黒田恭一
ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
レベルコントロールを微妙に動かして(というか切替えて)追いこんでいけば、さらにこのましい結果が期待できなくもないのかもしれぬが、今回の試聴では一応それぞれのレベルコントロールをフラットの位置できいた。そのためかとも思われるが、高い方の音と低い方の音で、ひびきの性格がいくぶんちがっていたように感じられた。
ただ、このスピーカーの音は、基本的なところで、俗にいわれるJBL的な音から離れたところにあるということはいえそうである。④のレコードでの❶の部分などは独自の静かな気配の感じられるもので、印象的であった。なるほどこれは新しい時代のJBLの音かとも思ったりしたが、その方向で十全にまとめられているかというと、そうともいいきれないところがあり、全体的な印象としてものたりなさを感じた。
サウンドキャラクターの点でいささか徹底を欠いたとでもいうべきであろうか。
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