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オーディオテクニカ AT30E, AT31E, AT32E, AT33E, AT34EII

オーディオテクニカのカートリッジAT30E、AT31E、AT32E、AT33E、AT34EIIの広告
(別冊FM fan 30号掲載)

AT34

マイクロ BL-111

菅野沖彦

別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より

概要 これもアームレスのターンテーブルシステム。これは大変にユニークなターンテーブルと言ってもいいと思うが、これほどマニアックなターンテーブルも珍しい。重量10kgの砲金製のターンテーブルが見た目からしてもまずマニアをしびれさせる。そして、そのターンテーブルを糸、あるいはベルトによってドライブする。糸ドライブというのが、今マイクロの主張している一番いいドライブ方式ということで、これもその方式を採用したターンテーブルシステム。
 これのよいところは各ユニットが一つのキャビネットの中におさめられて、マイクロの中では最高に使いやすく、性能も十分出しながら、しかも使いやすい製品にまとめられていることだ。もう一ついいところは、モーターのサボーティングとアームのベースを一体化して、極めて剛性の高い質量の大きなしっかりとした金属のベースでまとめているということだ。これは、音質に非常に大きなメリットをもたらしているように感じた。こういう機械だから操作性はごくシンプルだ。欲を言うと、ベースの表面のフィニッシュがち密できれいだといいと思う。しかし全体的に決してぶ骨な感じを与えないし、マイクロの中では最も洗練されていて、見た目にも好感の持てる製品だ。
音質 実際、音はこれもまたアームレスだから、AC3000MCとMC20MKIIを付けて聴いたけれども、すばらしい音だ。とにかく音全体が大変に澄んでいる。透明感が非常に高い。中高域が非常に明快で、そして低域がずっしりと太く落ち着くものだから、非常に音全体の品位が高くなる。エネルギーバランスがとても妥当なところへいっている。これはやはりアームベースと、軸受けの一体化を図ったところに大きなメリットがあると思う。どんなレコードを聴いてみても、とにかく低域の特性は抜群である。ダレるということは全然ない。むしろダーッとかっちり締めて、自由にスピーカーをドライブするという、大変すばらしい振動支持系を持ったターンテーブルだ。一番印象的だったのは「ダイアローグ」というレコードを聴いた時のベースのエネルギーが、チャチなプレイヤーだとベースのエネルギーにプレイヤー全体が振られているようなイメージがする。つまり何かフラフラツと支点が振られていて、ベースの弦のはじけた張力感というのがなくなる。それが、このプレイヤーは全然ビクともしない。ベースのエネルギーに振られて濁ることがなく、本当にベースの弦のはじき具合が弾力性を持ってピーンと張って聴こえた。
 それからオーケストラでも、チャイコフスキーの「マンフレッド・シンフォニー」の冒頭をテストに使ったが、あそこでファゴット数本にバスクラリネットが入ったユニゾンで吹くところがあるが、あの響きの透明感と抜けのよさ、空間の広がり、これがほかのターンテーブルと一味違う。音場感も非常に豊かに、広がるだけでなく奥行きが出てくる。ティンパニとグランカッサが一緒にたたかれた時に一緒になってドーンと響いてしまうプレイヤーもあるが、これはそういうことはなく、グランカッサとティンパニが音色的に分かれて明快に聴こえる。それでしかも量感があって力感がある。あらゆる点ですっきりしたデフィニションは一頭地を抜いてすばらしかった。

Lo-D TU-1000

菅野沖彦

別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より

概要 これもやはりアームレスのターンテーブルシステムだから、オーディオクラフトのAC3000MCにオルトフォンのMC20MKIIを付けてテストした。外見はそっけないが、一番基本になる回転部分のベースとなるコンストラクションが非常にしっかりしたもので、特にアームベースは取り付けるアームによって特注加工するというもので、ものすごくがっちりしたものだ。この思想は相当重量的にしっかりと押えていって、そして特殊な粘弾性の材料を封じ込めたエアダンプ型のインシュレーターとの組み合わせにより、ハウリングマージンもかせごうというもの。それからこのモーターは非常に特徴があって、全くコッキングレスでスムーズに回転するユニトルクモーターで、このターンテーブルを聴いた時の音の豊かさとかスムーズさというのは、何かそういうところに起因しているのかもしれない。このように超重量級を指向していくと、物理的な音になってきて、耳当たりが何か機械的な音になりがちだが、とにかく非常に聴きやすい音になっている。加えてさすがに重量級のアームベースの構造からいって、非常にしっかりとした骨格の太い音がちゃんと聴けるし、ベースなどの音がフワフワしない。きちんとベースがはじかれているという実感が明確に出てくる。
音質 オルトフォンで聴いた音だが、まずレコードに針をのせてボリュームを上げていった時のSN比が非常にいい。ザワザワとくるようなノイズっぽさが少なくて、サーフェイスノイズだけがシーッと出てくる。通常、そういうノイズの感じからいってターンテーブルの品位というのは大体わかるものなのだ。高域から低域にわたる全帯域のエネルギーバランスも大変によい。どのレコードも非常に落ち着いて聴ける。特にオーケストラのトウッティのバランスのよさというのがこのターンテーブルシステムのよさだと思う。細かい音も非常によく立ち上がるし、ステレオフォニックの音場感が非常に豊かだ。
 プレゼンスの豊かな音で、音像が妙にカチッと小さくもならないし、かといって大きくボヤーッとふやけもしない。このへんのコントロールがターンテーブル、プレイヤーシステムの一番難しいところなのだ。このターンテーブルはトーンアームとカートリッジにいいものを組み合わせた時には相当高品位なものになる可能性を持っている気がする。
 ただ一つ注文をつけたいのは、これは絶対にデザインがひどい。ターンテーブルそのものの形がまず悪いし、ベースのメタル部分は趣味のいい色とはいえない。この色に塗って重みを出そうとするとしたら、これは大変な見当違いだと思う。
 細かい内容をみていくと、インシュレーターがマグネフロートされ、軸受けのベアリング周りなど、非常に充実したものを持っている。それらが外観に出てこなければ私にとって困るのだ。殺風景でぶ骨なイメージを与える製品は好ましくない。これだけの値段にして、音の魅力をマイナスするデザインは、今後このメーカーに考えてほしい大事なポイントと思うが皆さんはどうだろうか。

テクニクス SL-1015

菅野沖彦

別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より

概要 このSL1015というシステムはテクニクスが単体で発売しているSP15というブラシレスDCモーターによるダイレクトドライブのターンテーブル、それにやはり単体としても発売しているEPA500シリーズのトーンアーム、これを組み合わせてしっかりとしたベースによってシステム化したというもの。そういう点ではプレイヤーシステムとして非常に有機的にできているけれども、個々が単体製品だというところに一つの特徴がある。それだけに全体の作りの調和という点ではややチグハグなところも感じなくはない。例えばSP15のフィニッシュとEPA500のフィニッシュとのバランスがちょっと悪かったりするけれども、しかしそれは大きい問題ではない。EPA500の説明になってしまうけれども、非常に大きな特徴はアームのパイプ部分交換によってカートリッジを使い分けていくということ。そしてそのパイプにもハイコンプライアンス用、ミディアムコンプライアンス用、ローコンプライアンス用というように、使うカートリッジによってそれぞれ違ったパイプが用意されているというシステム化、シリーズ化されている大変ユニークな製品だ。おそらくトーンアームの機能として考えるべきことは全部盛り込んだのがこのアームの特徴だ。
音質 実際の音だが、全体的に言って、このプレイヤーの音というのはルックスからくるものと非常によく似ている。どこかに何か冷たさというものがある。非常に精緻な音であり、明るいし分解能はものすごく優れているし、もう音楽の細部までよく聴き取ることができるし、性能的に優秀だということは十分感じる。しかし実際にそのレコードの持っている柔らかい面とか厚みのある面、くすんだ面など、そういった音楽的ニュアンスまで少し明るくくっきりと描いてしまう。ベースのピッチカートなんか聴いていると実に音程は明快で、そういう音楽の聴き方をしたら実に優秀なプレイヤーだ。ところがはずんでこない。音楽がノッてこないのだ。
 例えば実際にいろいろなアームとカートリッジを付け換えてテストしてみなくてはわからないことだけれども、ハイコンプライアンス用でMC20MKIIというのはあまりマッチングがよくない。カートリッジによってアームを細かく使い分けた方がいいと思うが、今回テストに使ったA501HにMMC20MKIIを使った限りにおいては、少々高域が硬くて細い。中域から中低域にかけるボディが若干不足する。従って音の情緒的な面で少し物足りなさが残ってくる。しかし、音場感、ステレオフォニックなプレゼンスなどは実に非常にすっきりとよく表現する。低域は十分豊かに伸びるという感じではないが、すっきりと最低城までよく再生する。しかし、低域の量感みたいなものにちょっと不足するところがあるような気がするのだ。おそらく周波数帯域としては非常にワイドレンジだろうという感じはするが、どこかやはりコンストラクション全体のおさまり具合が音楽をふっくらと再生する要素に欠けている、というのがこのプレイヤーの性格ではないか。しかしその半面、とにかく正確に情報を聴きたいという人にとっては、これほど音楽の情報を明確に豊富に伝えてくれるプレイヤーはない。

トーレンス TD126MKIIIBC

菅野沖彦

別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より

概要 高級ターンテーブルの中では、安直に使える家庭用の高級ターンテーブルというイメージが非常に強い。トーレンスの思想であるクッションによってモーター部分とアームのベース部分と一体にして浮かせるという構造のターンテーブルシステム。見た感じからいくと、おそらく二十万円に近いと思えないイージーハンドリングな感じを持つ。構造的には別に目新しいところはなくて、DCモーターによるベルトドライブ。特に重量級とはいえないが、回転メカニズムを支えて、そしてトーンアームを明確に支えるコンストラクションの部分はがっちりと出来ている。
 当然だが、何といっても浮かしたターンテーブルというのはやはり外部からのショックに強くて針とびが少ない。ハウリングマージンも取れる。最近のように低域がどんどん伸びてきている場合にはこのハウリングマージンを重量だけで押えていくのは並大抵のことではない。50kg、60kg程度では押え切れるものではない。そういう意味から、このトーレンスのようないき方のフローティングシステムというのは、大きなメリットを持っている。日本においては、このフローティングはあまり受け入れられず、どちらかというと、どんどん重量で固めていく傾向のようだが、それ一辺倒の思想は改めてもいいのではないかと思う。このシステムにはアームが付いてカートリッジレスのものと、アームレスのものとあるが今回はアームレスを試聴した。
音質 テストにはオーディオクラフトのAC3000MCのトーンアーム、オルトフォンのMC20MKIIをつけて聴いたが、音の点でのバランスはとにかくものすごくいいターンテーブルだ。
 操作性は慣れれば非常に明快だが、スピード切り替えとスターターが一緒になっていて、OFFスイッチはアームの手元についている。慣れればこれは大変使いやすいマニュアルターンテーブルだ。
 いま日本だけでなくて、世界的にDDモーターが全盛時代を占めている。この時代にベルトドライブに固執しているのは一、二のメーカーだけだが、そのメーカーには技術的な主張があるわけだ。実際に音を聴いてみても、このベルトドライブの持っているよさというのは何となくわかるような気がする。明らかな欠陥がDDにあったり、ベルトにあったり、ということではないから明確にいうのは困難にしても、ベルトドライブが持っている音の穏やかさというか、滑らかさというか、非常に温か味を感じる音だ。
 具体的に言うと、ややピアノの音が高域音にうわずるところがある。これは、もちろんカートリッジとトーンアームというものの音をいろいろなターンテーブルで聴いた平均より、という意味だ。それから音の密度、締まり具合というものが、完全にこのクラスの最高級のプレイヤーと比べるとやや甘いというところがあるが、それがまた音の穏やかさというか、聴きやすさということにつながってくる。オーケストラの低域のコントラバス、チェロなどの楽器の持っているブーミーなボディというのがよく出る。そういう点ではこのシステムはよく楽器の、そういう独特な音の傾向というものを出してくれたと思う。全体的にとにかく音楽らしく聴かしてくれるいいターンテーブルだった。

ディスクから情報を豊かに引き出す可能性をもった趣味の製品

菅野沖彦

別冊FM fan 30号(1981年6月発行)
「最新プレイヤー41機種フルテスト」より

 今回試聴したプレイヤーは十九万円以上のもので、プレイヤーとしては一般用の最高級品ということになる。しかし、この価格帯のプレイヤーの特徴を、一言でいうのは非常に困難だ。ただ言えることは、ディスクに入っている情報を非常に豊かに引き出すことのできる可能性を持っているということ。それから物を作っている側が、完全に趣味の製品だということを意識して作っているということである。従って、これは実用機器の範囲を出ているということになるので、物の見方も性能本位だけではなくて、デザイン、工作精度、仕上げ、使っている材料、コンセプト……こういったものにまで目を向けてみるべきものだと思う。
 次に、今回聴いてみた製品の中にもいくつか性格が異なるものがある。まずカートリッジが付いた完全なプレイヤーシステムとしての形をなしているもの。それから、カートリッジレスだがアームまでは付いているもの。次にアームも付いていないもの、これは正確にはターンテーブルシステムという範ちゅうで区別すべきものだと思うが、この三つがある。
 これはそれぞれのユーザーの目的と好みによって選べばいいと思う。
 今回はその三つのジャンルのものを、できるだけ近い条件で聴こうということで、カートリッジの付いていないもの、アームの付いていないものに関しては、レファレンスとしてカートリッジはオルトフォンのMC20MKII、トーンアームはオーディオクラフトのAC3000MCを使った。
 AC3000MCを使った理由は、私が比較的このアームの音をよく知っているからだ。いろいろなケースで使っているし、自分の家でも使っている。このアームとカートリッジの相関関係についても、私なりに頭の中に入っているということで、これをレファレンスに使った。
 次にオルトフォンのMC20MKIIを使った理由だが、これも私があらゆるケースで自分のレファレンスとして使っているカートリッジだからである。しかもこれは、恐らくいろいろなカートリッジの中で、レファレンスとするに足るカートリッジだと思う。帯域バランス、あるいはトレーシングの安定性、性能、音質ともに妥当なものだと思う。
 MC20MKIIがローインピーダンス型のMCなので、トランスはU・BROS(上杉研究所)。プリアンプはマッキントッシュのC29、パワーアンプは同じマッキントッシュの新しい500W×2のMC2500。スピーカーはJBLの4343Bを使った。ここに使った機器というのは、すべて一応最高級機器のレファレンスとして納得のいくものだと思う。と同時に私自身が聴きなじんでいるということだ。
 今回聴いてみたシステムの中から、私がいくつか気に入ったものを選べということになると、自分が本当に個人的な、いろんな要素を入れて、値段に関係なく選べということであれば、無条件にトーレンスのレファレンスを第一に選ぶ。トーレンスのレファレンス、EMTの927が飛び抜けているからだ。その点からいえばEMT927をとるということになるけれども、私はあえてここではそれをとりたくない。そこで考え方をちょっと変えて、性能一点ばりということではなく、やはり実用性ということを加味して考えると二機種ほどある。リンソンデックとトーレンス126である。ただ見た目は決して良くないし、仕上げも良いとは言えない。その点、気になってしようがないが、ただフローティングマウントによる実用性、ハウリングマージン、あるいは外来ショックによる針飛びの問題、その他をここまで避けて、しかもこれだけの音が出るというのは、やはりすばらしいものだ。考え方として大人だなというように思う。
 もう一方の剛性と重量でがっちり攻めた、国産のプレイヤーの中から二つぐらい選ぶということになると、マイクロのBL111をあげたい。非常にオーソドックスなもので、振動循環系をがっちり固めながら、しかも、ものものしい形ではなく、プレイヤーとしてなかなか温かいふん囲気にまとめている。もう一つはエクスクルーシブP3をとりたい。重量、剛性を追求して共振をコントロールし、かつ非常にオーソドックスなユニバーサルアームを持っているが、そんなにものものしいふん囲気の仕上げではない。非常に使用範囲のフレキシブルな高性能の機種だといえる。
 このベスト5を選んでみてアレッと思ったのは、四機種がベルイドライブ、糸ドライブ(BL111)の間接駆動で、エクスクルーシブのP3だけがダイレクトドライブだということだ。私はこのドライブ方式というものは、オーディオのメカマニアにとっては興味があることだと思うが、実際にはこだわる必要はないと思っている。DD方式は最も新しい方式だから、ベルトや糸は古いということになるかもしれないが、そういう考え方は必ずしも正しくない。常に新しいものはよくて、古いものは悪いというのは、これはどこの世界においても誤りである。古いものの方に正しいことが往々にしてある。この場合はどちらが正しいとかということではない。間接駆動方式が多かったから、その方がやっぱりいいのではないか、というように解釈されてもこれは早計である。これは私が、マウンティングの方式だとか、あるいはトーンアームを含めた問題とかで、総合的に選んだもので、この結果をもってDDがいい、ベルトがいいというような解釈はしていただきたくない。
 ところで、このレポートは厳密なテストというように読んでいただきたくない。むしろこのレポートから、皆さんがそれぞれの機器の総合的な印象、赤とか青とか緑だという程度の印象をつかんでいただければいいと思う。自分の共感できる部分が多いものを参考として、プレイヤーシステムの決定に利用していただければ幸いだ。

Lo-D D-E90, D-1100MB

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(別冊FM fan 30号掲載)

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(別冊FM fan 30号掲載)

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