良い好ましいバランスをもったものだ。高域での微妙な音のニュアンスは、普及型とはいえ充分に再現してくれる点が魅力といえる。ただし、低域の量感やエネルギー感は残念ながら今ひとつ物足りなさを感じてしまう。
 405Cは、チタンカンチレバーを採用したテクニクスの高級仕様を狙った意欲作といえるものだ。全体に強く抑え込んだフラットレスポンスの特性が頭に浮かぶような、ワイドレンジ感をもたせる音だ。ただし高域にいくにしたがってエネルギー感が増し、結果として低域の量感の乏しさを感じさせてしまう。こうした印象は、どうもテクニクスのカートリッジ全般について感じられてしまう大きな特徴のようだ。この405Cのもっているそうした音の印象は、音楽を無機的な表現にしてしまい、聴き手との間に距離感をもたせることになってしまう。音楽の中に飛び込んでいくような音というよりも、融け込むことを拒否するような印象を受けてしまう傾向がありはしないだろうか。
 205C/IISは、405の実用機種ともいうべき性質で出されたカートリッジ。実用的な意味での使いやすさから出力も標準的なもので405Cに比べて、その音はいくらかおとなしいといえる。405Cが音質チェック向きとすれば、こちらの方が一般的といえそうだ。
 205C/IILは、テクニクスの中でも405Cともっとも似た性質をもち、フラットな広帯域感が強く感じられる。405Cよりもいくらかナチュラルで無機的な印象は多少是正されている。205C/IIHは、本質的な音は、これまでのテクニクスと変らないが、中域から低域にかけての音が充実し、ソロ楽器も比較的よく出る。ステレオ感も充分だ。

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