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JBL S119WX

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 JBLのスピーカーシステムといえば、伝統的に高い定評があるスタジオモニターなどの業務用システムが印象強いが、このところ、一般的なコンシュマー用の製品開発にも、かなりの力を注いでいるようだ。
 今年のコンシュマーエレクトロニクスショウに展示されていたという、14インチ・ウーファーをベースに、4インチ口径のメタルダイアフラムを使うハードドーム型ユニットを4個、1インチ口径ハードドーム型ユニットを組み合わせたトールボーイ型システムや、ピアノ仕上げ調のエンクロージュアを採用した一連のシステムなどが、その例である。今回、新製品として発表されたS119WXは、それらとは異なった音場再生型といわれるトールボーイ型のシステムである。
 JBLには、かつてアクエリアスシリーズという、ユニークな構成の音場再生型システムが、中級機から超高級機にわたる幅広いラインナップで展開されたことがある。いわば、それ以来のひさかたぶりの音場再生型システムの開発である。
 基本構成は、いわば定石どおりのオーソドックスな設計である。
 正方形断面の角柱型エンクロージュアは、約100cmの高さがあり、上部から20cmくらい下がった位置に全周にわたりスリットが設けられている。表面はパンチングメタルで覆われているが、ここが、このシステムの音の出口である。
 スリット下側部分には、20cm口径ウーファーがコーンを上にして取りつけてあり、4つのコーナー部分には、25mm口径のハードドーム型トゥイーターが4個、外側を向いて取りつけられている。システムとしては、4個のトゥイ一ターを使った、2ウェイ5スピーカー構成である。
 クロスオーバー周波数は、3kHzと発表されており、許容入力は100W、ピーク400W。各ユニットは、AVシステムやサラウンドシステムに最適な防磁設計であるとのことだ。
 このシステムは、周りに壁などの障害物がない自由空間に設置したときに、360度(水平)の音場再生ができるタイプである。そのため、試聴時の部屋の条件が、ダイレクトにシステムの音となり、一般的なシステムを聴くことを目的とした試聴室では、設置する場所選びが、第一の難関である。
 標準的スピーカーの位置より部屋の中央近く位置決めをして音を出す。おだやかながらも、柔らかく、ゆったりとした低域と、輝かしさがあり、シャープに音のエッジを聴かせる中高域に特徴がある音だ。高域のエネルギー分布は、システムを回転すれば、トゥイーターの位置が変わり調整可能である。基本的には、ライブネスがたっぷりとした部屋で、さりげなく音を楽しむために相応しいシステムであろう。

JBL 4425

菅野沖彦

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
「SS HOT NEWS」より

 JBLから、新しいモニタースピーカーシステム4425が発表された。この3月、ノースリッジのJBLの工場を訪れ、これを試聴する機会をもったが、その後、私の帰国と同時に日本に送られてきた製品を自宅で聴く機会も持てたので、簡単に御紹介してみたい。
 4425は、そのモデルナンバーからしても明らかなように、4435、4430のシリーズとして開発されたものであり、バイラジアルホーンと呼ぼれる垂直・水平方向の指向性を100度×100度でカバーする(コンスタントダイレクティヴィティ)高性能ホーンをもつ高域ドライバーを特徴としている。4425に使用されているバイラジアルホーン2342は、4435、4430に使われでいる2344ホーンのスケールダウンモデルであるが、その性能は、クロスオーバーの1・2kHzに至るまで平均した指向性パターンであることに変りはない。ドライバーは2416という新設計のもので、チタンダイアフラムにダイアモンドエッジ構造をもつなど、JBLのニューテクノロジーが生かされている。低域のユニットも、2214Hという新設計のもので、口径は30cm、ボイスコイル径は7・6cmの強力なものだ。バスレフタイプのエンクロージュアは40・6cm×63・5cm×31・1cmと、大型のブックシェルフサイズといってよいものである。ネットワークは2ウェイではあるが高域のパワーレスポンスを、絶対レベルとは別に調整でき、12dB/octのものだ。
 4400シリーズのバイラジアルホーンは、その奇異な外観のためか、わが国における人気は今一つ……の印象を受けるが、その性能の高さは、さすがにJBLらしいもので、その優れた放射パターンによる音色の自然さと音場の豊かさは、もっともっと高く評価されて然るべきものだと思う。この製品では、小型化されているので、それほど奇異な感じも受けないし、チタンダイアフラムのコンプレッションドライバーとの組合せで、きわめて精度の高い緻密な音を再生する。しかも、たいへん滑らかなレスポンスのため、質感の品位も高い。そして、新しい2214Hウーファーがエネルギッシュな面からも、質的違和感がなく、よくつながっていて、全体のバランスは4430、4435をも上廻る完成度をもっている。200ワットの連続プログラムに対応するパワーキャパシティをもつ、このシステムの音は、JBLのコンプレッションドライバーシステムらしい安定性と、タフネスにより圧倒的な迫力が得られるし、音の質感は明らかに、新世代の製品らしい品位の向上が認められるものである。一般家庭用としても手頃なサイズでありながら、本格的な再生音は並のスピーカーとは異次元だ。

JBL 18Ti(組合せ)

菅野沖彦

ステレオサウンド 75号(1985年6月発行)
特集・「CDで聴く海外小型スピーカー中心の組合せに挑戦」より

 JBLの18Tiというのは、同社の新しいTiシリーズの中の一番小さいモデルです。JBLにはコンプレッションドライバーを使ったシステムが上級機種にあって、そのJBLのコンプレッションドライバーのすばらしさが、多くのファンをつくってきて、JBLサウンドを確立したきたわけですが、JBLは同時に、ダイレクトラジェーターの持っている能力も追求しようということで、コーン型ウーファーにドーム型のユニットを加えたブックシェルフ型のスピーカーも、かなり長い間、手がけています。
 Tiシリーズというのは、Tiという言葉が示しているように、チタンのダイアフラムを待ったドームトゥイーターを開発して、それを採用したシリーズなんです。18Tiは、いちばんローコストのモデルなんですけど、JBLの、ダイレクトラジェーターを使ったスピーカーで一つの完成度を見たシステムではないかと思います。
 小型ではありますけれども、JBL伝統の非常に力のある、エネルギッシュな、そして音像の輪郭の明快なサウンドというのは、依然として持っている。さらに、新しいドームトゥイーターのおかげでしょうか、高域が非常にスムースになってきています。これは、物理特性を追求していくと、どうしてもこういう傾向になるわけで、高域のスムースさは、明らかに特性の改善なんです。そのスムースさゆえに、古いJBLのスピーカーの、言うならば毒が薬になっている個性が、やや丸められ薄まったと言う人もいますけれども、音の個性というのはどんなに物理特性を追求していってもなくなるものではないと思いますし、毒として残っている部分を、特性をよくしてなくしていくということは、オーディオが科学技術の産物である以上、必要なことだと思います。ぼくは、いささかもTiシリーズが、JBLのサウンドを損なってはいないと思います。むしろ、JBLサウンドの本質を理解すれば、これは明らかにJBLの音を保っているものだと思います。ただ、表面的な、外面的なところでJBLサウンドをとらえると、変わったとか、角が矯められたとかいう受けとり方になるかもしれませんが、JBLの音というのは、そういう外面的なところで理解すべきものではないと思っているんです。
 18Tiの音も、いかにもアメリカ的で、そこには、アメリカ文化の独自性がありますが、そのアメリカ文化というのは、異質な文化のまじり合った、ある意味では非常にコスモポリタンな文化だと思うんです。ですから、JBLのサウンドは、確かにアメリカ的なサウンドですけれども、しかし、それは非常にコスモポリタンなミックスされた文化から生まれてきているだけあって、ある種のプログラムソースにしか向かないというようなことはないと思うんです。実際、この18Tiを聴いてみても、こちらの狙いによっていろいろと変化してくれます。つまり、このスピーカーをアメリカ的な、かなりギラッとした音で鳴らして、例えばショルティのマーラーの録音の音を生かしていこうとすれば、その方向で鳴りますし、それからハイティンク、コンセルトヘボウのようなヨーロピアンサウンドのしなやかさと、ややベールをかぶったようなニュアンスというものを求めようとすれば、そのようにちやんと鳴るんです。これは、やはりJBLスピーカーの持っている能力の高さだというふうに、ぼくは解釈します。
 組合せは三例つくるわけですが、それぞれニュアンスの異なった音で鳴る組合せになったと思うんです。最も安いトータル金額にまとまったのが、ヤマハのA550というプリメインアンプと、マランツのCDプレーヤーCD34の組合せです。マランツのCD34を使ったというところから推測できると思いますけれども、このスピーカーから、ヨーロピアンサウンド的な特徴を、ちゃんと鳴らせるかどうかを試してみたわけです。
 その結果は、A550の持っている素直さが大きく作用したと思いますが、CD34の持っているヨーロッパ的雰囲気が非常に生きてきて、ヨーロッパ録音のヨーロッパサウンドというものが、ちゃんと出てきました。この組合せは比較的コストを安くしようという目的だけではなくて、18Tiから、ヨーロッパの伝統的な音楽を違和感なく聴こうと思うときの組合せとしても成功したと思います。
 この組合せで、音源主義的な、ショルティのマーラーを聴きますと、ギラギラとした録音の本質は変わらないけれども、そこに雰囲気が出てきますね。木管が非常にフッと脹らむような音になってきますし、弦の鋭さもやや角が取れて、しなやかさも出てくる。そしてフィルクスニーのピアノを聴くと、非常にソフトなやさしいタッチによる、彼の音楽性がとても生きてきたと思います。
 二番目の組合せは、プリメインアンプにデンオンのPMA940V、CDプレーヤーはパイオニアのPD7010です。この組合せはJBLのはつらつとした音を出す組合せと言えると思うんです。特に、この組合せによる、ショルティのマーラーとかジャズは大変に輪郭の明快な、よく弾む、明るいいい音で鳴ってくれました。ただし、明快な傾向が非常に強くて、ヨーロッパ的な雰囲気の音や音楽には、少々違和感を持つ結果になりました。ですから、最初の組合せと、対照的な音の組合せというふうに考えていただいていいと思います。ショルティのマーラーの迫力、録音の特徴をよりストレートに出したのは、こちらの方かもしれません。ただ、このロンドンの録音に抵抗のある方にとっては、最初の組合せの方がいい音だと聴こえるでしょう。この二組の組合せはそういう関係にあります。
 三番目がいちばん高い組合せで、プリメインアンプはサンスイのAU−D707X、CDプレーヤーはヤマハのCD3です。この組合せから出てくる音は、前二者の音の中間に位置しているといえるでしょう。ギラッとした音にも偏らず、ヨーロッパ的な、やや薄曇りのような音にもならない、ちょうどその中間をいくような音です。
 ヤマハの製品は、前の組合せに使ったA550、そしてCD3も素直な性格を持っている。魅力の点では、この上のCD2が持っているトロッとした中域がないので、CD2と比べるとものたりなさを感じていましたが、素直さでは、CD3の方が上ですね。アンプやスピーカーの組合せに素直に応じていくという特質を持っているとも言えます。そういう意味で、CD3はなかなかいいCDプレーヤーだと思います。
 AU−D707Xも、非常に中庸をいった、普遍性のある音のアンプだなということを再確認しました。おそらく、このアンプで鳴らした18Tiの音というのが、18Tiの持っている能力の幅みたいなものを、一番ストレートに出してくれたと思います。ですから、プログラムソースによって、どっちらにもこなせるということに通じる。非常に中庸をいった、いい組合せです。三者三様はっきりとした音の傾向の違いというものが、18Tiから出てきたんではないかと思います。

JBL 120Ti

井上卓也

ステレオサウンド 74号(1985年3月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 JBLからコンシュマープロダクツの新ラインナップとして、Tiシリーズが登場することになった。この新シリーズは、従来のL250をトップモデルとしたしシリーズに替わるべき製品群で、現在、250Ti、240Ti、120Tiと18Tiの4モデルが発売されているが、そのモデルナンバーから類推しても、120Tiと18Tiの中間を埋めるモデルが、今後登場する可能性が大きいと思われる。
 新シリーズの特徴はスコーカーの振動板にJBLとしては、初めてのポリプロピレン系の材料と、既にコンプレッションドライバーユニットのダイヤフラムとして、2425、2445に採用されているチタンをトゥイーターダイヤフラムに採用したことである。ちなみに、Tiシリーズの名称は、このチタンから名付けられたものだ。
 新シリーズの4モデル共通に採用されているトゥイーター044Tiのダイヤフラムは、25μ厚のチタン箔をダイヤモンドエッジと特殊形状のドーム部分とを下側から渦巻状の窒素ガスを吹付けて一体成形してあり、ドーム部は、強度を確保するために放射状に配した4本のメインリブと2本の同芯円リブ、さらに、両者の交点をつなぐサブのリブを組み合せた特殊構造により、2425などに採用された250μ厚のチタンと同等の強度を得ており、従来の044と比較して出力音圧レベルが、3dB、許容入力も30Wのピンクノイズに耐えるまでに向上しているという。また、周波数特性も−3dBで23kHzと伸び、ダイヤフラムが軽量化されたため、過渡特性も優れ、デジタル録音に素晴らしい立上がりを示す。
 一方、ポリプロピレン系の振動板もJBLとしては初採用だが、従来の紙に替わって新採用されたのは、19Tiの16cm口径ウーファーが最大のサイズであり、それ以上の口径では、紙のほうが便利との結論のようであり、安易に、より大きな口径のコーン型ユニットに採用しないのは、名門の見識とでもいいたいところだ。ある雑誌に240Tiの36cmウーファーも特殊ポリプロピレンコーン採用とのリポートがあり、一瞬、驚かされたが、資料をチェックしてみれば明らかに誤報である。それほど、ポリプロピレンで大口径コーン型ユニットを開発することは、困難であるわけだ。なおJBLで採用したポリプロピレンは、炭素粉を適量混入して硬度を上げているとのことで、3ウェイ構成以上のコーン型スコーカーは、すべて、この特殊ポリプロピレンコーン採用である。
 その他、エンクロージュア関係では、フィニッシュがチーク仕上げとなり、グリルが、フローティング・グリルと呼ばれるグリル枠の反射によるレスポンスの劣化を防ぐ構造が新採用されている。また、上級2モデルは、バッフルボードの端にRをとった、ラウンドバッフル化が特徴である。
 今回、試聴した120Tiは、Lシリーズでは、ほぼ、L112に相当するユニット構成をもつ3ウェイ・システムである。
 30cmウーファーは、独特な魅力のあるサウンドで愛用者が多いアクアプラス複合コーン採用で、表面からスプレーをかけて黒に着色してある。磁気回路は当然のことながらJBL独自のSFGタイプだ。
 13cmコーン型スコーカーは、特殊ポリプロピレン振動板採用の104H、トゥイーターは、シリーズ共通のチタンダイヤフラム採用のドーム型ユニット044Tiだ。
 エンクロージュアは、リアルウッドのチークを表面に使い、40年間のキャリアを誇るJBL伝統のクラフトマンシップを感じさせるオイル仕上げであり、ユニット配置は左右対称ミラーイメージペアタイプであるが、左右の木目はリアルウッド採用の証しで、絶対に一致することはない。
 また新シリーズは、Lシリーズではバッフル面にあったレベルコントロールが、スイッチ型になり裏板の入力端子部分に移され、不要輻射を防ぐとともに、接点部分の信頼性が一段と向上し、音質的なクォリティアップがおこなわれている。
 試聴は、スタンドにビクターLS1を、底板にX字状にスタンドが当たる使用方法ではじめる。最初の印象は、JBL独特の乾いて明るい音色が、少し抑えられ、穏やかさ、スムーズさが出てきた、といったものだ。スタンド上で位置の移動でバランスを修正し、ユニット取付けネジを少し増締めすると、反応がシャープになり、全体に引締まった音に変わってくる。良い意味でのポリプロピレン系の滑らかさ、SN比の良さが中域をスムーズにし、チタンの抜けの良さが、音場感の拡がりと、低域の活性化に効果的だ。かなり楽しめる新製品だ。

マッキントッシュ XRT20, JBL

菅野沖彦

ステレオサウンド 72号(1984年9月発行)
特集・「いま、聴きたい、聴かせたい、とっておきの音」より

 正確には記憶していないが、多分、1967年ぐらいから、ぼくのメインシステムとしてJBLの375ドライバー十537−500(ホーン/レンズ)を中心としたスピーカーを使い始めた。当初から、3ウェイのマルチアンプシステムとして使い始めたもので、ぼくにとってこのスピーカーは、まさに妻のようなものであった。何故なら、ぼくがこれを使い始めた頃、ぼくの気持ちの中では、一生、このスピーカーとつきあおうと思っていたし、また、そうなりそうな予感もあったからである。トゥイーターは075、ウーファーは初めのうちはワーフェデールのW12RS・PST、そして後に目まぐるしく変り、結局、JBL2205に落着いて現在に至っている。もっとも、075は、その後、ぼく流に改造しているし、375ドライバーも2445Jに変ってはいるが、これは妻を変えたようなものではなく、女房教育をしたようなものである。つまり、通称〝蜂の巣ホーン〟を中心としたJBLのユニットによる3ウェイのマルチシステムという基本は、この17年間変ってないのである。もちろん、その間にも、いろいろなスピーカーに出会って、浮気心を起こしたこともあるし、そのうちの何人かは、本妻と一時的に同居させたこともあった。しかしいつも、せいぜい3〜6ヵ月で、妾のほうは追出されてしまうのが常だった。まさに浮気のようなもので、本妻と並べてみると、改めて、妻の美点がクローズアップされ、一時期血迷った自分を反省するのであった。時には妻にはない魅力を垣間見せる妾もいたが、総合的にはいつも妻のほうが上であった。それに気がついてしまうと、とても妻と妾を同居させている気がせず、妾のほうにはお引取り願うということになるのであった。
 そんなぼくとスピーカーとの関わり合いに、かつてない大事件が起きたのが、今から3年前、1982年の春である。
 その2年前、ぼくは録音の仕事でアメリカへ行き、ニューヨークで二週間ほど仕事をしたが、その間に、マッキントッシュのXRT20というシステムに出会ったのである。ぼくの浮気の虫は、にわかに鎌首を持上げ、この熟女の魅力の虜になってしまった。しかし、この時は、かろうじで理性が勝って旅先での出来事にとどめることが出来たのである。しかし日本に帰って、久しぶりにわが家で妻の歓迎を受けながらも、XRT20の妻にはない魅力が想起され、妻には悪いと思いながらも、妻との営みの最中にXRT20を空想したり、妻にXRT20の魅力を求め無理強いしたりという一年がつづいていた。しかし、再び、妻との生活に馴れ、いつしか、XRT20の記憶も薄れていったのだった。もとの落着いた心境で、夜な夜なベートーヴェンやハイドンを、バッハやモーツァルトを、そして、マーラーやブルックナーを招いて楽しい一時を過していたし、時にはソニー・ロリンズやアート・ペッパーを、また、大好きなメル・トーメやジョニー・ハートマンを招くこともあった。ジャズメンを招いた時の妻の喜々とした表情は、ことのほか魅力的で、とても15年連れそった古女房とは思えない若返りようであったものだ。
 が、忘れもしない1982年の春、日本でXRT20に再会してしまったのである
 XRT20が来日した! と聞いた時からぼくの胸は高鳴り、ニューヨークで味わった興奮が、まるで昨日のことのように甦ったのである。もう、居ても立ってもいられない。ぼくは後先顧みず、XRT20をわが家へ連れ込んでしまったのだった。彼女のために部屋を片づけ、レコード棚の一つは廊下へ出し、なんとかXRT20のために居心地のよいスペースを確保した。
 それからの数十日は、ぼくは平常心を失っていたように思う。朝な夕な、夜更けまで、ぼくはXRT20に狂っていた。柔らかく優美な肌、しなやかでいて強勒な、その肉体にのめり込んでいった。気性は妻よりややおとなしいように見えたが、どうしてどうして芯は強い。若いだけあって柔軟性に富んでいて、クラシック畑の人ともジャズ細の人とも、分け隔てなく馴染んでくれた。ぼく流の教育にも従順で、驚くほどの適応性を見せるのだった。
 この間、妻は無言であった。そしてある夜、ふと沈黙の妻の存在に気づき、久し振りにぼくは妻との語らいの一時をもった。そしてぼくはまたまた、妻の能力を再再発見したのである。妻はいった。
「私はXRT20とは違うのよ。でも、私は長年、あなたによって教育され、大人になったと思うの。それだけに新鮮味はないかもしれないけれど、XRT20とは違った心地よさをあなたに与えてあげられる自信があるの。この前、あなたの親しい瀬川冬樹さんが来られて、あなたとお話ししていらしゃっるのを聞いたわ。瀬川さんはさかんに私との離婚をあなたにすすめられていたわね。でも……私、嬉しかった。あなた絶対に首を縦に振らなかったもの。ありがとう。」
 ぼくはこの時から、長年の主義を破って妻を二人持つことに決めたのである。辛いオーディオ国の法律では重婚は禁じられていないようである。そして、新しいXRT20に、長年JBLに注ぎ込んだ情熱的教育に匹敵する努力を集中的に一年間傾注したのである。来ては去った多くの妾達とはXRT20は違っていた。他人からみるとXRT20がぼくの正妻のように見えるかもしれない。しかし、今や、堂々と、それでいて、ひかえ目に存在するJBLとは馴染んだ年輪が違う。どちらも、ぼくのとっておきの音である。
 この二人の妻と、いつまで続くかはぼくにもわからない……。

JBL L250

菅野沖彦

ステレオサウンド 71号(1984年6月発行)
特集・「クォリティオーディオの新世代を築くニューウェイヴスピーカー」より

 JBLの技術的な特徴というのは、かつてはハイエフイシェンシー、ハイパワードライブという業務用から派生したヘヴィデューティな性格にあったと思うのですが、JBLというメーカーの創設意図というのは、本来、家庭用の高級フロアースピーカーを作ることにあった。例えば、ランサー101、L200、L300といったホーンドライバーを用いたシステムが代表的な存在でしょう。L250は、コンセプトとしては、JBLの家庭用フロアースピーカーのカテゴリーに入るのですが、その独特なプロポーションとユニット構成は、JBLの家庭用スピーカーの歴史の中で異彩を放っています。しかし、L200、L300とこのL250を歴史的に埋める位置にあたるL222Aというトールボーイのシステムを見てみると興味深いことに、3ウェイ構成でトゥイーターはホーン型、スコーカーは13cmコーン型なのですが、そこに波型プレートの音響レンズがつけられていた。つまり、JBLとしては、家庭用として旧来のホーン型からコーン型へ移行する経過をよく表わしていると思うんです。エンクロージュアも、側板にテーパーがついて、定在波や剛性の面でも独創的なデザインを採用し、このピラミッド状のL250へ連なるものでしょう。
 しかし、もっと遡ってみると、L250の原点というのは、実は、かつてJBLのラインナップの中で異色な位置を示めていたアクエリアス・シリーズのあたりからだと思いますね。74年頃に一時期輸入されたことがあり、それまでのJBLの考え方とは全く異なったコンセプト、つまりスピーカーを1チャンネルの中だけで考えたシグナルの忠実な変換器としてステレオ用に2本使うというのではなく、最初から家庭内でステレオフォニックな拡がりというものを意図し、ホームインテリアにも溶けこむようなデザインから無指向性のペアスピーカーとして設計されていました。ですから、ユニットに、強烈なドライバーや大口径ウーファーを使ってエネルギー変換の忠実度を上げるというよりも、音の拡散とそのコントロールにウェイトが置かれていた。結果的にアクエリアス・シリーズというのは、JBLにおいて失敗に終ってしまったんですが、ひとつには実験的な性格が強過ぎたということもあったんじゃないかと思います。
 ステレオフォニックな音場というのは、位相差、時間差、レベル差というものによる立体感、つまり奥行きと拡がりのあるソリッドな空間ということですね。で、この2チャンネルの伝送変換というのは、モノーラルが単純に二つになったということとはまったく違います。ところが、2チャンネルの関連を使って、和差信号、位相差を空間で再生するためのステレオスピーカー技術というものは、アメリカにおいては70年代にようやく始まったと言え、アクエリアス・シリーズも当時にあってはJBLの解答のひとつだったわけです。
 70年代までというのは、とにかくエネルギーの忠実な変換器ということに技術が偏っていたように思います。偏っていたというのは悪い表現なんで、徹底していた。徹底していたからこそ、4343のような4ウェイ構成でもって、全帯域を緻密にエネルギー変換できるクォリティの高いスピーカーが生まれえたわけですよ。
 それに対して、アクエリアス→L222A→L250という系譜が語る別のラインというのは、忠実なエネルギー変換器であることに加えて、ステレオ空間の変換に対する忠実度を高めようというアプローチの上に礎かれてきた、もうひとつのJBLの歴史なんです。もちろん、音場変換器としてのスピーカーというとらえ方は、ボストンにも、先のスネルにも濃厚に表われていて、これはアメリカのスピーカーのニュージェネレーションに共通した問題なんですね。JBLとしては、バイラジアルホーンの開発というのも、明らかに指向性コントロールをステレオ音場の変換というポイントから取り入れた技術で、JBLにあっては、ホーンドライバーが音場変換に適していないとは判断していないことがうかがえます。
 ですから、そういう意味でL250を眺めてみると、これは完全に左右ペアスピーカーとして考えられており、ステレオフォニックな空間再生としてのあるべき技術的なポイントがどこにあるのかということに、大きなウェイトを置いて開発されたスピーカーなんです。
 ただし、JBLのように伝統のあるメーカーの場合、基本的にユニットを大幅に変えるということはしないで、柔軟に対応してゆくということはあるわけで、ユニットの設計そのものは従来のようにハイリニアリティ、ローディストーションという物量の投じられた内容をもち、L250の場合、エネルギー変換器としての忠実度を基本的に満たした上で、さらにエネルギーレスポンスのフラット化、位相コントロールという考え方が後からアダプトされている。このあたりの慎重な対応が、伝続あるJBLらしいところなんですね。
 L250の音の上での良さというのは、指向性がブロードになり、エネルギーレスポンスがフラット化されているためか、ステレオフォニックなプレゼンスによる響きの柔らかさということがまず聴き取れると思います。とはいっても、あくまでも芯のしっかりとした、輪郭の明確なJBLサウンドを継承していますね。
 それから、これはJBLの嫌いな人に言わせると、中低域にJBLのスピーカーというのはかなり特徴があり、ややボクシーな音がする。なにか容れ物の中から音が出てくるというイメージを彷彿させる。
 逆に言えば、聴きごたえのする、迫力のようなものが得られるという解釈もできるんですが、L250を聴いても、その中低域の、悪く言えばボクシーな感触というのがやはりありますね。エンクロージュアのプロポーション、バスレフボートの位置など、ボクシーな感触をある意味では避けた配慮がみられますが、やっぱりJBLの音であるな、という感想が出てくる。
 そうした意味においては、70年代に生まれたニュージェネレーションのスピーカーメーカーとは、一味も二味も違うスピーカーであるという、やはり大人なんですね。
 JBLファンというのは、最もJBL的な音が円熟して、まるで19世紀のヨーロッパの爛熟した貴族文化のように確立した時代に求めず、たしかに、JBLのヴィンテージが、そこにあったことは事実でしょう。
 それからすれば、L250のようにコーン型、ドーム型ユニットを用いたシステムというのはどうも……ということになるかもしれないけれども、スピーカーは空間の変換器であるべきだというこの客観的な共通意識を、実際のリスニングレベルでどう感じるのかということがかかわってくることなのでしょう。
 ただ、JBLくらいの大規模なメーカーになれば、ひとつの技術的な理想を実現するために、ホーン型は絶対に使えない、これからはコーン型しかないんだというような短絡した見方はしない。
 ニュージェネレーションは、じゃホーンシステムでは実現できないのかというとそれも妙なことでしょう。ホーンによって、いつの日か、もっと指向性が良くて、球面波再生を実現した呼吸球のようなホーンスピーカーができないとは言い切れないでしょう。それから、まったく逆に、指向性を自在にコントロールできるホーンの設計が可能になれば、意図的に指向性を狭くして、サービスエリアのコントロールをすることもできる。それらは、すべてニュージェネレーションに属した発想なんですね。
 ニュージェネレーションを迎え入れるために、我々はもうひとつのファクターを、まったく違ったアングルからとらえる必要があります。スピーカーというのは、リスナーの趣向に対応して鳴り響くものであるけれども、というよりもまさにそれゆえに、人間というのは本質的に飽きる、感覚が麻痺する、何か別の違うものを要求するという本能があるわけで、人間の広い感性の中でオーディオを見る見方が必要だと思うんです。それをただ縦の線上に並べて云々する、妙なヒエラルキーの中に閉じこもってしまうというのは、オーディオをどんどん袋小路へ追い込んでゆくことになるんですね。精神的には、プアーなオーディオになってしまう。
 たしかに、オーディオはテクノロジーの世界だから、良い悪いをテクノロジカルに表現して、縦の線で順序付けることは可能かもしれない。しかし、そのこと自体はオーディオの楽しみ、快楽とは無関係な、あくまでもテクノロジーの世界での話でしょう。もっとそこに、人間や音楽が立体的に絡んでくるより大きな世界がオーディオですよ。ですから、ニュージェネレーションのスピーカー群は、その意味で、フレッシュなるがゆえの魅力、まったくそれまで追求してきた自分のオーディオの方向を逆に振ってくれるような魅力が問われていることも事実なんですね。
 極端なことを言えば、それまでと違えばいいんです、変化が与えられればいい。
 その変化というのは、善悪、良し悪しの価値判断とは、まったく別問題なんです。ところが、そこをいい加減に混乱させてしまうために、オーディオのコンセプトに様々な混乱が生じている。混乱しているために、それを逃がれるかのように極端な保守的な考え方に閉じこもったりするわけだ。
 人間が、何か違うものを欲しがる、これは本能なんです。とりわけ、音に対する感性や情緒というのは、そういう本能のもとに常にさらされている。また、それを制約する規制があっては本質的に困るんですよ。
 変わる場合には良く変わらなきゃならないということは、絶対的な知性だけれど、それが良いのか悪いのか判断する物差しは趣味判断であり、個性であるという複雑な二面性をオーディオはもっている。
 ですから、ニュージェネレーションに共通したファクターが、音場、つまり時空間の変換器としてのスピーカーという新しいスピーカー像を提示していることは、客観的に認めうるとしても、それだけでは片手落ちですよ。人間の感性、情緒という本能に基づいたニュージェネレーションという見方が、基本には必要なんですね。
 イーストコーストサウンドは、その意味では一変した。しかもいい意味で一変したんだけれども、JBLの場合、伝統がある故にその伝統に引きずられている面もあると言えるし、新世代への対応はやはり慎重であると言えるでしょう。なぜ、アクエリアス・シリーズのオムニディレクショナル(無指向性)が成功を収めなかったのか、その教訓を誰よりもJBL自身が受けとめているはずなんです。

JBL 4411

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
❶での総奏が音場的ひろがりを感じさせて、しかもたっぷりとひびく。❷でのヴァイオリンがふっくらした感じでこえるので、これがJBLのスピーカーであることを思いだして、おやおやと思う。❸でのコントラバスはいくぶんふくらみぎみである。したがって❺でのリズムをきざむコントラバスも重めに感じられる。❹でのフォルテの音は硬めである。ここでもう少しやわらかいといいのだがと思う。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❶でのエレクトリック・ピアノはくっきりと輪郭をつけて手前にはりだす。音像的にはかならずしも大きすぎない。❷での吸う息を強調しないのはいいが、声のみずみずしさの提示でいくぶん不足している。❸ではベースの音の方がめだち、ギターの音に繊細さが不足している。したがってギターの音はきわだちにくい。❹でのストリングスは奥の方で充分にひろがり、効果的である。総じてひびきは明るい。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
❶でのピコピコいう音のくっきりとした提示のされ方はなかなか特徴的である。❷でのティンパニの音の質感そのものにはいくぶんものたりないところがあるものの、独自の鮮明さがある。そのために❸での左右への動きなどは効果的に示される。ただ、❹のブラスの音などには多少の力強さの不足を感じなくもない。❺でのポコポコについても❶と同じことがいえて、ここでの音楽の特徴がききとりやすい。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
ここでの結果がもっともこのましかった。❶ではベースがいくぶんひかえめに提示される。❷でのきこえ方も、無理がなく、自然である。とりわけピアノの高い方の音には充分な輝きがある。しかし❸でのシンバルは、どちらかといえば、消極的である。ここで特に見事だったのは❺での木管のひびきのひろがりである。これまでの部分との音色的な対比も充分についている。すっきりした提示がこのましい。

JBL 4411

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 音としての表現がごり押しになっていないところがこのましい。しかし提示すべきことはしっかり提示されている。これで低い方の音に力強さが加われば、さらに音は説得力をますのであろうが、その点でいくぶんものたりないところがある。
 低い方の音がしっかりおさえられていると、たとえば①のレコードでの❺のコントラバスがふくれることもないであろうし、③のレコードでの❷のティンパニの音が質感に不足することもないのであろう。その点をいかにカバーするかが、このスピーカーをつかっていく上でのポイントになるかもしれない。
 ただこのスピーカーはいかなる場合にも提示すべき音を輪郭をぼかさずに提示するので、その意味ではつかいやすいといえそうである。㈰のようなオーソドックスなレコードに対しても、あるいは②、③、それに④のレコードできけるような音楽に対しても、わけへだてなく対応するところはこのスピーカーのいいところである。

JBL 4344

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
❸でのコントラバスがコントラバスならではのひびきの余裕を感じさせてこのましいが、いくぶん音像的にふくらみぎみである。そのことと関係してのことかどうか、❶から❷にかけては、ヴァイオリンより低い弦楽器の方がきわだってきこえる。総じて弦のアンサンブルによる演奏ならではの、しかもその点でのあじわいをうまくとらえた録音のよさをうまく示しえているとは、残念ながらいいにくい。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❶でのエレクトリック・ピアノの音が前の方でくっきり提示される点に特徴がある。❸ではギターよりベースの方がきわだつ。ギターの音はもう少しきめがこまかく、輝きがあってもよかったように思う。❺でのバックコーラスがいくぶん手前の方にせりだしぎみにきこえる。このスピーカーならではの積極性のあかしと考えるべきかもしれない。❷での声も輪郭をしっかり示して独自のなまなましさを示す。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
迫力にとんだきこえ方である。さまざまな音の力感をよく示せているからである。❸での音の動き方などにしても効果的である。ただ、奥の方からきこえるべき音も前の方にせりだしがちなので、前後の音場感ということでは、多少ものたりなさがある。❷でのティンパニの音などは、もう少しきりっとまとまってもよかったのではないかと思う。いくぶん音像がふくれ気味になっただけ、鋭さに不足している。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
❶ではピアノの音よりベースの音の方に耳がひきつけられがちである。❷でのピアノのひろがり方はほどほどである。❺での管楽器が加わっての音色的対比は十全であり、さすがと思わせる。❸でのシンバルの音は、もう少し輝きがほしいと思わなくもないが、くっきり示す。ただ、ここでも、奥へのひきという点で、いま一歩と思わなくもなかった。このレコード特有の音色的な特徴は十全にあきらかにした。

JBL 4344

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 このスピーカーに対してこれまで抱いていたイメージといくぶんちがうきこえ方がした。カートリッジ、あるいはアンプとの関係があってのことと思われた。
 音の輪郭をあいまいにすることなくくっきり示し、しかも積極的に音を前に押しだすところに、このスピーカーのもちあじのひとつがうかがえた。ただ、総じて、音像がふくらみすぎる傾向があり、そのために鋭さがそこなわれているところもなくはなかった。
 ①のレコードなどより、②、 ③、④のレコードの方が性格的にこのスピーカーにあっているといえそうである。①のレコードを不得手とするのは、きめこまかさへの対応ということでいくぶんいたらないところがあるためかもしれない。
 それぞれのレコードのサウンドキャラクターを拡大して示す傾向があり、それはこのスピーカーの順応性のよさゆえといえなくもないであろう。

JBL L250

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
くっきりきこえはするが、全体的にひびきが乾燥ぎみで、したがって❷のヴァイオリンなどはあじわいにとぼしい。❶での総奏の音のひろがり方には独自のものがあるが、ひびきそのものの溶けあった感じの提示ということになると、ものたりないところがある。この種のレコードの音はこのスピーカーにとって不得手といえるのではないか。❸でのコントラバスの音像はほどほどでまとまってはいるが……。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❷でのふたりの声はやわらかさをあきらかにしているし、吸う息もなまなましく示す。しかし❸ではギターのひびきの提示がいくぶん弱く、ベースの方がめだちがちである。❹でのストリングスの後へのひきが多少不足している。❺でのバックコーラスとのかかわり方も、ブレンド感とでもいったものでものたりない。うたわれる言葉の子音がきわだってきこえる傾向がなくもない。❶での音像は大きめである。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
今回試聴に用いた4枚のレコード中でこのレコードでの結果がもっともこのましかった。このレコードできける音楽のダイナミックな性格をよくあらわしていた。とりわけ❹での疾走感はききごたえ充分であった。❺でのポコポコも、音像的にふくれすぎず、ほかの音との対比もついていた。さまざまなひびきが入りまじってのひろがりもこのましくあきらかにできていた。❷のティンパニも力にみちてひびいた。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
❶でのピアノの音とベースの音のきこえ方は自然で無理なくこのましい。また、まとまりということでも、すぐれている。ただ❷での、高い音と低い音とのつながりは、かならずしもよくない。高い音と低い音がいくぶん不連続にきこえる。この辺にこのスピーカーの問題点がなくもないようだ。❸ないしは❹でのシンバル等の打楽器のひびきは、かならずしも効果的とはいいがたく、ひびきとして薄めである。

JBL L250

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 レベルコントロールを微妙に動かして(というか切替えて)追いこんでいけば、さらにこのましい結果が期待できなくもないのかもしれぬが、今回の試聴では一応それぞれのレベルコントロールをフラットの位置できいた。そのためかとも思われるが、高い方の音と低い方の音で、ひびきの性格がいくぶんちがっていたように感じられた。
 ただ、このスピーカーの音は、基本的なところで、俗にいわれるJBL的な音から離れたところにあるということはいえそうである。④のレコードでの❶の部分などは独自の静かな気配の感じられるもので、印象的であった。なるほどこれは新しい時代のJBLの音かとも思ったりしたが、その方向で十全にまとめられているかというと、そうともいいきれないところがあり、全体的な印象としてものたりなさを感じた。
 サウンドキャラクターの点でいささか徹底を欠いたとでもいうべきであろうか。

JBL 4344, 4345

JBLのスピーカーシステム4344、4345の広告(輸入元:山水電気)
(オーディオアクセサリー 27号掲載)

4345

JBL 4411

井上卓也

ステレオサウンド 64号(1982年9月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 JBLの44シリーズは、その最初の製品4430、4435で示されたように、新時代のプロフェッショナルモニターに要求される条件を検討した結果から生まれたフレッシュな感覚のデザインと基本性能を備えたシステムである。今回、このシリーズ製品として、コンパクトタイプの4411が新発売された。続いて、より小型の4401が発表されることになろう。
 JBLコントロールモニターと名付けられた4411は、時代の変化に対応した最新デジタル録音や、高性能アナログ録音の大きな情報量をこなす目的で開発され、高サウンドプレッシャー、高耐入力、広いダイナミックレンジなどを備えた製品である。
 基本的に44シリーズは、43シリーズのマルチウェイ的発展、広い周波数帯域と高出力でクォリティの高い音を狙った開発とは対比的だ。シンプルなユニット構成ながら、JBLの新しいテーマであるエネルギーレスポンスの平坦化という条件から水平と垂直方向の指向性の差を少なくし、さらに、電気的、音響的なサウンドバランスの補整という新しい技術の導入に注目したいシリーズである。
 その最初の4430、4435が2ウェイ構成を採用していたために、44シリーズは2ウェイ構成と考えられていたわけだが、4411は予想に反して3ウェイ構成であるので、やや奇異な感じを受けるかもしれない。この点について、現時点ではJBL側から明解な回答を得られていないが、フラットなエネルギーレスポンスを得るための最小ユニット構成が44シリーズの設計目標と発展的に解釈すれば、小型システムでエネルギー量の少ないユニットを採用する場合、特に中域以上の周波数帯城においてはプレッシャー型ドライバーユニットを使わない限り、2ウェイ構成でエネルギーバランスをフラットにすることは至難の技である。このため、必然的に3ウェイ構成とするという、海外製品独特のフレキシブルな発想による結果ではないだろうか。
 4411は、44シリーズ中最初のブックシェルフ型で、ブックシェルフ型としては標準的な使用であるはずの横置き仕様のユニット配置をもつ特徴がある。ユニット配置は、現在の製品としては標準的な左右対称型で、フロントグリルを取り付けた状態でレベルコントロールを可能にした新レイアウトがデザイン的に目立つ点だ。
 使用ユニットは、低域が30cm口径の128H、中域が13cm口径コーン型のLE5−9、高域は25mm口径044ドーム型で、基本的にはコンシュマ一タイブで既発売のL112と同等と考えてよいだろう。
 ほぼ同じ外形寸法とエンクロージュア方式、使用ユニットをもつ、この2種類のJBLシステムは、一般的レベルの想像では近似したサウンドをもつものと考えられやすいが、現実の試聴ではL112がタイトで引き締まったサウンドを聴かせることと比較して、4411はスケール感の豊かな、ダイナミックで伸びのある音をもつという、いわば対照的なサウンドである点が、非常に興味深い。
 このあたりから、JBLのシステムアップの技術やノウハウを知るためには、エンクロージュアの内部をチェックする必要があるだろう。エンクロージュアは共にバスレフ型で、外形寸法を比べてみると、4411の方が幅が広く、奥行きが少ない。このようなプロポーション的な変化があるが、容積的には同等で、パイプダクトの寸法も同じものが使われている。外形寸法的には、一般に奥行きを縮めるとシステムとして反応の速い音にしやすい傾向があるのだが、ウーファーユニットとダクト取り付け位置の相関性も低域のキャラクターを変える大きな要素で、主にエンクロージュア内部の定在波の影響とバスレフ型の動作の違いが音に関係をもつ。また、4411では、音源を小さくするために、ユニットが集中配置になっていることも、モニターシステムらしいレイアウトである。
 エンクロ−ジュアは、海外のコンパクトなシステムに共通の特徴である内部に補強棧や隅木を使わないタイプで、両者共通である。板厚は、モニター仕様の4411のほうが、L112の約25mm厚から約17mm厚へと薄くされ、ウーファー取付部は座グリ構造で、ユニットを一段落してマウントするタイプとし、結果として機械的な強度を下げた設計としている。ここには、音の立ち上りを少し遅くして豊かな響きを狙い、反応の速さを奥行きをつめてカバーするという、非常に巧妙なチューニング技術が見受けられる。吸音材は共にグラスウールが使われている。ダクト位置が遠い4411では、少しダンプ気味とした低域レスポンスのコントロールがポイントになっている。また、ネットワークは、4411のほうがコア入りで、損失を抑え厚みのある低域を狙っているようだ。アッテネーターパネルには、軸上周波数特性フラットの位置と、エネルギーレスポンスがフラットになる位置とが明示されている。
 試聴では、横位置で大幅にセッティングを変えてチェックしたが、サウンドバランスとキャラクターは安定し、大幅な変化を示さないのは、4411の美点である。ダイナミックで鳴りっぶりのよさはJBL小型システムとして傑出した存在で、横位置標準使用が選択の鍵を握る。好製品だ。

JBL 4430, 4435

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART2」より

 JBLは、4333、4350以来、モニターシステムにマルチウェイ化の方向を導入してきたが、昨年末、突如2ウェイ構成のスタジオモニターの新シリーズの製品を発表して、JBLファンを驚かせた。
 モニターシステムのマルチウェイ化は、たしかに、周波数レスポンス、指向周波数特性、歪率などの物理的特性を向上する目的にはたいへんオーソドックスな手法である。しかし、数多い構成ユニットをシステム化するにあたっては、バッフルボード上の配置からして問題になる。ユニットのレイアウトは、音響条件のみを優先してレイアウトしたとしても、4ウェイともなると発音源が散らばり、水平方向と垂直方向の指向周波数特性を均等に保つことは至難の技であり、モニターシステムに要求されるシャープな音像定位の確保が難しくなる。古典的モニターシステムの多くが、2ウェイ同軸型に代表されるユニット構造を採用しているのは、発音源が一点に近い利点をいかしたからだ。
 一方、現代のモニターシステムには、広い周波数帯域の確保や低歪率も重要な条件であり、最大音圧レベルを含み、この目的にはマルチウェイ化がもっとも妥当な解決策であるわけだ。
 JBLが〝43〟シリーズのモニターシステムで築いた技術を背景に、現代のモニターシステムに対する数多くの要求を完全に満たすものとして新しく開発されたのが、2ウェイ構成の〝44〟シリーズといえるだろう。
 再びモニターシステムの原点にかえって、新設計された44シリーズの最大の特長は、外観でも非常にユニークなハイフレケンシーユニット用のバイ・ラジアルホーンである。この新ホーンは、これまでの各種ホーンの欠点をほぼ完全に補ったもので、1kHzから16kHzにわたる広い周波数帯域で、水平と垂直の指向性パターンが一定し、ウーファーとのクロスオーバー周波数付近では、38cm口径のウーファーの指向性パターンと近似させるとともに、開口部の処理で第2次高調波歪が低減されているのが特長だ。簡単に考えれば、このバイ・ラジアルホーンが開発されて初めて、2ウェイ構成の新モニターシステムが完成されたといえよう。
 ユニット構成は、4430が38cmウーファーのオーソドックスなシングル使用の2ウェイ・2スピーカー。4435が、ダブルウーファーのスタガー使用の2ウェイ・3スピーカーである。4435で面白いのは、エンクロージュアキャビティは、それぞれのウーファーユニット専用で、ウーファーはエンクロージュア内部で音響的に隔離されている点である。
 使用ユニットは、両システムともに高域は共通である。コンプレッションドライバーには2421Aが採用されている。
 ウーファーユニットも一新された。4430には2235Hが1本、4435には、振動系は2235Hと同じだが、マスコントロールリングのない2234Hが2本使用されている。なお、4435の最初に輸入されたサンプル(編注=本誌No.61の新製品欄で紹介したもの)では、低域は2234Hと2235Hの異種ウーファーユニットの組合せであったが、正規のモデルは2234Hが2本に変更されている。
 44シリーズの電気的な特長は、クロスオーバーネットワークにある。現時点では回路、L・C・Rの定数的な使用方法は不明であるが、1kHzをクロスオーバー周波数とするハイパス側に、約3000Hzから高域に向かって6dB/オクターブでレスポンスが上昇する高域補強回路と、どの周波数で高域上昇を抑えるかを決める調整回路が組み込まれ、それぞれエンクロージュア前面のレベルコントロールで単独に調整できるようになっているものと思われる。
 ローパス側は、4430は標準的な使用法だが、4435では片側の2234Hは最低域専用で、100Hz以上はハイカットされるスタガー使用が特長である。
 4430のエンクロージュアは、サンプルシステムでは左右非対称型であったが、実際に輸入された製品では左右対称型に変わっている。4435も、前述のウーファーユニットの変更のほかに、バイ・ラジアルホーンの取り付け位置が変更されている。全体に、やや内側に移動され、その下側のウーファーユニットとほぼ一線上に並ぶように修正されている。このバイ・ラジアルホーンは、バッフルボードから開口部がかなり突き出しているが、これはドライバーユニットのダイヤフラム位置をウーファーのそれと合わせる目的によるものである。この手法は古くは、アルテックのA7システムで採用されているオーソドックスなタイプといえる。
 エンクロージュア型式はパイプダクトを使用するバスレフ型で、4430の内部構造の詳細は現時点では不明だが、4435はおおよその内部構造がわかっているので、イラストを参照されたい。
 4435のエンクロージュア内部構造の特徴は従来の4343、新4344と比較するとわかることだが、ウーファー上側に裏板とバッフル板を結ぶ前後補強棧が設けられていることだ。スピーカーシステムを開発する場合のエンクロージュアの一般的概念として、この種の補強棧を入れるということは、システムの中域エネルギーを必要とする場合に使うことが多い手法である。なお、吸音材は伝統的な25mm厚グラスウールで、1立方mあたりの重量が12kgのタイプが採用されている。
 44シリーズは、高域レスポンスが改善された2421Aと、指向特性のパターンが抜群に優れた新開発のバイ・ラジアルホーンにより、水平と垂直方向の指向性パターンを均一にするとともに、電気的に高域を補整し、エンクロージュア内部構造でクロスオーバー周波数付近のエネルギーを改善し、高耐入力ウーファーを組み合わせるといった正統派的な技術アプローチで開発されていることが特徴といえるだろう。

JBL 4344

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART2」より

 4344は基本的な外形寸法こそ、最初の4343から変化はないが、スピーカーシステムとしては内容を一新した完全な新製品である。43シリーズ中の位置づけとしては、既発売の4345系の基本設計を受け継いでおり、4343Bの改良モデルというよりは、4345からの派生モデルということができる。
 4344のバッフルボード上のユニット配置は、4345を踏襲したレイアウトで、左右対称型のシンメトリー構成を採用している。4343で試みられたバッフルボードの2分割構造(中低域以上のユニットが取り付けられた部分のバッフルを90度回転して、横位置での使用を可能としている)は採用されず、完全にフロアー型としての使用を前提とした設計・開発方針がうかがえる。ちなみに、4343系と比較すると、ウーファー取り付け位置が上に移動し、バスレフダクトの位竃が大きく移動して、中低域ユニットの横となっている、という2点が大きな相違点だ。このユニット配置は、4343系のウーファーが、バッフルボードの下端に位置するため、実際の使用では床面の影響を受けやすく、使いこなしが難しかった点が改良されたことを意味する。
 エンクロージュア内部構造の相違も、4344が4343系とは完全に異なるシステムであることを物語るものだ。まず、中低域(ミッドバス)ユニット用の、バックキャビティの形状が全く違う。4343系では、バスレフポートとの相対関係から、奥行きが浅い構造であったが、4344ではほぼ四角形の奥行きが深い構造となり、補強棧を併用することで、バッフルと裏板にまたがって保持されている(図参照)。
 また補強棧が多く使われていることも目立つ変化である。とくに、4343系と比較すれば、天板と底板に、横方向に大きな補強棧が使われているのが特徴である.、この補強棧の使用法は、低域の再生能力を改善する目的で使われる例が多く、国産のスピーカーシステムでは低域の改善方法として採用されている標準的な手法である。裏板の補強棧の使用法も4343系と大きく異なるが、エンクロージュア側板の補強棧が、横位置から縦位置に変更されていることも含み、エンクロージュアの鳴きを抑える方向ではなく、適度に響きの美しさをいかす方向のチューニングであることがわかる。これは、バッフルボードに約19mm厚の積層合板が採用されていることからも明らかなことである。積層合板がバッフル板に使用されたのは、正式に公表されたものとしては(筆者は以前JBLのエンクロージュアで、同じ型番のものでも、チップボードを使ったり、積層合板を使ったりしているものを見ている)、JBL初のことと思われる。

 ユニット関係は一新された。ウーファーは、従来の43シリーズで標準的に使用されてきた2231A、2231H系から、振動系を一新して、リニアリティの向上をはかり、2231Aで採用されたものと同様のマスコントロールリングをボイスコイルとコーン接合部に入れた2235H。中低域(ミッドバス)は、4345と同じコンベックス型センターキャップ付新コーン紙採用の2122H(従来の4343Bに使われていた2121Hのセンターキャップの形状はコーンケーヴ型という)。中高域のコンプレッションドライバーには、ダイヤフラムのエッジ構造が一新された2421Bが採用されている。2421Bで採用されたエッジ構造は、それまでの2420が、アルテック系のそれとは逆方向に切られたタンジェンシャルエッジであったのに対して、すでにパラゴン用の中域ドライバーとして採用されている376と同様な、JBLオリジナルの折紙構造のダイヤモンドエッジ付ダイヤフラムになった。2420系のコンプレッションドライバーにダイヤモンドエッジが採用されたのは、この2421Bが最初である。ホーンと音響レンズは4345、4343B等と同じ2307+2308の組合せだ。スーパートゥイーターは、4345の発表時に小改良を受けて高域特性がより向上したという、2405である。
 また、ネットワーク関係は、4345と同様に、プリント基板が採用されている。大容量コンデンサーに小容量フィルムコンデンサーを並列にする使用法や、アッテネーターのケースから磁性体を除いて歪を低減するなど、エンクロージュアとともに、技術的水準が非常に高い日本製品の長所が巧みに導入されていることが見い出せる。
 なお、既にユニット関係の資料で公表されていることだが、従来までの数多くのJBLスピーカーの使いこなしの上での盲点を記しておく。それは、JBLのユニットの端子は、赤が−(マイナス)、クロが+(プラス)であり、一般的なJISなどの観念からすれば、普通に接続すると逆位相で使っていることになる点だ。ここに、JBLサウンドの秘密の一端があるが、詳細は割愛する(どのくらい音が変わるかは、自分のスピーカーシステムの±の接続を左右とも逆にしてみれば確認できる。一度実験してみることをおすすめする)。

JBL 4341

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4ウェイ構成のモニターは、巨大な4350に始まり、4331、4333と同時期に、4341が登場する。4341は基本的には、4333に使用されたコンポーネントの3ウェイシステムに(ただし、ホーンは4331、4333で使われている2312より短かい2307に変わっているが)、25cm口径の2121ミッドバスユニットを加えた構成と考えられる。4ウェイ化にともない、エンクロージュアは同じバスレフ方式でも、台輪のついたフロアー型となっている。
 4341は、中期のモデルでは、ミッドバス用のバックチャンバー容積が増やされ、これが次のモデルの4343に受継がれるが、エンクロージュアの変更以外にユニット関係、クロスオーバー周波数の変更はなく、4350を除く、4ウェイ構成の原点がこの4341である。4341は、4ウェイシステムとしては──エンクロージュア面での制約もあり──予想よりも中低域の豊かさが少なく、レベルコントロールをフルに使って帯域バランスを調整する必要があるが、それでも4343と比較すると、スケール感が今一歩といった印象である。極言すれば、それは大人と子供の差、といった表現も可能なほどだ。しかし逆にいえば、ややスリムで、センシティブな印象が、このシステムの魅力であるといえないことはない。
 4341はその後、エンクロージュアに大幅な改良を受けて4343に発展し、ウーファーとミッドバスユニットにSFG磁気回路を採用した4343Bに至るが、これについては過去の本誌の記事に詳しいので、特に詳述しないでもよいだろう。この4343シリーズと4350、4350Bのギャップを埋めるモデルとして開発されたのが、46cmウーファー採用の4345であり、4345での成果を活かして、ウーファーを38cm口径としたものが、最新の4344である。
 一方、モニターシステムは、2ウェイ構成がスタンダードという声は、依然として根強くスタジオサイドには残っていた。この要求に答えて、従来にない新しいアプローチで開発された新シリーズが、4430、4435であり、従来の〝43〟シリーズの全てを一新した、まったくの新世代の2ウェイモニターの登場である。

JBL 4333B

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4333Aの黄金時代は約4年以続くが、時代の影響が色々とJBLにも及んでくる。スタジオでの物凄いハイパワードライブの影響は、アルニコ磁石使用の磁気回路の減磁としてあらわれ、特にウーファーにおいてこの点が問題として指摘されるようになった。また資源的にも、時代の要求はフェライト磁石の採用を迫ることになる。
 これに対するJBLの回答が、1980年開発されたSFG回路である。SFG回路(シンメトリカル・フィールド・ジオメトリー)とは、フェライト磁石の減磁に強いメリットを生かし、磁気歪みを低減したJBL独自の磁気回路の名称である。
 SFG磁気回路を使う2231Hをウーファーに採用した新モデルが、4333Bである。4333Bの、フェライト系磁石を使う磁気回路独特の、厚みがあり、エネルギー感を内蔵した力強い低域には新鮮な印象を受けた。アルニコ系磁気回路では、重低音再生を指向すると、とかく、低域レスポンスがウネリがちで、低域から中低域にかけてのスムーズさを失いがちだが、SFG回路ではその点が問題なく、安定感のある豊かな低域エンベロープを聴かせる。これが4333Bの最大の特長であり、JBLモニターで最も周波数レスポンスがナチュラルな、完成度が非常に高い傑出した製品だ。

JBL 4333A

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 3ウェイ構成の最初の製品が、4333であることは、前述したが、本格的な3ウェイ構成らしい周波数レスポンスとエネルギーバランスを持つシステムは、4333Aが最初であろう。4333Aでは、エンクロージュア外観が変わり、バッフルボード上のユニット配置とバスレフダクト位置が大きく修正されるとともに、板厚もバッフル板を除き従来の約19mmから約25mmに増加している。
 使用ユニットは4333と変わらないが、エンクロージュアの強化により、重量感があるパワフルな低域をベースに、充実した中域とシャープに伸びた高域が、3ウェイ構成独特のほぼフラットな周波数レスポンスを聴かせ、システムとしての完成度は、ある意味で頂点に達した感がある。

JBL 4331A, 4331B

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4331以後、約二年弱経過して、エンクロージュアの改良を主として開発された4331Aが発表されるが、システムとしては、バランス上で高域が少し不足気味となり、3ウェイ構成が、新しいJBLモニターの標準となったことがうかがえる。
 その後、4331Aは、4331Bに変わるが、豊かな低音に比べ、高域が明らかに不足し、これは、2405を加え3ウェイ化する必要があるシステムといえるだろう。

JBL 4331

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

このシステムは、エンクロージュアのデザイン、使用材料の板厚などはほぼ4320、4325を受継いでいる。しかし、バッフルボード上のユニット配置関係の変更を受けている。つまり、3ウェイ化する場合の2405の位置が4320、4325時代とは異なり、ウーファー、ホーン、ドライバーと一直線上に配置されている。また、バスレフポートが2個から1個に変更された。ユニット関係も、音響レンズと2420ユニットを除き新型に置換えられている。
 まず、ウーファーは、ボイスコイル口径は同じ4インチではあるが、磁束密度が高い130A系の2231Aとなり(2215の11000ガウスに対し2231Aは12000ガウス)、ハイフレケンシー用のホーンが全長が長い(2307の約22センチに対し約29センチ)2312となったが、クロスオーバー周波数は、800Hzで4320と変わらず、システムのインピーダンスが、ソリッドステートアンプに対応して8Ωに変更されたのも人きな改良点である。
 容積の制約のあるエンクロージュアで低域レスポンスを充分に得る目的で、2231AはそれまでのJBLのウーファーと比べ振動系重量が増加していて、これによる能率の低下を磁気回路の強化とボイスコイル・インピーダンスを低くすることで補っている。近代スピーカーユニットとしては、きわめてオーソドックスな設計手法の採用と思われる。システムの出力音圧レベルは、93dB/W/mと発表されており、4320の国内発表値97dB/W/mに比べ4dBのダウンとなっている。しかし、4320の出力音圧レベルは、JBL発表値からの換算値であるため、現実には、前値ほどの能率低下ではない様子だ。ちなみに、EIA感度48dB(1ミリワット入力時、30フィート地点)と発表されている。
 4331は、4320と比較すると一段と低音の量感が増加しているほか、聴感上の帯域バランスはホーンが延長されたため、中域エネルギーが増大してよりフラットになった。しかし低域の音色は、やや重い傾向となった。このシステムもオプションのネットワークと2405を追加すれば、3ウェイ化できるが、4320の場合よりも軽度ではあるが、中域のエネルギーが弱まる傾向を示し、基本的に2ウェイ構成独特のチューニングが施されているのがわかる。
 この4331は、いわば、JBLモニターが、4320/4325までの2ウェイ構成をスタンダードとする立場から、3ウェイ構成に発展するプロセスに登場したモデルで、JBLモニターで、2ウェイ構成の魅力を残す最後のシステムといった意義が惑じられる製品である。
 なお、2ウェイ構成モデルの派生的なシステムとして、4331と同時にバイアンプ方式の4330が発表されている。そしてこの4330に対応する、3ウェイシステムのバイアンプ専用モデルが4332である。

JBL 4350

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 マルチウェイ化の発端は、4331や4333に先だって開発された、大型4ウェイ構成の4350の開発にあると考えられる。オーディオ帯域を、フラットなレスポンスとエネルギーバランスよく再生するスピーカーシステムを考えれば、低域、中低域、中高域、高域と4分割する4ウェイ構成が、最小の帯域分割数であり、位相特性的に考えれば最大の帯域分割数といえるだろう。
 JBLは、4350で初めて4ウェイ構成を採用するとともに、クロスオーバーネットワークに、一部エレクトロニック・クロスオーバーを導入した。4350では、低域と中低域以上をエレクトロニック・クロスオーバーで分割し、2台のパワーアンプでドライブする〝バイ・アンプ〟方式を採用している。このシステムの開発は、その後のJBLモニターの、マルチウェイ化と、バイ・アンプ方式という新しい方向への発展を示唆している。

JBL 4333

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4320、4325がレコーディングスタジオで多用されるようになると、スタジオ関係者の間では、使用体験を通して、次第に改良すべきポイントがクローズアップされてくることになる。
 それは、時代が要求する音楽の変遷に起因するモニタースピーカーへの要求条件でもあり、スピーカーシステムとしての完成度の高さを求める声でもあったわけだ。それを要約すれば、低域レスポンスの改善と、最大出力音圧レベルの向上が望まれていた。
 これらの要求に対するJBLの回答は、4320が登場して約二年後に、4331の開発としてあらわれる。
 4331は、JBLモニター初の3ウェイ構成を採用した4333と同時期に発表された。それまでのモニターシステムは、2ウェイ構成が最適とされていたが、JBLは4333を登場させることで、いわば常識を破り、この時期から、マルチウェイ化の方向が、JBLモニターにあらわれてきた点に注意したい。

JBL 4325

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 4320に遅れること約一年で、新モデル4325が登場する。4325は、基本的に4320の改良モデルで、ウーファーがLE15系で、ボイスコイル・インピーダンスが4Ωの2216に代わり、高域ユニットとホーン/レンズは4320と同じタイプながら、クロスオーバー周波数を1200Hzに上げたのが異なった点だ。
 発表データ上では、低域のレスポンスが、4320の40Hzから、35Hzに下がっている。また聴感上では、クロオーバー周波数が上がっているため、中域のエネルギーが増加して、いわゆる明快な音になったのが、4325の特長である。しかし、ウーファーを高い周波数まで使っているために、エネルギー的には中域が厚くなっているものの、質的にはやや伴わない面があり、4320ほどの高い評価は受けなかったのが実状である。
 この4325の中域が明るく張り出す特長に注目して、スタジオモニターに採用したのが日本ビクターである。ちなみにCS50SMを一部採用していた日本コロムビアが、4320が登場した頃、タンノイ/レクタンギュラー・ヨークをモニタースピーカーに採用しているが、レコード会社のサウンドポリシーとモニタースピーカーの選択という意味では、興味深いことがらである。

JBL 4320

井上卓也

ステレオサウンド 62号(1982年3月発行)
「JBLスタジオモニター研究 PART1」より

 1960年代に入りJBLにプロフェッショナル・ディヴィジョンが設けられ、プロ用のスピーカーユニット群が先行して開発されるとともに、それらのユニットをシステム化した〝スタジオモニター〟スピーカーシステムが登場する。
 その第一弾製品が4320である。低域にLE15系のハイコンプライアンス型ウーファー2215Bを、高域にはLE85系の2420ドライバーユニットに、HL91ホーン/レンズと同等な2307ホーンと、60年代のHL91と比べ構造が小改良されたスラントタイプ音響レンズ2308を組み合わせた2ウェイ構成で、バスレフ型エンクロージュアが採用されている。クロスオーバー周波数は、C50SM時代の500Hzから800Hzになった。モニタースピーカーとしてより高い音圧レベルでの再生を要求されるために上げられたのであろう。
 当時の代表的レコーディング・モニターシステムはアルテック604E同軸型ユニットと612Aエンクロージュアの組合せであった。4320は、この604E/612Aシステムと比べる、同軸型独特のピンポイントな音像定位では一歩譲るが、豊かで軽い低音の量感と、エネルギーが充分にあり、輝かしい中高域から高域がバランスを巧みに保ち、シャープで新鮮なサウンドが身上であった。その音からは、JBLが新世代のプロフェッショナルモニターとしてこのモデルを登場させた理由が、一聴した瞬間に理解できた。それほどの魅力をもつモニタースピーカーであった。
 しかし4320も、細部にして聴き込めば、周波数レスポンスは、やや、ナローレンジ型であることがわかる。低域は、豊かで反応が速い中低域がべースであり、中域のクロスオーバー周波数あたりはわずかに抑えられ、ハイエンドが、ゆるやかに降下する高域とバランスを保つタイプである。
 4320は、国内で発売を開始されるやいなや、新しいモニターシステムを切実に求めていたレコーディングスタジオに急激に採用され、一躍コンシュマーサイドにも注目されることになる。
 余談ではあるが、当時、4320のハイエンドが不足気味であることを改善するために、2405スーパートゥイーターを追加する試みが、相当数おこなわれた。あらかじめ、バッフルボードに設けられている、スーパートゥイーター用のマウント孔と、バックボードのネットワーク取付用孔を利用して、2405ユニットと3105ネットワークを簡単に追加することができたからだ。しかし、結果としてハイエンドはたしかに伸びるが、バランス的に中域が弱まり、総合的には改悪となるという結果が多かったことからも、4320の帯域バランスの絶妙さがうかがえる。
 ちなみに、筆者の知るかぎり、2405を追加して成功した方法は例外なく、小容量のコンデンサーをユニットに直列につなぎ、わずかに2405を効かせる使い方だった。