岩崎千明
週刊FM No.19(1976年発行)
「私の手にした新製品」より
少なくとも基本的な性能のすべて、それにサウンドのすべては、はるかに高価な20万円近いEL7に匹敵する。それなのに、価格の上で60%にすぎないというのだからいかに効率の高い実用価値を持った製品であるか、ということがわかるだろう。まさに、このEL5の登場によって、本格的にエルカセットの道は開かれたといってもよかろう。
外観の上では、テープ・セレクト・スイッチと、録音レヴェルのためのヴォリュームつまみがいくつか減っているのを除けば、兄貴分のEL7と変わらない。それどころか、テープ・マガジンのまわりの操作ボタンを含め、一切がまったく同じであって、むろん、その走行メカ・ニズムは、すべてEL7とまったく同じなのである。むろん、走行性能から扱いやすさについても、まったく同じであるのは.価格を考えると、信じられないほどだ。リヴァースからプレイへ、あるいはリヴァースから早送りへの直接切換という荒っばい扱いに対しても、まったくスムースに、なんらさしさわりなく動作してくれる大きな特長も失われてはいない。EL7に比べて大きなただひとつの違いは、3ヘッドから2ヘッドになった点だ。しかし、少なくとも録音された音に関しては、その違いを聴き出すことは、音楽では至難の業だ。
パワフルで、輝かしく、粒立ちのよい音は、さすがカセットとは格段の違いだ。これでやっとエルカセットもファンが増えよう。
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