Daily Archives: 1976年9月21日

ヤマハ CA-1000III

岩崎千明

音楽専科 10月号(1976年9月発行)
「YOUNG AUDIO 新製品テスト」より

 ヤマハのプリメインアンプCA1000が、マークIIIとなって2度目の改良を受けた。もっとも、この改良は、単に改良というだけでなくて、まったく新らしく設計をしなおしたと思われるくらいに変わってしまって、もはや、改良というよりも、新型の新製品といってよかろ
 CA1000IIIは、ヤマハの高級イメージにささえられたオーディオ製品の中核をなすプリメインアンプの中で、最高のランクに地位する機種だ。その品質に関しては、デビュー当時よりもっとも高いクウォリティと、品位のある外観と、さらに、質の高いサウンドとで日本の市場におけるこの価格帯の中でもっとも優れた存在であった。オーディオアンプとしてその完成度は世界の超一流品にも匹敵するといわれてきた。デビュー以来、すでに4年目になろうとした今日、そのすべての特徴は、今も少しも色あせることはない。しかし、オーディオ志向の需要者層が大きく変わった。10万を越えるというこうした高級アンプを買おうというと若がえって、20歳をはるかに切ってしまうほどだ。
 こうした使用者の変革に伴なう使い方、デザイン感覚、さらにはサウンドへの好み、といった大きな条件を踏まえて、ヤマハにとっての「不朽の名作」CA1000を再度改めたわけだ。マークIIへの変革は、内部の改良に伴なう性能向上だけであったが、今度はそうした意味でも新製品ともいえるほどの大向上ぶりである。
 まず、もっとも目立つのは、ふたつのレベルメーターで、これは、最近の高級アンプの新しい動向である。主に、録音マニア達の好みに対応したものと思える。レコーディング・アウト・セレクターというつまみが、新しく付けられて、いわゆるテープモニター・スイッチの大巾な拡大用途に対応している。このスイッチの2つのポジションは、1→2、2→1のテープコピーとなっている。インプットセレクターには、テープ1、テープ2の2つのポジションが独立して付いている。このように単にテープモニター・スイッチを付ける今までのアンプに対してこのアンプのテープ録音への配慮は、不慣れな、初心者にも使いわけが、容易になるように心を配ったものといえる。
 今までにない新しい「フォノ・セレクター」は、カートリッジの種類とか銘柄によって、もっとも理想的使用状態になるようカートリッジの負荷抵抗を選べるようになっている。さらに、特出すべき大きなボイントだが、MC型カートリッジのためのヘッドアンプも内蔵されており、トランスとか、アダプターアンプを加えることなく、そのままフォノ1につないで使用することができ得る。
 もともとこうしたMC型カートリッジ用のヘッドアンプは、ノイズの点でたいへん難かしくて、高価にならざるをえない。だから、プリメインアンプの中に収めるということは、技術的にも価格的にも、とても難かしいことなのである。CA1000の伝統的特徴であるAクラス切換によるパワーアンプのA級動作は、タイプIIIになって、さらにパワーアップされて、用途を拡げた。普通のブックシェルフでも、夜なら充分な音量で楽しむことも、やりやすくなった。
 さて、CA1000IIIは、この改良によって、音がいかに変わったかは、大いに気になるに違いない。ひと言でいうならば、格段に明るく、力強く、特に、ボーカルとソロとが非常にくっきりと、聴ける。

ソニー EL-5

岩崎千明

週刊FM No.19(1976年発行)
「私の手にした新製品」より

 少なくとも基本的な性能のすべて、それにサウンドのすべては、はるかに高価な20万円近いEL7に匹敵する。それなのに、価格の上で60%にすぎないというのだからいかに効率の高い実用価値を持った製品であるか、ということがわかるだろう。まさに、このEL5の登場によって、本格的にエルカセットの道は開かれたといってもよかろう。
 外観の上では、テープ・セレクト・スイッチと、録音レヴェルのためのヴォリュームつまみがいくつか減っているのを除けば、兄貴分のEL7と変わらない。それどころか、テープ・マガジンのまわりの操作ボタンを含め、一切がまったく同じであって、むろん、その走行メカ・ニズムは、すべてEL7とまったく同じなのである。むろん、走行性能から扱いやすさについても、まったく同じであるのは.価格を考えると、信じられないほどだ。リヴァースからプレイへ、あるいはリヴァースから早送りへの直接切換という荒っばい扱いに対しても、まったくスムースに、なんらさしさわりなく動作してくれる大きな特長も失われてはいない。EL7に比べて大きなただひとつの違いは、3ヘッドから2ヘッドになった点だ。しかし、少なくとも録音された音に関しては、その違いを聴き出すことは、音楽では至難の業だ。
 パワフルで、輝かしく、粒立ちのよい音は、さすがカセットとは格段の違いだ。これでやっとエルカセットもファンが増えよう。