Daily Archives: 1980年6月15日

ヤマハ FX-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 ヤマハFX3はベストセラーのNS1000Mに準ずるユニット構成の3ウェイ。36cm口径とウーファーは大きくなっているが、スコーカー、トゥイーターは同口径のベリリウム振動板をもつ。しかし全く同一のものではないらしい。かなり迫力ある表現力の豊かなシステムで、フロアー型としてのゆとりを聴かせる。

B&O Beogram4004

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる電子制御フルオートプレーヤーの、世界最初の製品4002の改良モデル。リニアトラッキングアームにはMMC20EN付、ターンテーブルはベルトドライブ型、操作軽の変更の他に、リモートコントロールが可能になったことが、このモデルの特長。

パイオニア Exclusive P3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/今回とりあげた製品の中でも、非常に感心した。たとえばマイクロの糸ドライブのように調整の多少のコツを要する製品を最良のコンディションに整えたときの音、あるいは、EMT930を今回のように特殊な使い方をしたときの音、の二つの例外を除けば、完成品プレーヤーとして、これぐらい見事な音を聴かせた製品は唯一といってもほめすぎではない。第一に音が生きている。ひとつひとつの音にほどよい肉附きが感じられ、弾力的で、素晴らしく豊かな気分を与える。音が妙に骨ばったり、ことさら乾きすぎたりせず、中庸を保ちながら、しっとりと美しい響きが満喫できる。音の重心が低く、音楽を支える低音の土台がしっかりしている。おそらくそのためだろう、中〜高域でもきわどい音を全く聴かせないから、どんなにカッティングレベルの高い部分でも、聴き手をハラハラさせるような危ない音が出てこない。アメリカ製大型乗用車のあの、悠揚せまらざる乗心地のよさに似ている。音が生きているといったが、たとえば音の鮮度の高さとか、みずみずしさ、といった点では、ケンウッドL07Dに一歩譲るかもしれない。けれど、まるで装置全体が変わってしまったかのように、つい、いつまでも楽しんでしまいたい気分にさせる。決して安くはないが、音質、仕上げとも十分に使い手を満足させる。
 ステレオの音像もみごとで、中央が薄手になったりせず、奥行きと厚みを感じさせながら広がりも定位も十分。ひとことでいえば重厚な雰囲気を持った楽しい音、という印象。
●デザイン・操作性/ずいぶん大きく、重々しい雰囲気。だがこの大きさや構造ゆえに右の音質が得られたのだとしたら、文句はいえない。ターンテーブルのトルクは十分で、スタート・ストップの歯切れよく気持がいい。アームの調整も馴れれば容易。しいていえばアームリフターのレバーが奥にあるのは不満。

トーレンス TD126MKIIIC

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/オリジナルアームつきと、アームなしと、両方の製品がある。まず、アーム自体の性能のよくわかっているAC3000MCとの組合せから試聴した(リン・ソンデックよりひとまわり大きいので、国産アームが無理なくとりつけられる点は便利)。総体に穏やかでウェルバランスといいたい安定感がある。ことにクラシックのオーケストラや弦合奏、そして今回の試聴盤の中でもなかなか本来の味わいの出にくいフォーレのVnソナタなどが、とても優雅に、音楽の流れの中にスッと溶け込んでゆけるような自然さで鳴る。反面、ポップス系では、同席していた編集の若いS君、M君らは、何となく物足りないと言う。その言い方もわからないではない。たとえばL07Dの誰にでもわかる音の鮮明な粒立ち、あるいはLP12の、ことさらに粒立ちを意識させないまでも明るく音離れのよい爽快感。そうした音と比較すると、いくぶん暗く沈みがちに聴こえる点に、好き嫌いが出そうだ。本来の音が穏やかなのに加えて、音量感がほんのわずか減ったような印象を与えるところがあるので、それが聴きようによってはマイナス要因になるかもしれない。ところでオリジナルアームのほうだが、同じカートリッジをつけかえたとき、総体に音のスケールや音量感までも小さくなったように聴きとれる。中域が張ってきて、相対的に音域がやや狭く、Dレンジもまた狭まったかに感じられる。専用のカートリッジはEMT製だが、オリジナルのXSD15をACと組み合わせた音にくらべてかなり貧相だ。
●デザイン・操作性/以前の製品にくらべてツマミ類が何となく安手な感触になっているのが残念だが、比較的小型にうまくまとめられて、大げさでない点がいい。横揺れしやすいので、床がしっかりしていないと、外部からの振動で針が飛びやすい。設置にはこの点多少の工夫が必要。

テクニクス SP-10MK2 + SH-10B3

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/オリジナルのEPA100アームと、AC3000MCと、両方比較してみた。好みの問題かもしれないが、私には、AC3000MCとの組合せのときのほうが、音楽的な意味で優れていると思えた。まず音の全体的なバランスが、EPA100では中域の厚みを欠いて帯域の両端の輪郭で聴こえがちなのに対して、AC3000MCでは大掴みなバランスが整って欠点がなくなる。EPA100にはダンピングコントロールのツマミがついてるが、制動量を増すと音が沈みがちで、おとなしいがつまらない。ただ試みに出力コードをマイクロの二重構造銀線コードに変えてみたところ、中域の薄手のところがよく埋まってバランスがはるかに整ってきた。ステレオの音像も中央がよく埋まってくる。まだ楽しさには至らないにしても、テストの標準機として十分に信頼に値する音がする。同じコードでAC3000MCに替えてみると、ここに音の明るさと、充実感がいっそう増してくる。ピアノのタッチの手ごたえや音の品位の高さは、すれでもまだ満点とはいい難いが、十分に水準を越えた音質。ここにもうひと息、余韻の響きの繊細さ、響きの豊かさ、空間へのひろがり感、などが増してくれば相当なものなのだが、音がいくぶんスパッと切れすぎる点が私には不満として残る。AC3000MCならば、もっとナイーヴな雰囲気まで抽き出せるはずだという気持がどこかにあるせいだろうか。
●デザイン・操作性/専用のプレーヤーベースSH10B3との組合せはなかなかいい雰囲気を持っている。スタート・ストップの明快で歯切れよく信頼感のある点は、さすがにテクニクスの自慢するだけのことはあって見事のひと言に尽きる。ただ、ON/OFFのボタン(というよりもプレート)と、速度切替スイッチのボタンの位置や感触という点では、人間工学的にもう一歩研究の余地がありそう。

ソニー PS-X9

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/附属のカートリッジ(XL55Pro)は参考にとどめ、他機と同じくMC30、EMT、DL303を主に試聴した。こんにちのように高級プレーヤーの音質の解析が深くおこなわれる以前の製品としては、相当に水準の高い音を聴かせる。切れこみがよく、鮮度の高い印象の音がする。ただ、パーカッションが一発パッと入ると、音のスペクトラムが中〜高域寄りに散る感じがあって、大型機の割に低音の土台の支えが弱く、表面的な派手さで聴かせる傾向がわずかにあって、本当の充実感ではなく、どことなく空威張り的な音といえる。内蔵のヘッドアンプのほうに切換えてみると、MC30に対しては少々ゲイン不足で残留ノイズがいくぶん耳につく。附属カートリッジとの相性はさすがによく、ゲインは充分。音が一杯に出て、いかにも情報量が多い、という印象を与えるが、私の耳にはどうしても本当の充実感にきこえにくい。ずっと以前、本誌48号でのブラインドテストのときとは印象が違うのは、あのときのテスト機は、あとから本調子が出ていなかったことがわかったそうで、フローティングの有無によっても音が変わるそうだ。
●デザイン・操作性/スイッチ類の配置は仲々キメ細かく、感触も仕上りも上出来である点はさすが。ただし、プレーヤー右手前の部分は、アームの操作のために右手が頻繁に往復するので、速度切替スイッチのボタンの軽いタッチが仇となって、不用意に触れてしまうおそれがあり、人間工学的にはここが問題点となる。アームは素晴らしい精度で組立てられていて、ゼロバランスをとってみると、感度の良さでは今回のテスト機中一〜二を争う出来栄えであることがわかる。スタジオ機的雰囲気は、EMTがイメージとしてあるように思えるが、いかにもソニーらしい手馴れた創りと仕上げに、魅力を感じる愛好家も多いことだろう。

ケンウッド L-07D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/音の鮮明度、あるいは鮮鋭度、立上りの良さ、解像力や粒立ちの良さ……といった要素を際立たせて聴かせる。その意味では今回のテスト機中の最右翼と言ってよいかもしれない。二〜三の予備テストの結果、このプレーヤーのアームは、ヘッドシェルやカートリッジの相性にかなり神経質であるように思え、専用のシェルにDL303をとりつけた組合せが最良だったのでそれを中心に試聴した。さらに、センタースピンドルにトリオ製のスタビライザーと、もうひとつ、トリオ独特のレコード外周にタガをはめる形のスタビライザーを併用してみた。音のけじめがはっきりして解像力が上るが、正直のところ、レコード1枚ごとにこれらスタビライザーをはめて聴くのは私はご免蒙りたい。いずれにしてもこの音は、どちらかといえばジャズ、ポップス系の叩く、はじく、音に長所を発揮するようだが、クラシック系、ことに弦や木管の音は、ときとしてきつすぎ、コントラストのつきすぎの感じに聴こえて、私には違和感があってついてゆけない。おそらく、クラシック系の愛好家、あるいはポップスでも穏やかな音で聴きたい人はP3を、またポップス系中心に鮮烈な生々しさを求める人はL07Dを、それぞれ評価すると思う。少なくともP10のどっちつかずの音よりも、ひとつの方向で徹底しているという点で面白い。
●デザイン・操作性/電源が別ユニット。メカニックでどこか実験機的だ。アームレストの位置がターンテーブルに近すぎたり、アンチスケーティングの糸のかけ難さ、その反面のはずれ易さ、等々、メカ的には未消化の部分多く、メカ設計者のひとりよがりと、意匠デザイナーの未熟さが目立つ。凝りすぎの部分と、そうでない部分がひどくアンバランス。外部振動から一切逃げていない構造なので、ハウリングには弱く、置き台や置き方に工夫の必要がある。

EMT 930st + 930-900

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「ハイクォリティ・プレーヤーシステムの実力診断」より

●音質/中音域から低音にかけて、ふっくらと豊かで、これほど低音の量感というものを確かに聴かせてくれた音は、今回これを除いてほかに一機種もなかった。しいていえばその低音はいくぶんしまり不足。その上で豊かに鳴るのだから、乱暴に聴けば中〜高音域がめり込んでしまったように聴こえかねないが、しかし明らかにそうでないことが、聴き続けるうちにはっきりしてくる。ことに優れているのが、例えばオーケストラのバランスと響きの良さ。まさにピラミッド型の、低音から高音にかけて安定に音が積み上げられた見事さ。そしてヴァイオリン。試聴に使ったフォーレのソナタの、まさにフォーレ的世界。あるいはクラヴサンの胴鳴りが弦の鋭い響きをやわらかく豊かにくるみ込んで鳴る美しさ。反面、ポップスのもっと鋭いタッチを要求する曲では、ときとしてL07Dのあの鮮鋭さにあこがれるが、しかし一見ソフトにくるみ込まれていて気づきにくいが、打音も意外にフレッシュだし、何よりもバスドラムの重低音の量感と、皮のたるんでブルンと空気の振動する感じの低音は、こんな鳴り方をするプレーヤーが他に思いつかない。なお、試聴には本機専用のインシュレーター930−900を使用したが、もし930stをインシュレーターなしで聴いておられるなら、だまされたと思って(決して安いとはいえない)この専用台を併用してごらんになるよう、おすすめする。というより、これなしでは930stの音の良さは全く生かされないと断言してもよい。内蔵アンプをパスするという今回の特殊な試聴だが、オリジナルの形のままでもこのことだけは言える。
●デザイン・操作性/スタジオプレーヤーとして徹底した設計であるため、一般愛好家が使うには違和感もあるかもしれないが、使ってみれば納得、という感じ。昨日今日でっち上げられた製品とは格が違う。

「My Best3」

瀬川冬樹

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

●スピーカー
 オーディオ機器の音質の判定に使うプログラムソースは、私の場合ディスクレコードがほとんどで、そしてクラシック中心である。むろんテストの際にはジャズやロックやその他のポップス、ニューミュージックや歌謡曲も参考に試聴するにしても、クラシックがまともに鳴らない製品は評価できない。
 ところがその点で近ごろとくにメーカー筋から反論される。最近のローコストの価格帯の製品を買う人は、クラシックを聴かない人がほとんどなのだから、クラシック云々で判定されては困る、というのである。クラシックのレコードの売上げやクラシックの音楽会の客の入り具合をみるかぎり、私には若い人がクラシックを聴かないなどとはとうてい信じられないのだが、しかし、ともかく最近の国産のスピーカーのほとんどは、日本人一般に馴染みの深い歌謡曲、艶歌、そしてニューミュージックの人気歌手たちの、おもにTVを通じて聴き馴れた歌声のイメージに近い音で鳴らなくては売れないと、作る側がはっきり公言する例が増えている。加えて、繁華街の店頭で積み上げられて切替比較された時に、素人にもはっきりと聴き分けられるようなわかりやすい味つけがしてないと激しい競争に負けるという意識が、メーカーの側から抜けきっていない。
 そういう形で作られる音にはとても賛成できないから、スピーカーに関するかぎり、私はどうしても国産を避けて通ることが多くなる。いくらローコストでも、たとえばKEFの303のように、クラシックのまともに鳴るスピーカーが作れるという実例がある。あの徹底したローコスト設計を日本のメーカーがやれば、おそろしく安く、しかしまともな音のスピーカーが作れるはずだと思う。
 KEF303の音は全く何気ない。店頭でハッと人を惹きつけるショッキングな音も出ない。けれど手もとに置いて毎日音楽を聴いてみれば、なにもクラシックといわず、ロックも演歌も、ごくあたり前に楽しく聴かせてくれる。永いあいだ満足感が持続し、これを買って損をしたと思わせない。それがベストバイというものの基本的な条件で、店頭ではショッキングな音で驚かされても、家に持ち帰って毎日聴くと次第にボロを出すのでは、ベストバイどころではない。売ってしまえばそれまでよ、では消費者は困るのだ。
●アンプ・FMチューナー
 アンプやチューナーの音質は、その点もっとまともで正攻法で作られる。したがって、国産のローコスト機の中に、良い製品をかなり見出すことができる。だが単にまともであるだけでなく、やはり音楽を生きた姿で蘇らせ、聴き手に音楽を聴く喜びを持続させてくれなくては、真の良い音とはいえない。こんにちの技術では、プリメイン一体型でも相当に水準の高いアンプは作れる。それをあえて分割し、割高を承知でプリメインでは不可能な電子回路の限界に挑むのがセパレート。私はそう考えているから、セパレートタイプに対する要求は一段ときびしい。しかもなお、数多くの製品の中から、あえてわざわざその製品を選び出すだけの明確な魅力が、音質にも外観にも現われていないくては、セパレートを入手する満足感が薄れる。
●プレーヤーシステム
 プレーヤーシステムは難しい。今回別項で高価格帯グループの比較試聴をしてみて、その思いのほかの音質の差を体験してみると、最近の新製品競争で生まれてきた大半の製品を、本当によく聴き比べたとは私は言えない。この部門は投票を棄権したいくらいだ。ただ、メーカーのこれまで実績や、シリーズの中の何機種かを試聴した体験とで、かろうじて選び出したという形。
●カートリッジ
 カートリッジは、スピーカーと別の意味で国産にどうしても冷たい態度をとりたくなる。それは価格である。輸入品と国産品の価格差がほとんどないというのはどこかおかしい。価格体系さえ修整されるなら、国産カートリッジは音質の点では相当な水準に達している。
●カセットデッキ
 カセットデッキは、個人的にテストの機会がほとんど与えられていないので棄権させていただいた。
          *
 投票結果が一覧表になってみると、例によって自分としては入れたかった製品が入選してなかったり、逆に思わぬ製品が入ってたりする。多数決制では多少矛盾は止むをえないことだろう。

●スピーカーシステム
 JBL 4343B(WX) ¥720,000 (730,000)
 JBL L150 ¥250,000
 KEF Model 303 ¥62,000
●プリメインアンプ
 ケンウッド L-01A ¥270,000
 ラックス L-58A ¥149,000
 サンスイ AU-D607 ¥69,800
●コントロールアンプ 
 マークレビンソン LNP-2L ¥1,460,000
 マークレビンソン ML-6L ¥1,460,000
 アキュフェーズ C-240 ¥430,000
●パワーアンプ
 ルボックス A740 ¥598,000
 マイケルソン&オースチン TVA-1 ¥560,000
 アキュフェーズ P-400 ¥410,000
●プレーヤーシステム
 マイクロ RX5000 + RY-5500 ¥470,000
 パイオニア Exclusive P3 ¥530,000
 EMT 930st ¥1,258,000
●カートリッジ
 デンオン DL-303 ¥45,000
 オルトフォン MC20MKII ¥53,000
 オルトフォン MC30 ¥99,000
●FMチューナー
 パイオニア Exclusive F3 ¥250,000
 アキュフェーズ T-104 ¥250,000
 ケンウッド L-01T ¥160,000
●カセットデッキ
 テクニクス RS-M88 ¥145,000
 サンスイ SC-77 ¥73,800
 ヤマハ K-1a (B) ¥98,000

パイオニア PL-50(L)

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自のSHローター方式モーターとオイルダンプ型のアームを採用したマニュアルプレーヤーで、型番末尾にLの付くタイプは、オートリフトアップ機構を加えた製品。音は穏やかだが安定感があり、各種カートリッジのキャラクターを素直に引出し聴かせる。

デンオン SC-307

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンのSC304以上のシステムは、デンマーク・ピアレス社と共同開発のユニットを採用した点が国内製品としてユニークな存在であり、国産ユニットとはひと味ちがったユニットのキャラクターを充分に引き出した独自のサウンドと完成度の高さはすでに定評が高いが、SC304/306につづき、今回SC307が第2世代の300シリーズの型番で発売された。
 ユニット構成は従来のSC107を受け継いだ3ウェイ・5スピーカーシステムだ。ウーファーは、25cmユニット×2のツイン駆動方式。軽量振動系で35cmウーファーに匹敵する振動面積をもち、
ユニット振幅が少なくリアリティが優れる特長をもつ。10cmスコーカーはフレーム一体構造のダイキャストバックチャンバー付で、裏面に制動材を塗布したノンプレスコーンとアルミボイスコイルボビン採用。トゥイーターは5cmコーン型のパラレル接続ツイン駆動だ。
 エンクロージュアは65・5ℓ密閉型。2種類のグラスウール、アルミ箔ラミネート型ブチルゴム制動、補強棧レス、ユニットは独自のサンドイッチ支持方式取付け。ネットワークは、コンデンサーは全て2個並列使用、種類はアルミ・プレーン箔電解、メタライズドフィルム型だ。
 本機はSC107に比較し、フラットな帯域感、素直な高域の伸び、粒立ちの細やかさなど完成度が格段に向上した。

サンスイ XR-Q9

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自の構想に基く、最適支持方式を採用したストレート型アーム。磁気検出型の自社開発クォーツロックDD型モーター、大型の3本のダイキャスト型脚部に吊り下げ構造を組み合わせた、ユニークなサスペンション方式のプレーヤーベースを備えた高性能フルオート機。

ダイヤトーン DP-EC3

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 光学センサーによる30cmと17cm盤の自動サイズ選択と速度、、ターンテーブル上のレコードの有無をはじめフールプルーフに使えるフルオートプレーヤーである。ナチュラルな帯域感と素直な音は常用するにふさわしい製品である。

ビクター QL-Y5

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 Y7とシリーズをなす最新のセミオートプレーヤー。トーンアームは、電子式ダイナミックバランス型で、針圧、アンチスケート、ダンピングは独立した調整ツマミで電気的にコントロールできるのが最大の特長。伸び伸びとした力強い音は、聴いていて大変に心地よい。

デンオン DP-40F

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自の開発による無接触式電子制御フルオート機構を採用したクォーツDD型プレーヤー。前面操作型でダストカバーを閉じたまま、レコード盤上の任意の位置に針先を落とせるポジションセレクター、電子式アンチスケートなどを備える。安心して使える中級機である。

ヤマハ MC-7

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独特な垂直・水平発電系をもち、マトリックスにより出力を取出すユニークな構想によるMC型だ。力強く、ダイレクトな音は、このタイプ独特の魅力。

アントレー EC-15

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 MC専門メーカーらしいアントレーのヤング向けモデル。活気のあるフレッシュな表情とMC型らしい分解能の高い音はバーサタイルに使える。

ヤマハ P-750

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 低共振の左右対称ストレート型ARSアームがフレッシュな印象を与えるクォーツロックDDフルオートモデル。ヘッドシェルはネジで着脱可能であり、パイプ状をスライドする針圧ウェイとは大変に使いやすい。帯域感が広く、シャープでクリアーな音が特長である。

デンオン DL-103

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自の十字型巻枠を採用したデンオンMC型の原型ともいえる製品。ナチュラルなレスポンスと安定感のある音は、現在でもリファレンス的だ。

パイオニア PL-30(L)

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 中級機として定評があるPL50(L)のジュニアタイプのマニュアル機だ。上級機種と同等な重量級ターンテーブルをベースに、リジッドな構造のアームを採用し、安定感のある音が特長であり、まさしくベストバイだ。型番末尾のLはオートリフト付のモデル。

サンスイ FR-Q5

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 エレクトロニクス制御のトーンアームを備えたフルオード型のシステム。ーたーはクォーツロック方式のDD型で自社開発であるのが特長。付属カートリッジは、エンパイア製で2000の相当品だが、中域の充実した活気のある音は、このクラスでは抜群である。

グレース F-8L’10

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 10年間のロングセラーを誇るF8Lに、F9で得た技術を導入した、いわば記念モデルである。針先はアドバンスド・ルミナルトレース型。

10万円以上の’80ベストバイ・カセットデッキ

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 10万円以上は、いわゆる高級デッキの存在する価格帯である。基本的には、15万円台をボーダーラインとして分割して考えられる。
 10〜15万円の価格帯では、メタル対応モデルが各社から比較的早く製品化されたため、昨年のオーディオフェアを境に新旧の世代が分かれているが、やはり、新しいモデルにメリットが大きい。
 まず、10万円に近い価格では、基本的に、9万円台のわずかに性能向上や機能が増したモデルが多く、選択はシビアになる。高級機らしさを性能、機能、構造に求めれば、やはり14〜15万円台で、定評のあるメーカーのトップモデルか、昨秋以降の新製品を選べば、普及機では考えられないようなメタルテープの凄さを満喫できよう。また、このクラスはLH、コバルトテープの音が、一格異なった味であるのも楽しい。
 15万円以上は本来のスペシャリティで、メーカーも限定されるが、新世代のこのクラスデッキは、使い方さえ正しければ、普及型のプレーヤーシステムとは比較にならない、高性能と高クォリティの音を聴くことができる。

ナカミチ Nakamichi 680ZX

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独立3ヘッド構成、クローズドループ2キャプスタン型の走行系に、世界初の自動アジマス調整機構をビルトインした半速を含めた2スピード型の高級機。ヘッドは半速で15kHzを保証可能な独自のタイプで、並のデッキの標準速度に匹敵する音を聴かせる。2速度型のキューイング、自動選曲など機能も充実し、現代デッキの頂点に立つデッキである。

ソニー TC-K88

井上卓也

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 独自のモーター駆動で前後方向にスライドするテープ走行部により、世界で最薄型のカセットデッキを実現した、見事なソニーらしい製品である。2ヘッド・3モーター方式の走行系には、自動選曲、キューイング機能を備え、精度の高いテープ残量計としてもメーター部は使える。ナチュラルな周波数帯域と緻密で充実した音は、さすがに高級機ならではのものだ。